ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

9 / 40
2015/02/25 修正


第5話 アーシアとの再会

「朝か・・・」

 

今は朝の4時半か・・・少し寝すぎたな

何時も通り道場に行って軽く体を動かした後に朝飯作って、弁当の用意して、学校の支度をするか・・・

 

翔はそう思いながら部屋にある時計に視線を向け、時間を確認してから行動を開始する。

この前のはぐれ悪魔との戦闘があって、数日が経った。

現在、翔はリアスが用意してくれた和風屋敷に住んでいる。

最初言われた翔は、普通のアパートなどをイメージしていたのだが、実際にその日に貰った地図を頼りにこれから住むであろう家に向かうと、立派な和風屋敷があった。

一般家庭四軒分の敷地に建つ平屋の純和風の屋敷であり、一緒に道場もついている。軽く10人くらいは住める広さだ。

用意してもらった為、文句は言わなかった翔だが、内心で、広すぎだろ・・・と溜め息を吐いたのは仕方がない事だろう。

 

「そろそろか・・・」

 

時間が頃ぐらいなので家を出て、学校に向かいだす。

翔は駒王学園の二年生に編入した。クラスは祐斗と同じで席も隣同士である。

最初、自己紹介した際は、女子からは黄色い声が教室に響き、男子からはもの凄い形相で睨まれた。

だが、この数日でクラスとの男子とも和解?をし、今では男女共に仲の良いクラスと言えよう。

翔にとって授業は面白くないので大半は適当に聞き流す。

 

昼は大体、祐斗と共に屋上に行って二人で食べる。

隣同士なのに何故、屋上で食べるかというと、教室だと色々な所から女子生徒が押し掛けてくるため、ゆっくりと食べれないためだ。

最近では小猫も一緒に食べている。翔の弁当が目的なんだろうが・・・。

 

全ての授業が終わり、翔は祐斗と共に旧校舎にある部室に向かう。

部室の前につき、祐斗がドアをノックする。

 

「失礼します」

 

「失礼する」

 

部室に入ると、翔と祐斗以外は皆、もう居るようだった。

 

「俺はまたチラシ配りか?」

 

チラシ配りとは、簡易魔法陣がかかれたチラシを夜に家のポストに入れる仕事の事である。

欲ある人間がこのチラシに願いを込めると悪魔が召喚されるっていう仕組みとなっている。

 

「いいえ、今日から貴方には契約をしてもらうわ」

 

「契約?」

 

「ええ、そうですわ」

 

「それじゃあ朱乃、お願いね」

 

「はい。 ―――、――――――、――――。」

 

朱乃が言葉を紡ぐと魔方陣が輝く。

 

「あれは何をしてるんだ?」

 

「あれは翔の刻印を魔方陣に読みこませているのよ」

 

「刻印?」

 

「私の眷属の証といえばわかりやすいかしら、そして魔力を使うには全てこの魔方陣が基本になるのよ。

翔、(てのひら)をこちらに出してちょうだい」

 

その言葉に頷く翔。

リアスが翔の手のひらを指でなぞると星形の模様が現れた。

 

「それは転移用の魔方陣を通って依頼者の元へ瞬間移動するためのものよ」

 

「朱乃、準備はいい?」

 

「いつでも行けますわ」

 

「じゃあ翔、魔方陣の中央に立ちなさい」

 

「はいはい」

 

「翔はこの魔方陣を通って召喚されるわけだけれど・・・到着後のマニュアルは頭に入ってる?」

 

「前に渡された紙のことか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「あれなら、読めって書いてあったから、一応読んだぞ」

 

「ならいいわ。いってらっしゃい、翔」

 

「ああ、いってくる」

 

魔方陣の上に翔が乗ると、魔方陣が光輝き、転移が発動した。

 

翔が目を開くと、そこは部屋ではなく何故か玄関の前に召喚された。

普通は依頼者が持っている紙に描かれた、魔方陣を介して召喚される。

翔は怪訝に思うが、玄関を手にすると鍵が開いてあった上に―――

 

「・・・・・・血の臭いがする。それにこの気配は―――」

 

リビングに行くと、リビングの壁に逆十字の恰好で壁に貼り付けられてる男性の死体があった。両手両足、胴体の中心に大きな釘が打ち込まれており、その横には文字らしきものが血で書かれている。

 

