ZMB48~少女たちは、ゾンビの徘徊する船上で戦い続ける~   作:ドラ麦茶

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Day 6 #05

 適当にゾンビを倒しながら、九階のエレベーターホールに戻ってきたあたしは、エレベーターに乗り込む。三階のボタンを押し、ドアを閉じようとしたら、愛子たちが走ってきた。しょうがないので乗ってもらう。

 

「ちょっと若葉、あんた、本気で警察署に行くつもりなの?」三階のボタンが点滅しているのを見て、呆れ声の愛子。

 

「うん。なんか、どうしても気になってね」

 

「そんな場合じゃないと思うけど?」ちはるも言った。「今は、一刻も早くエリを見つけないといけないんじゃない?」

 

「まあ、そうなんだけどね……いいよ? 先に操舵室に戻ってても。あたし一人でも大丈夫だと思うし」

 

「そういうわけにもいかないよ。外での行動は二人以上。それが、若葉のグループの決まりなんでしょ?」

 

「一応そうだけど、ま、そこはケースバイケースかな?」

 

 愛子とちはるは顔を見合わせ、そして、同時に溜息をついた。どうやらあたしに付いて来てくれるらしい。あたしはドアを閉じた。エレベーターは静かに下降し始め、あっという間に三階に着いた。降りる。三階は、目に見えてゾンビの数が少なかった。エレベーターホールには三体のゾンビしかいない。

 

「もともと宿泊している人が少ないフロアだからね」と、愛子が言った。「せっかくの豪華客船の旅行で、わざわざこんな低い階に泊まる客もいないでしょ?」

 

 あたしは特に何も言わず、そのまま走ってフロアの中央部へ向かった。

 

 三階は中央に警察署と病院があり、残りは全て宿泊施設だ。長い廊下がずっと続いているけれど、ゾンビの姿はほとんど無く、簡単に警察署の前に着いた。

 

 入口はひとつ。その上に、太陽と星を合わせたような警察のマークが飾られてあり、その隣に赤いパトランプが取り付けられていた。ただ、ランプは点灯しておらず、扉もシャッターが下ろされている。人の気配は全く感じない。

 

「誰もいないみたいだね」と、愛子が言った。「困るよね、無人交番。危ない目に遭って駆け込んだのに、肝心のお巡りさんがいないんじゃ、役に立たないじゃん、ねぇ?」

 

「あはは。そうだね」ちはるが笑った。「ま、警官がいても、ゾンビじゃ意味ないけどね。じゃあ、行こうか」

 

 あくまでも操舵室に戻ろうとする愛子とちはるを無視し、あたしは入口へ近づいた。

 

 シャッターは、一般的によくあるプレートタイプのものだ。上に押し上げてみたけど、開かない。ロックがかかっているらしい。

 

「無駄だよ。入れないって。諦めて、戻ろうよ」愛子が言う。

 

「でも、交番が閉まってるって、どう考えてもおかしいでしょ?」あたしは振り返らずに言った。「ゾンビがドアを閉めてシャッターを下ろして鍵まで掛けるなんて、絶対にありえない。誰か中にいるんだよ。もしかしたら、ヴァルキリーズの誰かかも」

 

 あたしはシャッターを叩いた。がしゃがしゃと耳障りな音がフロア中に鳴り響く。

 

「ちょっと! やめてよ! ゾンビが集まって来ちゃうじゃない!」

 

 愛子が止めるけれど、あたしは構わず叩き続ける。「ねえ! 誰かいるんでしょ!? 開けてよ!」

 

 しばらくシャッターを叩き続け、中にいるであろう誰かに呼びかけ続けた。幸いゾンビが集まってくる気配は無い。ホントにこのフロアには、ゾンビの数が少ないようだ。

 

 止めようとする愛子とちはるを無視し、そのまま騒ぎ続けていると。

 

《……うるさいわね……何の騒ぎ?》

 

 ノイズ交じりのくぐもった声がした。トランシーバーだ。取り出して確認する。しかし、着信している様子は無い。それに、今の声は由香里ではなかった。あの声は――瑞姫だ。

 

