5話まできながら2人はやっと日本に到着したところです。
予定では10話くらいのネタだったんですが(笑)
飛行機が到着してからかなりの時間が経っているのに、アンナの父と弟は出て来なかった。
「お父さんたちなかなか出てこないわねぇ」由美子が言った。
「アンナちゃん、お父さんたちもしかして飛行機変更したんじゃないのかい?」陽太が言った。
「イエ、そんな連絡は受けてないんデスガ」アンナが困惑したように言った。
「・・・・・アンナちゃん」
「何ですカ?」
「何となくなんだけど、あの迷彩服着て怪しい動きをしている男の子が弟さんじゃないのかなぁ?」愛子が遠慮がちに言った。
一同が入国ゲートから続く廊下に目をやると、確かに迷彩服を着て数mおきに廊下を右に左に走りながら柱の影に身を隠すような動きをしている少年がいた。
「ソウです、あれが弟のソースケデス。アイコよくわかりましたネ」
「いや迷彩服とか怪しい行動とかから総合的に判断して・・・・・」愛子の頭に由美子を尾行した時に、合羽橋を迷彩服で走り回っていたアンナの姿が浮かんだ。
「でもあれはソースケの私服の米国陸軍デザートパターン迷彩服で、ワタシのGRU山岳フローラー迷彩服とは全然違うのに分かったのは凄いデス」
「私服まで迷彩服って。でも一般人には見分けつかないから。それより弟さんのあの不審な行動は何なの?」
「ポジショニングですネ。セーフティポジションを確保しながら、前進する方法デス
」
「相変わらず言ってることが全くわかんないんだけど、多分日本じゃ必要ない技術なんじゃないかなぁ」愛子が首をひねりながら言った。
「じゃぁ横にいる大きな男の人がお父さんなの?」陽向が尋ねた。
「そうデス、パパです。皆さんに注意がありマス。音を立てずにパパの背後に立たないようにして下サイ。条件反射で攻撃してしまいマス」
「お前の親父はどこの国際テロリストだ。まさか「デューク西郷」とかいう名前の偽造パスポートで来日したんじゃあるまいな」颯太が怒鳴った。
「バカなこと言わないで下サイ。ロシア人だからチャンとロシアのパスポートを持っているに決まっていマス。常識で考えて下サイ」アンナが冷ややかに言った。
「お前に言われると最高にムカつくセリフだな。1から10まで常識外れの家族のくせしやがって、何でここだけ常識的判断を要求されなきゃならんのだ」颯太が憮然とした様子で言った。
「パパ、ソースケ」やがて2人が近づいて来るとアンナがたまらず叫んでかけ出した。
2人もアンナの姿に気づくと、父が満面の笑顔で手を広げてアンナを迎えた。
アンナはその手・・・・・の横をすり抜けると弟に飛びついてキスの嵐を浴びせた。
「うわー、アンナちゃんのお父さん完璧に無視されたわね」由美子が言った。
「ショックの余り手を広げたまま固まってるよ」陽太がいった。
「校舎裏通りかかったらフラれる所を目撃しちゃったくらいに、痛々しくて見ていられないね」愛子が言った。
「それよりアンナちゃん、今度は抱き上げて顔を胸で抱きしめてるよ」
「うわ、ねっ姉ちゃん止めろ」少年は抵抗した。
「フフフ、ソータ。久しぶりだからって遠慮はいりまセン」
「弟くん足をバタバタしてるってことは恥ずかしいのかな」愛子がのんびりと言った。
「颯兄、颯兄。アンナちゃんが羨ましいことやってるよ。早く行って「アンナの胸は夫の俺のものだ」と主張しとかないと、あの美巨乳がカリーニン家の共有財産になっちゃうよ」
「だれが夫だ・・・・・」
「またそこに行くかなあ。颯兄は自分の意志で結婚指輪を左手の薬指にはめたんだから、結婚したも同然なの。だからロシアからお父さんと弟さんが来たんじゃない。ちゃんと男らしい所見せなよね」
「ありゃ、アンナの詐欺に引っかかったんだ」颯太は憮然として言った。
「でもアンナちゃんは、弟さんが姉萌えのシスコンとか言ってたよね?」愛子が言った。
「うん、だけど今の見てたら完全にアンナちゃんの方が全力フルスイングのブラコンだよね」
「多分弟をシスコンにしようといろいろやってるうちに自分がブラコンになっちゃったんじゃないかな、アンナちゃんだし」二人は笑えなかった。
「あの、愛ちゃん・・・・・」由美子が遠慮がちに言った。
「大体、アンナちゃんが人をどうこうできる訳ないって」愛子は陽向に力説していた。
「ねぇ、愛ちゃん・・・・・」
「縛道と同じできっと自己暗示にかかっちゃったんだよ」
「ちょっと、愛ちゃんってば・・・・・」
「だから弟くんも・・・・・ん、由美ちゃん、どうしたんですか?」
「その弟くんなんだけど、さっきから手足が痙攣して・・・・・あら、動きが止まったわ」
「えっ?」アンナの方を見ると、アンナに強制的に抱かれて胸に顔を埋めた弟の四肢がダラリと垂れ下がっていた。
「わーっ、アンナちゃん、タップタップ。弟くんが窒息してる」陽向が慌てて叫んだ。
「エッ」とアンナが宗介を胸から離すと、弟は白目を剥いて口から泡を吹いていた。
「ソースケ、一体ダレがこんなヒドいことを・・・・・」アンナが涙ぐみながら言った。
「「「「「「「「「あんただ、あんた」」」」」」」」」その場にいた全員が、心のなかでツッコんだ。
「そっ、それよりアンナちゃん。お父さんに挨拶した方がいいんじゃないかなぁ。アンナちゃんに無視されたショックで手を差し伸べたまま、ずっと固まっていて通行人に大迷惑だから」愛子が言った。
「そうデスネ」と言って、アンナが父の腕の中に飛び込んだ。
「パパ、久しぶりデス。とても会いたかったデス」
「ハハハ、アンナ元気だったか、相変わらず甘えん坊だな」
「(おい、何事もなかったかのように会話が再開されたぞ)」Atsushiが言った。
「(さすがアンナちゃんのパパだな)」とGuu
「(カリーニン家、恐ろしい子)」Gonも続いた。
「(なんというか本当に親子なんだな)」Youも感心したように言った。
「パパのことは一時も忘れたことはありませんデシタ」
「アンナは相変わらずパパが世界一好きなんだな」
「「「「「「「「「いやいやいや。たった今まで親父のことは、アウト・オブ・眼中だったろうが」」」」」」」」」
再び全員が心の中で総ツッコみを入れた。