この都市がおかしいのはどう考えても転生者が悪い!   作:あまねぎ

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第4話 平和な朝の日常

テケ・リ、テケ・リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!

 去年ニャル子さんから貰った目覚まし時計が鳴り響く。

 

「ん、……ふぁあ……っと」

 

 眠気とSAN値が同時に削れそうな色々と危なそうな目覚まし時計を止める。

 そのまま身体に残った睡魔からの誘惑に負けないよう、身体をゆっくりとベットから起き上がる。

 ……眠い。

 結局、昨日来た汚染獣の死骸撤去作業は深夜三時まで及んだ。

 私は子供だからもう帰って寝てもいいと皆さんに言われましたが、私も武芸者なので最後までやります。と言って内力系活系で眠気を誤魔化しながら作業をしました。

 前世では夜更かしなんて慣れたものでしたが、今の私の肉体年齢は10歳。頭と身体はまだ眠いと言っている。

 少しでも目を覚まそうと身体を伸ばす。

 

「ん~~、よし!」

 

 正直、このまま二度寝したいですがまだ寝ているであろう妹に朝食を作らないといけないので我慢します。

 深夜に帰って、風呂にも入らずにすぐに寝てしまったので、目覚ましも兼ねて少し熱めシャワーを浴びる。

 切るきっかけがなくて腰まで伸びた長い碧銀の髪が水を吸い、重くなる。

 手入れに時間がかかり、夏場は熱く、横になったり、椅子に座るとたまに身体が髪を踏んづけてしまって色々と面倒な髪ですが、今では自慢の髪なのでしっかりと寝癖を梳かして髪を洗う。

 20分きっかりでシャワーを終えて洗面所で、白のブラウスに黒のスカートとシンプルな服に着替えてからドライヤーで髪を乾かして軽くワックスをかける。髪で髪を結ぶ特徴的なツインテールして、最後に赤いリボンをつける。最後に鏡で自身の格好を確認。

 

「って……今更ですが、なんで私は面倒くさい『アインハルト・ストラトス』の髪型をしているんでしょうか?」

 

 自然とコスプレしてしまい、普通に自己嫌悪しました。

 い、今から、髪を崩して結うのも面倒ですからこのままでいいでしょう。

 と、なぜか言い訳してキッチンへ。そこであることに気がついた。

 

「あ、ご飯炊くの忘れてました」

 

 ご飯を炊かずにすぐ寝てしまったため、炊飯器の中身は空っぽ。バケットも一昨日ホワイトシチューと一緒に食べてしまって無し。

米もパンもなし。となると……。

 

「まぁ、たまにはおやつじゃなくて朝でもいいでしょう」

 

 そう言って、私は棚に置いてあるワッフルメーカーをテーブルへ。薄力粉を振るい、牛乳、卵黄、隠し味にヨーグルトを混ぜる。朝食用ワッフルなのでバターと砂糖はいつもよりも少なめに。卵白は泡立て器でしっかりと空気を入れるように混ぜてメレンゲに。しっかりと伸ばして角が立つまでと混ぜる。メレンゲができたら全部をしっかりと、メレンゲの気泡を潰さないようにしっかりと、滑らかに混ぜて生地は完成。

 次にホイップクリームを作ろうと冷蔵庫から生クリームを取り出した所で階段を下りる音が聞こえた。

 妹が起きてきたのだと分かり、挨拶をする。

 

「おはようございます。ケイト」

「ん~おはよ~。お姉ちゃん」

 

 少し寝癖のついたセミロングの碧銀の髪に、黄色い星柄パジャマを着た一つ下の妹―――ケイトはまだ寝ぼけているのか、たどたどしい声で挨拶をする。

 私が朝食を作ってるのを見て、ケイトは訪ねる。

 

「お姉ちゃん、今日の朝ご飯ってなに?」

「今日の朝食はワッフルですよ」

「ワッフル!」

 

 そう言うとケイトは目をぱちくりと開き、嬉しそうに瞳を輝かせる。

 ケイトはワッフルや甘いものが大好きなのでうれしいみたいです。

 

「お姉ちゃん! 私も手伝う!」

「その前にちゃんと顔洗って着替えてきてください」

「はーい!」

 

 ケイトはそのまま走って洗面所まで行く。

その様子をほほえましく見ながら、私は生クリームをカチャカチャと混ぜる。

 

「着替え終わった!」

「はやッ!?」

 