 愛子が、はぁ、と、大きくため息をついた。

 

 そして、内ポケットから何か取り出した。それに向かって喋る。「――ゴメン。今、若葉と警察署の前にいるよ。なんか、どうしてもここに来るって、聞かなくて」

 

 どうやらトランシーバーのようだ。なんだ。愛子、トランシーバー持ってたんだ。まあ、ショッピングモールのホームセンターに行けばいくらでもあるらしいから、別に不思議はないけれど、それならそうと、最初から言えばいいのに。

 

《――そう。しょうがないわね。若葉? 今開けるから、ちょっと待ってて》

 

 そう言って、通信は途絶えた。

 

 しばらくして。

 

 入口の上のパトランプが点灯し、同時にブザー音が鳴る。シャッターが開き始めた。それが、腰のあたりの高さで止まる。その下から、瑞姫がひょっこりと顔を出した。

 

 瑞姫はあたしの姿を確認すると、「入って」と、短く言って、引っ込んだ。あたしは、シャッターをくぐった。

 

 その瞬間。

 

「――――」

 

 その、異様な臭いに、吐き気を催す。手で鼻を覆うけれど、そんなものでは防ぐことはできないほどの悪臭だった。

 

 なんだ……この臭いは……。

 

 今までに嗅いだ事のない悪臭だけど、例えるならば、腐肉と、汚物と、そして血の臭いが混ざり合った臭い。一言で言えば……。

 

 そう――死臭だ。

 

 人が死に、そのまま放置しておけば、このような臭いがするのではないか――そんなことを考えてしまう。

 

「……ゴメンね。臭うでしょ?」瑞姫が言った。肩の上でまとめたミディアムカールの髪型、服装は、黒のミニスカワンピースと、同じく黒のニーハイブーツ、そして、その上に白衣を羽織っている。いかがわしいビデオに出てくる女医さんみたいな格好だ。

 

 瑞姫の、その、あまりにもあっけらかんとした言い方に、思わずあたしは戸惑ってしまう。「あ……いや、そんなことないけど……」

 

「いいよ。気を使わなくて」瑞姫は笑った。「いろいろ実験してるからね。どうしても臭いがこもっちゃって。換気したいんだけど、外はゾンビどもがいるから、窓を開けたりできないし」

 

「あはは。そうだね」吐き気をこらえ、あたしも無理に笑う。

 

 無理に。

 

 心の底から笑うことはできない。瑞姫。ヴァルキリーズの、かけがえの無い仲間。ゾンビ騒動で、数日間行方不明だった仲間。ようやく再開できた仲間。でも、笑えない。再会を、心の底から喜べない。

 

 瑞姫は今、“実験”と、言ったのか。

 

 愛子が言っていた。瑞姫は、ゾンビとなった人を元に戻せるかもしれないから、その研究をしている、と。そのことだろうか。

 

 医学のことはよく分からない。ゾンビ化がウィルスによるものならば、ゾンビ化した人からそのウィルスを抽出し、顕微鏡かなんかでそれを見ながら何かやるのだ、と、勝手な想像をしていたけれど。

 

 そんな作業で、これほどの臭いが発生するのだろうか? とてもそうは思えない。

 

 それに。

 

 ここは警察署だ。何でこんなところでウィルスの研究をする必要がある? 隣に病院があるというのに。

 

 警察署と病院。ウィルスの研究をするのに適した場所はどちらか、なんて、医学に無知のあたしでも分かる。もちろん、病院とは言っても、所詮ここは船の中だ。住宅街にある小さな病院のようなもの。大学病院ならともかく、この船内の病院に、本格的な研究施設は無いだろうけど。

 

 それでも、警察署なんかよりも、よっぽど研究に向いているはずだ。

 

「――どうかした?」

 

 瑞姫が、不思議そうな顔で見ている。

 

