ZMB48~少女たちは、ゾンビの徘徊する船上で戦い続ける~   作:ドラ麦茶

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TIPS 27:5分でVMO48

「うん。でも、少しでもゲームを進めておきたいし」エリはウインクをし、そして、右手を差し出した。「応援してるよ、カスミ。お互い、頑張ろうね」

 

「ありがとう。エリも、頑張ってね」あたしはエリと握手を交わした。

 

 …………。

 

 …………。

 

 …………。

 

 10秒くらい経ったけど、エリは手を放さない。ぎゅっと、あたしの手を握り、ニコニコと笑っている。何だよ? 放せよ。ファンとの握手会じゃないんだから、握手なんて数秒でいいだろ。

 

 

 

(「決着」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

「あの、いいですか?」

 

 と、手を挙げたのは高倉直子だった。三期生で、考え事をすると固まって動かなくなる、という変わったクセのある娘だ。最近そのクセがヴァルキリーズの仲のいいメンバーに広がりつつある。

 

「何?」と、愛子さん。

 

「あたしも、第1フェイズで美樹と戦闘になって、なんとか倒したんですけど――」

 

 おお。美樹を倒したのか。直子のヤツ、ボーっとしているようでなかなかやるな。沢田美樹は三期生の娘だ。

 

 ……あれ?

 

 でも、美樹がゲームから離脱したのって、第2フェイズじゃなかったっけ? さっきのゲームマスターからの連絡の時に、名前があった気がするぞ?

 

「――そうなんです。第1フェイズ終了時の離脱メンバーの中に、美樹の名前が無かったので、おかしいな、と思ってたんですけど、これも、生き返ったってことですよね?」

 

「そうなるわね」愛子さんが言った。「美樹を倒した時、能力カードは拾った?」

 

「はい。コレです」

 

 直子はカードを取り出した。

 

 

 

 能力名:傍受

  効果:対象プレイヤー1人の会話の内容を聞く。能力の発動には、対象プレイヤーに10秒間触れる必要がある。以下の場合、能力は解除される(能力発動から3時間経過した場合。対象プレイヤーが傍受に気づいた場合。別のプレイヤーに能力を使用した場合)

 

 

 

 だ、そうである。

 

「『傍受』のカードが出たのなら、美樹の能力は『傍受』ということよ」愛子さんが言う。「生き返ったのは、誰かが『蘇生』の能力で生き返らせたんでしょうね」

 

 

 

(「本当に倒すべき相手」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

 プルプル。TAが鳴った。ゲームマスターからの連絡のようだ。起動すると。

 

 

 

『第1フェイズ終了。

 

 村山千穂

 

 桜井ちひろ

 

 滝沢絵美

 

 以上、3名がゲームより離脱』

 

 

 

 ……うん?

 

 夏樹の名前が無いぞ?

 

 あたしの目の前で愛子さんに倒された夏樹。青い炎の魂状態になってたし、案内人もそれが死亡状態だって言ってた。死亡状態のままフェイズ終了を迎えると、ゲームオーバーになるはずだ。でもTAに名前は無い。つまり、誰かが夏樹を生き返らせたってことか。

 

 

 

(「バトル開始!」より)

 

 

 

 

 

 

 この時。

 

 由香里さんチームとの対決を意識し過ぎるあまり、あたしたちは、ひとつの小さな見落としをしていた。

 

 離脱者の通知の中に、『キル・ノート』使いの、根岸香奈の名前が無い――。

 

 それはつまり、生き返ったということだ。

 

 

 

(「撤退」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

 あたしも手を挙げる。「その、『蘇生』の能力を使う人って、なんのために死んだプレイヤーを生き返らせてるんですか?」

 

「……そうね。それは、あたしも少し気になってたのよ。このゲームはバトルロイヤルだから、死んだメンバーを生き返らせることは、せっかく離脱しそうになった敵をまた呼び戻すことになる。まして蘇生の能力は、生き返ったプレイヤーの戦闘力を1.3倍にしてしまう。後々、自分の首を絞めることになりかねない」

