これが土屋家の日常   作:らじさ

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前作に続いてリトルモンスター陽向が主人公です。

残念ながら今回はムッツリーニや工藤さんは脇役です。
というか余り出てこないかもしれません。

不慣れな試召戦争に挑戦してみましたので、不具合や矛盾等が
あるかもしれませんが、その変はお許し下さい。

あ、さらに言えばギャグ成分も控えめになると思います。



11.友と戦と全校戦争
第1話


ホームルームの時間、陽向は教壇の上で腕を組んだままあぐらをかいていた。

 

「なんでなのさ?」陽向は教室を見渡すと憮然として言い放った。

「なんでとはどういう意味ですか?」長い黒髪を赤いリボンで結わえた少女が尋ねた。

「なんで試召戦争が全然起きないかって聞いてるの。あたしが転校してきてから1回も起きてないんだよ。せっかくそれを楽しみに戸籍まで偽造して転校してきたのにさ」

「戸籍を偽造・・・?」

「あ、いやこっちの話。なんでもないよ」

「試召戦争が起こらないのは、ハッキリ言って代表、あなたのせいです」

答えている少女は城ヶ崎由香。陽向が転校してくるまでAクラス代表で1年総代だった生徒だ。だが由香は代表の座を陽向に奪われたことを別に恨んではいなかった。奪われたのは自分の実力不足、もっと努力して取り戻せばいい。そういう風に考える真っ直ぐで素直な娘だった。その由香が声を荒げるのは、とにかく陽向のやることなすことが、この真面目な少女の神経を紙やすりで削りまくるようなものであったせいである。

 

「なんであたしのせいなのさ、由香リン。あたしこんなにかわいいのに」

「それは個人の好みだからコメントしません。あと、私を由香リンと呼ぶのは止めて下さい。城ヶ崎という名前があります。ついでに言えば、教壇の上にあぐらで座るのは止めて下さい」

「もう、由香リンってば堅いなぁ。スパッツ履いてるから見えても大丈夫だよ」

「そういうことを言ってるのではありません」

「このクラスにスパッツフェチがいるってこと?」

「いちいちクラスメイトの性癖まで把握はしていません。単にお行儀が悪いと言ってるのです」額を押さえながら少女が言った。

 

「うーん、伊賀じゃ寄合の時は囲炉裏端であぐらかいて会合してたからこっちの方が気合入るんだよね」

「ホームルームで何の気合を入れるつもりですか、あなたは?」

「由香リン、いいツッコミだねえ」

「話が進まないので無視します。とにかく1年生の間で試召戦争が無くなったのは代表のせいです」

「あたしのことはヒナちゃんって呼んでいいよ、由香リン」

「あなたは人に説明させておきながら、それを聞く気があるんですか?」

「もちろん聞いているよ。なんであたしのせいかがよく分からないけど」

 

「いいですか」由香は教え諭すように陽向に言った。

「すべてはあなたのあの非常識な召還獣のせいです。あんなもの相手に誰が勝てると思います?Aクラス全員倒しても代表のあなた一人にやられるのは火をみるより明らかですあから、結果的にAクラスに試召戦争を仕掛けてくる組はなくなりました」

「でも他のクラスで試召戦争がなくなったのはどうしてさ」陽向は納得がいかないといった様子で言った。

「勝っても負けてもあなたが試召戦争を仕掛けてくるとみんな思っているんです。ただでさえ消耗しているとこにAクラスにまで試召戦争を仕掛けられたら全員0点で補習室行きです。だからみんな動くに動けないんです」

「え~、じゃ、このままずっとこう着状態が続くってこと?」

「現時点ではそういうことになります」

 

「う~ん・・・・・」陽向は教壇にあぐらをかいたまま考えていた。

「ロクでもないことを考えているんじゃないでしょうね」由香が警戒心を露わにして言った。

「あのさ由香リンが代表と総代やればいいんじゃない?あたしはただの兵隊でいいからさ」

「それは、私だったら簡単に倒すことができるということを前提にした発言ですね。バカなことを言わないで下さい。代表と総代はテストの点で自動的に決まるのです。それに次のテストで自力で奪い取ってみせますから、譲られるには及びません。あと、再度申し上げますが由香リンは止めてください」

「そんな不便な決まりなの?やりたい人がやればいいと思うんだけどなぁ」

「これがこの学校のシステムです」

 

「よし分かった。由香リンは副代表だからあたしの部下だよね。放課後に全クラスの各組の代表を集めてくれる?」

「何をするつもりなんですか」

「・・・・・へへへ、下克上会議」陽向はそういうとニカっと笑った。

 

放課後、全クラスの代表が集まった教室で陽向は再び教壇にあぐらを書いてみんなを見直してた。

「土屋さん、いいかげんにしなさい。さっさと教壇から降りて。みんなに失礼よ」

「ああ、いいよ。城ヶ崎。そっちの方がお館様らしい」

「・・・・・お館様?」

「へへへ、あたし忍者の子孫でさ。この間ポロっと洩らしたら「お館様」ってあだ名がついちゃったの」

「・・・・・忍者?」

「いや、最初は冗談だと思ってたんだけど、女子の体育抜け出して男子のサッカーに混ざってプレイしてさ。ドリブルで7人抜きだの、本田ばりの無回転FKだので一人で5点も入れられちゃ信じざるを得ないよな」

「あなたお腹が痛いから保健室行くって言っておきながらそんなことしてたの」

「だって、女子の体育の創作ダンスなんて、こっ恥ずかしくてやってられないよ」

「だから学校っていうのはそういうもんじゃないと・・・・・」

「由香リン、うちのお母さんみたい」

「誰があなたのお母さんよ」と大声で怒鳴ってしまった。気がつくとすべての組の代表が由香をじっと見つめている。

「コホンっ、ではこれから会議に入ります。今日集まってもらったのは・・・・・」

ここで由香は気がついた陽向に代表を集めろといわれて声をかけるのに時間を取られてなんの会議だったのかを聞くのを忘れていたのです。

「・・・・・・きっ今日の会議は下克上会議です」誰かが質問してこないことを祈った。


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