「玄関だけで3話も使っているんですから、そろそろリビングに戻って下さい」今や徒手格闘戦に突入している颯太とアンナに向かって言った。
「3話って・・・・・君が何を言っているのかわからないよ、由美ちゃん。ドワッ」颯太がアンナの突きを避けながら答えた。
「そういう小ネタばかり入れているからいつまで経っても話が進まないんです」
「ギクッ」書いている人は10,0000のダメージを受けた。
「陽向ちゃんたちもいつまでもそこに立ってないで、リビングに入ってちょうだい。デートの反省会を始めるそうだから」颯太とアンナの格闘戦を観戦している3人に向かって由美子が言った。
「それもそうだね。じゃ、みんなリビングに行こう」陽向が誠と由香を促した。
「あの修羅場を見ながら全く動じてないな、この人は」誠が感心したようにつぶやいた。
「もう、どうでもいいからサッサと反省会とやらを終わらせて帰りましょう。お父さんに怒られちゃうわ」由香が言った。
まだ、戦いの余韻が冷めやらぬ様子の颯太とアンナを残して3人はリビングに向かい、陽向がリビングのドアを開けた。
「「「・・・・・・・・・・・」」」
「おい、アホ」誠が陽向に向かって言った。
「なっ、何かなマコちん」陽向が答えた。
「お前、これから何やるって言ってた?」
「今日の楽しいデートの反省会・・・・・・のはずなんだけど」
「これのどこが「楽しいデートの反省会」をやる会場なのよ」由香も陽向を責めるように言った。
3人の目の前には愛子と陽大が床にうつ伏せに倒れこんでおり、ソファーでは康太横になって輸血していた
「デートどころかサバトとか黒ミサとかの怪しい集会でもやってたんじゃねぇのか?」
「いや、予定ではデートしてきたはずなんだけど」
「一体どんなデートすればこんな瘴気が漂うような雰囲気になるのよ」
「いや、あたしに聞かれても」
「まるで野戦病院だな」
「あら、3人ともどうして入り口に立ったままなの?早く中に入ってちょうだい」由美子が言った。
「いや、中に入れって言われても・・・・・」陽向が口ごもった。
「しかし、この人も大概物事を気にしない人だな」誠は更に感心したように言った。
「これ何があったんですか?」由香が尋ねた。
「たぶんデートで疲れたんじゃないかしら。はしゃぎ過ぎたのね、きっと」由美子が微笑んで答えた。
「(一体、どんなデートすりゃ輸血が必要になるんだよ)」
「(物事に動じないにも程があるわね)」
「(それより愛ちゃんと陽兄がピクリとも動かないんだけど、まだ生きてるのかな?)」
「だからいい加減に忘れろ」
「後で詳しく問い詰めマス」
颯太とアンナが騒ぎながらリビングに入ってきた。
「ん?どうしたお前たち。立ってないで座ったらどうだ?」
「いや、颯兄。これってどうしたの?」陽向が尋ねた。
「これ?何のことだ」颯太が不思議そうに答えた。
「何か変わったことがありましたカ?」アンナも同調するように言った。
「(おい、誰もこの光景を不審に思ってないぞ)」
「(一体、あなたの家の日常生活はどうなってるのよ)」
「(いや、3人とも細かいことは気にしないタイプだから)」
「(細かいって半分が死にかけてるじゃねぇか、気にしないで済まされるレベルじゃねぇぞ)」
「(たっ、多分デートがとても楽しかったんだよ)」
「(クリミアに傭兵で行ったってこんなざまにはならんぞ)」
「(無事な人たちが誰も気にしていないというのも凄い話だわね)」
「(とりあえず息はしているみたいだから大丈夫だよ、きっと)」
「おい、3人とも何をゴチャゴチャ話しているんだ。そろそろ反省会を始めるぞ」颯太が3人に向かって宣言するように言った。
「いや、この場の1/3の人間が死にかけているってのに反省会もヘッタクレもないだろう」誠が言った。
「まあ、疲れているんだろう。そろそろ起こすか」全く気にする様子もなく颯太が答えた。
「疲れってレベルじゃねぇんだよ。あんたんちの基準で考えてるんじゃねぇぞ」
「ハッハッハ、マコちんは意外と神経質なんだな」颯太が笑った。
「全然、話が通じてないわね」由香が呆れたように言った。
「それはまあ、いつものことだからいいとして」陽向が言った。
「いいわけあるか!!」誠が怒鳴った。
「マコちんが何を気にしているのかよくわからんが、何か急いでいるようだからアンナ君、みんなを起こしてあげなさい」
「起き上がれるの?あれ」由香がツブやいた。
「ハイ、みなさんいつまでもノンキに寝ていないでそろそろ起きて下サイ」アンナが3人を揺り起こした。
「寝ているわけじゃないと思うんだが」
「・・・・・・ピクっ」
「うっ、動いたぞ」誠が叫んだ。
「・・・・・・ピクッピク」
「逃げた方がいいんじゃないかしら?あれに噛まれたらゾンビになりそうよ」
「・・・・・・ピクッピクッピク」
「バイオハザードじゃないんだから」
「ウウウウウウっ」とうめき声を上げながら愛子と陽大が床から起き上がった。
「おい、康太もいつまでも血で遊んでないでトットと起きろ」颯太が康太蹴っ飛ばした。
「・・・・・・・・・遊んでいるわけではない」康太がうっすらと目を開けた。