「『悪いことする人はおしおきよ!』って聖なるお方の言葉を借りたものさ」

 

後ろから声が聞こえ、振り向くと、そこには白い髪をした神父服を身に纏う青年がいた。

歳は10代後半か20代前半くらいだろう。

 

こいつはこの前リアスが言っていた―――

 

「・・・・・・お前は悪魔祓いか?」

 

「そう、俺は神父♪少年神父~♪デビルな輩をぶった斬り~、ニヒルな俺が嘲笑う~♪ お前ら、悪魔の首刎ねて~、俺はおまんま貰うのさ~♪俺のお名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属してる末端でございますですよ。あ、別に俺が名乗ったからっておまえさんは名乗らなくていいよ。

俺の脳容量におまえの名前なんざ、メモリしたくないから、止めてちょ。大丈夫、すぐに死ねるから、俺がそうしてあげる。最初は痛いかも知れないけど、すぐに泣けるほど快感になるから、新たな扉を開こうZE!」

 

「そんな事はどうでもいい。これをやったのはお前か?」

 

長々と語っていたフリードに対して、翔は何の感情も籠っていない声で問いかける。

それに対して、フリードと名乗った青年は何の後悔もなく、むしろ楽しそうに答える。

 

「イエスイエス! だってこいつ常習犯だし~」

 

「・・・・・・そうか」

 

もう少し早く来ていれば、救えたかも知れない、護れたかもしれない・・・

・・・・・・いつもそうだ、俺が出来るのは後始末だけだ・・・ッ!!

 

顔を俯かせて、握りしめられた拳からは血かが流れている。

 

「ヒャハハハハ! 悪魔と取引するような人間はクズっすよ! 生きてる意味ないっしょ。

ところで、お前、誰?」

 

「・・・俺は御剣翔、人間だ。・・・ただ、悪魔を主と仰ぐ眷属ではあるがな」

 

「へぇ~、ってことはぶち殺しの切り刻みオッケーのクズ野郎君?

何だ~、それならそうと早く言ってよ~悪魔に媚売ってるクズがぁああ!!」

 

「俺は確かにクズかもしれないが、それは貴様も同じだ」

 

普段とは口調が変わる。纏う雰囲気も冷たいものへと変化する。

 

「何? クソ悪魔が俺をクズだって? チョーウケる! マジウケる! ヒッヒッヒッ!

あー・・・・・・いいか? よく聞けクソ野郎君。クソ悪魔は人間の欲を糧に生きてんだろ?

悪魔におまんまくれてやるような人間は人間として終わってんですよ?」

 

逆さ吊りの男の顔を蹴りつけながら続ける。

その行為がどれだけ愚かも知らずに、フリードは自分が殺した男の亡骸をごみを蹴るかのように蹴り続ける。

 

「だからこれ以上穢れる前に俺がぶっ殺してあげるわけ。慈悲ですよ慈悲、アーメン!

はっはー! そろそろお前を殺しまーす!クソ野郎相手にすんのも飽きちゃったし。じゃーん! どちらか選ばせてあげようクソ野郎君。蜂の巣世界記録に挑戦するか~細切れ世界記録を狙うか~」

 

十字架があしらった拳銃と刀身がない柄だけの剣を懐から出しながら言うフリード。

 

「ぎゃはははは! 生意気なクソ野郎君には特別大サービス!どっちも進呈しちゃいます」

 

片手に持つ柄から輝く光の刀身が出現する。

どうやら対悪魔用の武器のようだ。

 

「御託は良い、さっさと来い」

 

それに対して、翔は動じることなく。片方の手の人差し指を挑発するように動かす。

 

「調子に乗ってんじゃねぇええええッスよ!!」

 

それを見たフリードは叫びながら手に持つ光の刀身を持つ剣で斬りかかってくるが、その剣戟を翔は紙一重で避け、その隙にフリードの攻撃を仕掛けようとするが、フリードも伊達にエクソシストはやっていないようで、咄嗟にもう片手に持つ拳銃から光の弾を至近距離で放つが、翔はそれを咄嗟に上半身を後方に下げて躱し、そのままサマーソルトをする要領で、後ろに下がりながら蹴りを放つ。

 

「クソがぁあああああ!!」

 

叫び声を上げながら吹き飛んでいくフリードだが、彼は咄嗟に手に持つ柄で翔の蹴りを受け、自分から後方に飛んで威力を逃がしたため、それほどのダメージは受けていないだろう。

