12月24日午前10時。桜ヶ丘駅東口改札前・・・・・
「一体どういうことなのさ」少女が言った。
「・・・・・どういうこととは?」少年が答えた。
「この状況のことだよ」少女が改札前を指差していった。
改札前には数m置きに颯太、陽太、そして試召戦争の時に窓ガラスを割って飛び込んできた1年生の男生徒が人待ち顔で立っていた。
「そしてこっち」再び指差した反対側の柱の影に、アンナ、由美子、陽向と1年生の女の子が様子を伺うように隠れていた。
「なんで揃いも揃って、みんなこの駅のこの改札でこの時間に待ち合わせているのさ。これじゃクリスマスデートじゃなくて、みんなでお出かけだよ」と少女が言った。
「・・・・・原因は100%お前のやったクリスマスデート講座のせいだと思うんだが」少年は答えた。
「なんでボクのせいなのさ」
「・・・・・あの時、デートプランまで説明しただろう」
「まあ、一応の例として・・・・・」
「・・・・・由美子さんはそれを素直に受け止めた。アンナは他に場所を知らない。陽向はアホだから何も考えずにそのまま実行した。その結果、全員がこの場所を待ち合わせにしたわけだ」
「少しは応用とかしなよ」
「・・・・・俺に言われても困る。それより問題は、全員がお前の訳のわからんこだわりを真似して、待ち合わ時間より早くついているにもかかわらず男性陣が来るのを柱の影で監視している」
「デートの基本だよね」
「・・・・・頼むからこれ以上、そのアホなこだわりを拡散しないでくれ」
「ねえ、陽向。わたし達ここで何しているの?竜崎さっきから待っているわよ」
「由香リンは、デートの作法を知らないんだね。デートは女の子が待ち合わせに遅れて「ごめん、待った」って言うもんなんだよ」
「どこのスットコドッコイからそんな作法聞いてきたのよ。竜崎かなり頭にきているわよ」
「しょうがないなぁ。あと30分は待たせるつもりだったのに、じゃ行こうか」
「それやったら竜崎帰ってると思うけど。とにかくあなたが謝りなさいよね」
「やっほー、マコちん。お待たせ」
「ゴン!!」陽向が手を上げて竜崎に近づくと同時にゲンコが飛んで来た。
「無理やり人を引っ張りだしといて、どれだけ待たすんだ、このアホ陽向」
「痛ぁ~い。デートに誘ったのはマコちんじゃん」
「ゴン!!」再びゲンコが飛んで来た。
「お前が無理やり俺にデートに誘えと言ってきたんだろうが」
「あのね。そんなに頭殴るとバカになっちゃうから」
「心配するな。お前はキャパいっぱいのアホだ。これ以上悪くならん」
「竜崎、お取り込み中のところ申し訳ないけど、この調子じゃ夕方までここでケンカするはめになるよ。さっさと行こう」業を煮やした由香子が無理やり二人を引っ張っていった。
「待ちましたか、ソータ」アンナが颯太のところに駆け寄って言った。
「待ちましたかじゃねえ。朝お前にたたき起こされて八百屋のクリスマス2割引きセールとやらに引っ張っていかれて、山ほど買い物したまま一緒に電車で来ただろうが。どこ行ってたんだ」
「アイコが男性を待たせるのがデートのルールと言ってましたカラ、そこの柱に隠れてました」
「ここまで一緒に来たのに待ち合わせする意味がねえだろうが。というかこの両手いっぱいの野菜どうすんだ」
「いい買い物ができまシタ」アンナが満足そうに言った。
「このままデートするつもりか?」
「捨てるわけにはいきませんネ」
「デート終わってから買い物すりゃよかったんじゃねえか」
「それでは売り切れてしまいマス。セールは女の戦場ですネ」
「どんだけ日本に馴染んでるんだお前は。日本のオバさんみたいなこと言ってるじゃねぇか」
「とにかく行きまショウ」
「なんかいろいろ事情があるみたいだね」少女が言った。
「・・・・・もうすでにクリスマスもへったくれもないような気がするんだが、でどうするんんだ」
「ボクたちにはこれがあるんだよ」と言って少女はノートを取り出した
「・・・・・なんだそれは」
「もう忘れたの?未来日記だよ。これにちゃんと予定を書いてきたからね。その通りに行動しなきゃいけないんだよ」
「・・・・・逆らっても無駄なんだろうな。で、まずどこ行くんだ」
「うん、ボク行きたいところがあるんだ」少女が行った。
「じゃあ、まずそこに行こう」少年が答えた。
「・・・・・・・・・・」
「キャハハハ・・・・・」
「・・・・・・・・・・おい」
「キャハハ、金さんってば・・・」
「・・・・・・・・・・おい、愛子さん」
「キャハ・・・え、何かな?」
「・・・・・何かなではない。お前が行きたいとこというのはコンビニのことか」
「だって、今週の金魂読みのがしたから、ちょっと立ち読みを・・・・・」
「・・・・・クリスマスデートのしょっぱなにやることじゃないだろうに」
「ハハハハ・・・・・えっ、何か言った」
「・・・・・いや、何でもない。せめてコンビニで立ち読みして大声で笑うのは止めてくれ」