東方双夢譚   作:クジュラ・レイ

48 / 152
危機。


11 黒き獅子の獣

 博麗神社の居間で横になっている霊夢は、不安に駆られていた。先程懐夢がチルノ達と共にルーミアを探しに行くと言って、出て行ってしまった。

 本来ならばそれは博麗の巫女である自分が行う事で、懐夢が言い出した時は自分が行くと言ったが、その時懐夢は「霊夢は病み上がりなんだから休んでいなきゃ駄目」と言って、何度止めろと言っても聞かず、そそくさと神社を出て飛んで行ってしまった。

 もしもルーミアが普通に迷子になっていたならば、ここまで不安を抱かず、普通に過ごしていた事だろう。だが今回は違う。その行方不明になったルーミアはリグル、大妖精が感染して発症した感染症を患い、同じように症状を発症して凶悪な別な妖怪へと形を変え、強力な力を振り回しながら暴れ回っている可能性が非常に高いのだ。

 もし、懐夢のいるチルノ達が、そんなルーミアと接触してしまったならば……。

 

(懐夢……)

 

 最悪の状況は容易に想像する事が出来た。その途端、胸の中に広がる靄のような不安が一気にその大きさと濃さを増して、腹の底から震えが来た。……今懐夢達は、感染症を発症し、凶悪な妖怪と化したルーミアに襲われ、逃げ回っているのではないだろうか。いや、リグルや大妖精が変化した妖怪は、自分でさえも苦戦どころか死闘を強いられるような凶悪な存在だった。ルーミアもそれと同じならば、今頃全員殺されてしまっているのではないだろうか。そもそも、遭遇すらもしていない可能性だって低くはないが、遭遇している可能性だって……。

 考えれば考えるほど胸の中の不安は大きくなってきて、ついに霊夢は顔を青褪めさせて起き上がり、懐夢が飛び立っていった方角を見た。

 

「懐夢……!」

 

 やはり、自分も行くべきだった。出て行ったら懐夢が怒るだろうけれど、そんなふうに怒ってくれる懐夢が居来てるかどうかすらも怪しい。懐夢が怒るとか怒らないとか、もうそんなのどうだっていい!

 霊夢は思うと素早く立ち上がり、妖怪を討伐する際に持っていく道具を一通りささっと揃えると、居間を出て廊下を走り、やがて玄関に辿り着いて、靴を履いて神社の外へと描けた。

 その時だった。ごつん、と頭に固い物が当たり、霊夢は額周辺に鈍い痛みを感じながら吃驚して、その場に尻餅をついた。どうやら、何かにぶつかったらしい。

 

「いてて……何なのよもう……」

 

 

 顔を上げて自分が頭をぶつけたものが何なのかを確認しようと視線を向けてみて、霊夢は思わず驚いた。玄関の外に、自分と同じように地面に尻餅をついて、痛そうに額を撫でている文の姿があったのだ。

 

「あ、文!?」

 

 霊夢に言われて気付いたのか、文は額を撫でるのをやめて笑った。その額は、真っ赤になっていた。

 

「おはようございます霊夢さん。今朝もいい朝でしたね」

 

 霊夢は少し怒ったように答える。

 

「全然いい朝じゃないわよ。いきなりぶつかってきて」

 

 文は少し悲しそうな表情を顔に浮かべる。

 

「いえ、ぶつかってきたのは霊夢さんの方なのですが……それよりも大変なんですよ!」

 

 霊夢はピクリと反応を示し、文へ問いかけた。

 

「なにが? なにがそんなに大変なの?」

 

 文は焦りを表情に浮かべた。何でも、街から南の方にある草原にて、早苗と懐夢が背中から翼を生やし、身体を頑丈そうな甲殻で包み込んだ獅子のような獣に襲われているらしい。

 それを聞いた霊夢は思わず大きな声を出した。

 

「なんですって!?」

 

「私の勘から察するに、あれは近頃この幻想郷に出没している未確認の妖怪の一種なのではないかと……」

 

 霊夢はがしっと文の肩を両手で掴んだ。

 

「懐夢は無事なの!? あんたが見た時懐夢は生きてた!?」

 

 文は吃驚したが、とりあえず答えた。

 

