四葉の影騎士と呼ばれたい男   作:DEAK

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どうにも筆が乗らないんで困ったときの黒羽姉弟!


魔法科高校生と普通科高校生の文化祭他

~魔法科高校生と普通科高校生の邂逅~

 

CADとは現代の魔法師において必須とも言えるツールであり、杖や魔法書、呪符に比べ高速かつ精密な魔法発動を可能にした。

 

がそのメンテナンスも比例するように複雑であり一般の魔法師は定期的にメーカーなどに定期メンテナンスを依頼している。

 

魔法科高校では学校に専用の設備がありそこでCADのメンテナンスをするのが普通なのだが、司波家では一流CADメーカーに勝るとも劣らないCAD調整設備が整っていた。

 

「お兄様」

 

夕食後、地下のCAD調整設備室である書物を読んでいた達也は扉越しに聞こえてきた同居人の声に調整の手を止めた。

 

「深雪?」

 

「申し訳ありません。CADの調整をお願いしたいのですが」

 

静かに扉を開け遠慮がちに入ってきた深雪の言葉に達也は思わず苦笑してしまう。そんなに謙虚にならずとも達也にとって深雪に付随する事の全ては他の全てにおいて優先される。

 

「構わないよ」

 

「ありがとうございます!」

 

異性であれば虜にせずにはいられない程の魅力(魔力と言い換えてもいい)を秘めた深雪の笑顔に達也もいとおしげに軽く微笑んだ。

 

「お兄様?何かお読みになっていたのですか?」

 

深雪は目ざとく達也の前に開かれていた本を見つける。達也としても見られて困るわけではなかったのでそのまま深雪に渡す。

 

「これは、四葉の研究記録ですか?」

 

「というより、そこにいた研究員の日記だ」

 

達也が暇つぶしかつ気分転換として読んでいたのは、四葉が四の研究所の実験動物だった頃の研究員の日記である。とりとめのない事しか書いておらず少なくとも達也が外に持ち出しても問題ないと判断された程度の書物だ。

 

「それによると、過去に研究所から脱走した検体がいたらしい」

 

「脱走ですか?」

 

オウム返しに聞いてくる深雪の目線に合わせ達也も彼女の持っている書物を見る。

 

「あぁ、結局見つからなかったらしいが」

 

「そんな方もいたんですね」

 

まぁどの道今は生きていないだろう。本当にただの暇つぶしだったが意外に役目を果たしてくれた。

 

「それで、CADの調整と言っていたが」

 

達也の言葉に深雪はそうでした、と書物を丁寧に彼に返す。

 

「実は起動式の入れ替えをお願いしたくて」

 

「後、今日の夕飯はニラ玉をお願いしたくて」

 

「……」

 

な・ぜ・い・る?

 

 

 

 

 

 

「痛い痛い痛い」

 

何故二人して無言で蹴ってくるのか

 

「一体どうやって入って来たんですか!」

 

「いや普通にドアからだけど」

 

深雪ちゃんは薄着だからか自分の身体を掻き抱くように引き寄せている。達也君が自分の上着をかけてあげていた、相変わらず過保護だね

 

「あれ?今日行くよって言ってたよね?」

 

「いや聞いてはいたが、まぁよく来てくれた」

 

まさか地下まで入ってくるとは思っていなかった達也は久しぶりに会っても変わらず破天荒な乱入者四方坂和人に溜息と共にとりあえず社交辞令としてあいさつしておいた。

 

「和人?一体どこに、あぁここにいたんですか」

 

すると、和人を探していたのだろう。ラフな格好の穂波がドアから顔だけを覗かせ部屋の中を見た。

 

「桜井さん、お久しぶりです」

 

「よく来て下さいました」

 

「俺と対応が違いすぎる件」

 

自分の胸に手を置いて考えてみろと喉まで出かかった司波兄妹だが、どうせ不毛だろうと思いなおしギリギリの所で引っ込めた。

 

「ごめんなさいね。少し目を離した隙にいなくなってて」

 

「気にしちゃ駄目っすよ?穂波さん」

 

「だ・か・ら!何故あなたが言うんですか!」

 

深雪が高校生の女の子とは思えないほど鋭い蹴りを和人に見舞う。

 

「ちょwwwロープロープwww」

 