「あ、いや――」思わずうろたえてしまう。視線を外してしまう。「えっと……愛子から聞いたよ。ゾンビになった人を、元に戻すことが出るかもしれないんだって? そのための研究?」

 

「うーん、そんなところかな。他にも、いろいろやってるけどね」

 

「いろいろ……って?」

 

「ま、いろいろよ」意味ありげに言い、そして、含み笑いをする瑞姫。

 

 後ろでクスクスと笑う声が聞こえた。愛子とちはるだ。何がおかしいのか、あたしには分からない。

 

「でも、すごいよね。瑞姫が頭がいいのは知ってたけど、ウィルスの研究もできるなんて」

 

「まあね。一応あたし、大学ではウィルス研究所に所属してたから」

 

 ……え? 瑞姫って、そんなことしてたの? 初耳だ。あたし、瑞姫は看護学部とかを卒業したのかと思ってた。

 

「どうかした?」瑞姫、また、不思議そうな顔。

 

「……あ、いや、えーっと……あ、そうだ。ゾンビのこと、何かわかった? あいつら、一体なんなの?」訊いてみる。

 

「まあ、簡単に説明すると……ちょっと待ってね」瑞姫は、テーブルの引き出しを探り始めた。何か探している。

 

 あたしは室内を見回した。広さは一〇畳ほど。正面にカウンターがあり、その向こうに机や椅子、書類棚などが並んでいる。街中にある交番と同じような作りだ。机の上には、テレビが三台、並んで置かれていた。

 

 ――――。

 

 え? テレビが三台?

 

 なんでそんなに並べておく必要があるんだ? そんなに見たい番組が多いのかな?

 

 モニターは点いているようだった。何が映っているのか、見ようとして。

 

 ピッ、と、瑞姫がリモコンのスイッチを押す。モニターは真っ暗になった。何が映っていたのか、はっきりとは分からなかったけれど、画面が四分割されていたように見えた。

 

「はい、これ」瑞姫は数枚の写真を見せた。「ゾンビの脳を輪切りにした写真よ」

 

 ゾンビの脳を輪切りにした写真? MRIとかいうやつだな。テレビでは見たことがあるけど、実際に見るのは初めてだ。そこには、割れたクルミのようなものが映っている。

 

 瑞姫が続ける。「ゾンビの行動は、のろのろと動き、人を襲い、食べる。基本的にはこれだけ。痛みも恐怖も感じない。あたしの考えだと、脳死に近い状態になってるんだと思うの。運動をつかさどる脳幹と、食欲をつかさどる視床下部の一部を除き、全ての脳が死んだ状態になるんじゃないか……そう思って調べてみたんだけど……この写真を見る限りじゃ、全く異常は無いわね。まあ、脳の活動なんて写真で見てわかるもんじゃないけどね。それに、あたしの仮説だと、どうして正常な人間だけを襲うのか、どうして人間しか食べないのか、その理由は、わかんないんだけど」

 

「ふ……ふーん、ありがと、よく分かったよ」全然分からないけれど、あたしはとりあえず、そう言っておいた。「でも、こんな写真、よく撮れたね。こんな船の中の小さな病院にも、MRIなんてあるんだね」

 

 あたしが輪切り写真を眺めながら言うと。

 

「え? MRI? そんな機械、あるわけないでしょ?」

 

 瑞姫が目を丸くして言う。

 

 MRIが無い?

 

 じゃあ、この写真は、どうやって撮ったのだろうか?

 

 あたしの表情を読んだのか、瑞姫は、淡々とした口調で答えた。「ああ、それね。実際に輪切りにしたのよ。ゾンビを」

 

 ――――。

 

 言葉が出てこない。

 

 ゾンビを、輪切りにした?

 

 いったい、どうやって?

 

 声には出していないはずだけど、瑞姫は答える。

 

「ゾンビを捕まえて、レストランの大型冷凍庫に閉じ込めたの。一日もあればカチンカチンに凍るから、後は、食肉用のスライサーを使って、バッサバッサ、と、ね。ちょっとかわいそうなことしたけど、ま、ゾンビだし、別にかまわないでしょ? おかげで、いいデータが取れんだし」

 

 実に楽しそうな口調の瑞姫。

 

 ゾンビを冷凍して、輪切りにする――普通の神経で、そんなことができるだろうか? それを楽しそうな口調で話すものなのだろうか?

