これが土屋家の日常   作:らじさ

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思いつきで書いてみました。

途中経過もオチも全く決まってません。
どうなるか自分でも心配です。


14.彼と夫と花嫁修業
第1話


 

日曜の午後、アンナの部屋に女性陣が集合をかけられた。部屋のドアにはたどたどしい文字で「女子会 立入きん止」と看板がかけられていた。

 

「今日は集まってクレて、ドウモありがとうございマス」アンナがみんなを見渡しながら言った。

「いやいやアンナちゃんの頼みなら断れないよ」愛子が言った。

「折り入って相談って何かしら」由美子が尋ねた。

「颯兄とケンカでもしたの?」陽向が言った。

アンナは俯きながら畳に「の」の字を書きだした。

「アンナちゃんどうしたの?」

「日本女性は恥ずかしい時には、畳に「の」の字を書くと、志ん朝の落語でやってまシタ」アンナが恥ずかしがっているとは思えない冷静な声で答えた。

「日本文化の随分ディープなところまで進んでいるんだね」愛子が感心したように言った。

「でもアンナちゃん、そういう時はカタカナの「ノ」の字じゃなくて、ひらがなの「の」の字を書くのよ」由美子が言いにくそうに言った。

「ソウなんですカ?志ん朝はなにもいってませんでシタ」アンナは慌てて「ノ」の字から、「の」の字に切り替えた。

「あたしですら志ん朝なんて知らないのに・・・・・でもまあ、そんなに恥ずかしがるということは、どっちにしろ颯兄絡みということだよね」陽向が言った。

 

「ハイ、ワタシがこんなに一生懸命やっているのにソータはいつまでも夫の自覚を持ってくれまセン」アンナが全員を見渡しながら言った。

「一体、どうしタラ、ソータが夫の自覚を持ってくれまスカ?」

「(結婚もしてないのに夫の自覚を持てっていうのが無茶なんじゃないかな?)」アンナに聞こえないように小声で他の2人にツブやいた。

「(夫はともかく彼氏としての自覚を持って欲しいんじゃないかしら)」由美子が答えた。

「(というか颯兄って本当にアンナちゃんの彼氏なの?アンナちゃんのモーションから逃げてばかりいるように見えるんだけど・・・・・)」陽向が言った。

「(でもアンナちゃんの決意と裕ちゃんの嫁容認の前では、颯太君の意志なんてゴマ粒ほどの影響力もないと思うんだけど・・・・・)」

「(ふふふ、大丈夫よ。お兄さんもちゃんとアンナちゃんのことが好きなはずだわ。ただ表わすのにテレているだけよ)」由美子が断言した。

「(あのヘタレの颯兄に彼氏の自覚をもたすのかぁ。どうすればいいんだろうね)」

 

「あの、アイコ」アンナが言った。

「ん?どうしたの、アンナちゃん」

「「の」の字の次は、畳のケバをむしるって圓生が言ってまシタが、ケバってなんですカ?」

「アンナちゃん、進む方向確実に間違っているから。というかどこでそんなの見てるの?」

「ミコミコ動画の落語コミュニティデス」

「とりあえずそれは江戸時代の風習だから、無理にむしらなくてもいいんだよ」

「ソウですカ?」アンナが納得出来ない様子で言った。

「(さっさと何とかしないと、アンナちゃんがいろいろと間違った方向に進んで弥生時代の習慣あたりまでたどり着いちゃうよ)」

「(要するにお兄さんが、アンナちゃんを誰にも渡したくないって思うようになればいいんじゃないかしら)」

「(つまり、どういうこと?)」

「(そっか、つまりアンナちゃんの女子力を上げればいいんだね)」愛子の言葉に3人の目が一斉にアンナに向いた。

 

「(女子力上げるって、あの美貌、あのスタイル、何よりもGカップのバスト。あれ以上、女子力あげたら世界制覇できるよ、愛ちゃん)」陽向が言った。

「(陽向ちゃん、何も女子力は外見だけじゃないんだよ・・・・・多分)」なぜか少し悔しそうに胸を押さえながら愛子が言った。

「(つまり、どういうことかしら、愛ちゃん)」由美子が不思議そうに尋ねた。

「(日本の正しい新妻になれるように、花嫁修業をしましょう)」愛子が自信たっぷりに言った。

「(花嫁修業?)」陽向も尋ねた。

「(そう、日本の正しい嫁になれるように炊事、洗濯、掃除の修行です)」

「(それはいいけど、そんなことどこで教えてくれるの?)」

「(やだなあ、由美ちゃん。ボクたち「土屋家女子会」がマンツーマンで特訓するんですよ)」

 

「アンナちゃん、作戦が決まったよ」愛子が言った。

「本当デスか、アイコ」アンナが嬉しそうに言った。

「うん、これまでのアンナちゃんのアプローチでは、まだロシア人の部分が残っていて純粋日本人である颯太君には受け入れられないところがあったと思うの」

「フムフム」アンナがうなずく。

「だからボクたち女子会のメンバーが、アンナちゃんが正しい日本の新妻になれるように花嫁修業を手伝ってあげる」

「そうデスか。ありがとうございマス」

「やだなあ、お礼なんていいよ」

「じゃあワタシは、落語を聞き続ければいいんですネ」

「できればもう聞かないでくれるかな。いろいろ間違った知識を得てきそうだから」

 


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