四葉の影騎士と呼ばれたい男   作:DEAK

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皆さまあけましておめでとうございます。

今年も四葉の影騎士と呼ばれたい男を宜しくお願い致します。



ということで、今回はお正月のネタで特別編を書かせて頂きます。

時系列としては
導入編と入学編の間の話です


番外編(お正月特別編)

時は、多少遡りある少年が未だ四葉の屋敷にいるころである。屋敷は二日後に迫った正月の準備で女中や執事がせわしなく屋敷内を駆け回っている中、数ある部屋の中では広い方に入るある部屋で

 

「……みんな、集まってくれてありがとう」

 

今や四葉の屋敷で見ない日はなく、というか何かしらやらかすので色々と目の離せない少年がまだ日も高いのに部屋のカーテンを閉め切り薄暗くなった部屋の椅子に座っていた。

 

「いきなり何ですの?」

 

「まぁ、いつもの事だし」

 

部屋には少年の他に、双子の姉弟がいた。姉の方は少年の言葉に呆れ気味に溜息を吐き、弟の方はもう慣れたと言わんばかりに平然としていた。

 

「いつもの事と思いつつある自分が嫌ですね」

 

「……はぁ」

 

更に双子の姉弟から少し離れた所には、あまり似ていない兄妹がいた。妹は双子の姉と同じ感情をその目と顔に映しており、兄の方も一見は無表情だがかすかに呆れの色が見て取れる。

 

「四人とも、今年もこの時が来た」

 

四人中三人から呆れられているとは知らず、というか知ってても気にせず少年は椅子に座ったままで言う。

 

「ここで、しくじれば向こう一ヶ月、いや二ヶ月の行動に支障をきたすだろう」

 

キャラに似合わず、真剣な様子を崩さない少年に双子の姉弟、および兄妹はおや?とたがいに顔を見合わせる。

 

 

 

「だからこそ、みんなの協力が欲しい」

 

「大切なことなのか?」

 

少年に呼ばれた四人の中でもっとも寡黙かつもっとも頼りになると満場一致で言われる黒髪の少年、司波達也が全員を代表して呼び出した少年、四方坂和人に聞く。

 

 

「もちろんだ」

 

達也の言葉に即答する和人を見て

 

「ふ~ん、まぁ話だけなら聞いてもよくってよ」

 

「正直、ちょっと興味あるし」

 

「文弥くん……ちょっと性格変わったわね」

 

他の三人、上から亜夜子、文弥、深雪も人数分用意された椅子に腰かけた。

 

 

「では、今から作戦会議を始めます」

 

和人が淡々とした声を静かな部屋に響かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正月、いかにして大人達から上手くお年玉を貰うかの作戦会議を!!」

 

 

 

 

「は~い、みんな解散解散」

 

「この世で一番無駄な時間でしたわ」

 

「お兄様、早く行きましょう」

 

「そうだな」

 

「ちょちょ!?ちょっと待ってってばみんなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

四人が踵を返して部屋に帰ろうとするのを和人は必死で呼びとめる。

 

「何ですかもう……」

 

「わたくし達暇じゃありませんの」

 

「何でみんなそんなドライなのさ!?」

 

深雪と亜夜子の軽蔑を隠そうともしない目に和人は更に必死に言い募る。

 

「ていうか、そもそもなんでそんな事考えたのさ」

 

「よくぞ聞いてくれた文弥くん!」

 

文弥の言葉に和人は我が意を得たりとここまでのいきさつを語り始める。

 

 

 

 

時は少しさかのぼる。

 

 

「む、むむむむ~」

 

四方坂和人は自室に割り当てられた部屋で、ひとり唸っていた。彼は今重大な危機に陥っていた。

 

 

「か、金が足らん……!」

 

年末年始は何かと金がいりようであるが、それは子供であっても例外ではない。

 

「どうする?新弾のパックも欲しいし、あ~そういやあれも欲しかったな、ゲームのあれだ、戦律のスト〇タス。あとガン〇ードのブルーレイディスクと~」

 

やっぱり金が足らんと頭を抱える和人であったが、彼はまだまだ子供の身、自分で働いて稼いでいるわけでもない為、彼の財政面は青木氏と葉山氏によって上手に管理されている。