 

 …………。

 

 ま……まあ、瑞姫が言う通り、相手はゾンビだ。あたしだって、これまでゾンビたちには数えきれないほど木刀を振るって倒してきたわけだし、とやかく言うことはないかな。実際それでいろんなことが分かって、その結果、ゾンビ菌の研究が進むのなら、それは、仕方がないことかもしれない。

 

 後ろでは、相変わらず愛子とちはるがクスクスと笑っている。

 

「……か……解剖もできるなんて、さすが瑞姫だね」あたしは、何とかそう言った。「でも、瑞姫って看護師だよね? そんなことして大丈夫なの?」

 

「まあ、問題ないよ。こんなの、カエルやフナの解剖と変わらないし。それにあたし、手術とかもできるのよ?」

 

 は? 手術?

 

 医学についてはてんで素人のあたしだけど、さすがに、看護師が手術をしてはいけないのは知っている。手術は医者の仕事であり、看護師は、医者をサポートするだけだ。それ以上の医療行為は禁じられているはず。

 

「実はあたし、昔、アフガニスタンやイラクで医療活動をしてたんだ」笑いながら言う瑞姫。「あっちの方じゃ、医者の数がホント足りなくてね。あたしみたいな看護師でも、手術しないといけないんだよ。いやぁ。大変だったわ」

 

 後ろで、また愛子たちが笑う。

 

 ……まあ、もちろん冗談で言ってるんだろうけど、どこまで冗談でどこまで本気なのか分からない。

 

「それで――」瑞姫は相変わらず含み笑いをしている。「何の用?」

 

「え? えーっと……」再びうろたえるあたし。まさか、そんな風に言われるとは思わなかった。ゾンビだらけの船内で数日間会えなかった仲間なのに、再会して、「何の用?」なんて訊くものだろうか?

 

 まあいいや。用があって来たのは確かだ。「あ、そうだった。ここって、留置場、ある?」

 

「留置場?」不思議そうな顔をする瑞姫。

 

「うん。ちょっと理由があって、どんなのか、確認しておきたくて」

 

「あるけど……見ない方がいいと思うよ?」

 

「へ? なんで?」

 

「若葉には、ちょっと刺激が強すぎるかな?」

 

 瑞姫がそう言うと、後ろの愛子とちはるが、また、クスクスと笑い始めた。

 

 刺激が強い? 留置場って、そんなにすごい場所なのかな? そんなイメージは無いけど。まあ、あたしがイメージしているのは映画やドラマなどで見る留置場だ。あれは撮影用にセットとして作られたもので、本物ではない。本物の留置場って、そんなに刺激的なのだろうか? 拷問具が置いてあるとか? まさかね。

 

 いや、それよりも。

 

「そうだ! みんなは――真穂たちは、どこ? 無事だとは聞いたけど、怪我とかしてない?」訊いてみる。愛子の話によると、アウトブレイク発生以降は、ずっと、ホテルの部屋に閉じこもっていたらしい。では、今もそこにいるのだろうか?

 

 愛子とちはるは、相変わらずクスクスと笑っている。さっきから、何がそんなにおかしいのだろうか?

 

「みんな、奥にいるよ」瑞姫が右手の親指の部屋の奥を指した。ドアがある。あの向こうに部屋があるのだろう。良かった。無事とは聞いていても、やっぱり実際に会って確かめないと、安心できないからね。

 

「ああ、でも――」と、瑞姫が続ける。「会わない方がいいと思うよ?」

 

「へ? なんで?」

 

「だから、若葉には刺激が強すぎるから」

 

 刺激が強い? さっきから、瑞姫は何を言ってるんだ? ヴァルキリーズメンバーの無事を確認するだけなのに、なんで刺激が強いんだ?

