ZMB48~少女たちは、ゾンビの徘徊する船上で戦い続ける~   作:ドラ麦茶

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Day 366 #03

 目を覚ますと、薄暗い、六畳ほどの部屋だった。

 

 ――あれ? ここ、どこだ?

 

 見回す。部屋の中には、美咲も、由香里も、深雪も、亜夕美も、エリも、誰の姿も無かった。狭い部屋にあたし一人。おかしいな。さっきまで、アリーナ会場の舞台裏にいて、コンサートの第2ステージが始まる直前だったはずなんだけど。

 

 自分の衣装を確認する。ヴァルキリーズのステージ衣装――ではなく、Tシャツにスパッツという、振付やリハーサルの時のような、地味な格好だ。そして、そばには木刀が一本。うーん。どうも、コンサートが始まる雰囲気じゃなさそうだな。あたし、どうしたんだっけ? 記憶を探る。

 

 と、その時。

 

「若葉!!」

 

 勢いよくドアが開いて、キャプテンの由香里が部屋に入ってきた。

 

「あ、由香里。おはよ。どうしたの? 慌てて」

 

「どうしたの? じゃないよ! 早く下に来て! ゲートが破られそうなの!」

 

 ゲートが破られる? 何のことだ? しばらく考える。

 

 そして――。

 

 

 

 ――――!!

 

 

 

 思い出した!

 

 その瞬間、あたしは木刀を握り、部屋から飛び出していた。薄暗い廊下を進むと、すぐに下へと続く階段がある。あたしは勢いよく階段を駆け下り、一階のドアを開け、外に飛び出した。

 

 まぶしい光が降り注ぎ、潮の香りを含む風が吹き渡る。南国特有の太陽の光と潮風。のんびりとバカンスを楽しみたくなる雰囲気だ。

 

 しかし、あたしの目に入ってきたのは。

 

 建物を、ぐるっと囲む、高さ二メートルほどの金網のフェンス。そして、その向こうに、水着を着たゾンビ、アロハシャツを着たゾンビ、Tシャツを着たゾンビ、軍服を着たゾンビ、ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ……。

 

 見渡す限りのゾンビに、囲まれている。

 

 そう、ここは、横浜のアリーナ会場ではない。アメリカ・ハワイ・オアフ島。パールハーバーからほど近い場所にある灯台だ。

 

 あたしたちがオアフ島の湾岸警備隊に救出されたのは、もう一年前になるだろうか? 異変は、救出された次の日に起こった。

 

 あたしたちが入院した病院の医師が、看護師が、患者が。

 

 ゾンビとなって、襲い掛かってきたのである。

 

 それをきっかけに、異変は、あっという間にオアフ島全土に広まり。

 

 いまや、どこに行ってもゾンビ、ゾンビ、ゾンビ、である。

 

「せんぱーい。チーフ」美咲が、手を振りながら走って来た。「これはダメですね。フェンス、もう壊れそうです」

 

 集まって来たゾンビの数は、軽く一〇〇体を超えているだろう。みんなでガシャガシャとフェンスを揺するので、もう、崩壊寸前だ。あたしたちがこの灯台に立てこもったのが一週間前。最初は周辺のゾンビも少なかったけど、三日前から少しずつその数が増えていき、ここもそろそろダメか、と思い始めていたところだった。まあ、一週間隠れられたなら上出来だろう。

 

「由香里、どうする?」キャプテンに指示を仰ぐ。

 

「こうなったら仕方ないね。脱出しよう。美咲、エリたちから連絡は?」由香里は美咲を見る。

 

「昨日から、全然連絡が取れないですね」美咲は、右手の携帯電話を振った。「まあ、燈先輩と遥ちゃんが一緒だから、大丈夫だと思いますけど」

 

「亜夕美たちは?」

 

「ワイキキビーチからダイヤモンドヘッドに移動してるみたいですよ? 今はあの辺りが、ゾンビが少ないそうです」

 

「よし。じゃあ、あたしたちもそこへ」

 

「りょーかいでーす」

 

 美咲は、右拳を握って左胸に当てる、ヴァルキリーズ忠誠のポーズで応える。

 

「若葉も、準備はいい?」

 

「もちろん。もう、目は覚めたよ」

 

「OK。じゃあ、まずは車を調達しなきゃね」

 

 由香里も、竹刀を構える。

 

 がしゃん! 大きな音とともに、金網が倒れ。

 

 ゾンビが、敷地内になだれ込んで来た。

 

「行くよ!」

 

 由香里の声で。

 

 あたしたちは、ゾンビに向かって走り。

 

 木刀を、拳を、竹刀を、振るう。

 

 

 

 ――――。

 

 

 

 もう、何体ゾンビを倒しただろう? 後、何体ゾンビを倒せばいいのだろう?

 

 もう、何日戦い続けているのだろう? 後、何日戦えばいいのだろう?

 

 

 

 分からない。

 

 このままずっと、ゾンビを倒し続けないといけないのかもしれない。

 

 このままずっと、戦い続けないといけないのかもしれない。

 

 終わりなど、無いのかもしれない。

 

 

 

 それでもあたしは――あたしたちは。

 

 

 

 生きるために、ゾンビを倒し、戦い続けるしか、ない。

 

 

 

 たとえ、それが終わりのない戦いだとしても。

 

 

 

 それしか、方法は無いのだから。

 

 

 

 あたしたちの戦いは、続く――。

 

 

 

 ☆

 

 

 

Day 366 生存者

 

 

 

生存者

 

 

 

 なし

 

 

 

死亡・ゾンビ化

 

 

 

 なし

 

 

 

不明

 

 

 

 神崎深雪

 

 藍沢エリ

 

 遠野若葉

 

 桜美咲

 

 白川睦美

 

 沢井祭

 

 前園カスミ

 

 降矢可南子

 

 橘由香里

 

 夏川千恵

 

 滝沢絵美

 

 倉田優樹

 

 宮野奈津美

 

 秋庭薫

 

 浅倉綾

 

 神野環

 

 本郷亜夕美

 

 水野七海

 

 宮本理香

 

 高杉夏樹

 

 栗原麻紀

 

 藤沢菜央

 

 吉岡紗代

 

 朝比奈真理

 

 本田由紀江

 

 森野舞

 

 大町ゆき

 

 根岸香奈

 

 桜井ちひろ

 

 雨宮朱実

 

 黒川麻央

 

 一ノ瀬燈

 

 篠崎遥

 

 林田亜紀

 

 沢田美樹

 

 上原恵利子

 

 佐々本美優

 

 鈴原玲子

 

 山岸香美

 

 西門葵

 

 藤村椿

 

 緋山瑞姫

 

 小橋真穂

 

 早海愛子

 

 白石さゆり

 

 並木ちはる

 

 高倉直子

 

 村山千穂

 

 

 

(Ending No.02 ZMB48~少女たちは、ゾンビの徘徊する船上で戦い続ける~ 終わり)

 

 

 

 

 




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第4回特別称号争奪戦開催決定!

アイドル・ヴァルキリーズのメンバーが、
センターポジションをかけてVRMMOで能力バトル!

2013.10.18 日本武闘館にて開催!!

第1回くじびき大会の前園カスミのようなシンデレラガールは現れるのか!?

乞うご期待!!

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