これが土屋家の日常   作:らじさ

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第13話

勝負が決した後、教室で待機している通信員に連絡を入れて勝ったことを伝えた。教室に戻りながらまだ対決《デュエル》を続けている同級生たちに戦争が終わったことを伝えた。教室に戻るとお祭り騒ぎになっていた。

 

「すっげ~、本当に3年に勝っちまったよ」

「いや~、お館様の読み通りだったな」

「この調子で2年も楽に勝てるんじゃないか」

 

そこへ陽向と由香が戻ってきた。

「やあ、みんなお疲れさま。みんなのお陰で勝てたよ」

「お館様、勝利の演説を」

「ハイル、ハイル、ハイル、ハイル・・・・・」

いつしか教室中に「ハイル」の掛け声が響いていた。

「よ~し、夕べあたしが徹夜で考えた勝利の演説を一発」

「「「「おぉぉぉ~~」」」」

 

「コホンっ」と軽く咳払いをして演説を始めた。

 

「諸君 あたしは戦争が好きよ。諸君 あたしは戦争が好きよ。諸君 あたしは戦争が大好きよ。

 

数学戦が好きよ 英語戦が好きよ 国語戦が好きよ 古文戦が好きよ 物理戦が好きよ 化学戦が好きよ 生物戦が好きよ 地理戦が好きよ 日本史戦が好きよ 世界史戦が好きよ 保体戦が好きよ 音楽戦が好きよ。

 

教室で 廊下で 体育館で プールで 屋上で 食堂で 進路指導室で 音楽室で 美術室で 職員室で。

この学園で行われるありとあらゆる戦争行動が大好きよ。

 

戦列をならべたFクラスの一斉突撃が怒声と共に敵を吹き飛ばすのが好きよ。

空中高く放り上げられた敵の召喚獣が効力攻撃でばらばらになった時など心が踊るわ。

攻撃隊の操る召喚獣の日本刀が敵の召喚獣を撃破するのが好きよ。

悲鳴を上げて壊滅した隊列から飛び出してきた敵召喚獣をなぎなたでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだったわ。

 

銃剣先をそろえた1年生の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きよ。

恐慌状態の女生徒が既に息絶えた敵召喚獣を何度も何度も刺突している様など感動すら覚えたわ。

敗北主義の逃亡者達が進路指導室に連行されていく様などはもうたまらない。

泣き叫ぶ点数が少ない敵召喚獣敵が私の振り下ろした掌とともに歓声を上げて突き出される槍にばたばたと薙ぎ倒されるのも最高ね。

哀れな敵召喚獣が雑多な武器で健気にも立ち上がってきたのをビームバズーカが壁ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚えたわ。

 

2年生のAクラスに滅茶苦茶にされるのが好きよ。

必死に守るはずだった防衛ラインが蹂躙されFクラスの仲間が殺されていく様はとてもとても悲しいものね。

2年生の高得点に押し潰されて殲滅されるのが好きよ。

2年生の攻撃隊に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだわ。

 

諸君 あたしは戦争を 地獄の様な戦争を望んでいるわ。

諸君 あたしに付き従う1年生戦友諸君。あたな達は一体何を望んでいる?

更なる戦争を望むの?

情け容赦のない糞の様な戦争を望むの?

鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むの?」  

 

『戦争《クリーク》! 戦争《クリーク》! 戦争《クリーク》!』クラス中から戦争《クリーク》の声がこだまのように響いている。  

 

「よろしい ならば戦争《クリーク》よ。

あたし達は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳よ。だけどこの1階の教室で数ヶ月もの間、堪え続けてきたあたし達にただの戦争ではもはや足りないわ!!

大戦争を!! 一心不乱の大戦争を!!

あたし達はわずかに6クラス 200人に満たぬ1年生に過ぎないわ。

だがあなた達は一騎当千の古強者だとあたしは信仰している。ならばあたし達はあなた達とあたしで総力1万と1人の軍集団となる。

あたし達を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こしましょう。

髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させましょう。

2年生に恐怖の味を思い出させてやるわ。2年生に我々の軍靴の音を思い出させてやるの。

天と地のはざまには2年生の哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやるわ。

180人の1年生の戦闘団で 世界を燃やし尽くしてやるわ。

1年総代全軍指揮官より全1年生へ 目標2年生総代!!

 

第二次ゼーレヴェー作戦 状況を開始よ。

 

さあ、諸君。地獄を作るわよ」

 

ここまで一気にいうと陽向は「どうだ」とばかりに由香の方を見た。由香はニッコリと微笑むと無言でこぶしを陽向の頭に叩き込んだ。

「あなたはたかが試召戦争をどれだけワールドワイドにするつもりなのよ。これじゃ2年生どころかイギリスとバチカンまで敵に回すじゃないのよ」

「え~、夕べ徹夜してDVDから演説を書き写したのに」

「もっとマシなことに時間を使いなさい」もう一発ゲンコがとんだ。


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