これが土屋家の日常   作:らじさ

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久しぶりの土屋家でございます。

入院中はなぜか気が乗らなくて書けなかったので、
ほぼ一ヶ月ぶりの更新なんですが腑に落ちないことが一つ。

 「なぜ、新作発表した時よりも何もない時の方がUAが多いのか?」

謎です。

あまりに久しぶりすぎて正直書き方忘れたのですが、お楽しみいただけましたら幸いです。


第19話

誠はいつもの駅のいつもの場所でイライラしながら待っていた。

 

「ねえ、陽向。そろそろ出て行かなくていいのかしら。竜崎はそろそろ我慢の限界みたいよ」由香が陽向に向かって言った。

「まだまだだよユカりん。愛ちゃんのデート作法によれば最低15分は待たさないと」

「あんまり工藤先輩の言うことは、真に受けない方がいいと思うんだけど」

 

誠が意を決したかのように身体を反転させると、陽向たちが隠れている柱に向かって歩き出し裏に隠れている陽向の頭にゲンコを喰らわせた。

 

「痛いなぁ、何すんのさマコちん」

「何すんのさじゃねぇ。黙って待っててやりゃいつまで待たせやがるんだ、このアホ」

「気がついてたの竜崎」由香が言った。

「気がつくも気がつかないも、毎回同じことやってるだろうがお前らは。着いた時から柱の影に隠れているのは知ってたわ」

「デートのルールだって愛ちゃんが・・・・・」陽向が頭を撫でながら言った。

「お前のアホにあの先輩の変なこだわりまで加えられた日にゃアホさ加減にターボが・・・・・ちょっと待て。お前、持っている金を全部出してみろ」

「いきなりなにさ。カツアゲ?」陽向が抗議の声を上げた。

「カツアゲじゃねぇ。あの先輩の妙なこだわりのお陰で去年のクリスマスにお前らの分まで金払わされて小遣い2ヶ月分が吹っ飛んだのを思い出したんだよ」

「デートは男の子が全部払うもんなんだよ」

「つべこべ抜かさずとっとと出せ」

「全くマコちんは、男としての器が小さいんだから」陽向がブツクサ言いながら所持金を誠に渡した。

 

「城ヶ崎由香くん」誠が陽向を睨みながら由香に話しかけた。

「なっ、なによ。いきなりフルネームで」

「今日の僕たちの目的は何だったかな?」

「陽向言うところのデートでしょ。お得感もドキドキ感も全くないけど」

「そうか、デートだったか。ところで土屋陽向くん」

「何かなマコちん?」

「何かなじゃねぇ。この金は一体どういう了見だ」誠の手のひらには500円硬貨が乗っていた。

「あたしの所持金の全額だけど?」陽向が臆することなど何もないとばかりに

胸を張って答えた。

「人を無理やり呼びつけた上にタカる気マンマンなのかお前は」

「だって、デートは男の子が払うものだって愛ちゃんが言うから、あたしが財布持ってる必要ないじゃん」陽向が悪びれずに言った。

「つまり確信犯だな。ふふふ、そうそう俺がお前の思いどおりになると思うなよ」

「どういう意味さ、マコちん」

「お前がタカりに来ると見越して俺も財布を置いてきた。これが俺の全財産だ」

 

誠が突き出した掌には500円硬貨が1枚と100円硬貨が2枚乗っていた。

 

「それが女の子とデートする男の態度なの」陽向が抗議の声を上げた。

「うるせえ。最初から人の財布をあてにしている奴に言われたかぁねえ」誠が答えた。

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ、あなたたち。2人して1200円で何しようっていうの」

「だってマコちんが・・・・・イタッ」

「このアホガ・・・・・グオッ」

二人に由香の怒りの鉄拳が炸裂した。

「全くあんたたち二人は揃いも揃って。しょうがないから今日のところは私が立て替えてあげるから、明日返しなさいよ」

「・・・・・はい」

「・・・・・おお」

 

「まったくやっぱり来るんじゃなかったわ・・・・・あれ?」由香がバッグの中を一生懸命探しだした。

「あの、ユカりん。どうしたのかな?」

「どうなさったんでしょうか、城ヶ崎さん」

「財布忘れて来ちゃったみたい、てへ」由香がごまかし笑いを浮かべた。

「今どき「てへ」でごまかせるつもりだなんて、ユカりんも大概いい神経してるよね」

「それより俺たちが殴られたのは何だったんだ?」

「うるさいわね。私のは不可抗力。あなたたちみたいに確信犯じゃないの。それに小銭入れはあるみたいだから大丈夫よ」

 

由香が小銭入れを開けて中身を出してみたら、かろうじて1000円になった。

 

「3人で2200円・・・・・」陽向がつぶやいた。

「映画も見れないな・・・・・」誠も言った。

「いや、そんなことの前に帰りの電車賃の心配しなさいよ。とりあえず帰りの電車賃をそれぞれ取って」

それぞれの電車賃を確保したところ、残高が1260円になった。

 

「一人頭420円だね・・・・・」

「コンビニ弁当も買えんぞ」

「おにぎりとお茶だったらなんとかなるよ」

「なんでデートって呼び出されておにぎり食べて帰らなきゃならないのよ。交通費の方がはるかに高いじゃない」

 

1年生トリオのデートはサバイバルの様相を呈してきたのであった。

 


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