どうしてもテッサたんを出したかったんです・・・・・・
後悔はしていない。
「了解しました。早速日本訪問のための装備の準備にとりかかります」少年は敬礼をして部屋から出て行こうとした。
「待て、軍曹。どんな装備をするつもりだ?」少佐が呼び止めてたずねた。
「は、エンジェルがどのような状況下におかれているのかの情報がありませんので、いかなる事態にも対応できるようにするつもりであります」少年は胸を張って言った。
「つまり・・・・・?」男が不安げに質問した。
「はい、まず小火器としてAK47アサルトライフルに、バックアップ用としてアサルトショットガン。護身用として拳銃とバックアップ用の小拳銃を一丁ずつとそれに手榴弾を4個。万一敵がASを出してきた場合も考慮してロケットランチャーと、護衛兵がいた時に備えてグレネードランチャーを持っていきます。我々が少数であることを考慮し戦闘中の死角を守るためにクレイモア指向性地雷。そしてエンジェルを救出するために壁を爆破するためのTNT爆弾を2kgほどであります、少佐殿」
「完璧だ、軍曹」少佐が言った。
「ありがとうございます」少年は少し自慢げに胸を張った。
「ただ、問題点が1つだけある」
「何でありますか、少佐殿」少年は意外そうな声で尋ねた。
「その装備をそのまま持っていったら、日本に着く前にモスクワの空港で我々は逮捕されるだろう」
「そんな馬鹿な。我々はロシア軍特殊部隊スペツナズであります」
「いくらスペツナズと言えども、それだけの武器を持って飛行機に乗せてくれるほど我らが母国の懐は広くないのだ、軍曹」
「ではどうしろと・・・・・」少年はうなだれて言った。
「駐日ロシア大使館に昔の部下が駐在武官として赴任している。彼に改造エアガンに鉛のBB弾を準備してもらおう」
「お言葉ですが、少佐殿。それでは街のギャングにも対抗できないかと・・・・・」
「いや、日本では銃を売ってないのだ」
「銃を売ってない?技術力の高い国だと聞いていましたが、まさか全家庭で銃を自作しているとは・・・・・」
「うむ、さすがの発想だ、軍曹。もう少し分かりやすい表現に改めよう。普通の日本人は銃を持っていないのだ」
「そんな馬鹿な。それではどうやって身を守るのでありますか、少佐殿」
「君の語彙には平和という言葉はないようだな」
「平和とは、戦闘と戦闘の間の小康状態であります」少年は真面目な顔で言った。
アンナに会うための飛行機に乗る前に大騒ぎであった。
「で、例によってこのメンバーなわけだね」愛子が周囲を見渡していった。
出迎えロビーには、アンナ、颯太、陽太、由美子、康太、陽向が揃っていた。
「何を言うんだ、愛ちゃん。アンナのお父さんと弟が来るんだ。みんなで出迎えてあげるのが礼儀じゃないか」颯太が胸を張って言った。
「アンナちゃんと二人きりで出迎えるのが怖いので、ボクたちまで巻き込んだのは許します」
「ははは、何を言うんだ、愛ちゃん。俺は全然怖いことなんかないぞ」颯太が言った。
「じゃ、ボクたち帰っていいですか?」
「早まるんじゃない、愛ちゃん。せっかく来たんだ、もう少しいればいい」
「怖いのをあくまでも認めないつもりなんですね。それはいいとして、あの連中は何なんですか?」愛子が冷たい目で颯太の後ろにたむろっている連中を指さした。
「何だ、愛ちゃん。しばらく会わないうちに俺たちのことを忘れたのか」Atsushiが言った。
「あんなに可愛がってやったのに忘れるなんて、薄情な娘だ」Gonが言った。
「照れなくてもいいんだよ」Guuが答える。
「というか、俺たちも何でここにいるのか、よくわからんのだが」Youが言った。
「今度は兄貴に何と言って騙されたんですか?」陽太が尋ねた。
「スチワーデスと合コンだから、空港に来いと・・・・」Atsushiが言った。
「合コンという言葉を聞くと思考停止しちゃうみたいだね」愛子が呆れたように言った。
「何で被害者の俺たちが責められんといかんのだ」Guuが憤慨していった。
「同じ手で何回も騙されちゃ、自業自得だよ」陽向が言った。
「巧妙な騙しだな」Gonが感心したように言った。
「・・・・・小学生でも2回は引っかからんというのに」康太が言った。
「というかですね、兄さんたち。1万歩譲ってスチワーデスの合コンというのに騙されたのはいいとしましょう。でも、合コンで空港に集合っていうのは、幾らなんでもおかしいと思わなかったんですか。スチワーデスにしてみたら空港ってのは、職場ですよ。普通、職場で合コンはしないでしょ」陽太が諭すように説明した。
「いや別にライブ会場で合コンやっても構わんぞ、俺たちは」Youが不思議そうな顔で言った。
「あなた方にいまさら常識とか説こうとは思いませんが、どこの世界に合コンライブをやるバンドがいるんですか」愛子が呆れたように言った。
「目の前にちゃんといるじゃないか」Atsushiが胸を張って言った。
「そうですよね、そんな人達だったんですよね。すいません、ボクが悪かったです」
アンナパパが到着する前に空港ロビーも大騒ぎだった。
日本から南に遠く離れたメリダ島。密かに地下に造られた潜水艦ドッグで、銀髪の少女が、自分の身長の2倍近くありそうな中年男性に向かって、腰に手を当てて叱りつけていた。
「マデューカスさん。こんなに工事が遅れていては、この子が完成する頃にはわたしはオバさんになってしまいます」
それこそ幼き日のテレサ・テスタロッサ嬢であったが、この物語とは何の関係もないので話は発展することもなかった。