これが土屋家の日常   作:らじさ

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第20話

「あの~、お館様」廊下から一人の生徒が飛び込んできた。

「守備隊じゃないの?どうしたの敵が思ったより手ごわいの?」

「いや、手ごわいというか何というか、戦闘の最中に伝令が来たと思ったら敵が全員「殺せ~」と叫びながら2階にかけ戻っていきました。今、敵は誰もいません」

「おかしいわね、陽動作戦かしら。とりあえず現状を守って。深追いしちゃだめよ。挟撃される恐れがあるわ」さすがの陽向もFFF団の常軌を逸した行動を読むことはできないようであった」

 

「なにい、Fクラスが戦闘を放棄して全員明久の方に行ったぁ~。あの馬鹿ども何やってんだ。しかたない予定より早いがEクラスを出せ」

「雄二、明久は大丈夫かのう」

「清水と玉野がいるんだ。心配なのはFクラスの方だ」

「坂本君ってやっぱりみんなが心配だったんですね」

「戦死したら廊下に転がして障害物にする予定だったのに、計画がメチャメチャだ」

「あんたとアキは死んだら絶対に畜生道に落ちるわね」

 

「お館様、新しい敵がきました。さっきより強敵です」

「なるほどFクラスから順番に送りこんで少しずつ点数を削る作戦ね。すると今来ているのではEクラスで、Aクラスは教室、BクラスとCクラスは廊下の守りに就くはずだから攻撃隊はD、Eクラスよ。これで敵の半分が攻めてきた計算ね。よし、挟撃隊を突入させて」

3年の廊下から挟撃隊が後ろから駆け下りてきた。

「うわ、何だ後ろから敵が出てきたぞ」

「隊列を乱すな。後方の列は後ろの敵に対応しろ」

「走るな、逃げるな。俺たちの方が有利なんだ」

 

前方と後方で戦闘が始まった。あっちこっちで「召喚《サモン》」の声がする。もう、誰と誰が戦っているのかすらわからない混戦に陥った。

 

「よし、これでしばらくは時間が稼げるわ。じゃ位置報告の電話をするから」

「トゥルルルルル~」

「・・・・・はい」

「霧島先輩ですか、土屋です。位置報告を・・・・」

「・・・・・切れることのない赤い糸で繋がった者同士、ケンタウルスとベガ・・・・・」

「まだやってたんですか。それにケンタウルスとベガは1年に1度しか会えないんですよ。

それより、あたしは同じくDクラスにいますから」

「・・・・・私もFクラスにいる。それで私たちは志を同じくする同士、親公認でだれもが認める学園No.1のカップル・・・」

「はい、その話はまた今度・・・・・ブチッ」

「どうだった?」

「次は由香リンが電話してくれないかなあ、あたし怖い夢みそうで・・・・・」

「なんで位置報告の電話でそんなことになるのよ。2年生の本陣はどこ?」

「2年Fクラスだよ。じゃ状況開始だよ!」

はしごが3つ取り出され窓から外に出された。陽向とAクラスの生徒、それにFクラスの3人が窓から外へと飛び出た。

 

「翔子、陽向はどこにいるんだ」

「・・・・・まだDクラスにいる」

「変だな。守備隊が挟撃を受けて大分人数が減っているのにまだ出てこないのか?長期戦になれば不利になることがわかっているはずなのに。よしDクラスを攻撃に出せ。このまま前線を突破してDクラスに突っ込む」

 

1年生は3つのはしごを持って2年Fクラスの真下に位置した。はしごを3ヶ所にわけて先頭をハンマーを持ったFクラスの生徒が登る。その時、陽向の携帯がなった。慌てて陽向は携帯に出る。

「なによ、この大事な時に。見つかったらどうするのよ。え、敵のDクラスが攻撃してきた?ありがとう」携帯を切ると静かな声で言った。

「敵は力押しできたわ。意識が攻撃に行っている。今がチャンスよ」

各はしごに3人ずつ窓のギリギリまで登った。

「おい、土屋」竜崎が押し殺した声で言った。

「なに、マコちん」

「やっぱりダメだ。窓に鍵がかかっている。叩き割るしかねぇ」

「そう・・・・3人ともゴメンね・・・・・やって!」陽向の声とともにハンマーを振りかざした3人が一撃で窓ガラスを割って、手を伸ばして鍵を外し、窓を開けて教室に飛び込んだ。続いたAクラスの3人も即座に教室に飛び込むと手近にいた護衛役の2年生に対決《デュエル》を申し込んだ。

 

「1年Aクラス 城ヶ崎由香 召喚《サモン》」

「1年Aクラス 大城厚 召喚《サモン》」

「1年Aクラス 柴田あゆみ 召喚《サモン》」

・・・・・・・

 

突然のことにあっけにとられていた2年生は「召喚《サモン》」の声に条件反射のように応じた。結果的にこれで護衛が足止めされ総代が裸の状態になったも同然になった。

 

そこへ最後に陽向が飛び込んできた。

「お待たせしました。霧島先輩と坂本先輩。1年Aクラス 土屋陽向参上しました」

ちらっと竜崎たちに目をやると妙に体格のいい強面の教師に腕を掴まれて教室から連れ出されるところだった。

 

「やるじゃねぇか、陽向だったか?廊下から力押ししてくると思ってたら外からガラスを割って入ってくるなんてな。その手段を選ばねぇやり方は嫌いじゃないぜ」

「坂本先輩こそ増援にEクラスを送ったと見せかけてBクラスを送ってくるなんてやりますね。しかもあたしがそれを見抜いて、守備にEクラスを使っていると判断して廊下を突破するようにしむけるなんて手段を選びませんよね」

「よくわかったな」

 

・・・・・ざわざわ

「ふっ、人をはめることばかり考えてきた人間の発想・・・痩せた考え・・・」

・・・・・ざわざわざわざわ

「俺をなめた罪、それはこの世で一番重い実刑、情状酌量の余地なし。だが、まさか窓ガラスを割ってまで突入してくるとはな」

・・・・・ざわざわざわざわざわざわ

「不合理こそ作戦・・・それが作戦の本質・・・不合理に身をゆだねてこそ試召戦争」

・・・・・ざわざわざわざわざわざわざわざわ

「翔子、おまえさっきからなんで「ざわざわ」って言ってるんだ?」翔子が両手を口にあてて「ざわざわ」とつぶやいていた。

「・・・・・「やれ」という書く人の声が聞こえた気がした」

 


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