まだ誰一人としてデートが始まっていません。
(つーか、デート内容も決まってません)
本当にこんな書き方でいいのかと疑問を抱きつつも
適当にギャグを入れる書き方以外できない自分に気が付きました。
「カレーで殺気をまき散らすわけ」
「それは本当に料理なのか?」
「まあ、それはともかくとして2回目に愛ちゃんカレーを食べた時にはね」
「1回で懲りなさいよ、あなた達は」
「だって、しょうがないんだよ。土屋家家訓の第一条が「愛ちゃんを泣かしてはいけない」なんだもん」
「家訓とか言って仰々しい割には、最近できたんじゃないのか、それ?」
「ちなみに第二条は「アンナちゃんがボケたらツッコマなければならない」なんだけど」
「わざわざ家訓にする意味が全く理解できないんだけど」
「とにかくカレーを口に入れた途端周囲が暗くなって・・・・・」陽向が思い出しながら言った。
「今度は、縄文人の祖先が河原に並んでいたというオチじゃないでしょうね」
「いや、作り話じゃないんだってば。何か妙に体が軽いなあと思ったら、あたしが天井から下を見下ろしていて、リビングにスプーンを持ったまま倒れていた自分が見えたの。で、天井のあたしと倒れているあたしが光る紐みたいなもので繋がっていてね」
「カレーというか食事の時の反応じゃねぇだろうそれは」
「で、ビュンビュンって音がするから何だろうなぁと思ってリビングの隅をみたら、黒いフードを被った骸骨が大鎌で腰の入った素振りしていたんだよね」
「「・・・・・」」
「何となく、あれが近づいてきたらヤバいと思って軽い体で一生懸命平泳ぎして倒れている身体に戻ったんだけど、戻る瞬間に骸骨の鎌が髪の毛をかすったんだよ。一体何だったんだろうね、あれ?」
「あなた、それって・・・・・」
「世間一般では、死神と呼ばれているものじゃないのか、そいつは」
「あたし危なかったの?」
「というかそれはもう食事とかいう範疇を超えて、兵器のレベルだろうが」
「そういや、なんだか家に自衛隊化学学校の入学案内書が届いたって愛ちゃん不思議がってたね」
「軍事機密レベルな料理なわけね」
「だいたい、たかがカレーでそれだけの威力を持つってのは、何か変な薬でも入れてるんじゃねぇのか?」
「いや、それが買い物から作るところまでずっと一緒にいて監視してたことがあるんだけど、普通の食材で普通に料理しているだけなんだよ。ちょっと個性的な材料を使うけど」
「それで何でそれだけ破壊力があるのよ」
「それが土屋一族七不思議のベスト1位たる由縁なんだよね」
「何だその土屋一族七不思議ってのは?」誠が尋ねた。
「いや、土屋一族600年の歴史に伝わる伝説なんだよ」
「どうせまたろくでもないこと言い出しそうな気がするんだけど・・・・・」
「そうは言うけどね。愛ちゃんカレーが1位になるまでは「なぜ六代目土屋正蔵は150歳まで長生きすることができたのか」っていうのが、400年間ず~と1位の座に君臨していたんだよ」
「それをたかがカレーで蹴落としたのか?」
「ちなみに2位は「なぜアンナちゃんはあんなに大食いなのにスタイルがいいのか」というもので・・・・・」
「伊賀忍者ってのは、実はあんまり大したことやってなかったんじゃねぇのか?」
「今は七不思議を愛ちゃんとアンナちゃんが独占していて、400年1位に君臨してきた「六代目土屋正蔵の謎」は、7位圏外に転落しちゃったんだけど・・・・・」
「あなたのとこのスットコドッコイな一族が600年も頭領として続いているっていうことの方が遥かに不思議だわ」
「ということで、あたしはそういう危険から二人を護ってきたんだから、ちょっとくらいお礼を言われてもいいと思うんだけど」陽向が二人に向かって勝ち誇ったように言った。