言葉だけなら余裕そうだが若干涙目な辺り相当痛いのだろう、そろそろ止めるべきかと達也が思案していると、達也の知覚に引っ掛かるものがあった。

 

「誰か家の前にいるな」

 

「あぁ、もしかしたら黒羽のお二人かもしれませんね」

 

達也が見えない筈の家の外の存在を感知した事には一切触れず穂波はありえる可能性で一番高いものを言ってみた。

 

危険な存在なら自分も気づく筈だし、そもそも達也がここでじっとしている筈がない。

 

因みに水波は学業が忙しく今日はこれないそうな

 

「お、じゃあ迎えに行ってくるぜ!」

 

「あっ!ちょっと待ちなさい!」

 

これ幸いとばかりに和人は深雪のローキック地獄から抜け出し、深雪が止めるのも聞かずに玄関へと走って行ってしまった。

 

ちらりと穂波を見ると、仕方がないと肩をすくめるだけだったので達也も苦笑しながらむくれている妹をなだめ和人の後を追った。

 

 

 

「いらっしゃ……い?」

 

「あら?達也さんと深雪お姉様はいらっしゃいませんの?」

 

「……」

 

勝手知ったる我が家のように(実際何度も来た事あるし)ドアを開け来訪者を出迎えると薄く笑みを浮かべながら俺の後ろを窺うように見る亜夜子ちゃんと

 

 

あれ文弥君だよね?

 

彼はずっとうつむいてて此方を見ない

 

「なんでヤミちゃんの格好してんの?」

 

文弥君本人としては非常に不本意であり嫌がっていた筈の女装をなぜかした状態でここにいたのだ。

 

俺が思わず出た言葉に文弥君はやっと顔を上げ此方を睨んでくる。

 

俺なんかやったっけ?

 

「誰のせいだと……っ!」

 

恨めしな文弥君の口調に首をひねる。ん~?心当たりが……

 

 

 

 

 

あっ……もしかしてアレ?

 

アレ=男子高校生とスカート参照

 

理由に思い至り俺はようやく気付く事になる。

 

「和人さん?達也さんと深雪お姉様はどちらに?」

 

笑みを浮かべる亜夜子ちゃんの目は全く笑っていないという事に

 

やべぇ、これはやべぇぜ……

 

「せ、先日は誠に申し訳ありませんでした」

 

「……」

 

その目を見てられず亜夜子ちゃんに向かって頭を下げるが彼女は何も言わない。

 

「反省しております」

 

「ふぅ~」

 

くそ、溜息つきおったぞ!まだもうひと押し必要か、ならば!

 

 

 

 

「反省してますの」

 

「……」

 

ふ、空気が変わったな、ここで押し切る!文弥君が青い顔してるのは気のせいと言う事にしておこう。

 

「二度としないですの」

 

「ふ~ん?」

 

よし!あとひといきだ!

 

「ですのでですのがですのですの?」

 

「……」

 

決まった……これは完全に決まった……!

 

 

 

 

「和人さん?顔を上げて下さいまし」

 

ほらみろ!やっぱり誠意ってものは伝わるんだよ!文弥君だってほら!

 

あれ?文弥君なんで手で十字を切ってるの?

 

 

 

俺がようやっと亜夜子ちゃんの方を見ると、何故か彼女は俺から距離をとりCADを操作していた。

 

「疾ッ!」

 

俺がなに?と思う間もなく亜夜子ちゃんが眼前に迫り腹部に衝撃と言うのも生ぬるい無常なる一撃が叩きこまれた。

 

「げふっ!?」

 

リアルに一回転しながら俺は司波家の廊下に倒れ伏した。

 

後に聞いた事だが、亜夜子ちゃんは得意魔法『擬似瞬間移動』を発動した後、打撃の瞬間に自らの関節の位置を固定する硬化魔法を使っていたらしい。

これにより自らの体重がそのまま威力となり、非力な女性でも十分なパワーを出せるという画期的な魔法だとか

 

 

 

 

 

それ、剛体術じゃね?