「あ、はい! 二人共生きていました。ですが、今はどうなっているか……」

 

 霊夢は顔を険しくした。

 

「もう一度聞くわ。文、場所はどこ? どこにそいつは現れた?」

 

 文は霊夢の険しさに驚きながら、答えた。

 

「場所は街の南にある草原です。二人の事ですから、逃げたかもしれませんが……」

 

 霊夢は場所を認識すると文から手を離して立ち上がり、玄関の外の方を見た。

 文は今、未確認妖怪と思われる妖怪は街の南にある草原に出現したと言った。これは、かなり拙い状況だ。もし妖怪が街から離れた場所に出現したのだったら懐夢と早苗を連れて逃げるだけでよかっただろう。しかし街の南にある草原という街から近い場所に出現したとなると、自分達を見失った後、『未確認妖怪』の性質上、餌を求めて街へ攻め込む危険性がかなり高い。草原に行って早苗と懐夢を助けた後、戦って倒す必要がありそうだ。だが今はそれよりも、未確認妖怪と遭遇した懐夢の身が一番心配だ。

 

「文、行くわよ」

 

 霊夢は言うと走って玄関を出て、上空へ舞い上がると文の言う街の南にある草原目指して一目散に飛んだ。文もその後を慌てて追い掛けて神社を出て上空に舞い上がり、霊夢の後を追いながら草原を目指した。

 

 

  *

 

 

 賑わう街の上空を抜けて、霊夢と文は例の草原の上空まで来た。そこで、霊夢は辺りを見回しながら文に声をかけた。

 

「文、この辺り?」

 

 文は頷く。

 

「はい間違いありませ……あっ!」

 

 突然声を出した文に霊夢は少し驚き、思わず振り返った。

 文は下の方を見て、目を丸くしていた。何があるのかと思って文と同じように下の方を見てみたところ、そこには獅子のような体をした奇妙な獣と、襲いかかってくるそれから懐夢を守りながら応戦している早苗の姿があった。早苗に守られている懐夢を見た途端、霊夢は思わず声を出した。

 

「懐夢ッ!」

 

 霊夢は空気の壁を蹴るように勢いよく早苗と懐夢の元へ飛んだ。もうすぐ二人の元へ辿り着く距離に達したその時、獣はその口よりまるで闇を凝縮したかのように黒くて大きな光弾を十個ほど二人の元へ発射したのが見えた。獣が光弾を発射したのは早苗からも見えたようで、光弾が発射されたその一秒ほど後に早苗は腕を顔と身体の前に出して防御姿勢をとったが、防御結界を張らなかった。どれほどの威力があるかわからないが、あんな光弾だ、手で防げる程度のものではないはず。

 

「ッ!」

 

 霊夢は素早く懐から札を取り出すと、「間に合え!!」と心の中で叫んで早苗と懐夢の前方向へ思い切り投げ付けた。札は獣の放った光弾よりも早く二人の前に到達、その直後に大きくて分厚い光の壁を展開した。その二秒後に黒い光弾は壁に激突し、炸裂したが、壁はそれら全ての衝撃を受け止め、吸収した。獣が飛ばした全ての光弾を防ぎきると同時に壁は消滅し、その始終を早苗と懐夢はぽかんとした様子で見ていた。

 早苗と懐夢がそうしているうちに霊夢と文は二人のすぐ近くの地面に着地、早苗と懐夢の二人は驚いたような声を上げた。

 

「霊夢さんに文さん!?」

 

「霊夢!? それに文ちゃん!?」

 

 二人が驚いていると、霊夢は懐夢に近付いた。

 

「懐夢……よかった、無事だったのね。怪我してない?」

 

 声を若干震わせて尋ねると、懐夢は頷いた。

 

「怪我してない。でも霊夢、どうしてここに? 病み上がりなのに」

 

「病み上がりだけど、貴方が心配で思わず飛び出してきちゃったのよ。でもよかったわ。怪我も何もしてなくて」

 

 安堵していると、傍にいる早苗と文が焦ったように声をかけてきた。

 

「れ、れれれれれ、霊夢さん!」

 

「あ、あ、ぁあれ、こっち来てます!」

 

