章ごとにサブタイトルのパターンを統一しようと思っているのですがその結果サブタイトル決めるのに苦戦しまくるという……
激闘の後(白目)
ブランシェ改め、ツカの爪団との激闘からしばらく経ち、達也達にとって平和といってもいい穏やかな日常が戻ってきた。
「そう!その時、ダブルヒールトリガーからのエコーオブネメシスで一さんから勝利を収めたのだ……!」
「……?」
「えっと、一体誰に言ってるんですか?」
「気にせんといて、お二人さん」
そんな平穏な日常の中、日が傾き始めた道を行く制服姿の男女がいた。
女子の名は光井ほのかと北山雫、男子の名は四方坂和人、非常に珍しい組み合わせだが待ち合わせしていたというわけでなく女性陣は部活帰り、和人は遊び帰りにたまたま会ったという形だ。
「ここにエリカ氏と達也君辺りがいれば冒険でしょでしょ♪なんだが」
「……誰が対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース?」
おや?この雫ちゃん、なかなか出来おる。
「いやいや?もしかしたら未来から未来人かもしんないよ~?」
「……」
「雫!?なんでいきなりCADを和人君に向けるの!?」
「ほのかはいいね、みくるビームで」
「意味わかんないよ!?」
いや、本当この二人仲いいっすね~
「和人君も見てないでどうにかしてよ!」
おっと、申し訳ないでござる。よし、ここは任せておけい!
「雫ちゃん、72言ってるのかわからないぜwww」
「……殺す」
その日、ひとりの少年が空を舞った……
「いや~、人って魔法がなくても飛べるんだね」
「もう一回飛ぶ?」
「すいませんでした」
眼が据わった雫ちゃんが怖すぎるので素直に謝罪する、ほのかちゃんも苦笑するだけで助けてはくれないようです。
「もう、あまり雫をからかわないでよ」
「ごめんごめん、反応が面白いからつい~」
まだ不機嫌オーラが消えていない雫ちゃんに聞こえないようにこっそりほのかちゃんが耳打ちしてくるが、俺の言葉を聞いて彼女の眼も雫ちゃんと同じ半眼になる。
「つい~じゃないよ、もう」
「あ、雫ちゃ~ん。はいこれあげる」
「……なに?」
ちょっと、言ったそばから何するつもりなの!?とほのかが戦々恐々とするが予想に反して和人が差し出したのはタッパーに入った羊羹だった。
「これって羊羹?」
「うむ、一さんから貰ったんだけど、ちょっと諸事情あってあまり食べられないから御裾分け~あ、ほのかちゃんもどうぞ」
「あ、どうも」
最近和菓子作りにはまっているらしい司一さんから貰った羊羹を差し出すとほのかちゃんはあっさり受け取ってくれたが、雫ちゃんは警戒するように此方を見る。
「何を企んでいる?」
「いやだな~僕がそんな人間に見える?」
あれれ~?二人ともその沈黙と冷めた目はなんだい?なぜかとっても心が痛くなってきたよwww
「まぁ、何かあったらまた飛ばせばいいか」
なにやら非常に恐ろしい事をツイートしながら雫ちゃんも羊羹を受け取り、一欠片齧ると眠そうな目がまん丸に広がる。
「美味しい……」
「ホントだ美味しい!くどくない上品な甘さというか」
大好評な羊羹を俺も齧ると、確かに牛乳が欲しくなる喉にしつこく残る感じがなくすっきりとそれでいてしっかりとした特有の甘みが口内全体に広がる。
「相変わらずあの人料理上手すぎだろ」
本当に俺の魂の一部なのか不安になるわ、なんか俺より全然人間出来てるんですけど、なんか凄い泣きたい。
「……もっと」
袖をくいっと引かれながら雫ちゃんにねだられる(身長の関係上、上目づかいになる)がこれを無意識でやっているなら、なかなか彼女も魔性の女と呼べるだろう。
まぁ中身三十路のおっさんである俺には通用しないがな!
「はいはい、たんとお食べ~」
「うん、美味しい」
機嫌が直ったようでなによりである。ん?なんだいほのかちゃん、その『うわ、食べ物で釣ったよこの男』みたいな眼は?