まぁ俗にいうお小遣いというやつなのだが、この少年ホントに前世は一人暮らしだったのか?と疑いたくなるほど金遣いが荒く、一ヶ月間の彼の使用金額を見て真夜はしばし絶句し青木は文字通り顔が青くなり、葉山は逃げる和人をひっとらえ一時間みっちりと説教をしたのは記憶に新しい。

 

 

「まずい、今月のお小遣いもあと少し……これじゃどう考えても足らない」

 

それ以降、つつましく(?)暮らしてきた和人だが流石に財布が寒くなってきた頃合い、一体どうするかと頭をひねる和人であったが

 

「はっ!」

 

ここで和人に電流が走る……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、ここで俺は閃いたのさ……!」

 

「お年玉貰えばいいって?」

 

「イエス!」

 

文弥くん鋭い!っと全く嬉しくない和人の褒め言葉を受けながら文弥をはじめとした四人は顔を見合わせ……

 

 

 

「やっぱ帰るわ」

 

「お疲れ~」

 

「待って待って!?まだ帰んないで!?」

 

再び踵を返そうとする四人を今度は達也の裾を引っ張りながら和人は止める。

 

「ていうかそもそもそっちはお年玉とかないの!?」

 

和人の言葉にまず文弥と亜夜子がたがいに顔を見合わせる。

 

「お父様が渡そうとしているんですけど」

 

「毎年断ってるね」

 

「はぁ!?意味がわからないんですけど!?」

 

そして二人が言った言葉に和人はまるで化け物を見たかのような顔をする。

 

「僕達、黒羽の仕事で普通に御給金貰ってるし」

 

「その上、更にお金を貰うのは流石に気がひけますわ」

 

「け!なんだなんだいい子ぶりやがって!話になんねぇぜ!!」

 

「……」

 

「姉さん、とりあえずその振り上げた手はおろしてくれないかな?」

 

「話しなさい文弥!このボケは一度ぶん殴らないと懲りないのよ!」

 

和人が亜夜子によって年末大掃除のゴミになりそうな結末を文弥がどうにかこうにか止めている中、それを華麗にスルーし今度は達也と深雪の方を和人は向く。

 

「そっちは?お年玉とか欲しくない?てか欲しいでしょ?」

 

だがこれは多少無神経な発言だったかもしれない。

 

「和人……私達の家庭環境でお年玉が貰えるとでも?」

 

「申し訳ありませんでした」

 

深雪の言葉通り、考えてみれば母である深夜は既に他界、父親は直ぐに元の婚約者と再婚し碌に自宅にも帰ってこないという状況でお年玉などと言っている場合ではないのは自明の理である。流石にこれには和人も平謝りするほかなかった。

 

「でもいいのです。私にはお兄様がいますから、去年も変わりにお兄様からお年玉を頂きました」

 

「FLTで結構貰っているからな、少しでもお前の助けになればと思ったのだが」

 

「お兄様……」

 

「深雪……」

 

「じゃあ、俺も助けろよお兄様」

 

「和人?空気読みなさい?」

 

「ぐえええええええ!!」

 

が、二人の空気を作り出した司波兄妹に和人も辟易するが、それでも彼の余計なひと言は聞き逃さなかったのか深雪が彼の首を締めあげる。

 

「げほげほ!あ、そうだ」

 

「何を思いついたんだ?」

 

どうせ碌でも無い事だろ?という顔を全面に押し出しつつ達也が一応義理で聞いてやる。

 

 

「みゆきち以外はみんな稼いでいるんでしょ?ということは大人なわけだから

 

 

 

 

 

 

俺にお年玉頂戴?」

 

 

「「「……」」」

 

手を合わせる笑顔の和人に四人は慈愛に満ちた笑顔(感情の読みとれない仮面のような笑顔ともいう)で彼を見返し

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「死ね!コンドル野郎が!!」」」」

 

笑顔のまま彼をボコボコにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水波さん、次は理様の部屋に行ってきて要件とこれを渡して下さい」

 

「はい、白川夫人」

 

一方その頃、四葉家に数多くいるメイドを監督する立場であるメイド長白川夫人の指示を元に水波達メイドは屋敷内を奔走していた。

 

