ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

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第10話 修行開始!!

 

『ゲームまで山に修行に行くわよ!』

 

ライザーとの一件があった翌日の朝。

翔の家にリアスが訪れたきた。

後ろには大きな荷物を持った朱乃と小猫、祐斗の三人がいた。

後は、翔とアーシアだけなのだが、昨日のうちに翔は、明日リアスが合宿でもしよう、

というと思ったのでアーシアと共にすでに準備を済ませてある。

 

山のふもとに魔方陣で転移してから山を登る。

空は抜けるほど青く快晴で、周囲には自然豊かな木々が生い茂り、

小鳥たちの鳴き声が耳に届く。山の風景としては最高と言ってもいいだろう。

しかし、自然豊かということは、それだけ人の手が加わっていないということだ。

そのため、土肌が剥き出しの山道は慣れない者の体力を容赦なく奪う。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、平気だ。それよりアーシアはどうだ? 慣れない山道で靴擦れとかしてないか?」

 

「大丈夫ですよ」

 

アーシアが翔を心配し声をかけるが、翔が問題ないと答え、逆にアーシアを心配する。

だが、アーシアは汗を掻く程度で、息切れはしていない。

 

「アーシアは意外と体力あるのね?」

 

「はい! 毎朝、翔さんとランニングをしていますので!」

 

リアスが疲れの色が見れないアーシアに問いかける。

それを笑顔で答えるアーシア。

そうなのだ。アーシアが翔と共に住むようになってから、

翔のトレーニングに共にやっているのだ。

共にやっていると言っても、20分ほどのランニングするだけなのだが、

運動することは嫌いじゃないらしく、毎朝続けている。

最初のころは少し走るだけで息切れを起こしていたアーシアであったが、

今では最後まで翔と一緒に走っている。

もっとも翔は軽く流している程度なのであまり疲れないのだが・・・。

 

ちなみに翔の背中には巨大なリュックがあり、更に右肩には自分のとリアス、

左肩には朱乃とアーシアの荷物がある。さらに巨大リュックの上には小猫が座っている。

これも修行だ!、とリアスに言われ持たされている・・・。

もっともこの程度じゃ修行に入らない翔であるが、別に断る理由もないので引き受けた。

 

「部長、山菜を摘んできました。夜の食材にしましょう」

 

祐斗は途中途中で山菜を採っている。

 

「この山は結構、自然が豊かだな・・・。探せばいろいろな食材が見つかるな」

 

「・・・・・・貴方、全然平気そうね」

 

普通なら息を切らし歩くのも大変だというほどの量の荷物を背負っている翔であるが、

疲労は全く見えず、余裕を見せているため、リアスが呆れた声を漏らされる。

 

「ああ、これくらいなら全然苦にもならない。どうせならリアス達も小猫同様に乗るか?」

 

「いいわ。これくらい」

 

そんな話をしていると、目的地の別荘に辿り着いた。

木造の別荘は、グレモリー家の所有物らしい。

普段は魔力で風景に隠れ、人前には現れない仕組みだそうだ。

今日は使用するので姿を現してるいるが、普通の人間には見えない仕組みになっている。

リビングに一旦荷物を起き、女性陣は動きやすい服装に着替えるために二階に上がった。

 

「僕達も着替えてしまおう」

 

「そうだな・・・」

 

翔と祐斗はこれから二人で10日間使う部屋に行き、

荷物を置いてから駒王学園のジャージに着替える。

 

「・・・翔くんの体、すごく鍛えられているね。並大抵の訓練じゃそこまではいかないよ」

 

「色々あってな・・・」

 

尊敬と呆れが混じったような声色で言う祐斗に僅かに濁すように答える翔。

二人が着替え終わり、リアスに事前に言われた別荘の中庭に向かった。

 

~レッスン1~ 祐斗と修行

 

「ハァア!」

 

気合の声と共に祐斗が翔に斬りかかるが、翔はそれを難なく避ける。

だが、祐斗はそこで攻撃を終わらせずに次々と斬りかかるが、

すべて紙一重で避けられてしまう。完全に祐斗の攻撃を見切っている。

 

「どうして攻めてこないんだい?」

 

一旦間合いを開けた祐斗が僅かに声を低くして問いかける。

翔が一切手を出さずに避けるだけなので、馬鹿にされているとでも思ったのだろう。

 

「・・・・・・・・・」

 