 霊夢は懐夢と一緒になって二人の方へ視線を向けた。そこで二人は、光弾の飛んできた場所、即ち未確認と思われる妖怪の方に指を差して思い切り焦ったような表情を顔に浮かべて、冷や汗を噴出させながらガタガタと震えていた。そっちに何があるのだろうと思って二人の指差す方を向いてみれば、早苗と懐夢を襲った獣が、一目散にこちら目掛けて突進して来ていた。

 それを見た二人は思わず「うわぁ!」と声を上げ、そのうち霊夢がその場にいる全員に指示した。

 

「皆、飛んで避けて!!」

 

 霊夢は素早く懐夢を抱きかかえると上空へ舞い上がり、獣の突進を回避し、早苗と文も霊夢とほぼ同じタイミングで上空へ舞い上がり、獣の突進を回避した。獣は突進が避けられた事がわかったのか、少し走ってすぐに止まった。その一部始終を見て、霊夢は呟いた。

 

「あの異形な姿……確実に未確認妖怪ね」

 

 抱きかかえている懐夢が首を横に振って、自分に視線を向けてきた。

 

「違うんだ霊夢。あれは、ルーミアなんだ!」

 

 霊夢は驚いて懐夢と目を合わせた。

 

「何ですって? あれがルーミア?」

 

 懐夢はあの獣から感じる臭い、毛の色、甲殻の色がルーミアと一致している事を霊夢に話した。その話は早苗と文の二人の耳にも届き、三人は驚きの表情を顔に浮かべた。

 そのうち、文が懐夢へ声をかけた。

 

「あれが、あのルーミアさんですって!?」

 

 懐夢は文の方を向いて、頷いた。

 

「間違いないよ。あの妖怪から、ルーミアの匂いを感じるんだ」

 

 早苗が懐夢へ声をかける。

 

「確かに闇を使ったりとか、闇の弾を飛ばしてきたりとか、ルーミアさんに似ているような攻撃を放ってきたりはしていますが、でも、似てるだけで全然違いますよ?」

 

 早苗の言葉を聞いて、霊夢は思い出した。そう、この前得体の知れない感染症に感染して、蟲の竜に変身して襲いかかってきたリグルと戦った時の事だ。あの時、蟲の竜は、素体となったリグルの放つスペルカードに似た攻撃を放ってきた。もしもあれがルーミアが感染症を発症して結果の姿ならば、ルーミアの放つ攻撃と同じような攻撃を放つ事にも納得がいく。それに、基本的に嘘を吐かない懐夢の嗅覚もあれからルーミアの匂いを感じ取っているという。

 ここまで来ればもうわかる。あの妖怪は、ルーミアだ。感染症を発症して別な妖怪へと変化してしまったルーミアに違いない。

 

「早苗、文、あれはルーミアよ。感じがリグルや大妖精が別な妖怪に変化してしまった時にものすごくよく似てる」

 

 早苗と文は霊夢へ視線を向け、そのうち早苗が言った。

 

「ほ、本当なんですか!?」

 

 霊夢は頷いた後、早苗と文に視線を向けて、指示を下した。

 

「二人共、こいつを倒すわよ」

 

 二人は驚いて声を上げ、文が言った。

 

「た、戦うんですかあれと!?」

 

 霊夢は今後あの妖怪が齎すと思われる被害の事を二人に話した。二人はそれに納得し、早苗が言った。

 

「確かにあの妖怪を放っておけば、街に攻め込みそうですね……この前の戦いであれだけの損害を被って疲弊している街です、もう一度攻め込まれたら一溜りもありません」

 

 霊夢はもう一度頷いた。

 

「そうよ。だからあいつは、ここで倒さなきゃいけないわ」

 

 霊夢は懐夢を身体から離し、指示を下した。

 

「懐夢、貴方は近くの茂みに隠れていなさい。貴方は戦うことができないんだから」

 

 懐夢は少しおどおどした様子で答えた。

 

「霊夢達はどうするの?」

 

 霊夢はさっと下の方にいる獣を見て、答えた。

 

「ルーミアを元のルーミアに戻すわ。あの子をあのまま放っておくわけにはいかないからね」

 

「でもたった三人でどうにかできるの?」

 

 霊夢は懐夢と目を合わせた。

 