 

「伊達にエクソシストはやっていないか・・・」

 

悪魔や堕天使と言った人外なら露知らず。

人間で翔の今の蹴りを反応できるのは普通は出来ないだろう。

だが、フリードもエクソシストであり、悪魔と言った人外と戦うために鍛えたのだろう。

その身体能力は、普通の人間を凌駕している。

 

あれは純粋な身体能力でもなく、鍛えたものでもないな・・・

薬物で強化している可能性があるな・・・・・・あくまでも推測だがな・・・

それにさっきの銃からは発砲音がしなかったな・・・それに銃弾が光の弾だったな

はぐれだから恐らく堕天使の加護か何かがある弾だな。悪魔や魔に属する者には効果があるが、人間である俺にはそこまで効果があるのか? 一応、悪魔の眷属となってるから多少はあるのか?

確かめてみないと分からないが・・・わざわざ受ける必要もないからな・・・

 

吹き飛んで行った方を警戒しながら、翔は相手を冷静に観察しながら頭の中で考えをまとめていく。

すると―――

 

「ひゃはははははは! 蹴った? 悪魔に媚びうるクソが、神父である俺を蹴り飛ばした!

これはこれは罪深きことですねぇ~! これは許させるのか! はい、許されません! って言うか・・・俺っちが許しません!ってなわけで・・・さっさと死んでくだせぇ!!!」

 

最初と同じようなふざけた口調で喋りながら立ち上がるフリード。

だが、最後は激昂しながら神父服をまさぐり、もう一丁の銃を取りだした。

それは最初に撃った銃と同じもので、光の弾が放たれるものであろう。

 

「お次は封魔弾、二倍でございまぁす!!」

 

と叫びながら二丁の拳銃の銃口を翔へと向けた時に―――

 

「いやぁぁぁあああああああ!!」

 

「あ?」

 

「なんでこんなとこに居るんだ―――アーシア」

 

やや呆然と呟く翔。

部屋に響いた悲鳴の主は、先日翔が街で出会った。シスターのアーシアであった。

どうやら部屋に吊るされている男の無残な姿を見て悲鳴を上げたようだ。

まだ、翔には気付いていないようだ。

 

「フリード神父! これはどういう事ですか!」

 

「これはこれは助手のアーシアちゃんではありませんか?この手の死体を見るのは初めてだった?

ならとくとご覧なさい。悪魔に魅入られたダメ人間はそうやって死んでもらうのですよぉ~」

 

相変わらずおちゃらけた口調で話すフリード。

 

「そ、そんな・・・」

 

「つうことで、そいつを斬れば今日のお仕事は終わりなわけですよ~。

アーシアちゃんも持ち場に戻って結界を張ってもらえませんかね?」

 

「・・・翔さん?」

 

フリードの言葉で初めて自分たち以外に誰かがいることを知り、

視線を動かすと翔を見つけ、一言漏らす。

 

「何? 何? 君ら知り合いなわけ?」

 

「翔さんが何故ここに!?」

 

「俺は悪魔じゃないが、悪魔と関わってるんだよ。黙ってて悪かったな」

 

「そんな・・・」

 

信じられない顔をするアーシア。

 

悲しませたか・・・・・・。俺はどうして人を笑顔に出来ないんだろうな・・・

 

内心でその事に苦笑いを浮かべる。

 

「そうだよぉ?そいつはクソのクソ悪魔さんですよぉ~。なに? 知らなかったの?

まぁ~どうせ、そこのゲージュツ品みたいにするからどうでもいいよ!」

 

「ッ!?」

 

「・・・・・・・・・ああ?」

 

「アーシア・・・」

 

あれだけの話を聞いて、翔の盾になるように立つアーシア。

 

「おいおいアーシアちゃん~。君、何をしてるいるかわかっているのでしょうか?」

 

「はい。 フリード神父。お願いです、この方を・・・翔さんを見逃してください!

もう嫌です・・・。悪魔に魅入られたからといって人間を裁いたり悪魔を殺したりなんて、

そんなの間違ってます!」

 

「はぁあああああああああ!!ナマ言ってんじゃねぇよクソアマが!

