四葉の影騎士と呼ばれたい男   作:DEAK

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更新遅くなってしまい申し訳ありません。
しばらく書いてないんで感覚を忘れている(汗


追憶編⑫

「ほう、ではやはりあれは術式解体(グラム・デモリッション)ですか」

 

「それだけでなく、大陸流古式魔法『点断』の効果もあわせ持っていたようにお見受けしますが」

 

出されたコーヒーを時折すすりながら、達也、深雪、風間大尉、真田中尉のコーヒーブレイクが進んで行く。ただ、いつもと違うのは達也が主役で深雪はあくまで司波達也の妹であるという事だ。

一般家庭では当然の事だが、司波家は『一般』の枠には収まらない。その『司波』の、否『四葉』の常識が深雪に奇妙な感覚をもたらしていた。

 

「見たところ司波君はCADを使っていないようですが、補助具は使っているのですか?」

 

「特化型CADは持っていますが、中々フィーリングに合うのがなくて……僕はCADを用いた魔法の使い分けが不得手なので」

 

風間大尉も真田中尉も話しかける相手は深雪ではなく達也、深雪は時たま相槌を求められるだけ、こんな事は初めてだが、深雪はそれが不思議と嫌ではなかった。

 

「ほう、意外ですな。あれだけサイオンの扱いに慣れていれば、CADも難なく使えそうだが」

 

「司波君、良ければ僕が開発したCADを試してみませんか?」

 

達也の言葉に風間が顎をなで、真田は少し身を乗り出しながら、自らが手掛けたCADの使用を勧める。

 

「真田中尉はCADを御作りに?」

 

「僕の仕事はCADを含めた魔法装備の全般の開発ですから」

 

目を輝かせる(深雪視点)達也に真田はニッコリと微笑むが

 

「そういえば真田中尉、先ほど金城一等兵に呼びとめられていたが」

 

「あぁ、それですか」

 

風間の言葉に、真田の表情は苦笑に変わる。

 

「何かあったんですか?」

 

「いえいえ、大したことではないんですが」

 

深雪の疑問に、真田は軽く肩をすくめながら顛末を述べる。

 

「昨年の勧誘で使ったキグルミを使わせてくれと」

 

「キグルミ」

 

「ですか?」

 

達也と深雪の言葉がつながる。何故かちょっと嬉しくなった深雪であった。

 

「えぇ、無駄にこだわり過ぎて迫撃砲すら防げる程のオーバースペックになってしまったのですが」

 

「それは最早キグルミでなくアーマーですね」

 

「戦闘使用も検討したぐらいだしな」

 

風間の言葉に深雪はキグルミが戦場を闊歩する想像をしてしまった。

 

予想以上にシュールだ。もし自分がそんな戦場に放り込まれたら笑いをこらえる自信がない。

 

「貸したのか?」

 

「えぇ、何でもあの少年のアイデアだと」

 

「あの、少年ってまさか……」

 

「うむ、君たちと一緒に来たあの子だろうな」

 

風間と真田の言葉に猛烈に嫌な予感がしてきた司波兄妹、今すぐ止めるべきだと進言しようとしたが……

 

 

 

 

 

 

ベイベェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!

 

 

 

 

「!?」

 

「何事だ!?」

 

突如として、外からハウリングと共に聞こえてきた大絶叫に風間と真田が椅子から立ち上がり思わず臨戦態勢をとる。

 

「グラウンドから聞こえたようですが」

 

「様子を見に行こう。申し訳ないが君たちは」

 

「いえ、僕たちも行きます」

 

「司波君?」

 

危機回避の為、風間は客人二人に避難してもらおうと考えていたのだが、その本人からついていくと言われてしまう。

 

「多分、危険はないので大丈夫だと思います」

 

「深雪さんまで、原因がわかっているのですか?」

 

「確信は出来ませんが、多分彼でしょうね」

 

「はぁ、全く」

 

二人の余り、というか全くと言っていいほど抱いていない危機感に真田はなんだか自分が心配し過ぎなのかと思ってしまう。

 

「とりあえずグラウンドに向かってみよう」

 

風間の言葉で一同は未だシャウトと爆音が鳴り響くグラウンドへ向かった。

 

 

 

 

「な、何だこれは!?」

 

グラウンドに着くや否や、風間は絶句し立ちすくんでしまう。

 

何故なら

 

 

 

 

「YA--------HA--------!!」

 

「次の曲いくぜぇぇぇぇ!!」

 

FOOOOOOOOOOOOOO!!