「見くびってもらっちゃ困るわ。私達はいつも少数で戦って勝ってきたの。だから、今回も少数で戦って勝つわ。ほら、わかったのなら行って頂戴。私達は大丈夫だから」

 

 懐夢は俯いたが、すぐに顔を上げた。

 

「……わかった。負けないで!」

 

 懐夢は言うと霊夢の手から離れ、素早く降下して近くにある茂みの中に隠れた。

 懐夢の姿が見えなくなると、霊夢は素早く札を懐の中から取り出して、獣の襲撃に備える姿勢を取った。

 その直後に獣は黒い翼を羽ばたかせて空中へ舞い上がり、すぐに霊夢達のいる高度まで上がって来て、霊夢達を睨んだ。

 獣と目を合わせるなり、霊夢は息を呑んだ。

 獅子に似た身体の形で、黒い鎧のような甲殻に身を包み、鬣の周辺に黒い闇の剣を数本浮かせ、肩の辺りから生えた黒い翼で空を飛んでいる獣の姿は、思いの他禍々しく、あの天真爛漫なルーミアが変化してしまった姿だというのが信じられないくらいのものだった。最早、同一個体ではなく、完全に別な個体にしか見えない。

 

(妖怪を……)

 

 ここまで別な姿にして凶暴化させるとは、ルーミアやリグル、大妖精が感染した感染症とは、なんて恐ろしいものなのだろう。しかもまだそれの正体が掴めてすらいないから、余計に質が悪い。

 

「さて……どうやって倒したものか」

 

 霊夢は一先ず感染症の事を考えるのをやめると、素早くあの獣へ考えを切り替えた。

 あの獣は、鬣の周りに闇で出来た剣を浮かせている。あぁいうのはだいたい、自身の身体と連動していて、自身が攻撃を繰り出すと、浮いている剣も少し遅れてその場所に攻撃を繰り出す形式のものが多い。恐らく、あれはこの形式と同じで、あの獣の補助武器なのだろう。

 だが、そうとなればかなり厄介だ。あいつが攻撃を繰り出したところにあの補助武器が続けて攻撃を繰り出すという事は、獣の攻撃を避けたとしてもあの補助武器の追撃を喰らってしまう可能性が非常に高いという事だ。つまりあの獣の攻撃を完全に避けるには、相手の出方を見極めて、攻撃を繰り出される前にその攻撃範囲から外れる必要がある。これはきっと、先読みが必要になる戦いだ。……どの妖怪との戦いにもなかった戦法が、必要とされるだろう。

 霊夢は考え終えると、早苗と文に声をかけた。

 

「二人共! あいつの鬣の辺りに浮いてる剣に気を付けて」

 

 早苗と文の視線が霊夢へ集まった。霊夢は今考えた事を二人に伝え、それを聞いた二人はうんうんと頷き、早苗が言った。

 

「なるほど、補助武器(オプションウェポン)というわけですか。なんと便利な」

 

「あくまで推測よ。本当はどんな使い方をするものなのかわからない。とりあえず、相手の出方を見るわよ」

 

 霊夢が言った直後、獣が鳴いた。何事かと思って獣の姿を見てみたところ、鬣周辺に浮いているいくつもの闇の剣が刃先を前方に向けて獣の目の前に集まっていた。何事かと思って注視していると闇の剣は獣の顔の周りを時計回りに回り出した。

 

「な、何?」

 

 三人のうち文が思わず呟いたそのすぐ後に、獣は翼を勢いよく羽ばたかせて、三人目掛けて突進を開始。三人は思わず驚いて獣の突進を避けるべく横方向、上方向、下方向に素早く動いたが、その中で文が攻撃を避けそこねて、闇の剣の刃を腕に掠らせてしまった。

 

「ぅあっ!」

 

 腕を切られる鋭い痛みに文は悲鳴を上げ、バランスを大きく崩して、落下した。

 やがて地表にぶつかろうとしたその時に、素早くバランスを直して姿勢を元に戻し、再上昇して元の高さまで戻った。だが、腕の傷は思ったよりも深く、痛みも思ったより大きくて、文は顔を顰めながら傷をもう片方の手で抑えた。