悪魔はクソだって教会で習っただろうが! おまえマジで頭にウジわいてんじゃねぇのか!?」

 

「悪魔にだって良い人はいます!」

 

いや、俺は人間だからな

 

アーシアの発言に内心で突っ込む。

 

「いねぇよ、バァアアカ!」

 

「わ、私もこの前まではそう思ってました・・・・・・でも、翔さんは違います!

悪魔だってわかっても翔さんは翔さんです。人を殺すなんて許されません!

こんなの・・・こんなの! 主が許すわけ―――きゃっ!」

 

「何すんだよ、クソ野郎!」

 

「大丈夫かアーシア? それと、ありがとうな。でもな、俺はまだ人間だ」

 

二人の会話がヒートアップしていき、フリードは我慢の限界に達し、持っている拳銃でアーシアを殴ろうとするが、翔がそれを許すはずもなく。後ろから手をだし、アーシアを抱き寄せるように後ろへと下がらせる。

 

「え、あぅ、翔さん?」

 

「外道が・・・。アーシアがいるから殺しはしないが無事で済むと思うなよ」

 

突然の事で、何が起きたか分からないアーシアが変な声を上げるが、それを無視して、翔はフリードにだけ僅かに殺気を放つ。

それに対してフリードは殺気を浴びて狂気的な笑みを浮かべる。

 

「ククク、良いぜぇ♪ 君から殺してあげるよ!ただし! すぐ死なないようじっ―――ぐがぁ!!」

 

何か言おうとするフリードであったが、それは途中で止められてしまう。

何故なら、翔が何時の間にかフリードの前に移動しており、

そして先程の蹴り同様に手加減した・・・・・・正拳突きをフリードへと放ったのだ。

 

「ぐっ・・・はぁ・・・はぁ・・・ん~、俺ちゃんてばクズに殴られちゃったよ。

・・・・・っけんなよ・・・ふざっけんなクソがぁああああッ!!」

 

今度は自分から後方には下がれずにモロに翔の正拳突きを喰らったフリードは息を切らしながら叫ぶ。

 

「翔さん。どんな人でも殺しては・・・・・・」

 

「殺しはしない。ただ、意識は奪わせてもらう」

 

「なにチョーシぐ―――カッ!?」

 

翔は先ほど同様に一瞬でフリードの前へと移動し、胸の上に掌を置く。

そしてダメージを直接内部へと“徹す”。中国拳法の浸透頸だ。ダメージを体内に通す技法。

肺から空気が全部抜け、心臓にまで衝撃が来たフリードは、瞬く間に意識を失う。

死なないように手加減はされているが、すぐには意識を取り戻さないだろう。

 

「アーシア。 一応治療してやれ」

 

「は、はい」

 

アーシアが神父に近付いたときに部屋に魔方陣が現れた。

 

「ん?これは」

 

「翔くん、助けにきたんだけど・・・・・・」

 

「あらあら、もう終わってしまいましたの?」

 

「神父・・・」

 

上から祐斗、朱乃、小猫だ。リアスは来てないのか?

 

「ごめんなさい翔、依頼主のもとへ悪魔祓いがくるとは計算外だったわ・・・」

 

少しだけ遅れてやって来た。

 

「大丈夫だ。・・・意外な再会があった以外はな」

 

「それにしても、一人で悪魔祓いを倒してしまうとは・・・」

 

アーシアに治療されているフリードを見て、少し驚いた表情を浮かべる朱乃。

すると、治療を終えたアーシアが翔に近づく。

 

「翔さん。この人達は・・・」

 

「アーシア。まぁ悪魔だけど良い奴らだ」

 

「この子は・・・」

 

リアスがアーシアのことを聞こうとした瞬間、朱乃の切羽詰った声で遮られてしまう。

 

「部長! 堕天使らしきものが複数近づいてますわ!このままでは不利に・・・」

 

「ッ!?・・・朱乃、跳ぶわよ。 ジャンプの用意を!」

 

「はい!」

 

「リアス、この子も一緒に―――」

 

「無理よ。この魔方陣は私の眷属悪魔しか跳べないわ・・・」

 

「・・・彼女は悪魔を認める発言をした。それが教会に知られたら・・・」

 

口封じにフリードを殺すか・・・いや、アーシアは素直な子だ

問われれば自分から言ってしまうだろう

 

「翔、その子は敵よ・・・」

 

「俺の敵か敵じゃないかは俺自身が見極める。どうしてもこの子を連れていけないと言うのなら、今からくる堕天使を全て―――」

 

パンッ!

