四葉の影騎士と呼ばれたい男   作:DEAK

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短編集にするつもりが意外に文字数があったので単体で投稿しました。




普通科高校生とスカート

 

「それでさぁ、河原で本読んでたら女の子がいきなり近くに座ってきてさ~」

 

「あ~それあれだろ?タダクニがポテト半額とか言って思いっきり殴られたやつだろ?」

 

「何それ!?超面白そうじゃん!くそ、俺もその場にいればっ……!」

 

ここは和人の家、ヨシタケとヒデノリが学校帰りなのか制服のままで和人の部屋でたむろしていた。

 

因みにタダクニはバイトで今回これず、そのかわりと言ってはなんだが

 

「あはははは、傍から聞いてる分には本当に面白いね」

 

「いやいや、当事者から言わせてもらえばあれは相当気まずかったわけで」

 

黒羽の任務の関係でこちらに来ていた文弥がこの場に参加していた。

 

当然文弥とはヨシタケ、ヒデノリは初対面なわけだが、男子高校生たるもの異性と話すのは緊張するが同性だったらなんの問題もなく話せるし、文弥の方もそれほどコミュニケーションが苦手と言うわけではない為、すぐに意気投合した。何より和人と言う共通の知り合いがいたというのが大きいのかもしれない。

 

ついでに言うと亜夜子もこの家に来ていて今は外出している。

 

今は、ヒデノリが河原であった少女の話しに花が咲いていたが

 

「なぁ、話の腰を折るようで悪いんだが」

 

「なんだよ?」

 

ヒデノリが急に改まった口調で言いだしたのを不思議に思う和人

 

「スカートってどう思う?」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

沈黙が場を支配する。

 

「どうって、ありえないだろ」

 

まずその沈黙を打ち破ったのはヨシタケで彼は呼んでいた教科書をパタンと閉じる。

 

「うむ、あれ腰のまわりに布巻いてるだけだからね」

 

「だよな、全然隠せてないよな」

 

訳知り顔で頷きながら言った言葉にヒデノリも同意する。

 

「しかも、第三次世界大戦前はミニスカートっていう物もあったらしい」

 

「何ぃ!?ミニだと!?」

 

「そんな破廉恥な物がっ!?」

 

和人もそれに乗っかりさらなる情報、というか爆弾を投下し大いに男子高校生の妄想力を刺激していた。

 

「いや、中世からある伝統的な衣服だし」

 

乗り遅れた形となった文弥が苦笑しながら言うも一度火のついた男子高校生は止まらない。

 

「いや、でもだよ?パンツ丸出しでそこらへん歩いてるわけだろ?」

 

「あんな低防御力で何が防げるんだよ!?」

 

「破廉恥の塊だよ!」

 

「ちょっと、落ち着いて」

 

苦笑が本格的な苦笑いに変わって行くのを自覚しながら文弥がなだめるように言う。

 

「なぁ、文弥君」

 

「何?」

 

が、残念ながら彼も傍観者ではいられない

 

「亜夜子ちゃんのスカートを拝借出来ないだろうか?」

 

「無理に決まってるでしょ!」

 

ヒデノリのとちくるった発言に遂に文弥は叫んでしまう。どうやら少し会わない間に頭が完全にやられてしまったようだ。と文弥が頭の片隅でそう思っていると、

 

「持って来たぜ」

 

「ぶっ殺されるよ姉さんに!?」

 

いつの間に行って来たのかヨシタケが人数分のスカートを持ってきていた。十中八九亜夜子のだろう。

 

「更に!」

 

ヨシタケは目をかっと見開くと、スカートを天高く放りあげ、両手を胸の前で合わせる。それはまるで神への祈りのようであった。

 

そしてゆっくりと手を開くと、そこには、三角の女性が身につけるある衣服があった。可愛らしいピンク色とワンポイントのリボンが妖艶さと愛らしさを両立させている。

 

その衣服の名は

 

「それもしかして姉さんのパンツ!?」

 

あえて言おう、パンツであると

 

「れ、錬成しやがった」

 

「安心しろ」

 

スカートのみならず下着まで勝手に持ってきたヨシタケは間違いなく地獄に落ちるだろう。にも関わらず彼は涼しい顔をしていた。

 

「等価交換だ。変わりにおれのパンツを置いてきた」

 

「馬鹿なの!?本当に馬鹿なの!?」

 

文弥があらんかぎりに声を荒げて見せても、男子高校生達はスカートにしか目が言っていない。

 

(マズイ、このままだと僕まで殺される!)

 

無実の罪で断罪されるのは嫌過ぎる。文弥はこっそりと部屋を抜け出そうとするが

 

「よし、早く穿こう」

 

「はい、これ文弥君の分」

 

「え”!?」

 

和人からスカートを手渡され、ヨシタケとヒデノリが絶妙に出口を塞ぐことで逃げられなくなってしまう。

 

(コイツら……!)