 

まさかのグラップラー亜夜子爆誕に戦慄する間もなく今の俺は地に沈んでいるわけだが

 

 

 

 

「なんだ!?なんか凄い音がしたが」

 

物音を聞きつけ一番にやってきた達也が見た光景は

 

「こんばんわ達也さん、お会いできて光栄ですわ」

 

にっこりとほほ笑む亜夜子と顔をひきつらせている文弥(何故か女装していた)と目を回して気絶している和人の姿だった。

 

 

 

 

「よく来たな、二人とも既に食事の準備は出来てるぞ」

 

色々ツッコミどころはあったがどうせ和人が亜夜子をからかった結果だろうとあたりをつけ全てを丸投げする事にした。

 

正直めんどくさかったとも言う。

 

 

 

 

 

まぁなにはともあれ、司波家での晩餐会は滞りなく行われたとだけ記しておく。

 

 

 

 

 

 

~魔法科高校生と普通科高校生の邂逅②~

 

 

時は少々遡り、黒羽姉弟が司波家を訪れる数十分前の事だ。

 

 

「あの、姉さん?」

 

「何かしら?」

 

文弥が恐る恐る目の前の姉、亜夜子に声をかける、それに対し亜夜子は不自然なまでに上機嫌に答えた。

 

「本当に僕この格好で達也兄さんの家にいくの?」

 

「あら?」

 

文弥の言葉に亜夜子はこれまた不自然なまでにいい笑顔を彼に向けた。それを見て文弥が一歩後ずさる。

 

「文弥がその格好が大好きなのよねぇ?」

 

「え”、いや別に」

 

「なにせ私の下着を勝手に使うぐらいなんだから」

 

「……はい、大好きです」

 

よろしい、と文弥から視線を逸らした亜夜子の後頭部を見ながらはぁと文弥は溜息をついた。

 

(僕、巻き込まれただけなのに……)

 

あの時から、亜夜子に弱みを握られた形となってしまった文弥は事あるごとに女装を強要される事になってしまったのだ。

 

因みに他の主犯格の四人は亜夜子にそれはもう酷い目にあわされてた。

 

が、それでも自分のこれは割に合わないと思う。

 

せっかく尊敬する兄の家に行くのにどうしても気分が沈んで行くのを抑えられない文弥であった。

 

 

 

 

 

同時刻、ここより少し離れた場所で在る少年が部活を終え自宅への帰路を急いでいた。

 

そこに

 

 

「あれ?森崎君じゃね?」

 

「あ、本当だ。おーい!」

 

「げ」

 

目の前のコンビニで買ったのであろうコロッケを頬張っていた少年達に声をかけられ在る少年、森崎は顔が引きつるのを抑えきれなかった。

 

「げ、とは挨拶だな」

 

「お前達がやったことを考えれば妥当な反応だと思うがな」

 

不満げに眉をひそめた少年達、ヒデノリ、ヨシタケ、タダクニに森崎もありありと不満を称えた目で返す。

 

「ん?お前達だけか?」

 

「あ?そうだよ」

 

「和人なら、今日は用事あるって先に帰ったぞ」

 

一人欠けている面子に森崎が疑問を呈すと、ヒデノリが目を細め、タダクニが律義に察し森崎の疑問に答えてくれた。

 

「そうか」

 

タダクニの問いに安堵の色をにじませながら森崎は言う。

 

「そういや、そこのコンビニポテト半額らしいぜ、お前も食ってけよ」

 

「色々コンビニはあるがここのが一番美味いな。うん」

 

ヨシタケとヒデノリが森崎の肩にそれぞれ手を回しながら店内に森崎を導く。

 

「ちょ、ちょっと待て」

 

肩を組まれている為逃げられない森崎は導かれるままに店内に引きづられてしまう。

が彼にはどうしても聞かなければならない事があった。

 

「お前達、俺が怖くないのか?」

 

森崎は魔法師であり、ヒデノリ達は非魔法師だ。ただ脳に魔法演算領域があるかないかの違いにすぎないがそれでも世間の扱いは冷たい。

 

魔法師は人間ではない。という考えの元活動する政治団体も確かに存在し、森崎自身も周りとは違うという異質感を感じることがまれにあったし、謂れのない中傷を受ける事もある。

 

なのにこの少年達には彼らのような、恐れと嫉妬が入り混じった混沌たる感情の気配すら見えない。

 

 

「「「はぁ?」」」

 

案の定少年達は何言ってんだコイツという目で森崎を見ていた。

 

「なんだぁ?俺魔法使えてスゲーって目で見て欲しいのかぁ?」

 

