しかも明久の護衛に玉野さんと美春がつくらしいです。
なんか既視感が・・・・・・
「じゃあ、そろそろお花の練習をしましょうか。みんな自分のお花を持ってきてくれたかしら」由美子が立ち上がって言った。少女たちは予め由美ちゃんから好きな花を持ってくるように言われていたのだ。
「「「持ってきてま~す」」」
「そう、じゃ行きましょう」由美ちゃんが先頭に立って廊下を歩き出し、アンナ、愛子、ケンに跨った陽向ちゃんが続いた。
「ひっ、陽向ちゃん。何してるの?」
「いや、ケンって体が大きいから乗れるかなと思って試したら乗れたんだよ」
「大丈夫なの?」
「平気な顔してるから大丈夫なんじゃないかな?」
「まあ、こんなに大きいから・・・・・由美ちゃん、いいのかな?」
「ケルベウスがいいと言うのなら、大丈夫よ」
「ケン、いけるよね」陽向が犬に尋ねた。
「ワン!」犬は元気に返事をした。
「大丈夫だってさ、愛ちゃん」
「なんかコミュニケーション能力が向上しているみたいだね」愛子が感心したように言った。
「ここの部屋よ」由美子が引き戸を開けて6畳の和室に案内した。そこには3人の和服の若い女性が待っていた。
「あの、由美ちゃん。この皆さんは・・・・・?」愛子が尋ねた。
「うちのお手伝いさんの本田さん、鈴木さん、川崎さんよ」
「ナンでお手伝いさんが必要なんデスカ?」
「せっかく生け花をするんだから、形もそれらしくしましょう。着物を準備してあるから、着物に着替えましょう」
「「「着物!!」」」
「由美ちゃん、着物の着付けなんてできないよ」愛子が叫んだ。
「大丈夫よ。本田さん、鈴木さん、川崎さんが着付けてくれるわ」
「「「お任せください」」」女中の皆さんが微笑みながら言った。
「うう、帯が苦しい」愛子が言った。
「着物なんて滅多に着ないしね」陽向も言った。
「陽向ちゃん、伊賀で着物はよく着てたんじゃないの?」
「忍者着や道着はよく着たけど、振袖なんて正月くらいにしか着ないよ」
滅多に着物など着ない現代っ子の二人はブツブツ不平を言った。
「あのお嬢様、アンナさんの着付けが・・・・・」鈴木さんが焦った声で由美ちゃんに言った。
「どうしたの?着物の寸法が合わなかったのかしら?」由美ちゃんが言った。
「いえ、寸法は合ってるんですけど、胸が大きすぎて襟が決まらないんです」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・アンナちゃんが何か家事を覚えようとするたびに、ボク傷ついていくんだけど」愛子が言った。
「・・・・・あたしのプライドもボロボロだよ」陽向も落ち込んだ様子で言った。
「あら、お二人は大丈夫ですよ。やっぱり日本人ですね、チャンと決まってますよ」なぜか川崎さんが慰めてくれた。
「慰めてくれてるんだろうけど、駄目押されちゃってるよね」
「日本人体型って胸薄出っ尻ってことだよね」
「胸が苦しいデス」アンナが辛そうに言った。
「帯が苦しいんじゃないんだね・・・・・」愛子が帯をさすりながら言った。
「圧迫されている場所が違うんだね」陽向が恨めしそうにアンナの胸を見つめた。
「じゃ、行きましょうか」同じように着物に着替えた由美子が言った。
「え、由美ちゃん。この部屋で生け花するんじゃないの?」
「ここは着物部屋で、着物をしまってある部屋なの。生け花は和室でやるわ」
「つまりあの部屋丸ごと箪笥みたいなもんだね」陽向が感心したように言った。
「ウォークインクローゼットなんデスネ」
「それは多分違うと思うんだけど、絵に書いたようなお金持ちの家だね」
しばらく歩いていると由美子が振り返って言った。
「あの、アンナちゃん。着物の時はそういう風に大股じゃなくて、つま先を「ハ」の形にしてシズシズと歩いた方がいいわ」
「こうデスカ」アンナは言われた通りに歩きにくそうにチョコチョコと歩いた。
「それと陽向ちゃん・・・・・」由美子は言いにくそうに言った。
「ん、どうしたの由美ちゃん」陽向は明るく言った。
「ケルペウスと仲良くしてくれるのは、嬉しいんだけど。着物着ている時はケルペウスに跨らない方がいいと思うの」
「え、そうなの。これ楽でいいんだよね」
「着物の裾が捲れちゃうから、女の子としてちょっと・・・・・」
「そっかあ、いつもと違ってスパッツ履いてないからね」
「履いててもやめた方がいいと思うわ」由美子は疲れた様子で言った。