これが土屋家の日常   作:らじさ

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コンピュータトラブルで更新が遅くなってしまいました。
大変申し訳ありません。


第20話

案内(もちろんアンナちゃんの微塵の迷いも無き道案内)によって、ボクたちはガーメストとかいう店に到着した。というかこのビル全体がその店らしいんだけど、アニメと漫画だけでなくフィギュアやらゲームやらも充実しているオタクの聖地のようなお店だと陽向ちゃんが解説してくれた。

 

「そう言えばお前、地球のエンターティメントは、保護対象だと言っていなかったか」

「そうですよ。惑星保護機構で一級保護対象地域に指定されています」

「それじゃこれ勝手に持ち出しちゃいけないんじゃないのか?」

「・・・・・真尋さん、「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」」

カップルらしい高校生が理解できない会話をしていた。なにやら別の番組と混信しているようだ。

それよりあの女子高生が何で背中にバールを背負ってるのかの方が気になったボクは好奇心に負けて尋ねてみた。

「あの~、すいません」

「はい、何でしょう?地球人の娘さん」ボクの方を振り向いた銀髪ロングヘヤーの美少女が満面の笑顔で答えた。

「地球人?」

「ああ、こいつの言うことは無視して下さい」男の子が慌てて言った。

「はぁ、それはおいておくとして、なんでバールなんか背負ってるんですか?」

「ああこれですか。これはバールじゃありませんよ」

「えっ、どう見てもバールにしか見えないんですけど」

「これは『名伏し難いバールのようなもの』です。ロイガーの固い鱗も豆腐よりも簡単に切り裂ける対邪神専用特殊ネオ・アームストロング・エクストリーム・リーサル・アームストング・ウェポンなのです」

「アームストロングが2回入っているけど」陽向ちゃんが不思議そうに言った。

「いや、それ金魂のパクリじゃ・・・・・ウグ」ボクの口が美少女の手で押さえられた。

「つっつっつ、邪神聞きの悪い発言はいけやせんぜお嬢さん。パクリじゃなくて「リスペクツ」と言ってくれなき・・・・・ゲルググ」いつのまにか女の子の脳天にフォークが刺さっていた。

「なに一般人にまで迷惑かけてんだ、お前は。本当にすいません」

「・・・・・いっ、いや。どうも失礼しました」どうやら、あまり関わりあいにならない方がいい種類の人たちのようだ。アンナちゃんといい、この人といいとても美人なんだけど、銀髪の人というのは残念な人が多いのだろうか?

 

一方、アンナパパは1階売り場のカウンターにズカズカズカと一直線に乗り込んで行った。

「君、予約していたBDを受け取りに来たのだが」アンナパパはカウンターで店員さんに予約票を渡しながら言った。

「えっ、あっはい。えーっと、アレクサンドル・カリーニン様ですね、少々お待ち下さい」190cmの髭面年配のロシア人がアニメのBDを買いに来たというのに、この店員さんは動じる気配もない。

「(ねぇ、身体全体から怪しい気配を漂わせている外人がアニメBDを予約で買いに来ても店員さんビクともしないね)」ボクは陽向ちゃんにささやいた。

「(そういう人多いんじゃないのかな?在日米軍なんて日本が戦争になったら秋葉原防衛のために希望者だけで1個師団できるって言われているくらいにオタクが多いって聞いたよ。『聖地秋葉原は俺たちが守る』って豪語しているって)」

「(アメリカと戦争になっても、守ってくれそうな連中だね)」

「(さすがにそれは・・・・・ないとは断言できないところが怖いよね、ああいう人たちって)」

 

「ところで、アンナちゃんの姿が見えないようだけど」ボクは陽向ちゃんに尋ねた。

「お店についた瞬間に姿が消えたよ。そりゃ、アンナちゃんに取っちゃあ1週間餌が貰えなかったライオンの眼前に、神戸牛の生肉をマルマル放り投げたようなもんだからね」何を当たり前のことを聞くのかという顔をして、陽向ちゃんが答えた。

「池袋でも結構買い物していたみたいだけど、留学生なのによくそんなにお金あるね」

「お母さんから我が家で一番たくさんお小遣い貰っているし、読者モデルの給料もあるからね」実の子よりもお小遣いが多いというのは、如何なものか?

「・・・・・いっ、いつ読者モデルになんてなったの、アンナちゃん?」

「なったと言うか、本人にはその自覚は全くないんだけどね。「乙女ロードで男の人に声かけられて着いて行ったら、イロイロと綺麗な洋服着せられて写真撮ってもらった上に、お金まで貰いマシタ。日本人本当にいい人多いデス」とか言って喜んでいたら、翌月のファッション雑誌の表紙飾ってた。読者に好評ということでそれ以来毎月モデルやってるみたいだよ」

「そりゃ、さすがに裕ちゃんが黙ってないでしょ」

「うん、近所中の本屋でその雑誌買い占めて、お母様会とご近所さんと商店街と両方の実家と親戚に配って、そりゃもう大騒ぎ」

「いっ、いやそういう意味じゃなくて。とりあえずアンナちゃんに『知らない人について行っちゃダメ』って、教えてあげた方がいいんじゃないのかな?ヘタしたら「うまい棒」で誘拐されそうなんだけど」

「まあ、そこらの日本人男がアンナちゃんに勝てるわけもなく・・・・・」

「目標カレリンだから?」ボクが尋ねた。

「カレリンだから」陽向ちゃんがキッパリと断言した。カレリンなら仕方ない。

 

「お待たせしました、カリーニン様。『攻殻機動隊 初回限定版「草薙素子」フィギュア付きBD BOX』ですね。38000円になります」

「38000円だぁ~、バカじゃねぇのか親父」颯太君が叫んだ。

「ああ君、ポイントカードがあるのでポイント分値引きを頼む」颯太君を無視してアンナパパが言った。

「かしこまりました。えーっと、すると合計で12000円になります」

「こんな店のポイントカード持ってるだけで呆れかえってるってのに、16000円も割引されるだけポイント貯めてるって、どんだけ買い込んでたんだ、あんたは」

「君が何を興奮しているのかわからんが、心配するな。教材費として部た・・・学校の経費で落ちる」

「そんなこと言ってるんじゃねぇ。あんたの学校とやらは一体何を教えてるんだ」

「ところで君、『進撃の阪神』のBD BOXは、何時ごろ発売になる予定かね?」アンナパパは颯太君を完全に無視して店員さんに尋ねた。

「いや、バース、掛布、岡田の時代の話ですからねぇ。BDにはならないんじゃないですか」店員が答えた。

「誰が阪神タイガース黄金時代の話をしてるんだ。この親父のことだからアニメの話だ・・・・・たぶん」意味がわからなそうなアンナパパに代わって、颯太君が律儀にツッコんだ。

「冗談ですよ。BDって言われても放映中のアニメですからねぇ。まだ第1巻すら出てないですよ。BOXが出るとしたら再来年くらいじゃないですかね」この店員さんの対応力もさすがにプロだと感心した方がいいんだろうか?

 

 


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