「ちょっちょっと待ってよ。普通に参考書を買えば今はFカップくらいが普通なんだってば」。
僕は必死に美波を説得する。何しろ目が本気なのだ。
「だから、Bカップ以下はマニア向けというか特殊用途というか・・・ギャァ」
どうやら説得の言葉を間違ってしまったようだ締め付けが厳しくなる。
「ウチの胸はマニア受けしかしないっていうの?」
「いや、そうじゃなくて、ほら昔の偉い人の言葉にもあるだろう「貧乳は希少価値だ。ステータスだ」って、
だから美波ももっと自信を持って・・・イタタタ」肘は既に可動域の限界を超えてしまっている。
「誰が貧乳なのよ。誰が・・・」
これでも納得してくれないらしい。あとはえーっと「胸の大きさが決定的な戦力差ではないということを教えてやる」
いや、美波の場合小さい方が確実に戦力は大きいから逆効果だ。
「胸なんて飾りです。エロい人には分からんのですよ」
・・・・いろんな意味で逆効果のような気がする。というか僕へのダメージの方が大きいじゃないか。
肘からミシミシという嫌な音がしだした。ヤバい限界かと思った時に工藤さんが声をかけてくれた。
「美波その辺にしてあげなよ」
「何よ愛子。この巨乳好きのスケベの肩もつの?だいたいあんただって
ウチと同じぐらいの胸なんだから、あんたも侮辱されているのよ」
「ボクは別に吉井君が巨乳好きだって構わないし、それにこっ康太はボクくらいの
胸が好きだからいいんだもん」
「あっ愛子いつ見せたの」美波が驚いて力を緩めたところで脱出した。
「あ、べっ別に直接見せたわけじゃなくて、この前一緒に帰った時に、にわか雨に降られちゃって、
その時雨に濡れてブラウスが透けちゃってブラが見えたの。それを見た康太が鼻血出しちゃって。
それってボクくらいの胸が好きってことだよね」
工藤さんは恥ずかしそうな、でもどこか得意げな顔でそう言った。
工藤さん、助けてもらったところ悪いんだけど、その状況なら相手が爆乳でも巨乳でも普通乳でも
貧乳でも微乳でも無乳でも、ムッツリーニなら分け隔てなく鼻血を出すと思うんだ。
その意味ではムッツリーニはあらゆる女の子に平等だ。
どうも工藤さんはポジティブに思い込みが強い女の子らしい。
「工藤取り込み中のところ悪いんだがな」雄二が工藤さんに話しかける。
「ん、どうしたの坂本君」
「お兄さんが急に大学に行くことになったんで、晩飯は明久に食わせてやってくれと」
何を言いだすんだこの男は、鬼畜だと思っていたがここまで鬼畜だったとは。
「ははは、何を言いだすのさ雄二。お兄さんはいつもコンビニ弁当を食べている雄二に工藤さんの手料理を食べてもらいたいと言ってたじゃないか」
「こいつ人を売りやがった。うちのババアの食事がマトモならコンビニ弁当なんて食わずにすむんだ」
「無駄に向上心のある姉さんの料理を食べさせられる僕の身になってみろ」
「いや、落ち着けおぬしら。いつの間にか工藤の手料理を食べたい方向に話がいっとるぞ」
僕たちの醜いやりとりを聞いていた工藤さんは、明るく宣言した。
「そういうことなら大丈夫。今日はカレーだから何人増えてもオッケーだよ」