「青龍A、B、Cチーム。それぞれの階段を埋めて。隙間を作らないように。それと50点以下になったら後ろの人と位置を代わって、体育館で補修テストを受けてきて。150くらいまで回復させればいいから」
「土屋、お前バカか」竜崎が呆れたように言った。
「どこがバカなのよ。敵を消耗させつつ味方も殺さないという諸葛孔明も裸足で逃げ出す的確な名作戦じゃない」
「俺たちゃFクラスだぞ。持ち点からして50点程度しかないのに、50点以下っていったら1撃くらっただけで体育館行きだ」
「方針変更。みんな死ぬまで戦いなさい。靖国で会えるわ」陽向が大声で叫んだ。
「あなた、本物の外道ね。諸葛孔明はどこいったの」由香が呆れたようにいった。由香は陽向の参謀役(つまりツッコミ)ということで傍にいるようにと言われていたのである。
「そうは言うけどこの戦力でどうしろっていうのさ、由香リン。諸葛孔明だって白旗量産してるよ」
「まあ、とりあえず負けるにしても逃げ回れと言っておく。それに突撃隊がこっちの有利な舞台を作ってくれるはずだしな」
「なんかその有利っていうのが200対50が200対60になる程度のような気がしてるんだけど」
「大丈夫だよ、由香リン」陽向がニッコリと笑っていった。
「結構、いい勝負になるのかしら?」
「ううん、死んで倒れても道を塞いでくれるから3年生はこっちにこれないよ」
「鬼畜という言葉は、あなたのために生まれた言葉に違いないわ」
その時、陽向の形態が鳴った。
「こちらアルファ1、敵が動いた。西階段は理系、中央階段は文系、東階段は国立。それぞれ10人程度、オーバー」
「ベータ2先生は見える?」
「えぇっと、ちょっと待って。一覧と照らし合わせる。わかった。西階段は物理の古賀先生、中央階段は、古文の与野先生、東階段は国語の山内先生だ。オーバー」
「ありがとう。じゃ連絡員のみんなは、青龍チームに連絡して」
連絡員として確保されていた3人の女生徒がそれぞれの階段に待機している連絡員に相手の先生と教科を連絡した。
西階段にはFクラスの生徒を先頭に30人のD、E、Fクラスの混成群が階段にびっしりとひしめいていた。おそらく中央階段、東階段も同じ状態だろう。
「よし、突撃隊。相手の先頭が見えたと同時に突っ込んで先生を担ぎ挙げてそのまま廊下を突っ走れ。救援隊、こっちの先生の準備はいいか」
「いつでもオッケーだ」
「あのね君たち、試召戦争ってのは一種の試験なんだから、無理やり教科を変えるというのは感心しないな」拉致されている教師が言った。
「そういいますけど、3年と僕たちじゃ戦力差があるんですから、作戦で補うくらいしないと」
「静かに。きたぞ。いけ、突撃隊」
「うぉぉぉぉぉぉぉ~~」体格のいいラグビー部の生徒がいきなり3年の中に突っ込み、あっけにとられている教師を肩に担ぎ上げるとそのまま走り去っていった。何が起きたのかわからない3年はポカンとしていた。
「よし、今だ救援隊。先生を連れて先頭にでろ」
「じゃ、先生お願いします」
「やれやれ」と教師はゴンズイ玉のように群れをなしている1年の間を通って先頭に出て宣言した。
「古文担当堀内です。試召戦争の立会をします」
「よし、先頭3人出ろ」
「1年高橋幸夫 召喚《サモン》」ズズズと足軽が姿を現した。
「1年横山準 召喚《サモン》」なぜかグロブをつけた野球の
「1年佐藤邦彦 召喚《サモン》」下級忍者が出てきた。
一方、3年は混乱に陥っていた。
「おい、物理の古賀はどうした?」
「なんか熊みたいのにさらわれていったぞ」
「古文なんてほとんど忘れたよ」
「どうでもいい。誰か3人でろ。向うが対決《デュエル》してんだ。誰もでないと全員補習室送りだ」
「3年安藤光一 召喚《サモン》」
「3年鈴木聡 召喚《サモン》」
「3年谷本一郎 召喚《サモン》」
形式的には対決になった。後ろから竜崎の声がした。
「いいか、無理に戦うな。逃げ回って時間を稼げ。死にそうになったらフィールド外にでて次の列の奴と交代しろ」
3年 安藤光一 92 vs 1年 高橋幸夫 90
3年鈴木聡 98 vs 1年 横山準 89
3年 谷本一郎 88 vs 1年 佐藤邦彦 91
「おい、なんだか俺たちと点数変わらないぞ」
「本当に3年生か?」
「いくら理系でも俺たちと同じレベルって酷くないか?」
だれかが恐る恐る尋ねた。
「あの~、先輩たち何クラスですか?」
「ああ、俺たちか3年Fクラスだけど」
途端に1年から歓声が上がった。
「何だよFクラスじゃねぇか」
「ふざけやがって、Fクラスで文系も理系もあるか」
「勝ったも同然だな」
自分たちもFクラスであることを全く忘れている青龍チームであった。