ZMB48~少女たちは、ゾンビの徘徊する船上で戦い続ける~   作:ドラ麦茶

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CTF・作戦会議

 若葉さんと美咲の師弟対決は、若葉さんのまさかのパワーアップにより苦戦を強いられるものの、最後は一撃必殺の正拳突きで大逆転。しかし、ゲーム開始5時間経っても離脱者が18人というスローな展開に痺れを切らした(?)ゲームマスターが、特殊ミッションを発動。あたしたち遥チームと、由香里さんチームが、『キャプチャー・ザ・フラッグ』というミッションで争うこととなった。恐らくは、チームに分かれて旗を奪い合うゲームだろう。負けたチームのメンバーはゲームから離脱。厳しいペナルティではあるが、こう着状態を打破するチャンスでもある。意を決し、あたしたちは特殊ミッションに挑むことにした。

 

 特殊ミッションの告知から1分後、参加メンバーの転送が始まった。飛ばされた場所は、四方を高い壁に囲まれた長方形の広場だった。広さはサッカー場くらいだろうか。太陽の位置を見て方角を調べる。南北に長い敷地だ。北の壁には2階建ての青い建物、南の壁には2階建ての赤い建物があり、広場の真ん中には3階建ての白い建物がある。

 

 他のメンバーも続々と転送されてくる。遥やちはるさんを始め、拠点で待機していた由紀江や葵たちも現れた。由香里さんチームのメンバーも転送されてくる。由香里さん、亜夕美さんを始め、さっき若葉さんと美咲の対決を見届けた、紗代さん、理香さん、麻紀さん。さらに、二期生の夏川千恵、大町ゆき、宮野奈津美、三期生の藤沢菜央、四期生の沢井祭、朝比奈真理、藤村椿、降矢可南子、浅倉綾、雨宮朱実が現れた。向こうのチームは15人。こちらは13人。現在生き残っているメンバーのほとんどが転送されたことになる。

 

 いないのは……エリと燈の2人か。

 

 ランキング第3位・武術もできる白衣の天使・藍沢エリと、ランキング6位・ヴァルキリーズ最強忍者・一ノ瀬燈。2人とも危険度はSランクだ。ここにいないということは、どちらのチームにも属していないということである。エリは若葉さんや由香里さんとも仲が良いから、あっちのチームに属しているんだろうと思っていたけど、どうやら違ったらしい。

 

 …………。

 

 あたしは葵に声をかけた。半径1キロ以内のプレイヤーの足音を聞き分ける能力、『モーション・トラッカー』の使い手だ。「ねえ、葵。エリと燈って、今まで何していたか、分かる?」

 

「え? エリさんと燈さん? うーん。時々2人で、あたしの能力のエリア内に入って来るけど、何をしてるかまでは分からないわね。誰かと接触したり、戦ってるような様子は無いわ。でも、あたしも注意して見てたわけじゃないから、詳しくは分からないけど」

 

 続いて、『スカウト・レーダー』使いの玲子にも訊いてみたが、答えは同じだった。

 

 ……エリは何をやってるんだ? 第2フェイズの特殊ミッション終了以降、2人に目立った動きは無い。誰かとチームを組んだ様子も無い。まさか、このゲームがチームを組んだ方が有利だということに気が付いていないのだろうか? あの勘の鋭いエリに限ってそんなことはありえない。ならば、他のメンバーと組む必要など無いということだろうか? 燈の戦闘力を考えればそれはあり得る。燈がいれば、戦闘力の面では不安は無いだろう。が、これは能力バトルだ。戦闘力が高い者が必ずしも強いわけではない。仲間を増やすということは裏切られるリスクも増えるが、それでも、メリットの方がはるかに大きいだろう。エリ、何を考えている……。

 

「カスミさん――」と、遥。「今は、目の前の敵に集中しましょう」

 

 ……そうだな。エリが何を考えているか分からないけど、今は由香里さんチームとの戦いの方が大事だ。

 