「眠れる何かが目覚めるなら見てやってもいいがな」

 

「それは言うなっ!」

 

黒歴史を不意打ちで掘り起こされアンニュイな気分になっていた森崎の気持ちは粉々に破壊された。

 

「お前が意味わからん事言うからだろが」

 

「そうだそうだ!さっさとポテトを買ってくれ、そして俺にポイントをくれ」

 

「てめっ、それが目的か!」

 

「あ~やめろやめろ!」

 

森崎を差し置いて取っ組み合いを始めた三人に思わず笑みがこぼれてしまう。

 

(もしかしたら、くだらん悩みだったのかもな)

 

だがこれ以上は店員の迷惑になってしまう。止めようと森崎は一歩前に出たが

 

 

 

「あら?」

 

「「なぁ!?」」

 

「うん?」

 

自動ドアを超え入ってきた少女達に何故かヒデノリとヨシタケはギクリと固まってしまった。タダクニが頭に疑問符を浮かべている。

 

「お二人とも随分と元気ですわね」

 

「え、えぇ」

 

「あ、あははは……」

 

「なんだよお前達?」

 

借りてきた猫のように鎮まってしまった二人にタダクニが訝しげな声をあげるが、当の本人達にとってはただ事ではない。

 

少し会っただけで察してしまった。

 

未だ少女、亜夜子の胸の内には煮えくりかえるような怒りが渦巻いている事を

 

恐らく一番の被害者である隣の女装少年にひそかに黙祷をささげつつヒデノリとヨシタケはこの場からの撤退を企んでいた。

 

 

「あの、姉さんそろそろ……」

 

「あぁそうですわね」

 

((ナイス!文弥君!))

 

まさかの方面からのフォローに二人は心の中で喝采する。今度何か奢ってあげようと心に誓うヒデノリとヨシタケであった。

 

「それでは」

 

「はい!お疲れ様でした!」

 

「ありあとっした!」

 

軽く微笑みながら背を向ける亜夜子に対して直立不動で敬礼までする二人に向けて文弥(女装)は軽く頭を下げる。あくまで他人のふりで通すつもりのようだ。

 

が、いつもは任務の都合上女装とはいえ動きやすい服装でいる文弥だが今回はファッションを重視(亜夜子に脅されたとも言う)ハイヒールを穿いているのが仇になった。

 

「う、うわ……!」

 

結果、バランスを崩し文弥は足をもつれさせてしまう。

 

「あ、危ない!」

 

それを一番近くにいた森崎が反射的に受け止める。

 

「す、すいません」

 

ふわりといいにおいが森崎の鼻孔をくすぐる。

 

「い、いえ」

 

やけに心臓の鼓動がうるさいと他人事のように森崎は考えていた。

ぼーっとしている森崎に気づかず少女(文弥)は体勢を立て直すと、森崎にもう一度頭を下げると足早に去って行った。

 

 

 

「なぁ」

 

しばらくして森崎は思いだしたかのように声を出す。

 

「ん?」

 

「俺、恋したかも」

 

「ふ~ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「はぁ!?」」」

 

森崎の明日はどっちだ!?

 

 

 

~魔法科高校生と普通科高校生の文化祭~

 

 

時は進み、一高にとっては部活動勧誘、ある高校にとっては文化祭が幕を開けた。

 

大波乱が予想されたが、それに反し意外にも粛々と行事は進行していた。

 

「ま、それでも魔法の違法使用者はいるんだがな」

 

「それを事前に防ぐのが達也君の仕事でしょ」

 

達也の独り言に誓い呟きに応えたのはひょんなことから同行する事になった千葉エリカだ。

 

なりたくてなったわけではないので達也の顔が曇るのも仕方ない事だろう。

 

「お、達也君じゃないか」

 

とそこに声をかけてくるものがいた。

 

「あれ?あんた」

 

「おう久しぶり、丁度いいやうちのクラス寄ってってくれよ」

 

気安げなエリカの言葉にこれまた気安い返事を返した少年、和人は手を上げながらこちらに近づいてきた。

 

「お前のクラスは何をやっているんだ?」

 

「漫才喫茶だ」

 

「……なにそれ?」

 

少し奇をてらいすぎではないだろうか?

