「まあ、愛ちゃん。今日は彼らはタコ&ライスのメンバーじゃないんだ」颯太が言った。
「ええ、ボクはとっくの昔にそうじゃないと思ってますから」愛子が冷たく言った。
「いや、そういう意味じゃないんだ」
「四馬鹿っていうのは、もう知ってますよ」
「いや、今日の彼らには重要な役目があってわざわざここに呼んだんだ。少しは優しくしてやってくれ」
「重要な役目・・・・・ですか?」
「そう、今日の彼らはタコ&ライスではなく、四馬鹿でもない。新しいユニット名は「ダミーズ」だ」
「なんだかよく分からないんですけど、ボクたちに関わってこないなら無視くらいはしてあげます」
「それが最大限の優しさなのか・・・・・」颯太は絶句した。
「さっきから黙って聞いていれば、俺たちを呼んだのには何か魂胆があったわけだな」Atsushiが不意に言った。
「む、聞いていたのか、お前」
「そんだけ大声で話せば嫌でも聞こえるわ。何で俺たちが漫才なんかせにゃならんのだ?」
「それはトミーズだ、バカ者」
「漫才なんかって、前にバンドは踏み台でM-1取るのが夢とか言ってたよね」愛子がツッコんだ。
「するとミイラになるのか?」Atsushiが愛子を無視して言った。
「それはマミーズ。俺が言ったのはダミーズだ」
「ダミーズ?どういう意味だ」
「心配しなくてもそのうち分かる・・・・・(身体でな)」
「ところでアンナちゃんのパパってどんな人なの?」由美子が尋ねた。
「ハイ、身長は190cmくらいで肩幅が広くテ、短めの銀髪に口髭と顎髭を生やしてマス」
「そういう人を見つければいいんだね」
「ソレと今回は弟も一緒に来てマス」
「アッアッアンナちゃん、弟がいたなんて初耳だよ。弟さんいくつ?」
「10歳デス」
「10歳でアンナちゃん似なら銀髪の天使みたいな子なんだろうなあ」
「イエ、ソースケは日本人デス。本名は、ソースケ・サガラ・カリーニンです」
「なんで日本人が弟なの?」陽向が不思議そうに尋ねた。
「ハイ、シベリアで飛行機の墜落事故が会った時に、パパの部隊が救助に出て、タッタ一人の生き残りがソースケでシタ」
「どうでもいいが、スペツナズが学校で親父が学校の先生という最初の設定を完全に忘れているだろう、お前は?」颯太がたまらずツッコんだ。
「施設に入れるのは可哀想だと、パパが我が家に引取りまシタネ」颯太のツッコみを全く無視してアンナが付け加えた。
「アンナちゃんは、抵抗なかったの?」由美子が尋ねた。
「ハイ、ワタシは一人っ子で友達もいなかったので、スゴク嬉しかったデス。だからソースケを姉萌えにするようにイッパイ可愛がりましたネ」
「姉・・・・・何だって?」愛子が尋ねた。
「姉萌えデス。弟はすべからくシスコンでなくてはならないと日本のライトノベルで読みましたネ」
「偏った属性を弟に押し付けるんじゃない」颯太が言った。
「無理やりシスコンにされた弟君も、いい迷惑だよね」陽向がつぶやいた。
「でもアンナちゃんが日本に来ちゃったら弟さんは、モスクワの自宅に一人なの?」陽太が尋ねた。
「イエ、ソースケは9歳の時にパパの学校に転校しまシタ。成績が良かったノデ、今年から軍曹という係になったそうデス」
「「「「「10歳でスペツナズの軍曹~???」」」」」
「ハイ、自慢の弟デス」アンナは嬉しそうに微笑んだ。
「(10歳で特殊部隊の軍曹ってのは、ムチャにも程がある国だな)」
「(というかアンナちゃん、軍曹ってのが何かの係だと思っているみたいだけど)」
「(・・・・・狙撃だの迷彩服だの、あれだけミリタリーにどっぷり浸っているのに、なんでそんな基本的なことを知らないのだ)」
「(アンナちゃん的には全くミリタリーに結びついてないんじゃないかなぁ)」
「(戦車の運転をしてたとか言ってたが、あいつは一体戦車を何だと思ってるんだ?)」
「(作業車の一種とか?)」
「(キャタピラー以外に共通点は無いよね)」
「(まあ世の中には17歳で大佐にして、上陸強襲潜水艦の艦長をしている女の子もいることだし、10歳の特殊部隊軍曹がいてもおかしくないかも知れん)」颯太が頷きながら言った。
「クシュっ」遠く離れたメリダ島の地下ドッグでテレサ・テスタロッサはクシャミをした。
「お風邪ですか?ミス・テスタロッサ」長身痩身の男が言った。
「あ、いえ。大丈夫です、マデューカスさん。きっと誰かが噂をしていたのでしょう」銀髪の少女が答えた。