 

 …………。

 

「……あ、そうか。愛子から聞いたよ。さゆりと直子がゾンビになったんだったね」あたしは視線を下げた。

 

 愛子たちは、ゾンビ化したさゆりたちを閉じ込めていると言っていた。恐らく、留置場に閉じ込めているのだろう。船内で誰かを閉じ込めるための場所としては最適だからな。刺激が強い、というのは、あたしにはゾンビ化した仲間を見せられない、ということだろうか? ……まあ、それは賢明な判断かもしれないな。三日前、理香がゾンビ化し、夏樹や由紀江が死んだと亜夕美から聞かされた時、あたしは取り乱して亜夕美に殴りかかったからな。あたしの心の弱さを、瑞姫は見抜いているのだろう。

 

 それでも、会わずに帰るわけにはいかない。

 

「大丈夫。覚悟はできてるよ」あたしは決意を込めて言う。「それに、ゾンビ化した人も、ワクチンがあれば元に戻せるかもしれないんでしょ? あたし、取り乱したりしないから、みんなに会わせて」

 

 すると。

 

 愛子とちはるが、大声を上げて笑い始めた。

 

 ……さっきから、愛子たちは何を笑っているんだ? なんかあたし、おかしいことを言ったかな? 何もないのに笑われると、さすがに腹が立ってくるぞ? あたしは二人を睨んだ。

 

「……ゴメンゴメン、そんなに怖い顔しないでよ」必死で笑いをこらえる愛子。「だって、若葉の演技が、あまりにもヘタだから」

 

 ……はあ? あたしの演技がヘタ? 何言ってんだ?

 

「若葉って、女優志望だっけ?」ちはるも笑いをこらえながら言う。「そんな演技力じゃ、諦めた方がいいんじゃない?」

 

 確かに、あたしはこれまで何本かのドラマに出演したけど、正直自分でもイヤになるほどの大根っぷりで、当然世間からは酷評された。人気アイドルグループの一人として、話題性だけで起用されたのは自分でも分かっている。でも、なんで今、それを言うんだ? 今はそんなこと関係ないし、ハッキリ言って大きなお世話だ。

 

「もう、そんな演技しなくてもいいよ」愛子があたしの肩を叩いた。「気付いたんでしょ? あたしたちのことに」

 

「……気づいた? 何のこと?」

 

「だから、もういいって」ちはるが言う。「完璧な作戦だと思ったんだけどねぇ。万が一気づかれるとしたら、由香里かな、って、思ってたんだけど、まさか、あんたに気づかれるなんてね」

 

 ……作戦。さっきからこの娘たち、何言ってるんだ?

 

「……案外この娘、ホントに何も気づいてないのかもよ?」瑞姫が呆れたように言った。だから、一体何のことだよ。

 

「……ウソでしょ? 気づいてないのに、なんで無理矢理こんなところに来たの?」愛子が目を丸くする。

 

「まさかあんた、ホントに留置場を確認したいだけだったの?」ちはるの口調も呆れている。「操舵室にスマホを置いたのがあたしたちだって気付いたのかと思ったよ」

 

 は? 操舵室にスマホを置いたのがちはるたち? 何だってそんなことをしたんだ?

 

「まったく……あなたの天然ぶりには参ったわね」瑞姫が肩をすくめた。「ま、いいわ。そんなに見たいんなら、好きにしたら? 留置場はこの奥よ。みんな、そこにいるわ」

 

 瑞姫が再び奥の扉を指さした。

 

 みんな奥にいる? ゾンビ化したさゆりと直子だけでなく、真穂と千穂も、留置場にいると言うの? なんでゾンビ化していないメンバーまで閉じ込めるんだ? それとも、奥は留置場ではないのだろうか?

 

 愛子とちはるは、またクスクスと笑い始めた。一体、何がそんなにおかしいのか。

 

 まあいいや。もう、ほっとこう。あたしは部屋の奥へ進み。

 

 そして、ドアを開けた―。

 

 

 

 

 

 


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