 その時に、べちゃりと血が手に着くのを感じた。どうやら、かなり深く切られてしまったらしい。

 

「掠っただけなのにこれですか……」

 

 文が呟くと、霊夢が大きな声で文を呼びかけた。

 

「文、大丈夫!? 今治療を」

 

 その時、獣のいる高度から比較的高い高度にいる早苗が、ある事に気付いた。突進を繰り出し終えた獣が、視線を霊夢へ向け、口を大きく開けて口の中に闇を集めている。まるで闇を口内へ集めて溜め込み、加速させているかのように見える。

 その次の瞬間、早苗は次に獣が何をしようとしているのか理解し、顔を青くして獣の目線の先にいる霊夢へ声をかけた。

 

「霊夢さん! 妖怪の攻撃が来ます! 逃げて!!」

 

 早苗の声に驚いて、霊夢は思わず早苗の方を見て、すぐ視線を戻した。その直後、獣はかっと大きく口を開き、溜め込んだ闇を黒いビーム光線としてこちらに向けて照射してきた。霊夢は獣のビーム攻撃に吃驚しながらも咄嗟にスペルカード『夢符「二重結界」』を発動させて、目の前に強力な結界を発生させた。

 次の瞬間、獣が放つビーム光線は霊夢の元へ到達し、霊夢の張った二重結界に直撃した。二重に張られた強力な結界はビーム光線から霊夢の身体を守ったが、その出力は霊夢の予想を大幅に超えていて、霊夢はなんとか耐えようとその場に踏みとどまろうとしたが、獣が放つビーム光線の出力は霊夢の力に勝り、霊夢は押されて後退したが、破られまいと結界へ力を送り、何とか耐え続けた。

 そして獣がビーム光線の照射を止めた次の瞬間、霊夢の展開した結界はがしゃんと音を立てて割れ、消滅。霊夢はその場に跪いた。

 

「はッ……はぁッ……」

 

 激しい運動をしたあとに来るような強い疲れに襲われて、霊夢は息を荒げながら獣を見た。獣は、一回目だというのに自分を疲れさせるほどの威力と出力を持ったビーム光線を発射したというのに、全く疲れている様子を見せていなかった。そればかりか、こちらを「美味そうな獲物が居るじゃないか」と言わんばかりの表情で見ている。どうやら今獣が放った技は、体力の百分の一も消費しないような軽い技だったようだ。

 あれほどの威力があったというのに、だ。

 それを知るなり、霊夢は思わず苦笑いした。

 

「あんなのを撃って……疲れ一つ感じないなんて、卑怯じゃないの……?」

 

 その次の瞬間、獣は再び鬣の周辺に浮いている闇の剣を前方に浮かせ、高速回転させるとそのまま猛烈な勢いで霊夢へ突進を開始した。

 霊夢は獣の突進を回避しようと上空へ飛び上がろうとしたが、先程の疲れか、上手く飛び上がる事が出来ず、地面に倒れ込んでしまった。

 その次の瞬間、霊夢が顔を上げた時には、獣はもうすぐそこまで来ていた。そして、獣の目の前を開店する闇の剣の刃先が霊夢の身体に触れようとしたその時。

 

「神籤「乱れおみくじ連続引き」!!」

 

 どこからか声が聞こえてきたと思った直後に獣と自分の間に四枚の札のようなものが飛来して、やがて地面に落ちた。その直後に、札を無視して突っ走ってきた獣の足が触れた瞬間、札は大爆発した。

 爆発をもろに受けた獣の身体は衝撃と爆風によって上空へ弾き飛ばされ、霊夢の左斜め上を通過して、そのまま勢いよく後方へ飛んで行った。

 

 獣が通過したときに発生した風によって髪の毛が揺れたが、霊夢は気にしなかった。……今、一体何が起きたというのだろう。何で今、爆発が起きて獣がすっ飛んで行ったのだろうか。

 そう思っていると、もう一度声が聞こえてきて、直後に声の主と思われる者が上空から目の前に降りてきて、着地した。

 

「霊夢さんッ!」

 

 それは早苗だった。

 早苗は自分と同じように姿勢を低くして、声をかけてきた。

 

「霊夢さん、大丈夫ですか?」

 