 

自分を巻き込む気満々なのを露骨に感じ取り文弥の額に青筋が浮かぶ。魔法で無理やり押し通ってしまおうかと物騒な考えが頭をよぎる。

 

「あ!?すね毛どうする?剃った方がいいかな?」

 

「馬鹿野郎!あるのがいいんだろうが!」

 

「てかこれどうやって着るの?」

 

意味わからんやり取りの末、喧嘩をおっぱじめたヨシタケとヒデノリ、スカートの穿き方がわからず頭からスカートをかぶっている和人を見て

 

(もうどうにでもな~れ)

 

思考を放棄した文弥であった。

 

 

 

 

 

「んじゃ、おれはこっち」

 

「俺はこっちで」

 

「本当に穿くの!?マジで!?」

 

「もう諦めろ、文弥君」

 

ヨシタケとヒデノリはそそくさと部屋の外へと行ってしまい、和人も一声かけると外へと行ってしまった。

 

「はぁ」

 

ポツンと部屋に取り残されてしまった文弥は憂鬱を吐き出すように息を吐いた。

 

非常に屈辱的ではあるが、文弥はスカートを穿く事事態にはそれほど抵抗がない、黒羽文哉は諜報部隊黒羽の実戦部隊として、身の上を隠すため『ヤミ』というコードネームで女装をしている。(意味あるのかと何回も問いただしたが曖昧な笑みを浮かべられただけだった)

 

ただそれは、任務の為という建前があってこそ耐えられた事、任務でも無ければ意味もない、こんな事の為に屈辱を味わう羽目になるとは

 

だが、穿かなかったらそれはそれでKYとか言われるだろう。それもなんとなく腹が立つ。

 

「はぁ」

 

もう一つ溜息を吐き文弥もすごすごと部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「穿いた?」

 

「……おう」

 

「まぁ……」

 

「どうにか」

 

数分後、隙間の奥から聞こえてくる和人の声に三人は先ほどよりも低い声で応える。なんだかんだで恥ずかしくなってきたのだろう。

 

「んじゃ、出るぞ」

 

和人の声を合図に四人が部屋へと入ってきた

 

「……」

 

まずヒデノリ

 

「……」←ズボン

 

次にヨシタケ

 

「……」←ズボン

 

三番目が和人

 

「」←スカート

 

最期に文弥

 

 

この時、文弥は心に誓った。

 

 

 

コイツら殺すと

 

 

「死ィィィィィィィネェェェェェェェェェェ!!」

 

「落ち着け文弥!」

 

「そうだ!だから魔法は止めて!」

 

「うるさぁぁぁぁい!!」

 

最悪な裏切りを受けた文弥はCADに手を伸ばすが三人が羽交い絞めにしてどうにか止める。

 

「うぅ、もうやだ……」

 

orzの体勢でうずくまってしまった文弥をしげしげと三人は見る。

 

文弥本人はコンプレックスなのだが、彼は男性というにはなんというか、少々女性らしい顔つきをしている。いわゆる男の娘というやつだろう。

 

そんな男子がスカートを穿くとどうなるか?

 

「なんというか」

 

「すげ~似合ってんな」

 

「これ金とれんじゃね?」

 

「うるさいよ!」

 

無邪気にコンプレックスをえぐってくる三人に本格的に文弥は泣きたくなってきた。

 

「いや、これマジいけるって」

 

「よし、もっと本格的にやろう」

 

「任せろ、ブラも持ってきた」

 

「本当にどうなってもしらないよ!」

 

更に悪ノリする三人だが、天罰というのは必ず下るものである。

 

 

ガチャリと家のドアが開き、そこから亜夜子と水波が入ってきた買い物の帰りだろうか水波の方は袋をいくつか持っている。

 

二人が談笑しながらリビングにひとまず荷物を置き、二階に上がると

 

「なんか騒がしいですわね」

 

一つの部屋から、物音と騒音がやたらめったら響く事に気づく。

 

(まぁ、彼の事ですから碌な事はしてないでしょうけど)

 

部屋の主の姿を思い浮かべげんなりとするが、少々うるさすぎないだろうか?

 

(文句の一つでも言ってやりましょうか)

 

亜夜子は特にノックもせず扉を開けた先に待っていたのは

 

 

 

 

 

自分の衣服(下着を含め)を着けている変態共であった。

 

 

 

「「「「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 

「あらあら」

 

亜夜子は笑みを崩さず此方に向かってくる。がその目は全く笑っていない

 

「あ、ああああ」

 

「ね、姉さん……」

 

哀れな羊たちが何事か言おうとするが目の前の亜夜子にはなんの意味もなさない。

 

「どうしまして?続けて構いませんのよ?」

 

「「「「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁい!」」」」

 

その後、彼らがどうなったかはあえて語るまでもないだろう。

 

 

 

 




黒羽姉弟を出したのは私の趣味ですね

ごめんよタダクニwww出番奪ってしまってwww

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