だが、それにも答えずにただ翔は祐斗を見据えるのみ。

痺れをきたした祐斗は再び高速で動き回り、翔の背後へと回った瞬間

強く踏み込んで上段から木刀を振り下ろしてきた。

そこで初めて翔は木刀で受け止めた。

だが、そこで終わらずにそのまま力強くスイングの要領で横薙ぎに木刀を振り

祐斗を吹き飛ばした。

吹き飛ばされた祐斗は宙で体勢を整えて着地をする。

 

「流石だね・・・。前にはぐれ悪魔を吹き飛ばしたときもそうだったけど、力が強すぎだね。

それに動きに無駄がない。僕の動きがすべて読まれてる」

 

「それは違うな。お前の動きは教科書通り・・・・・・基本に忠実って言ったほうがいいか。

確かに基本も大事だが、そればかりだとこれから先、格上や同等の相手には勝てないぞ」

 

油断なく構えながら祐斗は賞賛の言葉を翔に贈るが、逆に翔は指摘をする。

 

「それに―――」

 

「ッ!?」

 

瞬間、祐との視界から翔が消える。

息を呑む祐斗だが、すぐに思考を切り替えて、視線を動かして翔を探るが―――

 

「お前は目に頼りすぎだ・・・」

 

「ッ!? 後ろ!?」

 

不意に後ろから声をかけられる。

咄嗟に祐斗が後ろへと振り返ると、そこには木刀を肩に乗せていた翔がいた。

祐斗はすぐに後ろに下がり、距離を開ける。

 

「まいったな・・・。速さで負けるなんて・・・自信なくすよ」

 

少なからずショックを受けた様子を見せる祐斗。

速さが特性である《騎士》がプロポーションも何もしていない《兵士》に負けたのだ。

さらに言うのなら、翔の人間であり、悪魔である祐斗とは身体能力には差があるはずなのにだ。

 

「お前の弱点は、まずそれだ。ま、それは他の奴らにも言えることだが、自信と慢心は違う。

戦いとは安易ではない。不都合で、思い通りにはならない。常に最悪の事態を予測し対応する。

それが『戦い』だ」

 

翔から放たれる威圧に知らず知らずに息を呑む祐斗。

 

「そして次の弱点は―――」

 

そう言って、持っていた木刀を手放し、一瞬で祐斗との間合いを詰める。

咄嗟に木刀で防御をしようとするが、翔は防御の隙間を縫って、祐斗の服を掴み、

地面に押し付けるように投げ倒す。

 

「力が圧倒的に足りない。捕まったら終わりだ」

 

背中から来る衝撃に思わず苦悶の声を漏らす祐斗。

 

「戦闘スタイルはもう決まってるから、後はそのくらいだな。

10日じゃ無理だが、少しでも上げるぞ」

 

「うん。そうだね。じゃあ、もう一合わせお願いします」

 

そのまま、翔と祐斗は午前中ずっと打ち合っていた。

 

~レッスン2~ 朱乃との魔力修行。

 

「魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。

意識を集中的させて、魔力の波動を感じるのですよ」

 

朱乃の説明を受けているのは、翔とアーシア。

 

「あらあら、翔くんには教えることがないかもしれませんね」

 

翔の掌には赤黒い魔力によって出来た球体が存在していた。

 

「魔力放出と操作だけに特化しているからな・・・」

 

朱乃の言葉に苦笑を浮かべて答える。

 

「できました!」

 

すると隣で一緒にやっているアーシアは多少は手間取ったが、

綺麗な緑色の魔力の球体を作り出していた。

 

「あらあら、アーシアちゃんは魔力の才能があるのかもしれませんね。

ならば次は魔力を炎や水、雷に変化させます。これはイメージから生み出すこともできますが、

初心者は実際の火や水を魔力で動かすほうが上手くいくでしょう」

 

このように・・・、と朱乃は水の入っているペットボトルを自分の前に置き、手を翳すと

中の水が瞬く間に凍りつき、形を変えてペットボトルを突き破った。

 

「魔力はイメージ。 イメージすることが大事ですから」

 

「はい!」

 

「イメージか・・・」

 

~レッスン3~ 小猫との組み手

 

「・・・・・・それは太極拳の『化勁』ですか?」

 

「ああ、そうだ。よく知ってたな」

 

「・・・・・・本で読みましたから」

 

そう言いながら、小猫は翔にジャブを放つが、すべて翔の『化勁』によって逸らされてしまう。

 

