これが土屋家の日常   作:らじさ

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今更ですが、この作品。ギャグ成分少なめになりそうです。



第3話

「本当に昨日は大変だったよ」学校の帰り道すがら少女はまだプリプリと怒っていた。

「・・・・・しかし、デートをたった2回断られたくらいで、あそこまで落ち込めるのなら、由美ちゃんに振られた日には出家でもしかねんな、あの男は」少年も言った。

「だいたい由美ちゃんはああ見えても陽太くん一筋なんだから・・・・・」

「・・・・・それもそう・・・それはどうかな?」角を曲がった少年がいきなり逆戻りして首だけ出して道の先を見た。

「どうしたのさ」不審な行動に声をかけた。

「顔だけ出してケーキ屋の前を見ろ」ケーキ屋とは由美ちゃんがバイトしている「メイクィーン」のことだろうか?少女はそっと顔を出してみた。店の前に派手な赤い外車が止まっており、由美ちゃんがその車から出てきた。ドアを閉めるとドライバーに微笑みながら手を振り、大きな荷物を持って店に入っていった。

 

「ねぇねぇ、あれどういうこと?」少女は興奮しながら言った。

「・・・・・俺に聞かれても知らん。わかっているのはあの派手な外車で由美ちゃんが送ってもらったらしいことだ」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・このことは」

「・・・・・兄貴には」

「「内緒ということで」」二人の息がピッタリと合った。

 

 

「昨日のは何だったんだろうねぇ」学校の帰り道に少女が不思議そうに言った。

「・・・・・まあ、大学の友達にでも送ってもらったんだろう」少年はどうでもいいという風に言った。

「大学って由美ちゃん「小妻女子大学」だよ?それに幼稚園から大学まで女子高で、男の人とまともに話したのは、陽太くんが初めてだって・・・・・」

「・・・・・合コンで知り合ったとか」

「少しは陽太くんの心の支えになるような想像しなよ。例えば・・・・・」

「・・・・・例えば?」

「大きな荷物を持っていたから、通りがかりの親切な人が車で送ってくれたとか・・・」

「・・・・・世間ではそれを「ナンパ」というのだ」

「まあ、でもああいうことはそうそうは・・・・・」

「・・・・・隠れろ」少年が鋭く言った。

「今度は何さ」

角から顔をそっと出してみると、昨日と同じ車が店の前に止まっていただけでなく、運転手の背が高くて体格のいい青年が荷物を抱えて由美ちゃんと一緒に店に入っていった。

「ちょっ、ちょっと康太あれ」

「・・・・・うむ、ただ事ではないな、あれは」

やがて2人ででてくると青年は由美ちゃんの頭をクシャクシャと撫でた。由美ちゃんも少し恥ずかしそうな嬉しそうな顔をしていた。

青年が車を出すと、しばらく店の前で微笑みながら手を振っていた。

 

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・ねえ」

「・・・・・やっぱり」

「「内緒ということで」」二人の息がピッタリと合った時に、背中の方でザサという音がした。

「・・・・・こっ、康太振り返って確認して」

「・・・・・いや、とても嫌な予感がするのだ。お前確認しろ」

「・・・・・やだよ。ボクの中のゴーストが見ちゃいけないって囁くんだよ」

「・・・・・じゃ、二人で一緒に」

 

せえので振り返った時、地面に手と膝をついて力なく頭をうなだれている陽太の姿がそこにあった。

 

「あれ、見なかったことにできないかな?」

「・・・・・ここまでガン見してるのにか?それより、俺たちが何とかしなかったら明日の朝まであの調子だぞ、きっと」

「それも困るね。とりあえず家まで連れて帰ろうか」

「・・・・・そうだな警察や救急車が来る前になんとかした方がいいだろう」

 

「で、家に連れてきたわけか」颯太が苦虫を噛み潰したような顔で言った。

「ゼエゼエ・・・・・家まで、いっ一時間かかりました」汗を拭きながら少女が言った。

「それにしてもまた見事に落ち込むもんだな。見ろあの周囲の光をすべて吸収し尽くすブラックホールのような落ち込み方を。CERN《セルン》にポータブルブラックホールとして売りつければ一財産できるかもしれん」

「キョウマ、SERN《セルン》は、我が未来ガジェット研究所の敵デス」

「誰が狂真だ。あと、我が家に変な名前をつけるな」

 

「えー、じゃアンナちゃん。あたしは誰?」

「ヒナタは天才だから、マキセクリスですね」

「えー、あたし戦士だから阿万音鈴羽がいいな」

「それでもいいです」

「(貧相なヌードって言われていたから)牧瀬紅莉栖は愛ちゃんね」

「何の話?」少女が不審げに尋ねた。

「ううん、なんでもないよ。それじゃ颯兄は体型からダルかな」

「なんの話をしているのだ、お前たちは?」

「アンナちゃんは、スタイルいいから桐生萌郁。ライダースーツきたらもう、たまりまへんな~状態だよ」

「お前ら、陽太のこの状態を前にして、よくそんなに楽しそうに遊べるな」颯太が呆れたような顔でいった。

 

陽太は四つん這い状態で頭を垂れてずっと固まったままであった。

 


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