これが土屋家の日常   作:らじさ

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以前に頂いたお題で書いてみます。
どこまで行けるか不明ですができるだけ頑張ります。


12.浮気と仲間とバースデイケーキ
第1話


休日の午後はみんなで集まってお茶をしながら歓談するのが、このところの土屋家の習慣になっていた。

 

「それでですね。アンナちゃんったら・・・・・」

「いかにもこいつらしいな。ハハハ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハア」

 

「・・・もう、アイコそれは言わない約束デスね・・・・・」

「いいじゃん。アンナちゃんらしくてかわいいよ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハア」

 

「・・・・・ちょっとみんなこっちに来てくれ」颯太が皆を部屋の隅に呼び集めた。

 

「一体あれは何だ?なにがあったのだ」颯太君はソファーでうなだれている陽太君を顎で示しながら言った。

「何か陽太君の周囲だけ黒雲がかかっているみたいだよね」

「由美ちゃんがお茶会来てないのと関係あるのかな?」

「たったそれだけであんなにゾンビみたいになるもんなのか?」

「・・・・・T-virusをまき散らさないうちに始末した方がいい」

「祝福儀礼済の銀の弾頭じゃないとダメデス。パパが持っているんデスが」

「また、あの親父か。なんでお前の親父は、いちいち日本での話に絡んで来たがるんだ?」

「仕事で使うと言ってマシた」

「それは間違いなく別のヤバい組織に関わっているぞ、お前の親父は」

「そんなコトありまセン。ただの高校の先生デス」

「なんで普通の教師に、祝福儀礼済の銀弾頭の銃が必要なんだよ。ロシアじゃ、その辺の高校でグールやバンパイアがナチュラルに授業受けたりバスケやってたりしてんのか?」

「ソータ、グールやバンパイアは日中に出歩けないのは常識デス」

「そんな話をしてるんじゃねぇんだよ。というかロシアじゃ常識か知らんが日本じゃ一部のマニアしか知らんわ、そんなこと」

 

「いや、怪しい機関の話はバチカンに任せて、陽太君をなんとかしましょうよ」

「あの調子だと家中にカビが生えちゃいそうだよね」陽向ちゃんがニカっと笑って言った。

「・・・・・家の中が暗くてしょうがない」

「わかりまシタ。ワタシがヨータの相談にのってきてあげマス」アンナちゃんがただでさえ大きい胸を張って言った。

「いや、ちょっと待て。お前ではまとまる話も暴発する。話が明々後日の方に飛んで行きそうだ」颯太君が必死に止めた。

 

「なぜ止めマスか、ソータ」

「いや、お前の気持ちはありがたいんだが、もっと適任者がいる。愛ちゃんだ」と颯太君がいきなりボクに話を振った。

「えっ、ボっボクですか?いやだなあ、あの黒いオーラに関わるの。なんかもう、有無をも言わさず即刻お祓いでもしてもらった方がいいんじゃないですか?」

「いや、そう言わずに。今、ガラスの少年のように閉ざされた陽太の心をこじ開けられるのは、愛ちゃんしかいないんだよ」

「ガラスの心をこじ開けたら割れるんじゃ・・・・・でも、ボク、いつも康太にお前の解釈は明後日の方向だって言われてるし・・・・・」

「明後日、結構じゃないか。アンナの明々後日より1日分近づいてる」

「それって大阪行くのに、東北新幹線乗るか長野新幹線乗るかくらいの違いしかないんじゃないんですかね?」

「長野の方が戻ってくるのに時間が短いじゃないか」

「間違うことは確定事項なんですね」

 

「と言うことで愛ちゃん頼むよ」颯太君が拝むように言った。

「あ、そういえば陽向ちゃん。かわいい妹が聞けば心を開いてくれるんじゃないですか?」

「え~あたし?それでもいいけど、あたし陽兄に怖がられているからなぁ。あたしが行ったら今の状態プラス怯えが入って、雨の中に捨てられている子犬状態になっちゃうよ、きっと」

そうだった。陽向ちゃんは陽太君の哲学のレポートをケチョンケチョンに貶して再提出させるだけの能力の持ち主だったのだ。悩んでいる時にケチョンケチョンにされたら泣きが入るかもしれない。

 

「・・・・・だから、お前しかいないのだ」

「いや、それなら颯太君か康太が行きなよ。男同士だし実の兄弟なんだから話もしやすいよ」

颯太君がやれやれこいつ何も分ってないなという顔で首を振ると諭すようにボクに言った。

「愛ちゃん、確かに俺たちは男同士だし、血を分けた兄弟だ」

「でしょう、兄弟は助けあわなきゃ」

「だが、血を分けた兄弟だからこそ、わかることがあるんだよ・・・・・」

「これ以上は聞くなって囁いているんです、ボクの中のゴーストが・・・」

「つまり俺たちは誰よりもお互いのことを知っている。その結果「こいつらは信用できん」とお互いに同じ結論を出したわけだ。さすが兄弟だろ?3人が同じ結論に達したんだから」

「胸はって威張れることじゃないでしょう。もっと兄弟仲を良くする努力を・・・」

「失礼だな、愛ちゃん。兄弟仲はすこぶるいいぞ」

「そっそうですよね~、いくらなんでも・・・・・」

「信用しあってないだけだ」

「それを普通は仲が悪いというんです」

「ふ、わかってないな愛ちゃん」颯太が自信ありげに言った。

「なっ、なにがですか?」

「「平和とは戦争と戦争の間の状態を言う」という言葉がある」

「はぁ?」

「つまり、「仲がいい」とはケンカとケンカの間の状態をいうんだよ」

「それってケンカしてるのがデフォルト状態ってことじゃないですか」少女は呆れて言った。

「うむ、厳密に言えば今日で通算1週間仲がいいぞ」

「いくらなんでも短すぎ」

 

 


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