 しばらくして、敷地の中央に案内人が現れた。「特殊ミッションへようこそ。これより、ルールの説明をします」

 

 全員の視線が案内人に向けられる。前の特殊ミッションの時もそうだったけど、ルール説明は非常に重要だ。何でも無い説明の中にも重要なヒントが含まれていたりするからな。

 

「現在この敷地内のエリアは封鎖されており、ここにいるプレイヤー以外は、侵入はもちろん、エリア外からの能力やアイテムを使った攻撃も、一切行えません。当然、ミッション終了まで皆さんがエリア外に出ることもできませんし、エリア外のプレイヤーを攻撃することもできません。ただし、このミッションの様子は、全てのプレイヤーがTAを通じて見ることができます」

 

 ……まあ、ここにいないのはエリと燈だけだけどね。

 

「今回行うミッションは、『キャプチャー・ザ・フラッグ』、通称CTFです。敵陣にあるフラッグを自陣まで持ち帰ることが目的です。フラッグの数は1本。オフェンスとディフェンスに別れて5分間のラウンドを行い、終了後、攻守を変えてもう1ラウンド行う、1フラッグCTFで争っていただきます」

 

 合計2ラウンドの結果での勝負か。了解。

 

「オフェンスの説明を行います。オフェンスは、制限時間5分の間に、敵陣にあるフラッグを自陣まで持ち帰ることが目的です。オフェンス側のプレイヤーは誰でもフラッグを持てますが、フラッグを持った状態では移動速度が少し遅くなり、一切の戦闘行為、能力使用ができません。フラッグを自陣まで持ち帰れば1ポイント獲得。フラッグは、再び敵陣に戻ります。制限時間内なら何ポイントでも獲得可能ですので、可能な限り、高ポイントを目指してください」

 

 案内人はぐるりとメンバーを見回す。質問は出なかったので、説明を続けた。

 

「ディフェンスの説明を行います。ディフェンスは、制限時間5分の間、自陣のフラッグを守ってください。ディフェンス側のプレイヤーはフラッグを持つことはできません。フラッグを敵チーム奪われた場合、フラッグを持っているプレイヤーを倒せば、フラッグはその場に落ちます。フラッグは誰も所持していない状態で1分経過すると、最初の位置に戻ります」

 

 ふむ。ディフェンスはフラッグを持つことはできない。どこかに隠すことは不可能なわけだな。

 

「勝敗は、2ラウンド終了後のポイントで争います。ポイント数の多い方、つまり、より多くフラッグを持ち帰ったチームの勝利です。負けたチームのメンバーは、フェイズ終了を待たず、その時点でゲームから追放されます。ここまで、何か質問はありますか?」

 

 あたしは手を挙げた。「2ラウンド終了時点でポイントが同じ場合はどうなるんですか? また、サドンデスですか?」

 

「今回はサドンデスは行いません。2ラウンド終了時点で同点だった場合、各チームのキル数の合計で勝敗を決します。もし、キル数も同点だった場合は、両チームとも失格とさせていただきますので、ご了承ください」

 

 キル数。敵チームのメンバーを何人倒したか、だな。

 

 他に質問は出なかったので、案内人は続ける。「ミッション中は『リスポーン』を始め、いくつかの限定スキルが付与されます。すでに発動していますので、詳細はTAにてご確認ください」

 

 とのことなので、さっそくTAを開いてみる。前回の特殊ミッションはリスポーンだけだったけど、今回は何と、5つも付与されていた。

 

 

 

限定能力:リスポーン

最大HPが50になる。死亡後、10秒で、一定の復活ポイントに復活する。死亡しても能力はカード化されない。

 

 

 

限定能力:フラッグ・レーダー

フラッグの位置が分かる。ただし、敵チームのメンバーがフラッグを持っている場合は無効。

 

 

 

限定能力:モーション・トラッカー・ライト

半径10メートル以内のプレイヤーの足音を聞き、位置が分かる。敵味方の判別は可能だが、プレイヤー名は判別不能。立ち止まったり、ゆっくり歩いているプレイヤーは捕捉できない。