 

恩納基地が一転ライブ会場になってしまっていたからだ。メンバーは金城一等兵と少年、後は先ほどまで訓練していた筈の者たち(桧垣上等兵含む)。それと、バックダンサーとして

 

「あれは、あのキグルミじゃないか!?デザインが少し変わっているが間違いない!」

 

真田が驚愕しながら言うとおり、キグルミを着た者が数人バックダンサーとして踊っていた。

真田は知る由もないが、デザインの変わったあのキグルミは『霧くま』といい、アニメ版アルペジオのCパート担当してくれるマスコットキャラなのだ。

 

 

「曲名は『SAVIOR OF SONG』!! 」

 

「ワン、ツー、スリー、フォア!!」

 

 

ドラム担当である少年の掛け声で金城一等兵のアカペラが響き、その後、風間にも覚えがある特徴的なイントロが流れ始める。

 

まずは、金城一等兵の歌声が響き渡る。レフトブラッドなだけあって、英語に日本人らしい訛りは一切ない

 

 

 

次に桧垣上等兵とのデュエット、二人は完璧なハーモニーを奏で、後ろの霧くま、ギター、ドラムが見事にそれをフォローする。

 

 

 

 

サビに入った瞬間、曲調は一気に激しくなり部隊もそれに呼応するかのように、熱く、高く舞い上がる。そこにはレフトブラッドも魔法も非魔法もなかった。

 

 

~走…出す鼓…さ…も

限り…い…しみ…

…き出…アルペジオ

Savior of Song

… S…vi…r … S……g~

 

 

あるのは歌のみ、そうこれは救世の歌、人は……歌で一つになるのだ。

 

 

 

 

「なんだこれ?」

 

何故か大盛況のライブ?の中、真田は思わず呟くのであった。そんなの正直こっちが聞きたいという

のが司波兄妹の本心である。

 

(というより、奇妙なノイズが?なんだこれは)

 

達也は歌にこもるような、ノイズが走っている事に気づき眉をひそめる。

 

「……くっ」

 

「大尉?何で泣いてるんです?」

 

「……聞くな」

 

うん、聞きたくない。

 

真田が上司を冷めた目で見るが、残念なことにこの意味不明すぎるライブは無情にも続く

そして、達也が感じたノイズの正体も明らかになる

 

 

行…止ま… is ……is o…… e……ing あの日(あっ、たっちゃん、みゆきち)

…を突き刺した th…r …rds … gl…y 巡り(やっほ~ノッてるかい?)

 

 

 

「にょ!?」

 

「何だ!?何か不愉快な呼称であいつに呼ばれた気がするんだが」

 

ノイズ交じりの歌はつづいている筈なのに、それにまぎれて、現在進行形でドラムを叩いている少年の声がし、深雪は淑女らしからぬ妙な叫び声を上げ、達也も思わず辺りを警戒してしまう。少年には話しかけられる余裕はなさそうに見えるが

 

 

 

自…自…の道変……果てた…蒼く照……て(ここの人達が考えた魔法らしいんだよね)

… de……ned …ture we… de…nd(原理は知らんけど他の人も色々言ってるよ)

 

 

少年の言葉に達也は感覚を研ぎ澄ませ、精霊の目(エレメンタルサイト)でイデアに存在するエイドスそのものを視認する。つまり認識方法を根本的に変えるのだ。

 

すると

 

 

 

……た現実と、(ぶっちゃけ、事務課給料すくねぇ!)

絶望に……迷…けて(レフトブラッドってだけで変な目で見られる)

いつか……未来 it's t… to ……op … Re…nd

…れた…(あ~反乱起こしてぇなぁ)

…じ込…闇を……開……(ちょwwwそればれたらアカンwww)

…り抜く… …u …ee… to …all … Un…nd(たwしwかwにw)

 

 

溢れ……衝動……も(彼女欲しいぃぃぃ)

叶う………夢…(風間大尉の妹超美人らしいぜ)

導き…アルペジオ(マジかよ!?)

