これが土屋家の日常   作:らじさ

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第10話

少年と少女はその後コインゲームをしたり太鼓を叩いたりして遊んだ。

「・・・・・おい、愛子。ストリートファイターをしなくていいのか」

「うーん、まだ陽向ちゃんがいるかもしれないから・・・・・」

「・・・・・別にいいだろう。ちょっと代わってもらえば」

「代わってくれるだけならいいんだけどね。勝負申し込まれたりしたら・・・・・」

「・・・・・別に勝負してやればいいではないか」

「何てことを言うのさ、康太は。大事な彼女がボコボコにされてもいいって言うの?」

「・・・・・俺をボコボコにすると、わざわざ未来日記に書いた奴が言うセリフか」

 

ストリートファイターの方へ行ってみると、陽向たちはいなかった。

「よぉし、じゃあ一丁揉んでやるよ康太」

「・・・・・いや、別に俺がやりたいわけじゃない」

「ダメだよ。もう未来日記に書いちゃったんだから」

「・・・・・やれやれ」

5秒でボコボコにされた。

「・・・・・ちょっ、ちょっと待て愛子。いくら何でも初心者相手に本気出しすぎだろう。俺はほとんど何もしてないぞ」

「ふふふ、全力で向かってくる相手に本気を出さないのは失礼だよ」

「・・・・・だから全力も何も、俺はただ立ってただけなんだが」

「ほら、ゴチャゴチャ言ってないで次のラウンドだよ」

そこからは愛子の繰り出す華麗なコンボ技のオンパレードだった。

 

「いやぁ、楽しかったね」少女は上機嫌で言った。

「・・・・・それは何よりだ。俺は取り出せない貯金箱に金を入れてる気分だったが」

「お腹すいちゃったから、ランチ食べに行こうよ」

「それはいいが店知っているのか」

「ふふふ、クリスマスデートの情報はちゃんと調べてあるって言ったじゃない。黙ってボクについて来て、惚れ直すといいよ」

 

5分ほど歩いて店についた。

「ここは女の子に人気のイタリアンのお店で、その名も「イル テアトリーノ デル ダ アクア パッツア」だよ。魚介類が人気で鮪のアルフォントがお勧めだね。」

「・・・・・鮪の何だって?」

「鮪をアルフォントしてあるんだよ」

「・・・・・要するに知らないんだな」

「うるさいよ、康太。じゃ行くよ」少女は意気揚々とドアを開けて入って行った。

 

「いらっしゃいませ、ご予約でございましょうか?」ウェイターが近寄ってきて言った。

「えっ?いえ予約はしてないんですけど」少女が怯んだように言った。

「申し訳ございません、お客様。本日はクリスマスディナーということでご予約のお客様だけになっております」

「えーっと、合い席でもいいんですけど・・・・・」

「大変申し訳ございません」

 

「ランチ程度で大げさな店だね」少女は憤慨して言った。

「・・・・・どうするんだ、おい」少年が言った。

「ふふふ、こんなこともあろうかと次の店も調べてあるんだよ」少女が誇らしげに胸を張って言った。

「・・・・・そこまで威張るなら、「こんなこと」がないようにして欲しいのだが」

「康太は男のクセに細かいなあ。もうイタリアンは止めた。やっぱり料理と言えばフレンチだね」2人は再び歩き出した。

「ここが有名フレンチのお店、「ガストロノミー ル・ジュー・ドゥ・ラシュリールだよ。マダムビュルゴーのシャラン鴨胸肉のロースト パンデビス風味レモンとーコーヒーの香りソースが大人気」

「・・・・・どうでもいいが知ったかぶりするならば、メモをチラチラ見ないでちゃんと記憶してくれないか?」

「うるさいなあ。ちゃんと雑誌の切り抜きを持ってきたんだからいいんだよ。さあ、行こう」少女は再び意気揚々とドアを開けた。再びウェイターが近寄ってきた。

 

「いらっしゃいませ。ご予約でしょうか」

「えーと、もしかして今日は予約だけなんでしょうか?」少女が恐る恐る尋ねた。

「はい、さようでございます」

「念のためにお尋ねしますけど、合い席というのは・・・・・」

「申し訳ございません。そのようなシステムはございません」

 

「だからボクは洋食は嫌いなんだよ」

「・・・・・クリスマスはイタリアンでランチとか言ってなかったか?」

「やっぱり、アジア人はアジア料理だね。中華料理屋に行こう」

「・・・・・ちょっと待て愛子。いくらなんでもクリスマス中華というのはないだろう。だいたい、未来日記にイタリアンでランチと書いてあるんじゃないのか」

「つつつ、ボクを舐めてもらっちゃあ困るなあ。こんなこともあろうかと、未来日記にはランチとしか書いてないよ」

「・・・・・だからそもそも「こんなこと」がないようにしろと言っているのだ。もう、手近なところであそこでいいんじゃないのか、一応イタリアンだ」と言って少年が指差した。

 

「・・・・・シャイゼリア。いくら何でもクリスマスランチでファミレスって、康太センスなさすぎ」

「・・・・・中華料理屋に行こうとしていた奴が言うセリフか。あそこなら予約もいらん。行くぞ」少年が歩き出した。

 

二人で店内に入るとウェイトレスがやってきた。二人であることを告げたとき

「愛ちゃん、こっちこっち」という声がした。

そちらの方に目をやると、颯太以下全員が揃っていた。


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