四葉の影騎士と呼ばれたい男   作:DEAK

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魔法科高校生と襲撃

八雲の寺を訪れ、思わぬダメージを喰らった翌日、七草真由美生徒会長と有志同盟の討論会が開かれる事となったのだが

 

元々、具体性の伴わない主張しか出来なかった者たちだ。討論会という公の場を持った所でまともな弁論が出来るかは疑わしい。

 

その証拠に討論会は開始数十分で七草会長の演説会となりつつあった。

 

そして、最期に一科生、二科生の差別意識の撤廃という大胆な目標を掲げ会場は大きな拍手に包まれた。

 

ここで終わればめでたいのだが、そうはいかないのが世の常と言う奴だ。

 

「っ!?」

 

最初に気づいたのは服部、次いで達也、真由美の順で窓を見上げる刹那、轟音が鳴り響く。

 

「何事だ!?」

 

「実技等の方で火災です!」

 

摩利の言葉に近くにいた風紀委員が応えた。その視線の先には混乱に乗じて抜けだそうとしている同盟メンバーの姿があった。

 

「ちっ、全員確保しろ!」

 

普段訓練などしていないだろうに達也を含めた風紀委員全員が統率された動きで迅速にメンバーを捕える。

 

「!?みんな離れて!窓から何かがっ!」

 

と真由美が切羽詰まった声で窓の一つを指さす。達也がつられて見ると、窓から何かが投げ込まれようとしている所だった。

 

(ガス弾か!?)

 

達也がそう推測するがそれは無意味と化した。

 

何故なら、投げ込まれたそれは窓を突破出来ず、そのまま跳ね返されてしまったからだ。壁の向こうで悲鳴が聞こえてくる。

 

(窓に硬化魔法をかけていたのか、しかし一体誰が?)

 

すると今度はガスマスクとライフルで武装した集団が行動に乗り込んできた。

 

「大人しくぐはっ!?」

 

「い、一体……がはっ!?」

 

が、まるで来るのがわかっていたかのような正確なエアブリッドにより悉く無効化されてしまった、見事な手際だ。

 

「流石ね、はんぞー君」

 

「私の仕事がなくなってしまったな」

 

真由美はそれを行った人物、服部にねぎらいの言葉をかけ、摩利は少し拗ねた色をにじませながらそれでも笑顔で言う。

 

服部はそれらに無言で頭を下げて応えた後

 

「しかし、他にも侵入している者はいる筈です。私は実験棟の方に向かいますのであとはよろしくお願いします」

 

こう繋げ、踵を返そうとした。

 

「えぇ、それはいいけどなんで実験棟?」

 

がその背中に真由美から疑問を投げかけられ服部は顔だけをそちらに向けた。

 

「あそこには重要な装置や試料があります。実技等には型遅れのCADしかない事を考えると、あそこは陽動でしょう」

 

「つまり、本命は実験棟だと?」

 

服部の説明に、摩利が補足する形で話に加わる。

 

「私はそう考えてます。後は持ち出し不可能な文献のある図書館でしょうか、そちらの方にも人員をお願いできますか?」

 

「あぁ任せておけ」

 

摩利の言葉に服部は頷くと、今度こそ講堂から走り去って行った。

 

「服部にいい所すべて持ってかれてしまったな」

 

「生徒会長の威厳が……」

 

摩利と真由美が冗談交じりで言葉を交わしている中、達也は服部が去って行った出口をじっと見ていた。

 

(使っている魔法自体は単純だが、その初動、動きの先読みが圧倒的に速い)

 

あれは最早先読みと言うより未来予知と言われた方がしっくりくる。それほどまでに正確かつ合理的な魔法使用であった。あれほどの技術を造作もなく行えるとするならば

 

(一高最強というのも頷けるな)

 

「委員長、私は実技等の方を、陽動とはいえ侵入者がいないとは限りませんので」

 

「無理はしないでね」

 

「お兄様!私もお供します」

 

達也は服部への考察をひとまず打ち切り真由美の言葉を背に受けながら妹を連れて実技等へと向かう事にした。

 

 

 

 

「随分と派手にやっているな」

 

一足先に講堂を出た服部が見たのはいたるところで交戦している生徒とテロリストの姿だった。

 

このまま実験棟に迎えれば僥倖だったのだが

 

(刑部、右前方の三人がお前に気づいたぞ)

 

服部の中にいる存在、『仁』が警告を発した通りに此方に気づいたテロリストが二人は銃口を、一人はCADを服部に向けてきた。

 

服部は討論会中、仁に周りの警戒をさせていた。それゆえに敵の侵入および狙いを先んじて発見する事が出来たのだ。

 

(刑部、真ん中の奴が発砲してくるぞ。狙いは頭部、だがあの構えだとずれて左目辺りに着弾するな)

 

それでも命中させてくるだけ大したものだとどこか他人事のように服部は考えていた。

 

(発砲まであと三秒、二、一、今!)