「自己流にしてはなかなか鋭い突きを放つな。天性の才能ってやつか」

 

「くっ!」

 

自分の攻撃を悉く逸らしているのに褒めてくる翔に僅かに怒りを感じ小猫は翔の腿へと蹴りを放つ。

 

「(決まった!)」

 

顔には出さないが当たる寸前、綺麗に決まると確信した小猫。

だが―――

 

「にゃっ!?」

 

小猫の蹴りが当たった瞬間、何故か小猫が吹き飛ぶ。

 

「・・・・・・まるで全身が拳になったような感じでした」

 

「今のは空手の『三戦(さんちん)』の身体用法の応用だ。

筋肉を鋼のごとく締めることで攻撃を弾き飛ばす。

さらにその一瞬まで体を緩めていたから、筋肉の爆発って言えば伝わりやすいか?」

 

自身が行ったことを説明する。

その説明を聞いて、何時もの無表情を崩し、目を見開いて驚く小猫。

小猫は《戦車》。その特性は馬鹿げたパワーと防御力だ。

普通のものならばをまともに受けて無事なはずがない。

なのに翔は平然と小猫の蹴りを筋肉を締め上げただけで受け止め、

挙句の果てには吹き飛ばしたのだ。

 

「・・・・・・凄いです」

 

ただ感嘆の声を漏らす小猫。

 

「ま、ようは修行だな」

 

「・・・・・・はい」

 

ファイティングポーズをとる小猫。

まだまだ組み手は続くようだ。

 

「翔。今日一日修行して、どう思ったかしら?」

 

今日の予定していた修行内容が終わり、夕食を食べ終えた頃

食後のお茶を全員でしている時にリアスが翔に問いかける。

 

「遠慮なくいうが、俺が一番実力がある」

 

「ええ、それは間違いないわ」

 

翔の発言に誰もが突っかからずに頷く。

今日一日、翔と共に修行を行い、実力差は嫌でもわかった。

 

「翔くんは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)なしでも強い。

素の状態で《騎士》である僕の速度を超えれる・・・。パワーも十分にあり、テクニックも秀でている。

万能タイプのオールラウンダー・・・・・・敵に回れば厄介な存在ですね」

 

「・・・・・・一度も攻撃を当てることができませんでした」

 

「単純な魔法戦ならば勝てると思いますが、戦いとなれば歯が立ちませんわ」

 

「翔さんは凄いです!」

 

それぞれが今日の翔を見て自身の意見を述べる。

 

「兎に角、翔は眷族の中では頭一つ飛び抜けているわ。

先頭センスは勿論のこと、戦いに臨む覚悟、気迫。

どれをとっても上級悪魔と肩を並べるレベルだわ。

・・・・・・正直、私なんかより翔のほうが《王》に向いていると思うわ」

 

「そんなことないさ。俺は人の上に立つほど、人は出来てない」

 

リアスの言葉に、翔は肩を竦めながら否定する。

 

「それは貴方が優しいからかしら?」

 

「俺は優しくないさ。ただの偽善だ。・・・・・・優しさで誰かを救えるほど、世界は甘くない」

 

翔はリアスに答え、最後に誰にも聞こえないように自嘲した言葉を漏らす。

 

「翔・・・どうしたの?」

 

「何でもない。それよりも今、優先するのはライザーだろ?」

 

怪訝な表情でリアスは翔に話しかけるが、翔は誤魔化すように話題を変える。

 

「・・・そうね。なら、まずはお風呂にでも入って体の汚れでも落としましょうか」

 

そう言いながら、リアスは何か企んでいるそうな顔を翔に向ける。

 

「翔は一緒に入る? この別荘は露天風呂なの。

日本には裸のお付き合いって言葉があるのでしょう?」

 

「確かにその言葉は存在するが・・・何故、俺が混浴をしないといけない」

 

「なら聞いてみましょうか?」

 

翔の言葉を完全に無視して、話を進めていくリアス。

 

「わ、私は翔さんと裸のお付き合いをしたいです!」

 

「あらあら・・・翔くんのたくましいお背中を流してみたいですわ」

 

暴走するアーシア。

そして、リアスの悪戯に乗る朱乃。

 

「ああ、どうしてこうも恥じらいというものがないんだ」

 

翔は溜め息を吐いてから、呆れたように言う。

隣では苦笑をする祐斗。

どうやら完全に助ける気はないらしい。

 

