これが土屋家の日常   作:らじさ

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第4話

「まあ、ババア共のたわ言は、どうでもいいが俺たちとしてもYukiをケンカに巻き込むことは本意じゃないからな」颯太が言うと他の4人も頷いた。

「なんでだよ。ケンカだったら一緒に行くのが友達じゃないか」

「あのなYuki。一緒にケンカに参加しようがしまいが俺たちは友達だ。それに今回はどうあがいても勝ち目のないケンカだ。それに付き合わせてお前にケガさせるのは、俺たちにとっちゃ殴られるよりツラいんだよ。

適材適所ってやつだ。俺たちは身体を張るしか能がねえが、お前だって頭と顔と金持ちの家柄と女にモテるしか能がねえじゃねえか」

 

「そのうち一つでもあれば十分じゃないのかな?」少女は首をヒネった。

「まあ、一緒にケンカに連れていってくれないことを慰めてくれようとしたんだと思うけどね」Yukiが苦笑いして言った。

 

「で、どうなったんですかケンカは」

「あたしが作戦を立てたわ。時間は河川敷に6時だったから、5時頃に行って草の中に隠れていること。6時過ぎてもバカ正直に出て行かないで、連中がシビれを切らして帰り支度始めた頃に襲い掛かること。相手が1週間くらい寝込む程度のダメージを与えて1人10人倒すこと。そして、ある程度倒したら速攻で逃げて、勝負つけようなんて思わないこと」

 

「ここで勝負つけなくてどうすんだよYuki」颯太が不満げに言った。

「黙ってな、颯太。70人を一度に倒せるわけないだろう。だから1回で決着つけようと思わないで、今日はできるだけ倒してくれればいい。後は僕が何とかする。ケンカに直接参加しないんだからこれだけは聞いてもらうよ」

「まあ、Yukiがそこまで言うなら・・・」

「とにかく、あんた達は何も考えないで相手をできるだけ倒してきてくれればいいから」

「要するに暴れるだけ暴れて逃げてこいということだな」

「そう、倒す時は必ず1週間寝込む程度にダメージを与えるんだよ。そこが一番大切だからね」

5人は首を捻りながら河川敷へと赴いていった。

 

「それでどうなったのYukiさん」いつしか少女はYukiの話にのめり込んでいった。

「そこから、あたしは友達やら知り合いやら彼女たちやらツテというツテをたどって、相手の不良共の住所を全員分手に入れたの。あ、ついでにそいつらの学校の女生徒の制服も」

「今、さりげなく「彼女たち」って言わなかった?何股かけてたんだろう。大体なんでそこに女生徒の制服なんてYukiさんの趣味がでてくるんですか?」

「失礼ね。その時にはまだ、そんな趣味なかったわよ。単に交渉に必要だっただけよ」Yukiは真顔で言った。

「「なかった」って過去形なんですね・・・・・」少女はYukiの白いブラウスと黒のタイトスカートを眺めながらいった。

 

「で、夜の8時頃まで待っていたら、あいつら4人がボロボロになって帰ってきたわ」

「4人?」

「そう、颯太がいなかったの。あたしがそう聞いたら、「奴は俺たちを逃すために我が身を犠牲にして敵を食い止めてくれた。尊い犠牲に敬意を表して今日という日を忘れないでおこう」と篤が遠い目をして言ったわ」

「だいたい何が起きたか想像できるボクってもう汚れているんだよね」少女は悔しそうに言った。

「同感ね。そしたら案の定10分くらいして颯太がヨロヨロと戻ってきたの」

「あれで死なないとはしぶとい奴だな」

「篤、ちゃんと転がしたのか?」

「ああ、2~3回転してたろう」

「あんた達、颯太は我が身を犠牲にしたとか言ってなかった?」

 

「何が、我が身を犠牲だ」ゼイゼイと荒い呼吸で颯太が言った。

「敵に追われて4人で走って逃げていたら、いきなり篤が俺の足を引っ掛けて転がしやがった」

「偶然だ」

「その後お前ら、「お前の犠牲は忘れない」とか「せめて10分は持ちこたえろ」とか

「お宝のH本はちゃんと処分してやる」とか俺に向かって叫んで逃げていったろうが」

「俺にできるせめてものハナむけだ」

「なんでお前が俺のお宝のありかを知っているんだ」颯汰が篤の胸ぐらを掴みあげた。

「怒っているのはそこなんだね」

「思春期の男子生徒にゃあ最重要事項だろうが」

「足をかけて転がされたのは、どうでもいいのかい?」

「その前に俺が剛を後ろから突き飛ばしたが、持ちこたえやがったからな」

 

どうやら、お互いに誰かを生贄にしようとしたことは、この5人に取って大した問題ではないらしい。

 

「ああ、もう君たちの価値観はわかったから。それで結局何人ノシて来たんだい」

「正確には数えてないが、40人以上50人未満ってところじゃないかな」

「ちゃんと1週間は寝込むくらいのダメージを与えておいたんだろうね」

「ああ、あれだけ人数がいちゃこっちも手加減できないからな。下手すりゃ2週間は入院するくらいのダメージを与えておいたぜ」

「うん、上出来だ。じゃ残った相手は最大で30人ってとこだね」

 

「お礼参りだな」

「僕は平和主義者なんだよ」Yukiはニヤリと笑って言った。

「悪い顔しているぞYuki。じゃ、どうするんだ」

「まあ、後は僕にまかせて、とりあえず君たちは明日から僕が呼び出すまで学校休みな」

「お前、馬鹿か。学校休もうもんならお袋に殺されるわ。何の取り柄もないんだから、せめて皆勤賞だけは取れと言われているんだ」

「大丈夫、みんなのお母さんたちには僕から連絡しておく。学校の行き帰りに一人一人狙われたんじゃたまらないからね」

「まあ、2日もあれば情報も集まると思うから、そこから行動開始さ」


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