 早苗に声をかけられると霊夢はハッと意識をはっきりさせ、早苗と目を合わせた。

 

「え、なに?」

 

「だから、大丈夫ですかって聞いてるんです」

 

 早苗の言っている事がわかって、霊夢はぎこちなく「えぇ」と答えた。

 

「な、なんとかね。っていうか、今のって早苗のスペルカード?」

 

 早苗は頷いた。

 

「はい。あの距離でしたから、間に合うかどうか少し不安だったのですが、間に合ってよかったです」

 

 早苗がニッと笑う中、霊夢は少し驚いていた。まさか、自分よりも力の強さに劣っているはずの早苗に助けられるとは、早苗があのような妖怪を吹っ飛ばせるほどの力を身に付けていたとは、思っても見なかったからだ。……明らかに、早苗は強くなっている。

 

(もしかして……)

 

 霊夢は顔を下に向けて考えた。

 今まで早苗の事は同じ巫女として、「どうせそんなに力はない」と高をくくっていたが、もし早苗がどんどん強くなっているならば、そのうち、早苗に先を越されるのではないだろうか。

 自分よりも早苗の方が強くなって、早苗が幻想郷で最も強い巫女になってしまうのではないだろうか。そして将来、幻想郷を守る存在は自分ではなく早苗になるのではないだろうか。異変の解決も、こういう妖怪の退治も、幻想郷の平和の維持も早苗が……。

 

 そう考えていたその時、霊夢はある事に気付いて考えるのをやめ、顔を上げて辺りを見回した。

 いつの間にか、自分の周りに暖かくて柔らかい光が現れて、ふわふわと浮かんでいる。

 「この光は何だ?」と思っていると、光は自分の身体に寄ってきて、やがて身体に吸い込まれるようにして消え、無くなった。

 その直後、霊夢は身体に変化を感じて、驚いた。―――先程の疲れが、いつの間にか消えている。重かった身体が、急に軽くなっているのだ。

 

(これって!)

 

 回復術だ。誰かが今、自分に回復術をかけてくれ、自分の身体の疲れを取り除いてくれたのだ。そして今のこの場にいる自分、早苗、文の中で自分以外に回復術を使える者と言えば、一人しかいない。

 霊夢は目の前にいる早苗に視線を戻した。今早苗は両掌をこちらに向けて、目を閉じていた。それはまるで、こちらに力を与えているか、またはこちらに術をかけているかのような体勢だ。

 何も考えず、じっと早苗を見ていると、早苗は元の姿勢に戻り、目を開いた。

 

「霊夢さん、どうですか?」

 

 早苗の言葉を聞いて霊夢は確信を抱き、驚いた。やはり今の回復術は早苗によるものだった。自分が考え事をしている間に、早苗が回復術をかけてくれたのだ。

 しかし霊夢が驚いているところはそこではない。霊夢が驚いているところは、その出力と効力だ。前に早苗の使う回復術を見させてもらった時は、出力、効力共に低く、傷一つ回復させるのに結構な時間を要していた。

 それを見て霊夢は「早苗は使えない回復術くらいしか使えない」と思っていたが、今は数秒程度で傷や疲れを回復させるくらいにまで出力と効力が上がっている。前に使っていたものよりも大幅に使える術と化しているのだ。……やはり、早苗は強くなった!

 その事実に霊夢がきょとんとしていると、早苗は首を傾げて声をかけた。

 

「あの、霊夢さん? どうかなさいましたか?」

 

 霊夢はすっと顔を上げて早苗に問いかける。

 

「早苗、あんた何かやった?」

 

「何かって?」

 

「あんた、強くなってるんだもん。スペルカードも回復術も、明らかに威力が増してるわ。絶対、私が見てないところで何かやったでしょ? 努力? 練習?」

 

 早苗は「あぁー」と言って、胸に手を当てて笑んだ。

 

「何もしてませんよ。ここ最近は練習も努力もほとんどしてません。ここ最近で何かあったというなら、心が少しすっきりしたくらいでしょうか」

 

 霊夢は首を傾げた。

 

「心がすっきりした?」

 

「えぇ。悩みの種というか心配の種というか、そういうのが小さくなったんです。霊夢さんのところの、懐夢くんのおかげで」

 