「何だか、そこまで自信満々に言い切られるとお礼しなきゃいけないような気になってくるわね」
「俺たちの全く知らないところで、勝手に生命の危機に立たされた上に護ってもらったことに対して、お礼を強要されているような気がするんだが」二人は考えこんでしまった。
「でも、あたし少し反省しているんだ」陽向が声の様子を落として言った。
「あなたが反省?珍しこともあるものね」由香が驚いたように言った。
「お前に反省という語彙があったことの方が不思議だな」
「いや、二人を愛ちゃんカレーから護るよりも最初のうちで食べさせておけばよかったんじゃなかったかと思って」
「最初は不味いというだけだったのね」
「最初の方だと、致命傷だけで済んでいたと思うんだけど・・・・・」陽向が済まなそうに言った。
「致命傷というのは、「だけで済んでいた」ですまされる問題なのか?」
「それのどこが反省なのよ」
「その後、愛ちゃんが研鑽に研鑽を重ねちゃったから・・・・・」陽向が言いにくそうに言う。
「じゃ、改良されていいことじゃないか」
「研鑽の結果、少なくとも食べられる程度にはなったってことでしょう」
「いや、今や一口でコンビニに行く位のライト感覚で軽く臨死体験できるくらいにまで腕が上がっちゃって」
「何で研鑽して状況が悪化しているんだ」誠が怒鳴った。
「マコちん。上達ってのは、いい方向への上達と悪い方向への上達があるんだよ」陽向が教え諭すように言った。
「なに偉そうにドヤ顔しているんだ」誠は陽向の頭にコブシを叩き込んだ。
「即刻、台所を封鎖しなさい!」由香も怒鳴った。
「あ、そういえばマコちんにはお祖父さんが3人とお祖母さんが5人いたことになっているから、愛ちゃんに聞かれたらそう答えてね」
「お前は何を言い出すんだ?父方母方含めても祖父さん祖母さんは2人ずつだろうが」
「いや、それが愛ちゃんが二人のもてなしの話を出すたびに「マコちんは法事でこれないみたいだよ」って言い訳してたんだよね。そしたらこの間「ねえ陽向ちゃん。計算してみたらマコちんってお祖父さんが3人とお祖母さんが5人いることになるんだけど」って聞かれちゃってさ。あたし焦っちゃったよ」
「お前が後先考えずに法事を言い訳にするからだろうが、それにうちの祖父さん祖母さんは、まだ両方共生きとるわ」
「勢いだけで生きているとこういうことになるわけね」
「それとユカりんはT大理Ⅲを目指していることになっているから、よろしくね」
「はぁ?あたしは普通に音大志望なんだけど」
「仕方ないんだよ。愛ちゃんが話だす度に「ユカりんは塾の模試で忙しいみたいだよ」って言い訳していたら、「そんなに勉強してどこ受けるんだろう」って言われたから「「T大の理Ⅲだよ」っとでも言わなきゃ、理屈に合わなくなっちゃって」
「勝手に人の進路ネジまげるんじゃないわよ。猫の名前継がそうとした女が」由香のコブシも炸裂した。
「いたたた。いや、別に本当の話してもいいんだけど、そうしたらカレーパーティだよ」
「ジャイアンのリサイタルに招待されたのび太のような気分だな」
「まさか夢に見ていた高校生活が2学期で終わるなんて」二人は悲観の涙に暮れた。
「だから、とりあえず3人でデートして、愛ちゃんが付け入る隙を見つけないようにしようってわけなの」
「いや、それは」
「それともカレーの方がいい?誰か会いたい人いるんだったら、会えるよ。死んだ曾祖父ちゃんとか」
「城ヶ崎君。今度の日曜日のイベントを調べてくれ」誠が言った。
「もうやっているわ」由香は必死にスマホでいろいろと検索をしていた。