ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

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大変遅くなってしまって申し訳ありません!
約一か月ぶりの投稿となってしまいました。



第11話 レーティングゲーム開始

部屋は暗く障子の隙間から月の光が差し込むだけ。

この部屋の主である翔はただ無心に瞳を閉じている。

 

時刻は午後10時近く、あと2時間ほどでリアスの未来がかかったレーティングゲームが始まる。

ハンデとしてもらった10日間。

その短い相手で各々が現時点で出来ることをやり尽くした。

10日前とはリアス達の雰囲気も変わり、覇気に満ち溢れている。

 

翔がこれまでを軽く振り返っていると、障子に人影が現れる。

 

「翔さん・・・。少しよろしいですか?」

 

ああ、と翔が返事を返すと静かに障子が開けられる。

そこには翔が始めて出会った時と同じ、シスター服を身に纏うアーシアがいた。

アーシアは翔の隣に腰を下ろす。

 

「部長さんが一番良い服を着てきなさいって言われましたので、やっぱり私にはこれが一番かと・・・・・・変ですか?」

 

「いや、いいと思うぞ。アーシアにはそれが一番似合うと思うからな」

 

不安な表情で翔に問いかけるアーシアであったが、翔が優しく微笑みながら答えると途端に嬉しそうな表情を浮かべる。

 

本当に表情に表裏がない子だ・・・。俺には少しばかり眩しいかもな・・・

 

内心でそんなことを思う。

人を癒す力を持つ彼女は翔にとってアーシアはある意味憧れに近い存在と言えるだろう。

 

結局、俺は誰かを斬り捨てることでしか、誰かを救えなかった・・・

 

己を嘲るように内心で笑っていると、アーシアが翔の服の裾を掴んだ。

 

「どうしたんですか?」

 

心配そうに見上げて視線を翔に向けるアーシア。

それに、何でもないさ・・・、と言って誤魔化すようにやや乱暴にアーシアの頭を撫でる。

撫でられたアーシアは、あふぅぅ・・・、と顔を紅くさせながら声を上げる。

 

「・・・不安か? これから戦いが始まることが・・・?」

 

アーシアの頭に乗せていた手を止め、唐突に翔がアーシアにそう問いかける。

 

「・・・・・・はい。正直言うなら、例えゲームでも戦いたくありません。部長の未来がかかった戦いですが、怖くて仕方がありません・・・」

 

顔を俯かせて言葉を絞り出すように言うアーシア。

その体は震えていた。

無理もないだろう。今まで命のやり取りとは無縁の世界で生きていた。

それがこの町に来てからは自分の意思とは関係なく、人の“死”を見てしまった。

例えゲームだとしても、“死”というイメージは嫌でも頭の中にイメージされてしまう。

それにアーシアは争いを好まない性格だ。

優しいが故に味方だけではなく、相手も傷つくのは嫌なのだ。

戦う恐怖だけではなく、誰かが傷つく恐怖・・・・・・。

その二つに怯え、苦しんでいるのだ。

 

そんなアーシアに対して翔は片腕で自身の胸に頭が来るように抱き込む。

突然の翔の行動に驚くアーシアであるが、すぐに安心しきった表情になる。

 

「大丈夫だ。今回は誰も死なないし、死なせない。―――勝つぞ」

 

「・・・・・・はい!」

 

先ほどまでの弱々しい雰囲気はなく、気合の入った声で返事をするアーシア。

 

時刻は午後11時30分頃。

翔とアーシアは家ではなく、オカルト研究部の部室にいた。

そこには二人だけではなく、リアスと朱乃、祐斗に小猫―――グレモリー眷属が集結していた。

修行を終えて、だいたい半日ぶりの顔合わせとなる。

小猫は両手にオープンフィンガーグローブをつけ本を読み、

祐斗は帯刀している剣に不備はないかを念入りに確認している。

だが、二人の表情には緊張がある。

リアスと朱乃は年長者として、落ち着いた表情でお茶を飲んでいる。

 

「ほら、準備を念入りにするのは良いが、力が入りすぎているぞ」

 

翔は緊張をほぐすように軽く二人の肩を叩きながら言う。

すると、二人は驚いた表情をして、翔に話しかける。

 

「そうかな? そんなにでてるつもりはなかったんだけどな・・・」

 

「・・・・・・そうですね。少し肩に力が入りすぎていたかもしれません」

 

祐斗は苦笑しながら、ふぅ・・・、と息を吐くのと同時に肩の力を抜き、小猫も深呼吸をして落ち着きを取り戻す。

すると―――

 

「皆様、準備はよろしいですか?」

 

魔方陣が展開され、グレイフィアが姿を見せた。

そして、翔達を見たグレイフィアは僅かに目を見開き驚きを示した。

 