 

 

 

限定能力:パワー・クッション

どんなに高い場所から飛び降りてもダメージを受けない。

 

 

 

限定能力:ボイス・チャット

チームのメンバー同士で会話ができる。死亡状態でも有効。

 

 

 

 案内人は説明を続ける。「また、皆さんの個人能力の中には、効果がCTF用に変更されてあるものもあります。例えば、テレポート系の能力は、フラッグの半径10メートル以内での使用はできません。他にも多くの能力が変更されていますので、これも、詳細は各TAでご確認ください」

 

 と、いうことなので、個人能力を確認するけど、あたしの『ザ・ロック』には特に変更は無かった。他のメンバーを見ると。

 

「あ、あたしの能力、変更されてるわ」真穂さんだ。一切の肉弾戦が行えなくなる能力『非戦闘地帯』の使い手である。「えーっと、『フラッグの半径10メートル以内で使用することはできない。また、能力を発動しているエリアにフラッグが入った場合、能力は解除される』だって」

 

 ……ナルホド。これは大きなパワーダウンだな。まあ、ディフェンス時にこの能力を使えば、オフェンス側は手の出しようがないだろう。ゲームのバランスを考えれば、これは仕方ないか。

 

 他のメンバーも見る。真穂さんと同じように、能力が変更されている人が何人かいた。これは、再度まとめる必要がありそうだな。

 

 案内人はさらに説明を続ける。「なお、ゲームに参加できるのは1チーム最大8名までです。これから5分間、作戦会議の時間を設けますので、各チーム、誰が参加するかよく相談して決めてください。メンバーを途中で変更することはできません。参加されないメンバーは、控室で待機となります。もちろん、チームが負ければ、ゲームに参加していないメンバーもゲームから追放されます」

 

 参加者8名ということは、あたしたちのチームは5人、由香里さんチームは7人参加できない。それでも、チームが負けた場合はゲームから追放される。理不尽といえば理不尽だな。

 

「ただし――」案内人が、ぐるりとメンバーを見回した。「このルールに納得できない場合、ゲームが始まる前ならば、チームから離脱することが可能です」

 

 ――チームから、離脱?

 

 つまり、ゲームに参加できず、かつ、チームが負けると思った場合、勝負を放棄することもできるわけだ。

 

 …………。

 

 まあ、そんな人はいないだろうな。ここまで一緒に戦ってきたんだし、いまさら見捨てるなんて、ありえないよ。

 

 それに、あたしたちは全48名の大型アイドルユニット・アイドル・ヴァルキリーズだ。コンサートやイベントのステージ、テレビの出演、雑誌の取材やグラビアなどに、必ずしも、全メンバーが出演できるわけではない。ランキング上位の『推され』メンバーが中心に出演することがほとんどだし、その『推され』メンバーでさえ、出演できないことはたくさんある。ヴァルキリーズに属している以上、ステージに立てるメンバーと立てないメンバーに分けられることは避けられない。言わば、暗黙のシステムだ。いまさらそのシステムが納得できないと言って、仲間を見捨ててチームを離脱する人はいないだろう。

 

 案内人はさらに続ける。「ゲームが始まってからの離脱は一切認められませんので、各自、よく考えて決めてください。ルールの説明は以上で終了します。各ルールは、TAでも確認できますので、不明な点はその都度ご質問ください。それでは、5分間の作戦会議を始めてください」

 

 案内人が消え、同時に、あたしたちのチームメンバーは、南の赤い建物に転送された。由香里さんチームのメンバーは青い建物だろう。

 

「ゲームに参加できるのは8名だけ、だとよ」ちはるさんが苦笑いとともに言う。「こんな所でも、選抜と控えに分けようってのか。運営の方針も、徹底してるな」

 

「まあ、いいじゃない」と、真穂さん。「それでこそ、アイドル・ヴァルキリーズでしょ。で、誰が出る?」

 