 まだ一分も立っていないのにケイトが戻ってきました。

 ケイトの姿を見ると、ちゃんと顔を洗って、寝癖もしっかりと梳き、服は赤いワンピースを着替えてと完璧だった。

 

「何手伝えばいい?」

 

 両手を前に出してケイトは訪ねてくる。

 

「それじゃあ、この生クリームを角が立つまで混ぜてください。混ぜすぎるとクリームが固くなってしまうので気をつけてくださいね」

「わかった!」

 

 私の持っていた生クリームの入ったボウルをケイトに渡すと、ケイトは勢いよく生クリームをかき混ぜる。

 ケイトが生クリームを混ぜている間、私はワッフルに乗っける果物を切ることにする。サラダも兼ねているので多めに。イチゴ、バナナ、リンゴ、キウイフルーツ、と果物包丁で皮を剥いて、切り刻んでいるとケイトが話をかけてきた。

 

「お姉ちゃん、昨日汚染獣が来たんだよね?」

「はい。雌性体と幼生体が来て戦いましたよ。それがどうしたんですか?」

「汚染獣と戦った時のお話聞きたい!」

 

 ピタリ、とリンゴの皮むきが止まる。……昨日の戦った時の話。

 脳裏に昨日の戦闘がよみがえる。

 

 

『私の剄量は53万です。ですがもちろんフルパワーで幼生体(あなた)と戦う気はありませんからご心配なく……』

『汚染獣、お前に足りないものは情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ! そしてェ何よりもーーーーーー速さが足りない!!』

『目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ』

『速攻剄技 バーサーカーソウル! ドロー、モンスターカード! ドロー、モンスターカード! ドロー、モンスターカード! ドロー、モンスターカード!』

 

 ……こんなの絶対おかしいよ。

 

「お、お姉ちゃんどうしたの!? なんでそんな遠い目してるの!?」

「ううん。なんでもありませんよ。ああ、汚染獣と戦った時の話でしたね。あれは……」

「い、いいよ。辛いんだったら話さなくていいよお姉ちゃん!」

 

 私は何も聞かない妹の優しさに涙を流し、その後、汚染獣の話題は出さずに黙々と調理しました。

 

 

 

 

 

 

 

 完成したホイップクリームとフルーツの盛り合わせをお皿に乗せてから、ワッフルメーカーで焼いた焼き立てワッフルをお皿に乗っける。

 

「できたー!」

 

 嬉しそうにケイトが言う。

 ケイトの目の前にあるワッフルの上にはホイップクリーム、イチゴ、ブルーベリー、自家製イチゴピューレがかかってある。私のワッフルはバターとはちみつでシンプルに。焼き立てのワッフルのため、まだ熱く、上のホイップクリームとバターが少し溶けているのが食欲をそそる。

 

「それじゃあ」

「はい」

「「「いただきまーす」」」

 

 ん? 今声が三人だったような……。

 正面を見ると茶髪のサイドポニーの女性がケーキみたいにたくさんのフルーツとホイップクリームを乗っけたワッフルをナイフとフォークで美味しそうに食べていた。

 

「……なんでいるんですか師匠」

「ん? あ、おはようアインハルト、ケイトちゃん」

「おはよーございますなのはさん」

 

 ケイトが元気よく挨拶した人物―――コルベニク最強武芸者、管理局の白い悪魔、もうグレンダン行ってきて天剣もらってこいよ、等の様々な異名を持つ我が師匠、高町なのはがそこにいた。

 ケイトとお互いにトッピングしたワッフルを食べさせ合ったりしてる師匠にもう一度質問する。……仲いいですね二人とも。

 

「……おはようございます師匠。……でなんでここにいるんですか?」

「夜勤明けに朝ごはん作るの面倒臭かったからゴチになりに来ました! あと、ついでにアインハルトに連絡を」

 

 師匠の答えに思わず嘆息。連絡はついでですか。

 

「はぁ、わかりました。それで連絡ってなんですか?」

「その前におかわり!」

「おかわりー」

 

 二人して空になった皿を出す。……私は無言で皿を受け取り、ワッフルメーカーに生地を入れて焼き始める。

 

「アインハルトー、私パリパリのキャラメルソースが掛かったバニラアイスを乗っけたワッフルが食べたーい」

「……アイスは冷蔵庫にあるんでご自由に。キャラメルソースは自分で作ってください」

「作ってよー。もっと師匠にやさしくしろー」

「殺剄まで使って不法侵入した人に朝食をふるまってるんですから十分やさしいですよ」

「ちぇー、アインハルトのけち」

 

