10時になった。陽向は携帯のボタンをプッシュした」
「・・・・・はい」
「霧島先輩ですか?1年総代の土屋です。約束通り試召戦争開始です」
「・・・・・わかった。私は2年Fクラスにいる」
「了解です。あたしは1年Dクラスです」
「・・・・・土屋さん、あなたに忠告してあげる」
「なんでしょうか?降伏しろというのなら拒否しますけど」
「・・・・・違う。あなたは私に勝てない」
「それは霧島先輩が必ず勝つということですか?」
「・・・・・違う。私もあなたに勝てない」
「えっと、なぞなぞ?」
「・・・・・ううん、雄二がそう言った」
「その雄二さんっていうのは、どちら様で?」
「・・・・・私の夫、永遠のパートナー、如月ハイランドで愛を誓い合った相手、素晴らしい伴侶、子供たち39人の父親、永久のソウルメイト・・・・・」
「あの~、すいません。その話まだ続きますか?」
「・・・・・大丈夫、あと1時間くらいだから」
「そっそうですか。じゃ、今度ゆっくりお話伺うということで」陽向は強引に電話を切った。
「どうしたの?」陽向の様子がおかしいのを心配して、由香が声をかけた。
「どうしたもこうしたも、鬼気迫るおのろけっていうのを生まれて初めて聞いたよ」脂汗をにじませて陽向が言った。
「相変わらずなに言ってるのか分からないけど、2年生の本陣はどこ?」
「予想通りFクラスだよ」
「翔子、お前の電話中俺は寒気がしっぱなしだったんだが、1年生の本陣はどこだ」
「・・・・・1年Dクラス」
「予想通りだな」
「「よし、作戦開始」」陽向と雄二が同時に叫んだ。
「玉野さんとにかく落ち着いて」Aクラスまで玉野さんと清水さんに引きずられてきた僕は、今玉野さんに無理やり上着をはぎ取られようとしている。
「ダメです、アキちゃ-吉井君。もう試召戦争がはじまるんですから」
「うん、それは分かっているんだけど、なぜ僕が上着を脱がされようとしているのかが分からないんだ」
「アキちゃ-吉井君の戦闘服を私が作ってきましたから、それに着替えて下さい」
清水さんは部屋に入るなり、ドアから窓から、鍵と言う鍵を全部かけてカーテンまで閉め始めた。
「これでブタ野郎を殺る準備は完璧です。これでお姉さまは私だけのものに・・・・・ブツブツ」
おかしい。部屋に入ってたった10秒で僕は状況を全く理解できなくなっている。
というかいろいろと危険な状況に陥っている、たった10秒で。僕は片手で上着を押さえながらもう一方の手でポケットから携帯を取り出し、全ての元凶であるあの男に電話をかけた。
「トゥルルルル・・・・・」
「はい・・・」
「あ、雄二。僕だけど・・・・・ツーツーツー」雄二の奴、たった九文字で電話を切ってしまった。親友が危機にあるというのになんて腐った奴だ。交渉の仕方が悪かったに違いない。もう一度電話してみよう。
「トゥルルルル・・・・・」
「はい・・・」
「この間AVを借りたことを霧島さんにバラす」
「明久じゃないか、どうした?」
「どうしたもこうしたもないよ。護衛が僕に襲い掛かってきてるんだけど。誰か救援を。だから玉野さん、僕を脱がさないで」恐ろしい力で上着が脱がされた。
「さあ、アキちゃ-吉井君。次はズボンを脱いで下さい・・・・・ハアハア」
「お前らは一体兄をしてるんだ?」
「なにをしてるか教えて欲しいのは僕の方だ。玉野さんズボンだけは・・・・・」思わず怒鳴ってしまった。
「何か知らんが楽しそうな雰囲気は伝わった。まあ、ゆっくり楽しめ」
「そんなことを言ってる場合じゃないんだ。玉野さんが恐ろしい力で僕を裸にしようとしている。一刻も早く強力な救援隊を送ってよ」
「ああ、わかった。その状況に最強の連中を送ってやる。奴らなら無事に救いだしてくれるだろう」
「ちょっと待ってよ。それってもしかして」
「ああ、Fクラスの連中だ。もうしばらくまってろ・・・・・ツーツーツー」
「いや、できれば別のクラスに・・・雄二・・・雄二」
これは困った。状況(一人は僕を裸にヒン剥こうとし、一人は僕の命を狙っている)がどうあれ2人の女の子と鍵のかかった密室で一緒となったら、連中が黙っているわけがない。
玉野さん、清水さん、FFF団と3翻揃って、これで裏ドラが乗れば満貫だって僕は混乱のあまり何を言ってるんだ。いや、落ち着けFクラスは捨石として今、1階で1年生と戦っているはずだ。そうそうこっちへは・・・・・
「ここか、明久が女とシケこんでるのは」
「やろう、戦闘にも参加しないで一人だけいい目を見やがって」
「ヒャハハハ、やっちゃうよ。切り刻んじゃうよ」
やってこないはずがなかった。というか既に狂戦士≪バーサーカー≫化している奴もいる。ここからの脱出とその後の逃亡まで考えなければならない。
冷静に考えれば素直にムッツリーニの妹に踏みつぶされていた方がよかったような気がしてしょうがない。