「大変、龍君が五馬鹿に馴染んじゃって、区別がつかなくなってる」
「・・・・・かなり失礼なこと言ってるな。お前もいきなり龍君呼ばわりしているんだが」
「ねえ、由美ちゃん。龍君って三宮グループの会社ってことは、結構いい会社なんでしょ」
「いい会社かは分からないけど、三宮ホールディングスって会社なの」
「・・・・・ほう、外資とはさすがだな」
「さすがに康太はFクラスだね。三宮グループって言ってるのに英語名ってだけで外資だと思うなんて。で由美ちゃん、それって何する会社なの?」
「三宮グループ全体の株を管理する会社で、グループのトップね」
「それじゃあんな馬鹿共と遊んでバカ伝染されたら、上司の人に怒られちゃうよ」
「うーん、上司って言っても上には社長しかいないし、社長は父だから大丈夫じゃないかしら」
「バカが伝染るってところは否定しないんだね。上に社長しかいないってどういうこと?2人だけでやってる会社なの?」
「それじゃ自営業だよ、愛ちゃん」陽太が言った。
「・・・・・そこらのコンビニの方が社員は多いぞ」康太も言う。
「いえ、もっとたくさん社員はいると思うけど、兄は副社長だから」由美子が平然と答えた。
「「「「三宮グループトップの会社の副社長~?」」」」アンナ以外の全員が叫んだ。
一同の目が龍一郎に集まった瞬間、何かに興奮した龍一郎が立ち上がって叫んだ。
「がたがたヌカしてるとコロニー落とすぞゴルァ・・・・・」
「何だかよく分からないけど、龍君連れて帰った方がいいんじゃないかなぁ、由美ちゃん」その様子を見て愛子が言った。
「僕もそう思うな」陽太も同意する。
「・・・・・日本経済の損失になりそうな気がする」康太も同じ意見だ。
「これで由美ちゃんと陽兄が結婚すれば、龍一郎お兄さんはあたしの義理の兄になるということだね。ふふふ、あたしにも運が向いてきたね」と陽向がニヤリと笑った。
「いや、それ全然違うから。というかどれだけ腹黒いこと考えてるんだ、お前は」陽太が即座に否定した。
「ちなみにリューの言った「コロニー落とす」とは、『機動戦士ガンガム』で描かれた一年戦争の冒頭で、シオン公国軍により発動されたブリティッシュ作戦として行われた・・・」アンナが唐突に語りだした。
「解説ありがとう、アンナちゃん。でもその知識って、今後のボクの人生で一切役立つことないと思うからいらないや」愛子が解説をさえぎった。
「でも兄さんのあんなに楽しそうな様子初めて見たし、別にいいんじゃないかしら。そりゃ兄さんは優秀だけど、副社長なのは三宮本家の長男だからだし」
「甘いよ、由美ちゃん。あの連中のバカは伝染るんだよ。「ダメ、絶対」って厚労省も言ってるよ」愛子が必死に説得する。
「(なんか兄さん達エラい言われ方してるな。愛ちゃんの中では、国家規模で付き合いが規制されてるらしいぞ・・・・・)」
「(・・・・・あの連中は愛子の天敵だからな)」
「(というか、こんな短時間でバカが伝染るんだったら、生まれた時から兄達に囲まれてるあたしはどうなるんだろう?)」
「(お前はアホが強力に発症しているから、バカが伝染ってるかどうか区別がつかん)」
「(・・・・・俺たちも伝染ってるということか?)」
「(しかしよく考えれば最近は最も濃厚に接触してるのは、愛ちゃんなんだけどな)」
「(・・・・・あいつがそこまで考えて喋っている訳がない、感情が思いつくまま脊髄反射で口から出しているだけだ)」
「(大脳すら経由してないのか。ある意味スゴいな・・・・・)」感心したように陽太が言った。
「一番はシュア専用ザクと相場が決まっている」と龍君が言った。
「ばかやろう。一番はドムだろうが」とAtsushiが言う。
「ふっ、物の価値を知らん連中だ。アッガイこそ至高よ」とYouが言う。
「「問題外だ、バカ者」」龍君とAtsushiが同時に叫んだ。
「さっきまで仲間が増えたと喜んでいたのに、なんでいきなり仲間割れが始まっているのさ」愛子が言った。
「タイトルにもなったガンガムこそ王道だろう」颯太が言った。
「けっ、砲撃戦じゃガンキャノンの足元にも及ばねぇよ」Gonが対抗する。
「ガンタンクのキャタピラの機能美を理解できないとは、情けない奴らだ」Guuも負けてはいない。
「ああ、こっちでも始まった」
「まあ、昔からこの連中の連帯が30分以上続いたことがなかったしねえ」とYukiが平然といった。
「いや、Yukiさん。平然としてないで止めてくださいよ」
「止めても無駄よ。自分以外は全員敵って連中ですもの。それぞれが常に1対4なのよ」
「それでなんで幼稚園からずっと五馬鹿やってられるんですか?」
「アイコ、「強敵」と書いて「とも」と読むと・・・・・」アンナちゃんが解説してくれたけど、そんな爽やかなもんじゃないような気がするんだよね、この連中の場合。
「ねえ、由美ちゃん」
「なにかしら、愛ちゃん」
「やっぱり龍君連れて帰った方がいいと思うよ。あの連中と付き合ってたら人間性がすさむよ」
「奇遇ね。私も少しそう思ってたわ・・・・・」と言った由美子の表情は硬かった。