 そう言って、師匠は冷蔵庫からバニラアイスを取り出す。

 ご自由にとは言いましたが、他人の家の冷蔵庫をためらいなく開けるその姿に思わず殴りたいと思った私は悪くないと思う。絶対に返り討ちに会うからやりませんが。

 ちなみに師匠『魔法少女リリカルなのはINNOCENT』でなのはが『とらいあんぐるハート3』の御神流習ってたから、という理由で御神流をマスターしたため、近接戦闘も超強い。

 焼けたワッフルを二人に渡す。師匠はアイスを乗っけて、チョコソースをたっぷりとかける。どうやらキャラメルソースからチョコソースで妥協したようである。

 ケイトも師匠の真似をしてアイスを乗っけて食べる。

 笑顔でワッフルを食べる二人を見て、話は朝食を食べてからにしましょう。と思い私もバターとはちみつのかかったワッフルを食べる。

うん。外はカリッとしてて中はもちもちでバターとはちみつの甘さが引き立って美味しい。

 私たちは最近あった師匠と私の修行で起きた出来事、ケイトの学校生活など、話に花を咲かせながら楽しく朝食を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 朝食を済ませた後、ケイトを小学校に行かせ、私は朝食で使った食器と調理器具を洗っている。師匠もさすがにタダで朝食をもらって悪いと思ったのか手伝ってくれてる。

 ちなみに私はすでに小学校は卒業している。

コルベニクでは小、中、高の卒業方法は二つある。一つは普通に小6年、中、高3年の教育課程をこなして卒業する方法。もう一つは卒業証明試験を受かって卒業する方法。大抵のコルベニクの武芸者(転生者)は後者で小学校を卒業する。前世の知識を利用して小学校一年の時点で卒業証明試験を受かり、吸収力のもっとも高い小学生から中学に上がる年齢――6歳から12歳までひたすら武芸に打ち込む。コルベニクの武芸者は比較的他の都市の武芸者よりも強いのはこれが原因の一つらしい。私やニャル子さん、念威操長(ルリさん)もこの方法で小学校を卒業している。

 話を戻しますが、何故、すでに9歳で転生者であるケイトが未だ学校に通っているかと言うと、理由は簡単。ケイトは前世では11歳―――小学五年生の時に死んだからである。

 本人曰く、病気だったらしい。

 だからケイトは前世の記憶は小学五年生までのため、卒業証明試験を受けず、毎日学校に通っている。

 ケイトは前世の年齢も合わせれば20年生きていますがケイトの時間は11歳で止まっている。両親の変わりに私がしっかりと守ってあげないと……!

 改めて決意するのと同時に食器を洗い終わる。

洗い物をして濡れた手を拭いていると師匠が先ほどの連絡について話始めた。

 

「アインハルトさっき言ってた連絡の事だけど、今日アインハルトの訓練見られないから」

「え、なんでですか?」

「今日の10時から緊急会議で私も出ないといけないの」

「緊急会議……昨日の汚染獣戦に何かあったんですかね?」

「いや、汚染獣は関係ないってジョゼフ武芸総長が言ってたよ。それと代わりの先生を用意しといたよ」

 

 これ集合場所ね。そう言って渡された地図を見る。

 

「……すいません。集合場所が闘技場でも練武館でもなくテニスコートに見えるんですが」

「間違ってないよ。今日の訓練の集合場所はテニスコートだよ」

「……アッハイ」

 じゃあねー。ワッフル美味しかったよ。そう言って去ってゆく師匠。

 何も言えず見送る私。

 …………………テニスコート……嫌な予感しかしません!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうもー。コルベニクの念威操長のホシノ・ルリです。私は今、第4練武館の大会議室にいます。会議内容は……。

 

 

「先ほど、グレンダンにいる我が同志から連絡があった。『鋼殻のレギオス』の主人公、レイフォン・アルセイフが天剣授受者になり、彼はレイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフになったと」

「ついに原作が始まったか」

「ならば我々の計画も始動だ」

「そう……」

 

 

 

「「「「「「「ぼくのかんがえたさいきょう武芸者(転生者)をツェルニに送ろう計画を!!!」」」」」」」

 

 

 

 はぁ……昨日アインハルトさん言った通り、この都市の武芸者はみーんな、バカばっか。

 


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