これが土屋家の日常   作:らじさ

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第3話

「アンナちゃんは、そんなにShuが好きなんだ?」

「ハイ、初めて見た時に雷に撃たれたようになって、ああワタシはこの人と結婚するんだと思いまシタ」

「そっそこまでなの?」

「運命デス」

「でもほらビジュアル系だから化粧とか落としちゃうとイメージがだいぶ違うんじゃないかなあ?」

少女はShuである少年の兄の姿を想い浮かべて言った。

少女自身未だにShuと兄が結びついていないのだ。

 

「そんなことはありまセン。Shuが素顔で道を歩いていても見つけきれる自信はありマス」

「すっ凄い自信だね・・・」

「ダー、You Tuboの動画を2000回以上見ましたカラ、いまや骨格だけでわかるようになりまシタ」

「・・・・・立派な検死官になれる」

「愛の力デス」

「・・・・・霧島と同じ匂いがするんだが」

「まったくもう、康太は胸にしか興味がないの?」

「・・・・・一文字もそんなことは言ってないんだが?性格の話だ」

 

「ところでアンナちゃん、これからどうするの?」

「本当は土曜日まで日本にいてタコ&ライスのライブを観てからロシアに帰るつもりでシタが

早めに帰るしかありまセン。今日はとりあえず雨も降ってないので野宿しようカナと。

近くにいい公園ありまセンか?」

「ダメだよそんなの。女の子が野宿なんて危ないよ」

「デモ他に方法が・・・・・」

「大丈夫。ボクに任せて」と少女は薄い胸を叩いて言った。

 

「・・・・・何でこうなるのだ?」30分後、3人は土屋家の前に立っていた。

 

「えっ?だってボクの家は遠いし狭いから。康太の家だったら客間もあるし

アンナちゃんが泊まっても問題ないかなぁと」

「・・・・・「かなぁと」じゃない。なんでお前はいちいち我が家に問題を持ち込みたがるのだ。

家には年頃の兄弟が3人もいるんだぞ。大問題だろうが」

「・・・・・何が問題なの?」心から不思議そうに少女が聞いた。

 

「・・・・・いろいろ問題だろうが」

「なに言ってるかなぁ。そこで問題起こせるような連中だったら、

今までに彼女の10人や20人できてるって。

あんまりバカな冗談言ってないで、さっさと行くよ」

まったく歯牙にもかけてはいなかった。

 

「・・・・・待てというのに、親父やお袋には何て説明するのだ?」

「圭君や裕ちゃんだったら、ボクがお願いすればすぐ聞いてくれるから大丈夫だよ」

「・・・・・」

悔しいことに確かに両親は、3兄弟よりもこの少女を遥かに信頼しているのだ。

 

「・・・・・ちょっと待て」

「くどいなあ康太は、一体何なのさ」

「(・・・・・兄貴がShuということは、アンナには内緒にしておいてくれ。いろいろ問題が起きそうな気がする)」

「(それもそうだね。夢が破れるのも可哀そうだしね。わかったよ)」

 

二人のやりとりを聞いてたロシアン少女は不安げに言った。

「あの~、ご迷惑のようでしタラ、やっぱり私は野宿でも・・・・・」

「ははは、何を言うのさアンナちゃん。小さい家だけど遠慮せずにどうぞ」

「・・・・・俺の家だ」

玄関のドアを開けて「ただいま」と言った。廊下にジャージ姿の長男の颯太が立っていた。

「おお、お前ら遅かったな。今、由美子さんも来て・・・・ドワァ」

 

颯太を見ると同時にアンナが大声で「Shu」と叫んで飛びついていた。


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