「まずは――」リーダーの遥が言う。「皆さんの能力がどのように変化したかの把握が重要ですね。真穂さん以外で、個人能力に変化があった方はいますか?」

 

 手を挙げたのは、ちはるさん、愛子さん、葵、玲子、さゆりだ。真穂さんを含めると6人になる。あたしは早速、6人の能力の変化をまとめた。

 

 

 

能力名:チェンジ

使用者:並木ちはる

 効果:目視しているプレイヤーと自分の場所を入れ替える。フラッグの半径10メートル以内にいるプレイヤーに能力を使用することはできない。

 

 

 

能力名:デュエル

使用者:早海愛子

 効果:対象プレイヤーを1人選び、1対1の勝負に持ち込める。(中略)エリア内にフラッグが入ると、この能力は解除される。

 

 

 

能力名:モーション・トラッカー

使用者:西門葵

 効果:半径“20メートル”以内のエリアにいるプレイヤーの足音を聞き分け、位置が分かる。立ち止まったり、ゆっくり歩いているプレイヤーは捕捉できない。

 

 

 

能力名:スカウト・レーダー

使用者:鈴原玲子

 効果:この能力は使用できない。代わりに、『モーション・トラッカー』の能力を得る。

 

 

 

能力名:テレポート

使用者:白石さゆり

 効果:プレイヤーの顔と位置を思い浮かべ、一致していれば、そのプレイヤーの元に飛ぶ。一致しなければ、どこに飛ぶか分からない。能力使用者を含め、最大6人のチームメンバーと同時に飛ぶことができる。フラッグの半径10メートル以内での使用、及び、フラッグの半径10メートル以内にはテレポートできない。

 

 

 

能力名:非戦闘地帯

使用者:小橋真穂

 効果:能力発動すると、20分間、その地点から半径10メートル内は、全てのプレイヤーが一切の直接攻撃を行えない。(中略)フラッグの半径10メートル以内で使用することはできない。また、能力を発動しているエリアにフラッグが入った場合、能力は解除される。

 

 

 

「――そう言えば」と、ちはるさん。「遥と、直子の能力って、まだ聞いてなかったよな? さすがにそろそろ明かせよ。じゃないと、作戦が立てられない」

 

「そうですね、分かりました」遥が言う。「あたしの能力は、22番、『ヘッドショット』です」

 

 

 

No.22

能力名:ヘッドショット

使用者:篠崎遥

 効果:60メートル以上離れたプレイヤーに遠距離攻撃を行う場合、頭部に10以上のダメージを与えれば即死となる。また、両耳を直線で結んだ真ん中にヒットした場合、1以上のダメージで即死となる。攻撃後、約1秒間弾道が残るため、他のプレイヤーに位置を知られやすくなる。

 

 

 

 ……要するに、遠くから攻撃して、それが頭にヒットすれば、少しのダメージでも倒せるわけか。スナイパーだな、まるで。

 

「……もったいぶったワリにはたいした能力じゃなかったな」と、ちはるさん。

 

「……もったいぶったわけではありませんが……申し訳ありません」律儀に頭を下げる遥。

 

「いや、別にいいけどよ」ちはるさんは直子を見た。「直子、お前は?」

 

「はい。あたしの能力は、27番『コカトリス』です」

 

 

 

No.27

能力名:コカトリス

使用者:高倉直子

 効果:あなたの攻撃には、10%の確率で石化の効果がプラスされる。

 

 

 

 石化……か。

 

 あたしはTAを起動し、案内人を呼び出した。「案内人? 限定能力『リスポーン』で復活できるのは、死亡状態だけだよね? 石化状態だと、どうなるの?」

 

 案内人が説明する。「石化状態を始め、全ての状態異常は、特殊ミッション中も効果は変わりません。睡眠、毒、麻痺は、数分から数十分で自然に良好の状態に戻りますが、石化は、自然に良好状態に戻ることはありません。石化状態で攻撃されて死亡状態になるか、シスタークラスの方が、状態異常を直すクラス能力、『キュアー』を使うか、あるいは、1ラウンド終了するまでは、そのままです」

 

 ……それって、スゴイじゃん。

 

 直子の能力で石にして、そのまま放置すれば、そのプレイヤーはもう、そのラウンドから離脱したも同然だ。これは、とてつもなく強力な作戦だぞ?

