これが土屋家の日常   作:らじさ

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第8話

「で、お前らは結局何しに来たんだ?」

「おいおい、颯太とぼけるなよ、お前とヨメーズの3人が温泉旅行となったら、

この間のライブの慰労会ということだろう?それならばバンドメンバーとして俺たちも参加するのが筋ってもんだろうが」

「俺や康太もいるんですが・・・」

「聞こえんな」

 

「で、たまたま温泉に入ったらたまたまお前たちがいた」

「しかもアンナちゃんは温泉は覗かれるものと理解しているというじゃないか」

「いや、それは理解じゃなくて誤解であっ・・・・ウグ」Atsushiの蹴りが颯太の腹部に決まった。

「正論はどうでもいいんだよ。俺たちが言いたいのはアンナちゃんの期待に応えるべく行動を起し、もって日ロ友好のお役に立ちたいとかように思っておるわけだよ」

「え~と、随分話がワールドワイドになってますけど、平たく言うと結局覗きですか」

「日ロ親善活動と言え。アンナちゃんの期待に応えるためのな」

「バレて捕まった時にその理由を言ったらKGBが暗殺に来ますよ」

 

「あの4人、バカだバカだと思ってたけどバカじゃなかった、大バカだったんだね。あんなに大きな声で「覗き覗き」って叫んでれば、女湯まで丸聞こえなのに」

「でもこんなところまでわざわざ覗きのためだけに来て下さるなんて、なんだか申し訳ない気がするわね」

「え~と、由美ちゃん。そういう問題じゃないと思うの」どうも時々この人の発言は理解に苦しむなぁとボクは思った。

 

「・・・・・兄さんたち、止めておいた方がいい。仮にも芸能人なんだから」

「ふっ、康太俺たちを見損なうなよ。ミュージシャンである前に一人の男でありたいんだよ、俺たちは」

「いや、それを男の一般論にされても困るんだけど」

「それに康太だって、愛ちゃんのヌードを見たいだろう」

「・・・・・ふっ、俺はそんなものに興味はない」

 

「なんだってぇ」ボクは思わず立ち上がった。

「どっどうしたの、愛ちゃん?」

「だって由美ちゃん。康太の奴、彼女のヌードに興味がないって言ったんだよ。ボクのプライドはどうなるのさ」

「ふふふ、男の子の照れよ。分かってあげて」

由美ちゃんにそう諭され不承不承ボクは再び、湯船に浸かった。

 

「ほう、愛ちゃんのスレンダーなヌードには興味がないのか」

「・・・・・俺は硬派だからな」

「じゃ、アンナちゃんのGカップのダイナマイトバディならどうだ?」

「・・・・・そんなものどうでも・・・ウグ」

「おい、大変だ。康太が噴水みたいに鼻血を噴き出した。誰かタオルを早く持って来い」

 

「あの男ぉ~どうしてくれよう」ボクはワナワナと拳を握りしめた。康太の奴、後で折檻のフルコースだ。

「あら、向こうは大変そうね」

「ねぇ由美ちゃん、康太はアンナちゃんのヌード想像しただけで、鼻血出しちゃったんだけど、あれはどういうこと?」

「えっ?あっあれはそうね。あれは、えーとえーと・・・・・そう男の子の本能かしら」

由美ちゃんがボクと目を合わせないようにしながらとても困ったような顔で答えた。

 

「それより由美ちゃんどうしようか?あそこまで堂々と覗く宣言してるんだから、連中は絶対にやるよ。もう上がっちゃう?」

「う~ん、まだ入ったばかりでそれも勿体ないわね」

「でもこのままじゃ覗かれちゃうよ」

「それも困るわね。愛ちゃん、そこの手桶をあるだけこっちに持ってきてもらえるかしら」

ボクは言われるままに十数個の手桶を由美ちゃんの側に運んだ。

 

「これでいいのかな、何するの?」

「ちょっとお仕置きを、ふふふ」と言って由美ちゃんは微笑んだ。

「そう言えば、アンナちゃんは?」とボクは周囲を見渡した。

アンナちゃんは周囲の騒ぎを全く気にすることなく、手拭いを頭に乗せた見事な温泉スタイルで手足を伸ばして温泉を満喫していた。というかこの騒動の原因が自分の言動にあるとは、全く理解していないようだ、この娘は。

 

「よし、じゃ塀に手をかけてジャンプして顔を出して覗くぞ」とAtsushiが言った。

「「「おう!」」」と残りの3人が答えた。

 

「本当にロクでもない事ばかりにチームワークがいいバンドだよね」ボクは呆れてつぶやいた。

 

「ん、どうした?颯太、陽太、康太。お前らは参加しないのか?」

「いや、俺は遠慮する。この上、アンナの裸まで覗いたのがバレた日にゃあ、そのまま教会まで強制連行されそうだ」

「俺も遠慮しとく。由美ちゃんに悪いから」

「・・・・・俺はとてつもなく嫌な予感がする」

 

「ちっ、だらしねぇなあ、腰抜け共が。そこで男の生き様をよく目に焼き付けとけ」とAtsushiが吠えた。

「覗きの何をそんなに自慢してんだ、お前らは」

「覗きで男の生き様語られても」

「・・・・・そこまで覗きに人生かけんでもいいと思うんだが」


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