これが土屋家の日常   作:らじさ

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第17話

10数分後一同はやっと食事を終えた。

 

「ハアハア・・・・・やったぞ」

「偉業を達成した気分だな」

「俺はまだ生きているんだよな。これは現実だよな」

「とりあえず神に感謝の祈りを・・・・・」

「なんで食事を終えただけで、いちいちそんな前人未到の快挙を成し遂げたようなこと言ってるんですか」愛子が不思議そうに言った。

 

「そうは言うがある意味人類の限界へのチャレンジだったわけだから」とAtsushiが言った。

「Atsushi君、今までカレー食べたことないんですか?」愛子が言った。

「今日は、カレーの範疇がすさまじく広いということを教えられたよ」

「相変わらず言ってることの意味がわかりませんが、ボクにケンカ売っているということだけはわかりました」愛子がドスの聞いた声で言った。

「何をいうんだ、愛ちゃん。チワワが土佐犬にケンカ売るわけないだろう」

「その言い方がケンカ売っているって言うんです」

「なんで俺の言うことをそう悪い方にばっかり捉えるかなあ」Atsushiが呆れたようにいった。

「何ひとつ良い方に解釈できるようなこと言ってないからです」

「これじゃ喋れないじゃないか」

「それはいいことです。できればボクに話かけないでくれると助かります」

「ムムムムム・・・・・」

愛子とAtsushiが睨み合った・・・・・

 

「本当に仲悪いなこいつら」Guuが言った。

「まあ、そうでもないんだけどな」颯太が苦笑いして言った。

 

「あ、そうだ。ケーキ出すの忘れてました」雰囲気を変えるように由美子が言った。

「そうだ。よく考えりゃ陽太の誕生日だったな。それ以外のインパクトがあまりに強すぎて完全に忘れていたぜ」Gonが言った。

「これが頼まれていたケーキです」といってバースデイケーキをテーブルに広げた。

「そして恥ずかしいんですけど、これが私が作ったケーキです」そういうと全面に苺が飾られたホールケーキを出した。

「ほう、由美ちゃんの手作りケーキとはうらやましいな、陽太」Youが陽太にヘッドロックを決めた。

「うむ、なかなかもらえんぞ」Gonが陽太の足を引っ掛けて床に転がした。

「はははは、モテる男は違うなあ」笑いながら四馬鹿がストンピングで陽太を蹴りまくった。

「言葉は祝福しているようなんだけど、身体は正直だね。嫉妬丸出しだよ」陽向が感心したように言った。

「的確に急所を蹴っていますネ」冷静にアンナが解説した。

「いや、二人ともそんな落ち着いている場合じゃないでしょ。やめなさい、この四馬鹿」愛子の制止でやっと落ち着いた。

 

「まあ、こいつらが黙っているとは思わなかったが、やっぱりだったな。それにしても全面苺で真っ赤だな。シュア専用ってやつか、うまそうだ」颯太が言った。

龍一郎の眉がピクリと動いた。

「今、なんて言いました?」低い声で龍一郎が言った。

「ケーキが美味しそうだなぁと・・・・・」

「その前です」

「その前?シュア専用かと・・・・・」

龍一郎がうつむいて押し黙った。

「・・・・・・・・・・・」

「あの、何か気に障りましたか?すいません」

「・・・・・・どれですか」

 

「ねえ、由美ちゃん。お兄さん、何言っているの?」愛子が尋ねた。

「いえ、私にもちょっと意味がわからないわ」由美子もわけがわからないと言った風情で答えた。

だが、颯太にはピンとくるものがあったようだ。

 

「ファースト以外は認めねぇ」

「なかなか見所があるようだな。で、どっち」

「もちろん連邦だろうが」

「ふっ、しょせんその程度の男か。男ならシオン軍だろうに」

 

「なんか知らないけど、通じ合ってるみたいだよ」

「何なのかしら?」

 

「シオン軍側なんてどうせ金持ちのボンボンが不良に憧れるようなもんだろうが」

「認めたくないもんだな。自分自身の若さゆえの過ちというものを」

「俺が一番ガンガムをうまく使えるんだ」

「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」そういうと龍一郎は身体を乗り出し颯太の頬を軽く往復ビンタした。

「キャア、兄さん。一体何するの」由美子が驚いて叫んだ。

 

「二度もぶった。親父にもぶたれた事ないのに」颯太は意に介さず、ぶたれた頬に手を当てて言った。

「いや、そういう言い方するとなんかいいとこの子に聞こえるけど、圭君が手を上げなかったってだけで、裕ちゃんはじめお母様会に毎日ボコボコにされていたって聞いたけど」愛子が言った。

「坊やだからさ」龍一郎が挑発するようにいった。

今度は颯太が龍一郎を打とうと手を伸ばしたが、龍一郎はそれをかわして言った。

「当たらなければ、どうということはない」

「アミロ、行きま~す」

「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを教えてやる」というと更に颯太にビンタをした。

「まだだ、たかがメインカメラをやられただけだ」

「ええぃ、連邦軍のモビルスーツは化け物か」

 

「ねぇ、由美ちゃん。お兄さん、さっきまでとうって変わって楽しそうに颯太君と小芝居やってるんだけど、何が始まったの?」

「私も兄のこんな楽しそうな姿見たの始めてなんだけど、なんなのかしらこれ」

 

四馬鹿から一斉に歓声が沸いた。

「うむ、シオン軍とは見上げた奴だ」とAtsushi

「けっ、ロクでもねえ奴だ」とGuu

「シオンなんぞに肩入れとは底が見えたな」Gonがいう。

「いやいや、俺は龍を歓迎するぞ。これで連邦対シオンが3対3になった」とYou

いつの間にかお兄さんが「龍」呼ばわりされているのはいいとして、五馬鹿と話が合っているという事実にボクはそこはかとなく不安感を覚えた。


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