水波は毎年行っている慶春会の準備の一環で四葉の分家、新発田家の当主理の元に向かうよう指示を受ける。

 

「では、行って参ります」

 

「あぁ、後和人君が黒羽の御子息方と深雪お嬢様と一緒に三階の部屋にいるみたいなので見つけたらくぎを刺しといて下さいね」

 

「……夫人、私がですか?」

 

「えぇ、一番仲がいいようですから」

 

「私はコンドルの飼育係ではありませんが?」

 

「ほら、仲良しじゃないですか」

 

白川夫人の言葉にぶすっとしてしまった水波にくすくすと笑いをもらしながらもほら、急ぎなさいと先を促すのを忘れない白川夫人はメイドの鑑だ。

 

 

 

 

(釈然としません……)

 

確かに何の因果か屋敷内でも会うことは多いが、それを邪推されるのはなんというか釈然としない。水波はそんな事を考えながらもしっかりと仕事はこなす。

 

 

 

すると……

 

 

 

 

「……」

 

 

(うわ~マジかよ……)

 

廊下のど真ん中でうつぶせで倒れている人間がいた。多分……というか間違いなく彼だろう。

 

話題になった途端に姿を現す彼に運命とやらも感じかねない。当然凶運(ブトゥーム)だが

 

「コンドルさ~ん」

 

「……」

 

踏みつけてそのまま過ぎ去る事も考える水波だが、ひといじりしてから行けばいいかと考え直し結局倒れている和人に水波は声を変えるのだった。

 

が彼から返事は帰ってこない。死んでいるわけでは当然なく、気絶しているわけでもない。となれば……

 

「返事がない、ただの屍のようだ」

 

「死んでないよ!?」

 

「そうですよね。あなたはただのコンドルですもんね」

 

「だからコンドルでもな~い!」

 

やっぱりタヌキ寝入り?を決め込んでいた和人は水波の言葉にがばっと起き上がる。何故か身体が焦げくさいのは聞かないでおこう、どうせ黒羽家の二人や深雪様と達也様にボコられたに決まっているし

 

「で、何してるんです」

 

「これには色々と事情があってさ」

 

和人がかくかくしかじかと事情を説明すると

 

 

「バカですか」

 

「……むむ」

 

「バカですか」

 

「二回言わなくていいから!?」

 

水波に蔑んだ目で見られる。それに慣れを感じてしまった事に一抹の不安を感じながらも和人はまだ諦めるつもりはなかった。

 

「こうなったら、今いる大人達に事前交渉してやるぜ!」

 

「そうですか、頑張って下さいね」

 

「おう!」

 

水波は溜息を吐きながら、和人はサムズアップしながら言葉を交わし二人は歩きだす。

 

 

 

 

 

 

 

同じ方向に

 

「あの」

 

「なに?」

 

「なんでついてくるんです?訴えますよ?」

 

「訴えられんの俺!?いや、だって新発田さんとこ行くんでしょ?」

 

それがなにか、といいかけ和人の意図に気づき、水波は口をひくつかせる。

 

「まさか……」

 

「おう、最初は新発田さんとこから行こうと思っててね。ほら勝成さんとか奏太さんとか琴鳴さんとかとも久しぶりに会いたいし」

 

「え?」

 

肝心かなめの当主とは会った事無いんだけどねと言いながら和人はあっけらかんと笑うが、水波にしてみればそんなことよりもっと聞き逃せない事があった。

 

「勝成様方とお知り合い何ですか?」

 

「うん、一番よく遊ぶのは奏太さんだね」

 

「そ、そうですか」

 

いつの間に、と和人の謎の行動力に戦慄しながら水波はそれでも和人と並んで歩を進めた。

 

 

「真夜様には言わなかったんですか?」

 

「いや~前にネトゲでぼこぼこにしちゃって今機嫌悪くてさ、ちょっと言いづらいんだよね」

 

(もう、つっこまないようにしよう)

 

水波がそう心に決めた時、ようやく目的地の扉が見えてくる。

 

 

「と、ここ?」

 

「はい」

 

「よっしゃ、しっつれいしま~す!」

 

「ちょ!?」

 