 

「紅茶を口に含んで吹かなかったら料金タダになるという斬新なシステムでバカ売れなんですよ」

 

「あたしらに何させる気!?」

 

女子であるエリカには確かに恥ずかしいかもしれない。

 

「一番の売れ筋はあつあつのおでんなんだ」

 

「なんか先が予想できるんだが」

 

押すなよ!絶対に押すなよ!という昔どこかで見たトリオのネタを少し思い出した達也であった。

 

「なぁなぁ、頼むぜ~サービスするからさ~」

 

和人の言葉にさて、どうするかと考えようとした達也の耳に体育館から聞こえてきた喧騒の音が入ってくる。

 

「なんだ?」

 

「行ってみない?」

 

エリカの目に隠しきれない興奮の色を見て、達也は彼女とは対照的に疲労を僅かに滲ませた。

 

「すまん和人、なにか騒動のようだ」

 

「みたいだな。俺も行くぜ!」

 

達也の疲労の色が濃くなった。

 

 

 

見ると、剣道着を着た男女が何やら言い争っているようだ。

 

「あれ?あの人達って」

 

「知っているのか雷電!?」

 

「らい……?」

 

エリカの頭に疑問符が浮かぶ。

 

「それで、彼らは誰なんだ?」

 

「え?え~っと、女子の方は、壬生紗耶香、おととしの全国中等部剣道大会の準優勝者で男子の方が桐原武明、おととしの関東剣術大会のチャンピオンよ」

 

達也が和人が引っ掻き回した場を立て直す意味で再度エリカに尋ねるとエリカは少し唖然としながらも比較的スラスラ応えてくれた。

 

その間も当人たちはどんどんヒートアップしていき、やがて殺気を帯びてくる。

 

一触即発が相応しい空気が場を包む。

 

「桐原、危な~い!」

 

が突如として聞こえてきた声にしばしその空気が止まる。

 

桐原が周りを見渡すと、魔法を使ったのだろう。普通では考えられない高さまで跳躍し彼に向かってくる人影(恐らく一高の男子生徒)があった。

 

 

「マジカル・オーロラ・プリティ・グレーター・スイスマウンテンドッグ・桐原殺し!」

 

 

その人影はどっから出したのかハンマーをそれはもう手加減なしに振りおろす。

 

「あぶねぇ!?」

 

桐原はそれを危うい所でかわし、人影の正体を見て噴き出しそうになる。

 

「て何やってんだ服部ぃ!?」

 

人影の正体は一高にいる筈の服部であった。

 

「何か問題を起こしてないか見に来てみれば、案の定ではないか!」

 

「どっちかというとお前の方が問題なんだが!?

 

てかなんださっきのド適当かつ俺限定の必殺技は!?」

 

未だ服部は桐原にハンマーを叩きつけ桐原はそれを竹刀で受け流している。

 

「ぶっちゃけ学校にいても暇だし」

 

「本当にぶっちゃけたなテメェ!」

 

先ほどまで言い争っていた筈の壬生もポカンとしており、どうすればいいか分からなくなってしまっている。

 

「まぁとりあえず」

 

「はんぞー君?なんでここに?」

 

「げ」

 

人混みを割り(勝手に割れたとも言うが)服部が見える位置までやってきたのは一高の生徒会長、七草真由美だ。表情こそおだやかだがそれでは隠しきれない程の怒りが渦巻いているのは誰が見てもわかる事だった。

 

「あの」

 

「聞かせて貰えるかしら?そのり・ゆ・うを?」

 

「……」

 

服部は下を向くと、ばれないようにCADを操作し

 

「あっ!?」

 

移動系魔法でその場を撤退してしまう。

 

「リンちゃん追いかけて!」

 

「はい」

 

真由美が隣に控えていた鈴音に直ぐ指示を飛ばすと自身も服部を捕まえる為、去って行った。

 

 

 

 

「何だったんだ?」

 

「さぁ」

 

「う~ん?なんか変だったなぁ」

 

完全に傍観に徹していた達也が思わずと言った感じで呟いた言葉にエリカが応え、和人はずっと頭をひねっていた。

 

 

 

因みに服部はこの後あえなく捕まり、会長直々に魔弾の射手の餌食となったのである。

 

まぁ彼には御褒美だろう。

 

 

 

 

 




みえるひと、めちゃくちゃ面白かったのに打ち切られて涙目

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