 

全滅させて・・・、とは続けられなかった。

言葉の途中でリアスに、頬を平手打ちされたからだ。

 

「聞きなさい、翔。いくら貴方が強くても複数の堕天使には敵わないわ。

大丈夫、その子は殺されないわよ。 堕天使にとってその子を始末する意味はないわ。

今の最善の策は退くことよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

リアスの言葉には答えずただ黙る翔。

 

「部長、準備が出来ましたわ」

 

「行くわよ」

 

既に魔方陣は光を放ちいつでも転移ができる状態だ。

 

「アーシア・・・」

 

「翔さん・・・・・・また会いましょう」

 

「アーシア、絶対助けるから。 待ってろよ」

 

移動する直前のアーシアの泣き笑いが、翔の心に重くのしかかった。

 

必ず助ける・・・

シスターだとか堕天使だとかなどは関係ない。―――アーシアを助ける

 

翔が部室に着いた途端、部室の扉へと向かった。

 

「待ちなさい、何処へ行くの?」

 

翔がドアノブに手を掛けたところでリアスに問いかけられる。

 

「あのシスターを助けに行く。そう考えているのならやめなさい」

 

「・・・・・・家に帰るだけだ」

 

「あのシスターは堕天使側の人間、おそらくそれも重要な役割を持った人間よ。

貴方があのシスターを救い出せば、当然堕天使も取り返す為に貴方を襲う。貴方が襲われれば私達は戦わなければならない。そうなったら悪魔と堕天使。その両勢力の全面戦争の引き金を引くことになるわ」

 

少しの沈黙の後に顔は振り向かずに普段通りに答える翔。

そんな翔にリアスは釘を刺す様に言う。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

黙ってリアスの話を聞く翔。

だが、ドアノブを握っていない左手はきつく拳が握られている。

 

「勝手な行動は慎むこと。いいわね?」

 

「・・・あの外道は殺す事に快楽を見出す奴だ。そんな奴がいる所が、まともな所とは思えないがな」

 

「あの子の事は忘れなさい! あの子は私達と相容れない存在・・・これ以上関わるなら、もっと多くの血が流れる事になる・・・」

 

「・・・ああ、そうだろうな。それに俺が出来るのは何時も『後始末』だけだからな」

 

翔の言葉にリアス達は首を傾げる。

 

「・・・でもな、歩き続けると決めたんだ」

 

扉を開け、静かに閉め部室から去って行く。

翔が去った後、リアス達は何ともいえない表情をしていた。

 

「悪魔と教会の人間は相容ることはできない。でも、翔くんはそれを受け入れてもなお彼女を救い出したかったのでしょうね」

 

「でしょうね。さっきの翔の反応を見れば・・・」

 

「翔くん、悔しそうでした。助け出すことができない事が腹ただしいのでしょう」

 

裕斗がそう言うが、それは違う。

 

「少し違うわ」

 

「えっ?」

 

祐斗が疑問の声を上げる。

朱乃も小猫も分からなかったようで、リアスの方を見る。

 

「翔が悔しいのは助け出す事が出来ないからじゃないわ。助け出す事が出来るのにそれが出来ないから悔しいのよ」

 

リアスの言葉を聞き、祐斗は黙る。

 

「それにしても『後始末』はどういう意味でしょうか?」

 

すると、朱乃が翔が言った『後始末』の意味を疑問に思う。

 

「・・・・それを言った時の翔先輩の声には自嘲気味に聞こえました」

 

「確かに、そうだったわね。・・・翔の此処に来る前に何をしていたのかしら」

 

リアス達は翔の事をあまり知らない。

というより、翔が自分から語らないのだ。自身の過去を・・・。

普段の翔は誰にも優しく。所謂、お人好しといった印象を持つ。

リアスと朱乃がさりげなく訊こうとするが、翔はそれを上手く受け流す。

故に、リアス達は翔の過去を知らない。

だが、何時かはちゃんと話してくれるとリアス達は思っている。

それまで、気長に待とう・・・と翔がいない時に決めたリアス達。

 

だが、リアス達は考えも予想も出来なかった。

翔がどれ程のモノを背負って生きてきたかを・・・、彼が抱える闇の深さを・・・。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。