 

仁の合図で服部は頭を右に少し揺らす。彼の言うとおり銃弾は先ほどまで服部の左目があった場所を通り過ぎた。

 

(ハイパワーライフルか!?)

 

(いやまがいもんだな、だがそれなりに貫徹力は高いぞ、障壁魔法が得意でないお前には厄介だな)

 

(当たらなければいいだけの話だ)

 

確かにと笑う仁の言葉を最後に脳内の会話を打ち切った服部は更に距離を詰めるがまだ充分ではない。

 

(左の奴が撃ってくる。機関銃だな、だがお前の膝から下には銃弾が来ない。俺が合図したら転がれ、二回転半転がったら直ぐに右に跳躍、さっきのハイパワーライフルもどきをまた撃ってくるぞ)

 

仁の言葉通り、服部が飛び込むように前方に転がる刹那、けたたましい騒音と共に機関銃の掃討が服部の頭上を通り過ぎる。その成果を確認する間もなく、服部はあらかじめ設定しておいた跳躍の術式で右に飛ぶ。ライフルの銃弾が服部の髪を数本消し飛ばすが本人を傷つけるには至らなかった。

 

「銃弾をかわした!?それも一回や二回じゃないぞ!?」

 

「あいつ本当に人間か!?」

 

むしろ焦燥感に駆られたのはテロリストたちの方だ。魔法師が銃弾を防ぐ術があるのは知っている。だが、それは魔法を使った上での話だ。見た所あの男はさっきの跳躍以外魔法を使っていない。それはつまり自身の身体能力だけで銃弾をかわした事になるがそんなものは人間の所業ではない。

 

テロリストたちは目の前に迫りくる存在が古今無双の怪物に見えていた。

 

「くそっ!」

 

ようやく構築し終えた魔法を仲間が放つが、彼等は分かり切っていた。こんなものはきっと通用しないだろうと。

 

彼らの予想通り、服部はそれを軽く無効化して見せるとあっという間に彼等の意識を刈り取った。

 

 

 

 

「ふぅ」

 

(ひゅ~大したもんだぜ刑部)

 

はやし立てる仁に服部は苦笑で返すと、表情を引き締め実験棟に向かう。

 

(にしても魔法をここまで節約する事はないんじゃないのか?)

 

仁の言う通り、先ほどの戦闘は広範囲に作用する魔法を一発放てればそれで済む話であり、服部はむしろそのような魔法の方が得意の筈だ。危険を冒して接近戦を挑む必要はなかったのだ。

 

(戦闘はここだけとは限らないからな)

 

(確かに実験棟には少なくない人員が投入されているようだが)

 

だがそれだけでは魔法を温存する理由にはならない。服部は一科生の中では想子(サイオン)量が多い方ではない。むしろ少ないとすら言える。だがそれでも実験棟を制圧するには充分過ぎる筈だ。

 

(お前まさか……)

 

(まぁそういう事だ)

 

仁は少し考え理由に思い至ると、服部は苦笑いでそれを肯定した。

 

(無茶しやがる。まぁいいがな)

 

(すまん)

 

(なぁに、お前は俺、俺はお前、お前がそう思ったんなら俺もそう思ったってことだ。一発かましてやろうぜ刑部!)

 

(あぁ!)

 

二人?は銃撃と喧騒さめやらぬ実験棟へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

数十分後、風紀委員と職員達が実験棟に突入し見たものは、何者かにより悉く無力化されたテロリスト達であり、服部の姿はすでに何処にもなかったという。

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

達也「さて、図書館に向かうか、それとも実験棟で服部先輩の救援に向かうか」

 

深雪「服部副会長に応援は必要ないと思われますが」

 

小野遥(以下遥)「彼らの狙いは図書館よ」

 

レオ「遥ちゃん!?」

 

達也「事情をお聞きしても?」

 

遥「構わないわ、そのかわり壬生さんを助けて欲しいの!」

 

達也「壬生って誰ですか?」

 

遥「なにそれこわい」

 

達也「え?」

 

遥「え?」

 

 

「「「「……」」」」

 

遥「ヤング弁当の子よ」

 

達也「あぁ」

 

エリカ(ヤング弁当?)

 

深雪(ヤング弁当って何かしら?)

 

レオ(腹減った)

 

 

こんなやりとりがあったとか





服部無双とか一体誰が求めてるんだとか何回も考えて、まぁおまけで書くならいいかと書いてたらいつの間にか本来書く筈だった話を食ってしまったというwww

いや、凄く筆が乗ってしまって……(汗

描写不足でよくわからんと言う方はアルドノアゼロのタルシスみたいな未来予知で戦っていますよ~って考えて貰えればと思います

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