仕方ないだろこんな方法しか知んないんだよ!経験不足ですいません!
「ほら、ほのかちゃんもおかわりあるで~」
「あ、ありがとう。でもこんな食べちゃって大丈夫なの?」
タッパーの羊羹は元々一人分しか入っていなかったのだが、それを三人で食べているためもう残りは非常に少なくなっていた。
「大丈夫大丈夫~てかむしろ全部食べてくれていいっすよ~」
「そうなの?」
「うん、てかもし家の人にばれたら……」
怒られてしまうのだろうか?意外に厳しい家なんだな~とほのかは思っていたが
「家の食卓は一週間羊羹になる」
この言葉でやっぱよくわかんないな~と思考を放棄するほのかなのであった。
「御馳走様でした」
「御馳走様です」
「はい、御粗末さん。っても俺が作ったわけじゃないが」
俺が渡した羊羹を三人で分け合って食べた後、しばし沈黙が下りる。
「そういや気になったんだけど」
「?」
「ほのかちゃんってもしかして達也君のこと好き?」
「ごほっ!?な、なななななな何を!?」
あ~確信はなかったけどこの反応は完全に当たりですわ。ほのかちゃんは完全に不意打ちだったのか盛大に咳き込んでしまい雫ちゃんに背中をさすって貰っている。
「和人……」
「おう?」
「御名答」
「雫ぅ!」
助けて貰えると思った親友のまさかの裏切りにほのかちゃんは涙目で思わず振り返る。
「ほのか、彼は達也さんと仲がいい。ここは味方につけておくべき」
「で、でも」
「俺もほのかちゃんを応援しよう」
「本当に?」
顔を朱に染めながらおずおずと俺に言う姿を見れば、どんな鈍くてもあぁこりゃ本気だわと気付くだろう。
「おうともさ!そろそろ達也君もみゆきち以外の女の子に目を向けるべきだと思うしね」
実の妹と結婚したくば千葉出身になってから出直すべきですね。うん
「それは確かに」
「でも深雪みたいな完璧すぎる女の子に勝てる気しないよ……」
みゆきちの名を聞いてほのかちゃんのテンションが一気に下がる。というより現実に帰ってくると言った方が正しいかな
「完璧ねぇ」
「だってそうでしょ?」
「いや~俺が知るみゆきちは完璧とは程遠いんだが」
俺が知る彼女は、フランベして火災報知機を鳴らしてしまい、慌てて消火しようとしたからか魔法が暴走して燃え上がる炎をそのまま凍らせてしまい愉快なオブジェを作ってしまうような、うっかりお嬢様なんだが
因みに俺はフォローのつもりでその氷炎を加工し、クリスマスツリーにして飾ったのだがみゆきちにとってはトドメになってしまったようで半泣きの彼女に二―ドロップを喰らう羽目になったのは秘密だ。
「え?」
「なるほど」
絶句するほのかちゃんの代わりなのか雫ちゃんが納得いったように頷いたと思うと俺を指さした。
「それはあなたが原因」
「俺?」
「そう、例えば100点の人間がいたとする。そして近くに-100点の人間がいたとする」
雫ちゃんが右手の人差し指を立て軽く振ると、今度は左手の人差し指を立てる。
そしてそれぞれの指を軽く合わせる。
「合わせてしまうと、0点になってしまうでしょ?」
「誰が-100点の人間か」
もっと他に言いようがあったと思うの。
「まぁそれはともかく」
人をあれだけ貶めといて脇に置かれるというね、屈辱である。
「達也さんがどんな人が好きなのか知ってる?」
「う~ん」
そう言われるとこっちとしても困ってしまう。なまじ彼の事情を知っているだけにそういう感情が乏しい事をどう言ったものか
ほのかちゃんも期待した目で見ている以上、応えてあげなければ男が廃るというものである。
あ、そういえば
「好きとは違うかも知んないけど、これをやれば関心は持って貰えるかも」
「何?」
二人に最近、ていうか在る人から聞いた話を言うと
「うん、やろう」
「えぇ!?」
当事者であるほのかちゃんより先に雫ちゃんが頷く。やる気は満々のようですな。達也君みたいな人はまず興味を持って貰う事が大事だと思うからね。
決して面白そうだからとかではないよ?うん
「大丈夫、ほのかならきっとうまくいく」
「いや、これうまく行っても困るんだけど」
雫ちゃんが励ましているがほのかちゃんは微妙な顔を崩さない。ていうかこれ雫ちゃんわかっててやってない?俺の気のせい?
