これが土屋家の日常   作:らじさ

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第5話

帰り道にお御籤売り場があった。

 

「よし、ここで各人お御籤をひく」

「兄貴、今時お御籤って流行らないよ」

「バカ者、神社にお参りしてお御籤を引かずにどうする。神様からの声だと思って今後の人生の指針にするがよいぞ」

 

「(お御籤ってそんなに壮大なものだったの?)」

「(・・・・・逆らうな。どこかの世界に逝ってしまっている)」

 

ということで颯太君の命令によって、みんなでお御籤を引くことになった。

 

「よし、各人それぞれのお御籤を取ったな。開け」颯太君の号令で一斉に開いた。

 

「中吉か、まあまあだな」

「・・・・・」

「・・・・・吉だ。用心が必要なのか?」

「・・・・・・・・・・」

「私は小吉です。ちょっと悔しいなぁ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ふぇ~、ボク末吉だよ。アンナちゃんは?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「私は大吉デス」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「すご~い、見せて。なになに「待ち人:既に傍にいる」って合ってるじゃない」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「さっきから黙っているけど、颯太君はなんだったんですか?」

「うん?いや、大したことないよ、愛ちゃん。さあ、帰ろうか」

「そんなこと言わずに見せて下さいよ」ボクはそう言って颯太君の手からお御籤を奪い取った。

 

「え~っと、なになに。・・・・・凶。あ、でも恋愛運はいいじゃないですか。「待ち人:既に傍にいる」って」

「(大吉のアンナちゃんと凶の兄貴のお御籤の文言が一緒なんだが)」

「(・・・・・しかも、それがほぼ合ってるところが恐ろしいな、ここのお御籤は)」

 

「フフフフ」急に颯太君が笑いだした。

「どっどうしたんですか、颯太君。そこまでお御籤に人生かけなくても」

「何を言うんだ、愛ちゃん。さあ、練習は終わりだ。本番いくぞ」

 

「「「「「はぁ?」」」」」

 

「ライブでも何でも周到な練習なくして、成功はありえん。だから今のは練習だったのだ。さあ諸君、本番のお御籤を引こう」

 

「(おい、何か言いだしたぞ)」

「(・・・それより何をすれば、お御籤が成功したことになるのだ?)」

「(お兄さんって、勝つまでゲームやめないタイプだったんですね)」

「(颯太君って、どれだけ大人気ないの?)」

「(お御籤って、この番号をコンプリートすればいいんデスか?)」

颯太君のせいで、アンナちゃんがお御籤を間違って理解してしまった。

 

「何をグズグズしている。神様を待たせては失礼だ。早くひけ」

しょうがないのでボクたちはもう一度お御籤を引き、颯太君の号令で一斉にあけた。

 

「大吉だな」

「・・・・・大吉か」

「あら、私も大吉」

「えーっ、ボクも大吉だよ」

「私もまた大吉デス」

 

全員の目が颯太君に注がれた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「颯太君は何だったんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・大凶だ」

 

「大凶なんて入っているもんなのか?」

「・・・・・恐ろしいほどの神の意志を感じる」

「まっまあ、後は良くなるだけと思えば・・・」

「スゴイなあ。大凶なんてボク初めて見たよ。ある意味、大吉より激レアだよね」

颯太君がワナワナ震えている。

 

「そう言えばアンナちゃんは、また大吉だったんだ。ちょっと見せて。恋愛運は「思うがままに突き進め」かあ」

今迄も十分突き進んできたと思うんだけど、神様のお墨付きが得られたわけだ。

 

「颯太君の恋愛運は何ですか?」

「えっ、恋愛運?「この門より入りし者、全ての希望を捨てよ」って、これがお御籤の文句かぁ」と言ってお御籤を地面に叩きつけた。

 

由美ちゃんがそれを拾って

「あらあらバチが当たりますよ。アンナちゃん、お御籤を貸してちょうだい」と言ってアンナちゃんからお御籤を受け取ると、

二枚のお御籤を重ねて折り畳み近くの木の枝に結んだ。

 

「これで大丈夫です。二人で半分っこ。アンナちゃんの幸運がちょと減っちゃうけど大丈夫よね、アンナちゃん」

「はい、ソータの側にいられる方が大事デス」

うーん、アンナちゃんは健気だなぁ。それにひきかえ颯太君ときたら

「ふん、俺はもともとこういうものは信じてないんだ。さあ、宿に帰って温泉にでも入ろう」と言って歩き出した。本当に大人気ない。

 

「(さっき、お御籤は神の声だから人生の指針にしろとか言ってなかったか?)」

「(・・・・・覚えてないだろう絶対)」

 

一人で先にズンズン歩いている颯太君の頭に鳩のフンが落ちた。

 

「「「「「あっ」」」」」

 

「・・・・・さぞや名のある神社に違いない」康太が境内を振り返りつぶやいた。


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