「・・・・・・まさか、たかが10日間ほどでこれほどまで変わられるとは・・・」

 

グレイフィアの言うとおり、10日前までのリアスとは違う。

 

「ええ、いま自分達にできる限界までやったもの」

 

自信に満ちた表情で答えるリアス。

今の彼女に翔に見せた弱々しいものはなかった。絶対に勝つ、と言った意気込みが感じられる。

 

「そうですか・・・。今回のレーティングゲームは両家の皆様も中継で観戦されています。

さらに魔王ルシファー様も今回の一戦を拝見されております。それをお忘れなきように」

 

・・・ただの貴族の家事情に悪魔の長である魔王の一人が出てくるんだ?

 

「お兄様が?・・・・・・そう、直接見られるのね」

 

翔は内心でグレイフィアの言葉に疑問を浮かべていると、リアスの言葉で納得した。

 

先代の魔王は先の戦いで死んでしまい、悪魔の上層部は強大な力を持つ四人の悪魔に魔王の名を継がせた。

紅髪の魔王(グリムゾン・サタン)』―――サーゼクス・ルシファーその人だ。

 

「そろそろお時間です。皆様、準備をお願いします」

 

グレイフィアにそう言われ、翔達は展開された転移魔法陣の上に乗る。

そして、魔方陣は輝きを放ち、光が翔達を包んだ。

 

転移が終わり、目を開くと、そこは先ほどいた部室であった。

最初に転移に失敗したのか?と怪訝な表情をする翔であったが、すぐに空気が違うことに気がつき異空間に飛ばされたのか・・・、と自己解決する。

 

『皆様、このたびグレモリー家、フェニックス家のレーティングゲームの審判役を担うこととなりました。グレモリー家の使用人グレイフィアでございます』

 

グレイフィアの声が部室に響く。いや、おそらくこの空間全てに聞こえているのだろう。

説明によると、この異空間内に作られた駒王学園のレプリカであり、今回かぎりの空間ということなので、派手に戦っても大丈夫らしい。

そして、現在それぞれがいる位置は、翔達、オカルト研究部側はこの旧校舎の部室。

ライザー側は新校舎の生徒会室がそれぞれの『本陣』になり、兵士は本陣周囲まで赴くことで『プロモーション』できるとのことだ

 

「全員、この通信機器を耳に付けてください」

 

これからゲームが始まった時の連絡手段として、朱乃が小さな光の球体を配り始めた。

魔力を介して仲間同士で会話ができるようになるものらしい。

これならば先頭の邪魔にもならないので、レーティングゲームをする際にはよく使われるものだと説明をするリアス。

 

『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それではゲームスタートです』

 

キンコンカンコーン

 

学園のチャイムが鳴り響き、レーティングゲームが開始された。

 

ゲームは開始されたが、すぐには戦闘とならず、まず作戦会議を行う。

 

「さてと、どうするか決めましょう。一応、予めある程度の作戦は考えてきたんだけど、どれも型に嵌っているわ・・・・・・翔、貴方はどう思う?」

 

「色々と考えたが、俺達は初めてこういった連係を取る戦闘を行う。いくら策を考えたところでそれ通りに進むなんてありえない。結局、戦場では臨機応変に戦うことになるだろうな・・・」

 

「それだったら自分達の領域をここ以外に増やすべきね・・・。長期戦になるわね・・・」

 

机の上に、学校の全体図がマスで区切られ、チェス盤のようになっている地図を苦い顔で見ながらリアスは言う。

今の翔達は長期戦は避けるべきだろう。相手は駒の全部が揃っている上に、《王》のライザーは不死身。それに対して、リアス達側は6人であり、半分以下だ。

短期決戦が望ましい。

 

「体育館を相手に占拠された場合、こちらが不利になりますわ」

 

「チェスで言うとこのセンターである体育館。ここを先に取られたら相手のやりたい放題ですね」

 

朱乃と祐斗がそれぞれ意見を言う。

体育館は旧校舎よりであり、そこを占拠された場合、ライザー眷属達はすぐにこちらに攻め込めることになるだろう。特にライザー側には《兵士》が8人・・・・・・全員が《女王》に昇格すれば、厄介極まりない。

 

「なら、いっそのこと捨てたほうがいい」

 

「捨てる・・・?―――ッ!? 翔、まさか!?」

 

翔の言葉に怪訝な表情を浮かべたリアスであったが、すぐに何を考えているかを気づき、驚きの表情を浮かべが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。

 

「・・・・・・その考えには驚きだけれど、いい考えね。なら、少しでもこちらの校舎に近づけないように細工をしなくちゃね・・・朱乃」

 