「お兄様、今日はありがとうございました」
「いや、気にすることはない」
陽が本格的に沈み始め、夜の帳が降り始めた道を在る兄妹が歩いていた。
「いい物は見つかったか?深雪」
「お兄様に見繕って頂いたものは全て私にとって宝物です」
相変わらずの妹、深雪の言葉に兄である達也は苦笑で応えたがその苦笑には優しげな雰囲気が多分に含まれている。
あの時、ありえない醜態を晒してしまった深雪は大層落ち込んでいた。
自宅限定ではあるがふとした拍子に凹んでいるのを達也は何度も見かけている。達也としても妹がこの調子では非常に困ってしまう。
といってもどうすれば妹の機嫌が直るのか有効な選択が思いつかない達也が深雪に聞いてみた所、彼女が提案してきたのがショッピングだった。
こんなもんでいいのかと思わないでもなかったが深雪の顔を見てきっと良かったのだろうと思う事にし正面を見ると
「ほのか?珍しいわねこんな時間に」
「あ、あはは~」
制服姿のままのほのかが立っていた。時間としてはそんなにおかしくはないが普通ではないのは確かだ、何かあったのかと深雪が心配そうに声をかける。
(向こうに二人いるな)
『眼』を見て辺りを確認した達也の知覚に二つの存在が引っ掛かる。一人は雫だろうがもう一人がわからない、が何故かとても嫌な予感のする達也であった。
「何かあったの?」
「そ、その~深雪ごめん!」
「?」
突如の謝罪の意味が分からず首をかしげる深雪だったが、ほのかは何故かこちらに近づいてくる。ものすごく嫌な予感がする達也は正直逃げたかったが、意外に素早いほのかに目の前まで接近を許してしまった。
そして
「お、おにいさま~、メガネがほのかをいじめます~」
「」
「」
その予感が正解だった事に達也は少し泣きたくなった。近くでは深雪が顔を真っ赤にして絶句している。
「ほ、ほほほほほほのか?ど、どこでそれを……?」
どうにか深雪が平静を装い(?)ほのかに問いただすが呂律も回っておらず装う事すら出来ていない。
それは、つい先日深雪が晒した大醜態の一部であり達也はそれにより凹んでしまった彼女をどうにかしてなだめていたのにこれですべて台無しである。
「お、おいほのか」
「う、うえぇぇぇぇん」
んな棒読みで泣かれても、と達也は本気で泣かれるよりある意味困った状況になってしまった。
そもそもこの事を知っているのは、当人たち以外には司一ぐらいしかいない、そして最近彼と会った人物がいるではないか
(なるほど、あいつか)
「深雪、その道の角だ」
わからなかった存在に合点がいき、達也は深雪に場所を教える。深雪は魔法も使わずに一気に角まで走ると
「げぇ!みゆきち速っ!」
案の定そこには雫ともう一人、間違いなく今回『も』下手人の和人がいた。
「なるほど、あなたですか」
「あいだだだだだだだ!!」
深雪は逃げようとした和人の頭をむんずと掴みそのままギリギリと締めあげる、いわゆるアイアインクローという奴だ。
流石は血縁、いつかくらった真夜さんのアイアンクローに匹敵する痛さだ。
「し、雫ちゃん、っていねぇし!」
視界のほぼすべてがみゆきちの手で覆われている中でも彼女を探すと、ちゃっかしほのかちゃんの隣を陣取っているのを見つける。
ちくしょう!裏切られた!
「消し飛べ、この鳥野郎ォォォォォォォ!」
その日、ある可憐な少女の手によって少年は再び空に舞ったという。
トーラスシルバーより先に飛行術式(物理)を開発した主人公sugeeeee!みたいな感じの主人公age回です
入学編書いてて、達也と深雪以外の原作キャラと全然絡んでねぇ!という事に気づき数話くらい他のキャラとの絡みを交えつつ本格的に九校戦に進んで行きたいと思っていますので宜しくお願いします。