ノックもせずに扉をあけた和人に慌てる水波だが

 

 

 

「お?なんだやっぱり和人か」

 

「全く、ノックぐらいしなさいよ」

 

「まぁそう言うな、よく来たな」

 

部屋の主達、上から堤奏太、堤琴鳴、そして四葉家の次期当主候補でもある新発田勝成が思いのほか友好的な態度だったのでがくっと肩の力が抜けた水波であった。

 

 

水波がそんな忙しいことになっているとは露知らず

 

「お三方とも久しぶりです。いきなりですいませんがちょっとお願いしたい事がありまして」

 

和人はこれまたずけずけと部屋の中央まで歩いて、いきなり本題を切り出す。

 

(あぁもう!この鳥野郎は!)

 

水波が四葉の女中として恥じない仕事をしようとしているのにこの少年はそれを全てぶち壊しにしてくれるのだからたまったものではない。

 

「あぁ、女中さんかい?すまないな気付かなくって」

 

「す、すいません勝成様、失礼いたします」

 

部屋に入るタイミングを完全に失ってしまった、水波に救いの手を差し伸べたのは勝成だった。水波は彼の言葉に大変恐縮しながらもようやく部屋に入る事が出来たのだった。

 

「あれ?水波ちゃんなんでさっさと入ってこなかったの?」

 

「くたばれ」

 

「いったい!?なんで足踏むんだよ!」

 

涙目で水波を睨む和人を軽~く受け流し、水波はコホンと咳払いを一つし居住まいを正す。それだけで水波は四葉の末端に連なる者として相応しい品格を持った者へと変貌する。

 

「勝成様、新発田理様に御当主様からへの言伝がございます。理様は今どちらに?」

 

「……メタモルフォーゼ?」

 

「おい」

 

「あだだだだだだだだ!!」

 

変貌したのだが和人によってあっという間にそれは剥がれ、水波はにこやかに和人の顔面にアイアンクローをかます。

 

「ごめんごめん!ほら水波ちゃんも真面目に出来るんだな~って思って」

 

「「「「お前が言うな」」」」

 

水波だけでなく、勝成や奏太、琴鳴まで同じ事を言い四人そろってスリッパで和人の頭をはたくのであった。

 

 

 

 

「かさねがさねすまない。父への言伝は確かに私から伝えさせていただこう」

 

「すいません。宜しくお願いします」

 

再び居住まいを正し、今度は邪魔が入らないよう、和人は堤兄妹によって拘束して貰いようやく水波はここに来た要件を済ますことができた。

 

「そういや、和人。お前俺らに用があるんだよな」

 

奏太が和人を羽交い絞めにしていたまま、先ほどの言葉を思い出しむぐむぐ言っている和人に聞く。

 

「むぐぐ~!」

 

「奏太、そのままじゃ彼喋れないわ」

 

「おっとすまんすまん」

 

ぱっと離された手から勢いよく離れ和人は大きく息をつく。

 

「はぁ~、生きてるって素晴らしい」

 

「んな大げさな」

 

「いやあなたがた容赦がなさすぎです。っとそうだそうだ、あの~つかぬことを御伺いしますが」

 

「「「?」」」

 

「正月に良くあるあの~落ちる玉の事なんですが」

 

オブラートに包むにしてももっとやりようがあるだろうに、和人のへたくそ過ぎる言い方に水波は苦笑する。

 

「玉?」

 

水波の推察通り、三人は何を言われたかわからず首をかしげる。

 

が……

 

 

「あぁ、お年玉の事か、大方俺の父親にお年玉をせびりに来たんだろう」

 

「え!?わかるんすか!」

 

勝成の読心術でも持っているんじゃないかと疑うほど的確過ぎる指摘に言われた和人だけでなく横で聞いていた水波も驚愕に目を見開いている。

 

「まぁな」

 

「さすがっす、勝成さん!」

 

本当に流石だと水波も感心しきりだ。新発田勝成の魔法才能は高いが精神干渉系への特性が高くなく、その上他の人間には真似できない独創的な魔法が使えるわけでもない。いわゆる『普通』に優れた魔法師であるが、そんな前評判を覆す素晴らしい洞察力だ。四葉の次期当主は深雪で決まりだと口さがない者達から囁かれているが、これは彼女にとって強力な対抗馬になるのではいだろうか?