「はい、幻術でカモフラージュすればよろしんですね?」

 

朱乃の言葉に満足気に頷くリアス。

そして、朱乃は細工を行うために部室を後にする。

 

「祐斗と小猫は森にトラップを仕掛けてきて。おそらくライザーは数人の《兵士》を最初にこちらに送り出してくると思うわ。その際の通るルートはこの森よ」

 

祐斗と小猫はリアスの指示に頷き、部室から出ていく。

 

「さて、俺の考えは分かったようだが、どうするんだ?」

 

「そうね・・・。翔ともう一人で体育館に向かわせたほうがいいわね・・・・・・。《騎士》の特性を生かせるのは室内より室外・・・なら、攻撃と防御に秀でた《戦車》である小猫ね」

 

「妥協なところだな。初めてのゲームにしては随分と大丈夫そうじゃないか?」

 

「そうかしら? ま、後のことは朱乃達が帰ってきてからでいいわ。それよりも、翔、こっちにきて寝なさい」

 

そう言って、リアスは自身の太ももを指さす。

 

「何をするんだ?」

 

怪訝な表情を浮かべる翔。

 

「いいから、こっちに来なさい」

 

「はぁ・・・何をするか言え」

 

溜め息を吐きながらも翔はリアスへと近づく。

 

「まぁいいわ」

 

そう言って、リアスは翔の胸を軽く撫でる。

 

パキンッ!

 

と、翔は自身の中で何かが外れた感覚がしたと思った瞬間、力が満ちていく。

 

「これは・・・・・・」

 

目を見開いて、驚きを示す翔にリアスは悪戯が成功したような表情で言う。

 

「・・・貴方を転生させる際に貴方の力はあまりにも大きすぎたから私はたかだか人間がそんな力を持って転生したら、体が持たないと判断し、貴方の力をいくつかに分けて封印したわ・・・杞憂に終わったのだけどね」

 

なるほどな・・・

これがこの前感じた違和感だったのか・・・・・・いや、違う・・・?

確かに封印は解かれたのだが、この前ドライグに言ったものじゃない

何か違うものだ・・・・・・並行世界を渡った影響・・・って考えるのが今のところ妥協だな

 

内心でそんなことを考えていると―――

 

『部長、僕と小猫ちゃんの準備が整いました』

 

『こちらもですわ』

 

祐斗と朱乃から通信が入る。

 

「そう・・・。朱乃は旧校舎の屋根で待機、祐斗は森で警戒しながら待機しておいて・・・。小猫は今から翔を向かわせるから、合流して体育館に向かいなさい。アーシアは私とここで待機よ。回復役である貴方は前線に出る必要はないわ」

 

リアスの指示にそれぞれが頷く。

 

「私の可愛い下僕達、準備はいいかしら? 敵は不死身のフェニックス家、有望視されている才児ライザー・フェニックスよ。さぁ、消し飛ばしてあげましょう!」

 

リアスの気合の入った言葉に頷き、それぞれが自身の持ち場へと駆け出す。

 

小猫と合流した翔は、体育館の入り口の目の前にいた。

 

「・・・・・・翔先輩」

 

「ああ、向こうはこちらにすでに気づいている。ま、元々隠密で動いてたわけじゃないから当たり前か・・・。さてと、こそこそしてても無駄だし、さっさと入るか」

 

頷く小猫を見て、翔は堂々と、入り口を開き体育館へと入る。

体育館にはすでに数人のライザー眷属がいた。

チャイナ服姿の女とブルマ姿の双子の女の子、先日ライザーの命で翔に仕掛けたミラと呼ばれた棍棒使い。

 

「こんにちは、グレモリー眷属さん・・・っと、貴方でしたか。ライザー様に喧嘩を売った殿方」

 

チャイナ服の女が翔達に声をかけ、翔の姿を見た途端馬鹿にしたような表情を浮かべて言う。

 

「どちらかというと売られた側だがな・・・。さて、リアス・グレモリーの《兵士》である御剣翔だ」

 

「私はライザー様の《戦車》を務める、シュエランよ」

 

「《兵士》のイルで~す」

 

「ネルで~す」

 

「同じく《兵士》ミラです。この前の雪辱は晴らさせてもらいます」

 

相手が自己紹介を済ませる。

 

「さてと、小猫は同じ《戦車》が相手だ。修行の成果を見せてやれ」

 

「・・・・・・はい!」

 

気合に満ちた声で返事をする小猫。

 

「俺達のデビュー戦だ。精々、恥をかかない程度に頑張るぞ」

 

翔の言葉を合図に、それぞれの相手へと駆け出す。

 

 

今、リアス・グレモリー対ライザー・フェニックスのレーティングゲームが開始された。

 

 

 

 




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