 

 だよなぁ。メリットは無いように思うんだけどな。

 

 

 

(「本当に倒すべき相手」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

「――と、まあ、こういうことね」愛子さんが言う。「このゲームの能力は、一見役に立たなそうに見えても、他の能力と組み合わせることで、非常に強力になることがあるの」

 

 

 

(「正しい能力の使い方」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

「ところでさ――」あたしはエリと夏樹を見る。「2人とも、能力はどうだったの?」

 

「それがさ! 見てよ! これ!!」夏樹が大声で言い、左手をかざしてTAを表示させた。画面に、能力の説明が表示されている。

 

 

 

能力名:ゴースト

 効果:あなたは死亡すると、全てのプレイヤーのパラメーターを見ることができる。能力の発動には死亡から1分必要。

 

 

 

 ――だ、そうだ。

 

「これ、ヒドくない!? 死んでから発動する能力だよ? 意味ないじゃん!」夏樹は不満をぶちまけるように言った。

 

 

 

(「二期生の絆」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

「きゃはは! どう? スゴイでしょ?」香奈が甲高い声で笑う。「あたしの能力『キル・ノート』よ。このノートに名前と能力を書くと、その人は心臓麻痺で死んじゃうの!!」

 

 ノートに名前と能力を書かれたら心臓麻痺で死ぬ? そんなの、強力すぎるだろ! 能力がバレたら、もう終わりじゃないか!?

 

 

 

(「死のノート」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

「何人かには、もう説明したけど――」愛子さんが言葉を継ぐ。「舞の能力は『スティール』。戦闘で倒した相手の能力を、自分のものにしてしまうの」

 

 ――――。

 

 全員が、息を飲んだ。

 

 戦闘で倒した相手の能力を、自分のものにしてしまう?

 

 つまり、1人でたくさんの能力を持てるということ?

 

「みんなの思っている通りよ。スティールがあれば、1人で複数の能力を持つことができる。つまり、さっき言った能力の組み合わせを、1人でやることができるの。ハッキリ言って、このゲームの能力の中では、アタリ中のアタリね」

 

 1人で、能力を組み合わせて戦うことができる――。

 

 そりゃあ、確かに脅威だな。愛子さんが焦るのも、無理はない。あまりにも強力すぎる能力だ。

 

 

 

(「本当に倒すべき相手」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

No.23

 

能力名:蘇生

使用者:不明

 効果:死亡状態のプレイヤーを90%の確率で蘇生させる。蘇生されたプレイヤーは、戦闘力が1.3倍になる。蘇生に失敗した場合、死亡状態のプレイヤーはゲームから追放される。

 

 

 

(「TIPS 13:能力 #5」より)

 

 

 

 ☆

 

 

 

「愛子さん、なんか、すごく能力のことに詳しいみたいですけど、どうしてですか?」

 

「ああ。簡単よ。それが、あたしの能力なの」

 

「へ? 能力?」

 

「そう。『ジーニアス』という能力よ。このゲームの個人能力48種類すべてに関する知識があるの。使っている本人すら知らないことも、ね。ただし、あたしの言うことは、あまり過信しない方がいいわ」

 

「へ? 何でですか?」

 

「この能力で得た知識の中には、1つだけ、大きな間違いがあるの」

 

「――――?」

 

「『能力名・ジーニアス。このゲームの全ての個人能力に関する知識がある。ただし、知識の1つに重大な誤りがある。以下の条件を1つでも満たした場合、その誤りが判明する。あなた自身が誤りに気付いた場合。誤りのある能力の使用者が死亡状態になり1分以上経過した場合。誤りのある能力の使用者がゲームから離脱した場合』、だそうよ。今のところ、その重大な誤りとやらは判明してないわ」

 

 

 

(「正しい能力の使い方」より)

 

 

 

 

 


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