「ふふふ、それで最後に小猫はどう?」

 

「嫌です」

 

「あら、残念。それじゃ、この話はなしね♪」

 

笑みを浮かべながら言うリアス。

もっとも当の本人は、全く一緒に入る気はなかったのだが・・・。

そこでとりあえず後は自由時間となり、リアス達は風呂へと入るために、着替えを取りに二階へと行った。

残された翔と祐斗も風呂へと入ることにし、着替えを取りに部屋へと戻る。

 

「上着を忘れたな・・・・・・。ま、別にいいか」

 

一緒に入っていた祐斗は先に上がり、意外と長風呂をした翔は、着替えている最中に上着を忘れたことに気がつくが、別に上半身くらいいいだろう、と思い、そのままリビングを通って部屋へと行こうとする。

リビングを通る際に、リアスがおり、話しかける。

 

「いい風呂だった」

 

「あら、そう。翔、随分と遅かっ、た・・・わね・・・・・・」

 

翔の声に反応し、振り返ったリアスは固まった。

 

「ん?・・・・・・ああ、上着着てないのは部屋に忘れたからな。別に俺は露出狂じゃないから」

 

最初は何を固まっているのか分からず首を傾げる翔であったが、

すぐに自身の今の姿を思い出し理由を述べる。

 

「え、いや・・・///。凄い体ね/////。・・・かなり傷があるわ。これは銃痕かしら・・・?」

 

翔の体には多くの傷が残っていた。特に左腕の肩の部分には酷い傷跡があった。

まるで、その箇所は一度斬られたかのような傷が・・・。

最初は顔を紅く染めて動揺するリアスであったが、翔の体にある多くの傷を見て怪訝な表情を浮かべる。

 

「ま、色々とあったのさ・・・」

 

翔はリアスの言葉に、苦笑をしながら濁した答えを漏らす。

 

「そう・・・・・・まぁいいわ。早く服着て寝なさい。風邪ひくわよ」

 

「はいはい。俺、風邪をひいたことはないんだがな・・・」

 

リアスはこの場では特に追求せずに部屋へと行くように促す。

それに答えて、翔は部屋へと戻っていった。

翔が完全にリビングからいなくなると、リアスは安心したように息を吐く。

 

「(あ、危なかったわ・・・)」

 

リアスは翔の体を見た瞬間、思わず興奮してしまった。

自分でも分かるくらい顔が真っ赤になっただろう。

思い出すだけで顔に血が上り紅くなるのを感じる。

 

「(色々とね・・・。まるで戦士みたいな体ね・・・。アーシアは見たことがあるのかしら?

いや、恐らくないでしょう。あの子はきっと顔に出てしまうもの)・・・・・・朱乃には見せられないわね」

 

「あら、リアス? 何を私に見せられないの?」

 

「ッ!? あ、朱乃いつからそこに?」

 

「貴方が顔を紅くした後、何か考え始めたときからかしら?」

 

「(良かった。翔のは見てないようね)・・・・・・別に何でもないわ。先に寝るわ」

 

リアスはそう言い、自室に逃げていくようにリビングから出た。

 

「どうしたのかしら?」

 

リビングに残された朱乃は首を傾げる。

ちなみに余談であるが、朱乃は部活中以外ではリアスとは普通に話している。

 

山に修行に来て、8日経った。

翔達は様々な修行をした。

昼は主に体を動かし、夜はレーティングゲームのルールに加え、

翔とアーシアには悪魔として必要な基礎的な知識の勉強などが行われた。

 

午前2時頃、翔は祐斗を起こさないように部屋から抜け出した。

 

さて、鍛練でもするか・・・・・・

 

そう思いながら、外に出るために玄関に向かっている途中で、リビングに明かりがついているのを見つけた。

最初は、誰かの消し忘れか? と思った翔であったが、リビングから気配を感じて、覗いてみると―――

 

「まだ、起きてたのか。リアス」

 

「あら、翔? 眠れないの?」

 

リビングに入ると、メガネをかけ、紅いネグリジェ姿のリアスがいた。

テーブルの上には幾つもの重ねられた本が置いてあった。

おそらくレーティングゲーム関連の資料だろう。

 

「・・・こんなもの気休めにしかならないけどね」

 

「勝つ自信がないのか・・・?」

 

弱音に近い言葉を漏らすリアスに、翔は静かに問いかける。

 

「正直、勝てるかどうかと聞かれれば、難しいわね」

 