 

「だが、父にそれを言うのは止めた方がいいだろうな」

 

「え?何でです」

 

「決まっているだろう?」

 

と水波は勝成の評価を上方修正した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「既に奏太と俺で交渉して撃沈済みだからだ」

 

「バカしかいないんですかここには」

 

のだがその評価はタワーオブテラーもビックリの超速度で落ちて行くのであった。ていうかいい歳こいて何してんだコイツらは

 

「な、なんだって!?」

 

「そうなんだよ~だから困ってんだよな、新しいギター欲しいのに」

 

「和人君、なんか心当たりはないだろうか、俺も少し欲しいのがあってな」

 

男三人が真剣にどうやってお年玉を貰うか論議している姿を見て

 

(あ~もうコイツら全員死ねばいいのに)

 

献身的な女中である水波がこう思っても仕方ない事だろう。そして水波は唯一その輪に加わっていない堤琴鳴の横に行き

 

「あの~止めなくていいんですか?」

 

と駄目もとで聞いてみるが

 

「私が言って止まるなら苦労しないわよ」

 

琴鳴にこう言われてしまえば水波としてもどうしようもない。

 

「それに……」

 

途切れるかと思った会話が琴鳴の方から続けられ水波がそちらの方を向く。

 

「あんな子供っぽい勝成さんも……素敵だなって」

 

(あぁそうか、この人も頭の中が春なんだ)

 

頬を朱に染め、いやんいやんと首を振りかねない勢いで身もだえしている琴鳴を見てこの場に自分の味方はいないと水波は再認識する羽目になったのだった。

 

「水波さん、あなたにも分かる時が来ますよ?」

 

「いえ、それは絶対にあり得ません」

 

最後にこう付け加えられた琴鳴の言葉に思わず行ってしまった水波を責める事は出来ないだろう。

 

 

一方、お年玉奪還チーム(通称:脳筋野郎Aチーム)である。和人、勝成、奏太はいたって真剣に議論を交わしていた。

 

「文弥坊っちゃんや亜夜子嬢ちゃんは?」

 

「それが、お年玉毎年断っているらしいんですよ」

 

「マジで!?」

 

「それは良くないな、大人はお年玉をあげたくてしょうがない生き物だ。それを断るのは彼等の為にならない」

 

なわきゃねぇだろ、とツッコミを入れる者はここにはいない。

 

「深雪さんはあの家庭環境だし……これ以上の増援は望めないな」

 

「いえ、勝成さん達がいてくれるだけで百人力っすよ!」

 

「そうだぜ!よし、作戦を練ろう。これは俺が考えた作戦何ですがね」

 

とまず奏太が提案した作戦を決行してみる事にした。

 

 

 

 

 

~作戦①おひねり作戦~

 

これは、奏太がミュージシャンとして活動している事から閃いた作戦であり、演奏を行っておひねりを貰うという作戦なのだが……

 

 

 

「うるせぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「準備の邪魔だろがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

女中は執事達、使用人勢から非難轟々だったため失敗してしまった。因みに琴鳴は歌う勝成を見て大興奮していた。

 

 

 

「じゃあこれはどうだろう」

 

 

 

~作戦②お賽銭作戦~

 

「お、ちょうど黒羽の旦那がいますぜ」

 

「よし、俺が行ってきますよ」

 

「気をつけろよ」

 

奏太が廊下を歩く黒羽貢を見つけ、和人が駆けだすのを勝成が見送った。これはお賽銭をくれといいながらお手製の箱にお金を集めるというものだ。

 

 

「貢さん」

 

「なんだ君か、ちょうどよかった。真夜さんを知らないか?呼び出しを受けたのだがどこかに行っているようでな」

 

「いや~しりませんね、それより」

 

ずいっと和人は木箱を貢の前に出す。

 

「お賽銭を下さいな」

 

貢はそれで全てを察し、懐に手を入れる。出すのは財布

 

「任せろ、毒蜂を目一杯くれてやる」

 

「!?」

 

ではなく、細い針。

 

「くたばれ小僧!」

 

