「アムロ大尉!」
「カミーユ、どうした?」
リ·ガズィのコックピットの中で、作業を行っているアムロ大尉に声を掛ける。
「サイコフレームの研究はどうなんですか?」
「あぁ、順調ではないな。元になるものがあるとはいえ·········」
「元ってジオンの誰かが横流ししてきたという噂の?」
「ん、あぁ·····恐らくはな」
サイコフレームの技術の基礎は、ジオンからの横流しだという噂がある。
誰かがでっち上げた適当な噂だと思っていたが、
時がたつごとにその信憑性は高くなっていった。
誰も知らないのだ。
この情報が誰から手に入れたのか。
「火のないところに煙はたたぬ」という諺もあるが、それは本当かもしれない。
「しかし、あのシャアが反乱を起こすなんて···········」
「カミーユにとっては········クワトロ·バジーナだったか」
「やめてください、僕にとっての認識は既にシャア·アズナブルです」
「あぁ、悪かった」
アムロ大尉は冗談で言ったのだろうが、正直そう言われるのはかなり嫌だ。
もうあいつはクワトロ·バジーナではない。
俺の知っているクワトロ·バジーナは俺が殴ったときに壊れ、
最後の戦いの時に死んだんだ。
今、ジオンを統括しているのはあくまで、シャア·アズナブルだ。
「ではアムロ大尉、失礼します」
「後でな」
「はい」
笑顔で手を振りながら別れを告げるアムロ大尉の元を離れ、
自分の機体のところに行く。
ZガンダムMk-V。
俺がもう一度設計に関わった、Z計画の派生一つ。
基本的な見た目はZとあまり変わらず、
機動性に重きを置き、サイコミュを含む性能を全体的にパワーアップした機体。
現在、ロンド·ベルでトップの性能を誇っている。
しかし、アムロ大尉のνガンダムがもう少しで完成するらしいので、
ナンバー2になるのは時間の問題だ。
遠くから眺めていると、横から声が掛けられる。
「カミーユさん············」
「ハサウェイじゃないか、なにかあったのか?」
「いや、なにもないんです。偶然見掛けたから·········」
「あぁ、そうか」
俺に声を掛けたのは彼、ハサウェイ·ノアだ。
クェスとかいう一人の女の子のために乗艦した子供。
ふとフォウのことを思い出し、キリと胸が痛む。
「ZガンダムMk-V·······すごいですね」
「そうでもないさ、直ぐに追い抜かれるよ」
「何にです?」
「νガンダムにさ」
「νガンダムって···········?」
「············戦争の道具さ」
「········?」
νガンダムを戦争の道具と称するカミーユ。
しかし、彼は知っていた。
自身もまた、戦争の道具であることに。
戦争の道具さ。
長くは続かないと思います。
フィフス·ルナはもうドーンですしおすし。