珍しく弱々しい声で言うリアス。

何時もは威風堂々と何事においても自信に溢れているものとは違い、

今にも不安に押しつぶされそうな雰囲気だ。

一言で言えば、らしくない。

 

だが、それも仕方がないことだろう。

自身の今後の人生がかかっている戦い。不安になるな、と言うほうが無理な話だ。

 

「普通の悪魔なら、資料を読んである程度は対策を練れるかも知れない。

・・・・・・でも相手はフェニックス。・・・そう『不死鳥』なのよ」

 

「死なない鳥・・・・・・」

 

「その昔、フェニックスは命を司りし聖獣として人々に崇められていた。

流す涙はいかなる傷をも治し、その身に流れる血を飲めば不老不死を手にいれられると

人間界の国々に伝説を残す程だったわ。

けれど、聖獣であるフェニックスにはもうひとつの一族がいた・・・。

侯爵の地位を持ち、『七十二柱』にも数えられた悪魔側のフェニックス。

聖獣フェニックスと区別するために悪魔のフェニックスをフェネクスと呼ぶようだけれど

能力はほとんど一緒。―――不死身。私達はそれと戦わないといけないのよ」

 

リアスは手に持っていた本を積み上げているものの上に置き、言葉を続ける。

 

「つまりライザ―は死なないのよ。攻撃してもすぐ再生する。

彼のレーティングゲームの戦績は10戦2敗・・・。

その2敗は懇意にしている家への配慮だから実質無敗。

既に公式でタイトルを取る候補として挙げられているわ」

 

「死ぬことがない・・・だから、負けない。随分と単純なことだな」

 

翔はリアスの話を聞いて、嘆息したように溜め息を吐く。

 

あいつ自身には対して実力がなくとも、その身に宿す特性

―――不死によって《王》であるライザーが倒されることはない・・・

それに加え、代々重ねてきた魔力によって、大して鍛えられていなくとも大抵の者達は、

不死鳥の炎で退場させられる・・・・・・。単純だが、強力な組み合わせだ

そんな相手がリアスの婚約者か・・・・・・

 

翔がライザーとの会談の際にグレイフィアが翔の問いに沈黙で肯定した。

始めから仕組まれた婚約話・・・。

 

「嵌め手・・・。チェスでは『スウィンドル』。初めからライザ―が勝つように仕組まれているのね」

 

だが、リアスは諦めようとしない。

勝つことが不可能に近い状況なのに、リアスは戦おうとしている。

 

「そう言えば聞き忘れていたが、リアスは何故、ライザーと結婚するのが嫌なんだ?」

 

「・・・・・・私は『リアス・グレモリー』・・・・・・でもね、誰も私を『()()()』とは見てくれないの」

 

淡々と言葉を述べていくリアス。

 

「どこまで行っても、どこに行っても私は『グレモリー』として見られるわ。

名家のご令嬢、グレモリ―家の次期当主・・・・・・。

勿論、自分がグレモリ―ということは誇りよ。・・・でも、せめて自分を愛してくれる人には

()()()』と見られたい・・・接してほしい・・・。ただ、それだけよ。

どう、軽蔑したかしら? こんな自分勝手な理由で?」

 

不安な顔で問いかけるリアス。

そんなリアスに翔は―――

 

「そうかもな」

 

「ッ!?」

 

冷たい言葉を言い放つ。

その言葉にリアスは悲しい表情を浮かべる。

まるで貴方だけには言って欲しくはなかった、と言った表情だ。

 

「大いなる力には大いなる責任が伴われる。

お前のように高い地位を持つ者にはそれなりの責任が付きまとうものだ。

それが今回は政略結婚だったって話だ」

 

「・・・・・・・・・」

 

翔の言葉には反論せずに顔を俯かせて静かに聞くリアス。

体は何かに耐えるように僅かに震えている感じがした。

 

「・・・・・・ライザーを倒す方法はあるのか?」

 

「えっ? ええ、あるにはあるわ。一つは圧倒的力で押しつぶす。

もう一つは何度も何度もライザ―を殺し続ける。

前者は魔王クラスの力、後者はそれだけの体力と精神力よ」

 

突然話題が変わったことに驚くリアスだが、素直に翔の問いかけに答える。

 

「・・・・・・つまり、例え、一撃では無理でも、何度も攻撃を与え、ライザーの精神を折れば

勝つ可能性はある、と・・・?」

 