「ぎゃあああああああああああああ!」

 

「「和人ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

まぁ速攻でばれて失敗してしまった。因みに毒蜂は和人を襲う寸前でどうしてこうなった?と言わんばかりの顔をしながら展開された水波の対物障壁によって防がれた。

 

 

 

 

 

「く、仕方ない。こうなったら最終手段だ」

 

「最終手段?」

 

「もう無理矢理貰う」

 

それもう手段でも何でもないじゃん。と何故かここまで付き合わされている水波が思うがどうせシカトされると思い口には出していない。何故こう言う時に限って白川夫人から呼び出しがないのだろう?なんか意図的な物を感じるが考え過ぎか?

 

「よし、もうそこらへんの部屋片っ端から開けて交渉するしかない。なんなら土下座も辞さない覚悟!」

 

「背に腹は代えられん、行くぞ!」

 

「「「おぉ!」」」

 

威勢だけはいい三人はとりあえず近場のドアを思いっきり乱暴に開け

 

 

「おらぁぁぁぁ!!とりあえず有り金ぜんぶよこせやコラァァァ!」

 

Q.交渉って?

 

A.あぁ!それってハネクリボー?

 

 

交渉する気がまるでない彼等の言葉と共に開け放たれた部屋には確かに人がいた。それも子供ではなく大人がいたことからここまでは彼等の企みは成功したと言える。

 

 

 

ただそれが……

 

 

「……あら」

 

「げ……ま、真夜さん?」

 

着替え中であったのだろう。何人かの女中を控えさせた四葉真夜でなければ、ただ幸運?な事に彼女は着替え始めたばかりのようでちょうど今衣服に手をかけようとしていた時であり、着衣のはだけなどは一切ない。

 

が、それと出歯亀を許すかどうかは話は別だ。

 

「と、当主様。こ、これは違うんです……」

 

「そ、そそそそそう。これには事情が」

 

「あらら~、私ってばかつあげされてるのかしら?」

 

困ったわね~と頬に手をあてているが真夜の目は鋭く、そして冷たく馬鹿三人を見据えていた。

 

(お、おおおおおおい!やばいぞ和人!奏太なんか泡吹いて気絶してしまった!)

 

(ま、まままま任せてくだじゃい、僕が隙を作ります!)

 

盛大に噛みながら、和人が一歩前に出る。

 

「え~お年玉とかけまして、この場を見逃してと説きます」

 

「……」

 

「……」

 

真夜と和人の視線が交差する。

 

「……その心は?」

 

「どちらも貰うと嬉しいでしょう」

 

「あら、上手ね~」

 

「あ、あはははは~」

 

「うふふふふ」

 

和人のとんちに真夜が感心したように頷く。しばし、二人の笑い声が部屋に響き渡ったが

 

 

 

 

 

 

「でもそれでオチがつくと思ったら大間違いよ」

 

「ですよねぇぇぇぇ!!」

 

数秒後、三人の悲鳴が響き渡る事になるのであった。ちゃんちゃん♪

 

 

 

 

 

 

 

 

正月の日、真夜からお年玉を貰い狂喜乱舞する少年がいたのだがここで語る事ではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






~おまけ~

真夜「葉山さん」

葉山「はい」

真夜「和人にあげるお年玉ってこんくらいでいいのかしら?」

葉山「え”?」

真夜「……何よ」

葉山「いえ、まさか本当にあげるとは思わず」

真夜「和人がしつこいったらなくてね~」

葉山「どれどれ……奥様、和人に家でもプレゼントするのですか?」

真夜「え?」

葉山「小切手でお年玉渡す人が何処にいますか!」

真夜「え、駄目なの?だって現金入れるなんて面倒じゃない」

葉山「様式美です!それ以前に多すぎます!」

葉山(なんか奥様も和人に似てきてしまったな……)

この後、分家の当主を交えて緊急会議が開かれたという……






お年玉を貰う立場からあげる立場になってはや数年……

あれほど楽しみだった正月が一気に楽しみじゃなくなりましたwww(オイ
親戚が多いご家庭は大変だろうな~と思いつつぽち袋にお札を入れる作業をする今日この頃です。


みなさんこんなどうしようもない大人にならないようにしましょうwww

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