「アンナちゃんは、そんなにShuが好きなんだ?」
「ハイ、初めて見た時に雷に撃たれたようになって、ああワタシはこの人と結婚するんだと思いまシタ」
「そっそこまでなの?」
「運命デス」
「でもほらビジュアル系だから化粧とか落としちゃうとイメージがだいぶ違うんじゃないかなあ?」
少女はShuである少年の兄の姿を想い浮かべて言った。
少女自身未だにShuと兄が結びついていないのだ。
「そんなことはありまセン。Shuが素顔で道を歩いていても見つけきれる自信はありマス」
「すっ凄い自信だね・・・」
「ダー、You Tuboの動画を2000回以上見ましたカラ、いまや骨格だけでわかるようになりまシタ」
「・・・・・立派な検死官になれる」
「愛の力デス」
「・・・・・霧島と同じ匂いがするんだが」
「まったくもう、康太は胸にしか興味がないの?」
「・・・・・一文字もそんなことは言ってないんだが?性格の話だ」
「ところでアンナちゃん、これからどうするの?」
「本当は土曜日まで日本にいてタコ&ライスのライブを観てからロシアに帰るつもりでシタが
早めに帰るしかありまセン。今日はとりあえず雨も降ってないので野宿しようカナと。
近くにいい公園ありまセンか?」
「ダメだよそんなの。女の子が野宿なんて危ないよ」
「デモ他に方法が・・・・・」
「大丈夫。ボクに任せて」と少女は薄い胸を叩いて言った。
「・・・・・何でこうなるのだ?」30分後、3人は土屋家の前に立っていた。
「えっ?だってボクの家は遠いし狭いから。康太の家だったら客間もあるし
アンナちゃんが泊まっても問題ないかなぁと」
「・・・・・「かなぁと」じゃない。なんでお前はいちいち我が家に問題を持ち込みたがるのだ。
家には年頃の兄弟が3人もいるんだぞ。大問題だろうが」
「・・・・・何が問題なの?」心から不思議そうに少女が聞いた。
「・・・・・いろいろ問題だろうが」
「なに言ってるかなぁ。そこで問題起こせるような連中だったら、
今までに彼女の10人や20人できてるって。
あんまりバカな冗談言ってないで、さっさと行くよ」
まったく歯牙にもかけてはいなかった。
「・・・・・待てというのに、親父やお袋には何て説明するのだ?」
「圭君や裕ちゃんだったら、ボクがお願いすればすぐ聞いてくれるから大丈夫だよ」
「・・・・・」
悔しいことに確かに両親は、3兄弟よりもこの少女を遥かに信頼しているのだ。
「・・・・・ちょっと待て」
「くどいなあ康太は、一体何なのさ」
「(・・・・・兄貴がShuということは、アンナには内緒にしておいてくれ。いろいろ問題が起きそうな気がする)」
「(それもそうだね。夢が破れるのも可哀そうだしね。わかったよ)」
二人のやりとりを聞いてたロシアン少女は不安げに言った。
「あの~、ご迷惑のようでしタラ、やっぱり私は野宿でも・・・・・」
「ははは、何を言うのさアンナちゃん。小さい家だけど遠慮せずにどうぞ」
「・・・・・俺の家だ」
玄関のドアを開けて「ただいま」と言った。廊下にジャージ姿の長男の颯太が立っていた。
「おお、お前ら遅かったな。今、由美子さんも来て・・・・ドワァ」
颯太を見ると同時にアンナが大声で「Shu」と叫んで飛びついていた。