憂慮する由美子たちに一切構わず六馬鹿(すでに龍一郎も馴染まくっていた)の議論は白熱するばかりだった。
「ゲッターロボで永井豪の深さを知れ」と龍一郎。
「古いんだよ。エウレカ7がトレンドだ」と颯太がいう。
「センスがねえな。マクロスこそ基本だろうJK」とAtsushi。
「一億年と二千年前からアクエリオンと決まっている」とYou。
「ザンボット3の最終話をみてトラウマになりやがれ」とGuuが主張する。
「インフィニット・ストラトスが王道だ」とGonが言った。
「「「「「却下だ、却下。バカ者」」」」」全員が一斉に言った。
「とてもいい歳した大人が怒鳴り合う話題じゃないよね」
「どうでもいいが何の話をしてるんだ、あの連中は?」
「・・・・・たぶんロボットアニメの話だと思うんだが、全員が全部知ってるというのがスゴイな」
「あたしのクラスの子だって、あんなには知らないと思う」
「お兄さんの部屋にロボットのプラモデルがたくさんあるとは思っていたけど、ここまでだったなんて・・・・・」由美子が呆れたように言った。
しばらく六人でゴチャゴチャとやっていたと思ったら、また争いだした。
「団長のハルヒが一番だって言ってるだろうが」と龍一郎。
「長門の良さもわからずにSOS団を語るんじゃねぇ」と颯太がいう。
「朝比奈さんのドジっ子ぶりを知れ、愚か者」とAtsushi。
「鶴屋さんが一番に決まっているにょろよ」とYou。
「朝倉のヤンデレぶりがたまらん」とGuuが主張する。
「佐々木を飼ってみたいぞ」とGonが言った。
「「「「「黙ってろ変態」」」」」全員が一斉に言った。
「今度は何なのさ?」
「よくもまあ次から次へと争いのネタがあるもんだ」
「たぶんラノベに出てくる女の子の話だと思うんだが」
「25歳の男が唾飛ばしてまでやる議論じゃないと思うんだけど」
「ねえ、由美ちゃん。お兄さん本当にいいの?」愛子が聞いた。
「お兄さんは楽しそうだからあのままでいいとして、陽太君ちょっと二人だけでお話したいんだけどいいかしら」由美子が言った。
「え、僕と二人きりで、はっ話ですか」陽太君に明らさまに動揺していった。
「そう、ダメかしら」
「いえ、そんなことはないんですけど部屋はで二人きりってのはマズいと思うので庭でいいですか」
「うん、どこでもいいわ」
そうして二人が玄関から出て行った。
「ねぇ、あれ何の話だろう」
「・・・・・いよいよ別れ話か」
「でも一緒にいたのはお兄さんだよね」
「ほかに好きな男の人がいるんじゃないデスか?」
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
乙女たちの目が光った。
「あの由美ちゃん、おっお話ってなんでしょうか」
「あのこのところずっとお誘い断っていてごめんなさい」
「いやあ、気にしてませんよ」
「本当に気にしてなかったの?」由美子が下から見上げるように陽太と見つめた。
「きっ気にしてないこともなかったような気がしないでもないけど、由美ちゃんも忙しいだろうから」
「あのね。うちの店のパティシエさんからずーっとホールケーキの作り方習ってたの」
「ホールケーキ?」
「うん、陽太君のバースデーケーキに手作りのケーキを作ってあげたくて。でも全然うまくいかなくて、しょっちゅう失敗してうまくできたのが、やっと今日だったの」
「そっそうだったんですか、どうもありがとう」
「浮気だと思った?」由美子がいたずらっぽく笑って言った。
「まっまさか由美ちゃんに限って浮気だなんてそんな、はははは」
「ちょっとくらい嫉妬してくれた方が嬉しい気がするわね、ふふふ」
「いえ、僕は由美ちゃんを信頼してますから」
「それはそうと、この間なんでみんなで合羽橋にいたの?」由美子が突然意外なことを言い出した。
「え、合羽橋・・・・・」
「ええ、私が調理用具が必要になって兄と合羽橋に買い物に行ったら、みんなも合羽橋にいたわよね」
「なんで、僕たちだってわかったんですか・・・・・」
「だって、陽向ちゃんが忍者服で飛び回っているし、モデル並みのアンナちゃんが迷彩服で決めて立っていたから、通りすがりの人が取り囲んで写メ撮っていたじゃない。誰でもわかるわよ」
「・・・・・・・・(あのバカ娘ども)」
「陽太君たちが尾行してくるのがわかったから、ちょっと妬かせようと思って兄さんに抱きついたりしちゃったけど、どうだったからしら」
「・・・・・・ちょっと嫉妬しました」
「ちょっとだけ?」
「・・・・・いっいえ、正直とても嫉妬しました」
「うふふ、嬉しいわ。嫉妬もしてくれないんじゃ、本当に私のこと好きなのかと思っちゃうもの」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
陽太が静かに由美子の肩を抱き顔を近づけていった・・・・・
「クシュン」頭上からくしゃみが聞こえた。
「だめだよ陽向ちゃん。今、いいところなんだから」愛子の声がした。
「あっ、あの三人とも何をしているのかな?」陽太は二階のベランダを物干し場を見上げた。陽向、愛子、アンナが顔だけ出して二人を見下ろしていた。
「えーっと、天体観測?」陽向が言った。
「雨でも降りそうな空模様なのにか?」
「あ、あの女子会です、女子会。乙女たちの恋バナを・・・・・」愛子が言った。
「なんでわざわざこんなに寒いベランダで、下を見下ろしながらそんなことやってるの」
「ソータ、そんなことはどうでもいいカラ。さっさと続きをやってくだサイ。風邪ひきそうデス」アンナが逆切れした
「できるか」陽太と由美子はこれ以上はないくらいに顔を真っ赤にして言った。
「もうちょっとだったのにね」
「いいところで陽向ちゃんがくしゃみなんかするから」
「ソータも根性がありません」
三人がそれぞれにブツブツいいながら階段から降りてくると康太とYukiが疲れきった顔をしてソファに沈み込んでいた。
「どうしたのさ二人とも」
「あれを見ろ」康太がさっきまで激論を戦わせていた六馬鹿の方を顎でさした。
愛子がそちらをみると全員で肩を組みながら、アニソンらしき歌を楽しそうに熱唱していた。
「もう10曲目だ。いいかげんに止めてくれ」
「弟はロマンチックなことやっているのに、この連中ときたら・・・・・
「よおし次は「花の子ルンルン」だ」龍一郎が楽しそうに叫ぶ。
「だめだ、こいつ。早くなんとかしなくちゃ」愛子はどこかで聞いたようなセリフをツブやいた。