 

「よし、直子。お前は出場決定な」ちはるさんがみんなに向かって言う。「いいだろ?」

 

「そうですね」と、遥。「では、直子は、敵チームのメンバーを、できるだけ殺さないよう、何度も攻撃してください。10回に1回は石化する計算になります。とにかく、回数が重要です」

 

「……分かった。やってみる」

 

 よし。これで、後7人。

 

「あと、戦闘要員は、絶対必要だよね」と、真穂さんが言った。「愛子とちはる、そして美咲は、出た方がいいと思う」

 

 確かに、戦闘力5万以上のこのメンバーは絶対必要だろう。向こうは確実に、戦闘力18万の亜夕美さんが出てくるはずだ。特殊ミッションでは限定能力『リスポーン』の効果でHPが50に統一されるから、戦闘力が低いプレイヤーが高いプレイヤーを倒すことは、そう難しくない。あたしは前回の特殊ミッションでは亜夕美さんには全く歯が立たなかったけど、この3人ならば、きっと倒せるだろう。

 

「ま、当然だな」

 

「へっ、ずっと隠れてたから、ストレスが溜まってたところだ。大暴れしてやるぜ」

 

「押忍!! がんばります!!」

 

 3人ともやる気満々だ。これは期待できそうだな。よし、残りは4人だ。

 

「当然、遥も出ろよ」と、ちはるさん。「由香里を倒す絶好の機会だからな」

 

 遥は、決意を込めた表情で頷いた。「はい。あたしなどが、由香里さんを倒せるとは思えませんが、しかし、皆さんと力を合わせれば、きっと――」

 

 また長々とマジメなことを言い始めた遥は放っておいて、あと3人。

 

「あと、このゲームで役に立ちそうな能力は何だ?」と、愛子さん。

 

「探知系の能力はどうだ?」ちはるさんが言う。「葵や玲子の、『モーション・トラッカー』は、役に立つんじゃないか? それとも、限定能力の『モーション・トラッカー・ライト』があるから、必要ないか?」

 

「いえ、かなり有効だと思います」遥が答えた。「効果範囲が1キロから20メートルになってしまいましたが、それでも限定能力の倍の効果範囲です。プレイヤーの識別も行えますし、特にディフェンス時は、非常に強力な能力です」

 

 とのことなので、この能力に慣れている葵に出てもらうことになった。残り2人。

 

「あの、あたし、このゲームでぜひ試したい技があるんですけど、出てもいいですか?」

 

 そう言って手を挙げたのは、他プレイヤーに変身することができる能力『ミミック』の使い手、秋庭薫だった。試したい技? 何だろう? みんなで聞いてみる。

 

 薫の話を聞いた愛子さんとちはるさんは、ニヤリと笑った。「……それは、確かに面白いな。よし。採用」

 

「はい! ありがとうございます!!」

 

 薫は深々と頭を下げた。これで、あと1人。

 

「最後の1人は、カスミでいいよな?」ちはるが言った。

 

「へ? あたしですか?」まさか選ばれるとは思ってなかったから、ちょっとビックリ。「あたしなんて、戦闘力は低いですし、能力も、たぶん役に立ちませんよ? 岩に化けても、由香里さんには見破られてしまいますし」

 

「確かにそうだが、お前には、『ジーニアス』があるだろ? 向こうには由香里の『把握』がある。こちらが使う能力は、アイツにはバレバレだ。こちらも、能力に詳しいヤツがいる」

 

「『ジーニアス』ですか? カードを使ってからもう30分以上経ってますから、使えません。能力をまとめたデータは、皆さんに配りましたし」

 