「ええ。で、でも、どうしたの? そんなこと聞いて、翔は・・・貴方は今回の結婚は仕方ないと思っているんでしょ?」

 

悲しそうに・・・、認めたくないような声で言うリアス。

それに翔は―――

 

「はぁ? 俺はただ責任の話をしただけだ。別に今回の件を肯定したつもりはない」

 

えっ? と素っ頓狂な声を上げると共にリアスは俯かせていた顔を上げた。

まるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔だ。

そんなリアスに翔は微笑みながら言葉を紡ぐ。

 

「リアスの小さい夢・・・でも、大切な夢。自分をちゃんと愛してくれている者と結婚したい・・・。

いいじゃないか。女性なら誰もが思うことじゃないのか?」

 

男の俺はよく分からないがないがな・・・、と言う翔。

 

 

「俺には貴族の家事情も、悪魔の事情も知らない。

俺が知っているとすれば、それはリアスは普段は威風堂々と自信家だが、実は甘えん坊で、

優しくて、情が深い。ただの一人の女だ」

 

自身のありのままの言葉を言う。

 

「ッ!?//////」

 

ボンッ! と音が鳴るくらい急に顔を真っ赤にするリアス。

 

「ん? どうしたんだ?」

 

「な、何でもないわ!!」

 

慌てたように言うリアス。

それに翔は首を傾げるが、本人が大丈夫と言っているので特に気にしないことにした。

 

「思ったよりも話したな・・・。そろそろ寝るとするか」

 

おやすみな・・・、と言ってポンポンと優しくリアスの頭を撫でて、

リビングから部屋へと戻っていく。

残されたリアスは暫しの間、顔を紅く染め呆然としていたが、

すぐに頭を振って深呼吸を繰り返し、平常心に戻す。

 

「・・・・・・貴方は偽善というかもしれないけど、貴方は優しいわよ」

 

そう呟く。

先ほどまで曇っていた表情はなく、吹っ切れたという表情を浮かべるリアス。

 

「・・・おやすみなさい」

 

聞こえないだろうが、すでにいなくなった翔にちゃんと返す。

その顔は笑顔であった。

 

『・・・おやすみなさい』

 

翔は部屋に向かう途中で、リアスの声が聞こえたような気がした。

 

「・・・・・・魔王や神がどれくらいだが知らんが、今の俺にはそれほどの威力のあるものは放てない。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で高めれば、話は別だが、それほど貯めれるとも限らない。

ならば―――」

 

『―――禁手。それ以外にあるまい』

 

翔の言葉に続くように言うドライグ。

 

『だが、そう易々と禁手には至れんぞ?』

 

なら、それは期待しない

少なくとも()の俺でもライザー如きの精神を折ることは可能だろう・・・

ただ―――

 

「体がついていけない可能性がある・・・・・・」

 

翔はこの世界に来て、変わったのは魔力の低下だけではなかった。

細胞レベルに刻まれた武術の感や反射、それに自身の魔力でさえ、

体がついていけなくなっているのだ。

今の今まではある程度、自身の実力を抑えていたが、それで勝てるほど、

ライザーは甘くはないだろう。

 

「鍛えた肉体は確かにあるのだが・・・・・・何故か耐えられない。まるで―――」

 

―――封印されているような感覚だ

 

『封印、だと・・・?』

 

翔の言葉に疑問の声を上げる。

神器というもので翔とリンクしているドライグからは全くそういった類いのものは感じない。

 

「落ちた体力は鍛えればいい・・・。だが、よく分からない封印はどうしようもない」

 

『本当にそんなものが施されているのか?』

 

未だに疑問の声を漏らすドライグ。

だが、他ならぬ翔自身が言っているのだから、そうなのだろう、と思い

それ以上は何も言わない。

 

「不死を殺すための戦い方か・・・・・・。

色々と問題と課題もあるが、今回は俺はリアスを救うために戦う・・・。

多くを救うために戦ってきたが、誰か一人のために戦うのも別にいいだろ?

―――(いのり)・・・」

 

憂いを帯びた表情で窓から夜空に浮かぶ月を眺める。

 

 




感想、意見受付中!
活動報告にあるアンケートは、今月中に締め切ろうかと思っています。
何か要望があれば、早めに言ってください。

今回、最後に名前だけ登場したオリキャラですが、設定はあまり決まっていません!
今のところFateの間桐桜と同じような感じです。

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