食べたんだか食べてないんだかわからない食事を終えて外にでた。ついでに言えば何を食べたのかすら想像もつかない。覚えているのは値段だけだ。断言するけど、ボクの人生の中で一番高価な食事になるだろう。
「ごっご馳走様でいいのかな・・・・・」
「よろこんでくれたらあたしも嬉しいよ。美味しかった?」
「何を食べたのかすらわからなかったよ。さて、じゃ陽向ちゃん。本命のお洋服を買いに行こうか」
「愛ちゃんの行きつけのところでいいよ」
「ふふふ、自慢じゃないがボクの服はブランド物だよ」
「・・・・・ウニクロをブランド物というのはお前くらいだ」
「ウニクロだったら伊賀にもあるから、もうちょっとおシャレなお店がいいな。原宿とか」
「原宿・・・・・」
「・・・・・原宿」
「何で二人して固まってるのさ?」
「・・・・・いや、俺があの駅に降りる日が来るとは思わなかったもんでな」
「まったく康兄はだらしがないなあ。愛ちゃんは行ったことあるよね」
「ボクもあの手の人種には知り合いがいなくて・・・・・」
「愛ちゃんって一応女子高生だよね?」
「一応世間ではそう呼ばれているみたいだね」
「もうっ、話が進まないからさっさと行くよ」
30分後、3人は原宿駅の改札口に立っていた。
「康太、大丈夫なの?」
「・・・・・一応、ありったけのティッシュを準備しておく」
「さあ、いくよ。待ってろよお洋服」陽向がとても買い物に行くとは思えない掛け声をかけた。
道路に出た途端、マイクロミニの女の子二人連れが目の前を横切った。
ぶしゅうううう~
少年が盛大に鼻血を吹き出した。
「うーん、3歩も持たなかったね」落ち着いた様子で陽向が行った。
「陽向ちゃんそんなこと言っている場合じゃ。康太、大丈夫?」と少女が思わず少年の手を握りしめた。
ぶしゅううううううううう~
「さっきよりも景気よく鼻血を噴き上げたね」
「ああ、つい」
「・・・・・お前は何度言えばわかるのだ。不用意に俺に触るな」少年をティッシュを鼻につめながら言った。
「・・・・・この街に入ったら俺の命が持たん。ここで待ってるから二人で行ってこい」
「うん、わかった。愛ちゃん行こう」瀕死の重傷を負った兄を全く省みることなく陽向は少女の手を取って街に向かって駆け出していった。
「うーん」少女は服を前に腕を組んで考え込んでいた。
「何でこれでもかとばかりにピラピラが一杯ついているんだろう?どう考えても動きにくいと思うんだけど」身も蓋もないことを言う。
「愛ちゃん、これ似合う?」陽向が着替えて戻ってきた。
「可愛いね。陽向ちゃんこんなの好きなの?」陽向はチェック柄のシャツにボレロ、革のミニスカートという格好をしていた。
「いや、あんまりお洒落ってわからなくてさ。雑誌にこんなの載ってたから真似てみたの」これも身も蓋もないことを言った。
「とっても似合うよ。これにしなよ」その時に、店に中学生と思える3人組がキャアキャアいいながら入ってきた。
「今日はぜったいあのブラウス買うんだ。お小遣いためてきたんだから」
「もう売れちゃってるんじゃない」
「文子の好みだから、絶対に売れてないよハハハ」
「何それ、ひど~い。キャハハ」
陽向はそちらに目をやると、一瞬寂しそうな顔をしたが、すぐに明るい声で
「じゃ、これにする。次行こう」と言った。
会計を済ませて次の店に行く。全部で4~5軒のお店を回って数点の服を買った。
中学生のグループを見るたびに辛そうな顔をするのが、少女は気になっていたが何も言わなかった。
「・・・・・遅い。何時間待たすのだ」
「あのね康兄、女の子のお買い物は時間がかかるの。これでも随分早く回った方なんだよ」
「ごめんね康太。でも陽向ちゃんの好きなお洋服を買えたから我慢して」
「・・・・・それなんだが。待ってる間ずっと気になってたんだが、お前忍里でもちゃんと着れるような服買ったんだろうな?派手すぎて着れないとかいうオチをつけてないよな」
・・・・・陽向の動きが止まった
「ニャハハ何を言うのさ康兄。あたしがそんなドジ踏むわけないじゃん」
「・・・・・アホの子のお前だから言っているのだ」
「大丈夫。ちゃんと部屋の中では着れるから」
「・・・・・家の中ですら着れん服を買ったわけだな。こんなことだと思った」
「まあまあ、街に買い物に行くときには十分着れるよ」
「・・・・・もういい、疲れた。早く帰ろう」
こうしてボクたちのお出かけは終わった。