S……ior … S…n…(やらないか?)

A Savior of Song~(ウホッ、いい男)

 

 

「……」

 

予想以上にみんな好き勝手言っていた。

 

「に、兄さん?何故そんな全てを諦めたような目をしているんです?」

 

妹の言葉に達也は折れそうになった気持ちを奮い立たせ、茫然としている真田と体を小刻みに動かしている(もしかしてリズムとってる?)風間に向き直る。

 

「どうやら魔法が使われているようです」

 

「魔法?」

 

「はい、恐らく発した声の振動の幅等を改変し言葉を誤認させる魔法でしょう」

 

なんとか絞り出したかのように気のない真田に達也は原理を説明する。

 

「つまり?」

 

「我々にはうたっているように聞こえますが本来は別の事を言っているのです。そのように情報が改変されているのです」

 

流石に粗はあるようで、このノイズは音が変換しきれていないという事だろう。だがそれを差し引いても素晴らしい魔法だ。用途を間違えなければ

 

「ほう、面白い魔法を思いつくのだな」

 

ちゃっかり聞いていたのか風間が感心したように言う。

 

「で、彼らはなんと言っているのですかな?」

 

「それは……」

 

説明しづらいというか説明したくないので、達也は手っ取り早く魔法をかき消す事にした。

右手からサイオンの奔流が迸る。

 

 

 

「いつか、風間大尉に『俺の妹をファックしていいぞ!』って言われるのが俺の夢なんだ」

 

「そりゃ無理だろ、少なくともあの坊主に勝てるくらいになんないとな」

 

「真田中尉ってさ、正直イケるよな?」

 

「ホモォ……」

 

「もっと金よこせぇぇぇぇぇ!!」

 

「彼女もよこせぇぇぇぇぇ!!」

 

「大亜連合と結託して反乱起こすけど質問ある?っと」

 

「ちょwwwおまwww」

 

情報改変で構成されていた歌と演奏が消え去り、本来の音声が響いてくる。

 

「……」

 

風間の顔がどんどんかつての異名『大天狗』に相応しい顔になっていく

達也と深雪は静かに三歩下がる。当然怒りに巻き込まれない為だ。

 

「あ、みんなやべぇぞ!」

 

「どうしたジョー!」

 

「魔法解除されてる!」

 

 

 

え…………?

 

「全員、元気が有り余ってるようだな?」

 

「げぇ!?風間大尉!?」

 

騒がしい空気から一転、『大天狗』風間玄信が支配する絶対零度の空気に場が支配される。

 

「あ、あのあのあの」

 

「グラウンド500周!!」

 

「は、はいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

風間の怒号に騒いでいた兵士は弾かれたように走り出す。

 

 

 

 

「そ~っと……」

 

「何してるんだ?」

 

「達也っち!?」

 

ドサクサにまぎれ逃走しようとしている黒幕を達也は見つける。

 

「頼む!見逃してくれ!」

 

「そうだな……普通に断る」

 

「!?」

 

結局少年もグラウンド500周になりましたとさ

 

 

「ぜぇぜぇ……し……死ぬぅ」

 

「ちくしょう、こちとら事務職だってのに……」

 

「諦めるな、ゴールはある……」

 

その後、この曲を含めた勧誘を行ったら、僅かだが入隊率が向上したのはまた別の話

 

 

 




前にルビについてアドバイスは受けてたんですが、今回初めて使用してみました。
ちょっと遊びすぎたwww
上手く変換出来てなかったら教えて下さい

魔法の理論は適当です。こうした方がいいとかありましたらそちらも教えて頂けるとありがたいです。


追記(5/28)
ご指摘いただいた点、修正させて頂きました。このような形で問題ないのかはわからないのですが、確認したうえで、追加の修正が必要ならさせて頂きます。
皆さま申し訳なく思うと共に、指摘して下さった方々に感謝させて下さい。
ありがとうございました。

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