「それでも、このチームで1番能力に詳しいのはお前だ。いいから出ろ」

 

 と、ちはるさんはまた、「出なきゃ強制的にカード化」という目で睨む。

 

 ……いやいや。前に遥が言った通り、これは貧乏くじを引かされているんじゃない。みんながあたしに期待してるんだ。うん。

 

「分かりました。頑張ってみます」

 

 これで8人だ。残りの5人は、控室とやらで待機らしい。ゲームの様子を見守るしかない。

 

「――よろしいですか?」と、遥が手を挙げた。みんな、遥の方を見る。「あたしたちのチームは、以上の8名で戦います。残りの方は、残念ながら、このミッションに参加することはできません。途中交代もありませんから、ミッションが始まれば、見守ってもらうしかありません。もちろん、あたしたちは負けるつもりはありませんが、相手はあの由香里さんが率いるチームです。必ず勝つ、という約束も、できません。ミッションに参加できないのに、あたしたちが負けたら、全員ゲームオーバー……あたしたちのせいで、参加していないみなさんまでゲームオーバーになるのは、申し訳ないです。今ならまだ、チームから離脱することは可能です。どうか、よく考えて――」

 

「そんな心配、必要ないよ」そう言ったのは真穂さんだった。「あたしたちは、全48人の大型アイドルグループ・アイドル・ヴァルキリーズのメンバーだよ? ステージに立てないことなんて、いくらでもあるよ。でも、あたしたちは仲間だ。ステージに立つ人も、立てない人も、同じ仲間。あたしたちも、一緒に戦ってるんだから。それだけは、忘れないでね」

 

 真穂さんの言葉に、他の4人も大きく頷く。

 

「はい――ありがとうございます」遥は、ゆっくりと頭を下げた。

 

 

 

 作戦会議の5分が終わった。

 

「――では、行きましょう」

 

 リーダーの、遥を先頭に。

 

 あたしたちは、出撃した――。

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

TIPS 20:遥チーム、出場メンバーのパラメーター

 

 

 

  名前:桜美咲

  HP:50/50

  状態:良好

 戦闘力:56000

アイテム:格闘用グローブ

     籠手

     能力カード『夢見』

  能力:千里眼

 

 

 

  名前:篠崎遥

  HP:50/50

  状態:良好

 戦闘力:55000

アイテム:竹弓

     矢×10

     弓道用胸当て

  能力:ヘッドショット

 

 

 

  名前:早海愛子

  HP:50/50

  状態:良好

 戦闘力:56000

アイテム:格闘用グローブ

     籠手

  能力:デュエル

 

 

 

  名前:並木ちはる

  HP:50/50

  状態:良好

 戦闘力:55000

アイテム:格闘用グローブ

     スパイクシューズ

     能力カード『ゴースト』

     能力カード『アイス・ジャベリン』

     能力カード『アクティブ・カモフラージュ』

  能力:チェンジ

 

 

 

  名前:前園カスミ

  HP:50/50

  状態:良好

 戦闘力:10000

アイテム:格闘用グローブ

     ヴァルキリーズ・アーマー(ノーマル)

     能力カード『デストラクション』

     能力カード『キル・ノート』

     能力カード『スティール』

  能力:ザ・ロック

 

 

 

  名前:秋庭薫

  HP:50/50

  状態:良好

 戦闘力:8000

アイテム:ブロード・ソード

     ヴァルキリーズ・アーマー(ノーマル)

     能力カード『連絡係』

  能力:ミミック

 

 

 

  名前:高倉直子

  HP:50/50

  状態:良好

 戦闘力:10000

アイテム:細身の剣

     ヴァルキリーズ・アーマー(ノーマル)

     能力カード『傍受』

  能力:コカトリス

 

 

 

  名前:西門葵

  HP:50/50

  状態:良好

 戦闘力:1800

アイテム:ダガー

     ヴァルキリーズ・ローブ(ソーサラー)

  能力:モーション・トラッカー

 

 

 

 

 

 


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