 早苗がそう言うと、霊夢は「あぁー」と呟いて、早苗が強くなった理由に納得した。

 自分がまだ術を覚えたての頃、術や技は術者の意識や心と密接に繋がっていて、術者の感情や心の安定具合によって術の大きさや強さや効力が上下するというのを師匠より教わった。どういうことかというと、心に常日頃の悩みや心配事などがあると術の威力が半減したり大幅に落ちたりし、反対に悩みや心配事が無く心が穏やかであったりすると術の威力が大幅に上がったりするということだ。

 つまり今早苗の放つ術の威力が高くなっているのは、今まで抱えていた心配事と悩みの種が小さくなって、心の調子がよくなっているからであって、早苗自身が持つ生来の力が短期間で急上昇したわけではないのだ。

 それを悟って、霊夢は思わず安心してしまった。早苗がこのような超短期間で急成長して、自分を追い越せる程の実力を身に付けたわけではなかったからだ。それに、こういうのが続くのは意外と一時的だ。感情がぶれたりすると、すぐに効果は消えてしまう。しかも感情が自分の何倍もぶれやすい早苗なら、なおさら早く効果を消してしまうだろう。その辺りは注意しておいた方が良さそうだ。

 早苗に向けてそれを言おうとしたその時、霊夢はふと思いついた。

 

(待てよ?)

 

 今、早苗の力は一時的にだが、増している。

 もし、このまま自分や文と力と合わせて戦えば、蟲の竜や瘴気の竜とかとの戦いよりも被害を出さずにあの獣を仕留めて、元のルーミアに戻す事が出来るかもしれない。

 霊夢は思い付くや否、早苗に声をかけた。

 

「早苗!」

 

 霊夢の突然の声掛けに早苗は驚いたのか、びくっと反応を示した。

 

「な、なんですか?」

 

 霊夢は表情を引き締めた。

 

「もう一度言うけど、あんたの力は今、すごく増してるわ。あれくらいの妖怪をすっ飛ばせたんだから多分、いつもの数倍の力を出せてる」

 

 早苗は首を傾げた。

 

「そ、それがどうかしたんですか?」

 

 霊夢は表情変えないまま続けた。

 

「今の強化されたあんたの力、私の力、文の力を集めてぶつければ、即行であいつを倒す事が」

 

 霊夢が言いかけたその時、上空から声が聞こえてきた。

 

「霊夢さんに早苗さん! 何呑気にお話をしてるんですか! 後ろを見てください!!」

 

 何事かと思って二人で声の聞こえてきた方を見てみると、浮かびながらこちらに身体を向けている文の姿があった。どうやら今の声の主は文だったらしく、文は焦りの表情を顔に浮かべてこちらを見ている。いや、よく見ればこちらではなく、こちらの後方に視線を向けているようだ。

 文が何を見ているのかと思い、二人して振り向いてみたところ、そこには先程早苗がスペルカードですっ飛ばした獣が、目を赤く光らせて、息を荒げて口から涎を垂らしながらこちらを睨んでいた。

 二人は獣がいつの間にか立ち上がっていた事に驚いたが、それと同時にある事に気付き、早苗が霊夢へ声をかけた。

 

「霊夢さん、あの妖怪……」

 

 霊夢は表情を険しくした。

 

「言わなくたってわかるわよ……」

 

 二人が気付いた事。それは、獣の身体の変化だ。

 いつの間にか、獣の毛が、色を変えている。先程までは金色の毛を生やしていたのに対し、今はまるで冬に降る雪のような白い色に変わっている。

 それだけではない、先程早苗が攻撃したおかげで、獣の足の甲殻が崩壊して素足が剥き出しになっているのだが、その剥き出しになった素足から、白いオーラのようなものが上がっているのだ。いや、よく見てみれば足だけではなく、甲殻の隙間、鬣の根元周辺、翼の付け根、尻尾の付け根の辺りからもまるで朝靄のような白いオーラが湧き上がっている。それも、かなり猛烈な勢いで。

 それを見るなり、霊夢はハッとした。……あの白いオーラ、見た事がある。確か、蟲の竜、瘴気の竜と戦って奴らの甲殻を叩き割った時にもあんなのが出ていた。そしてあれからも、今白いオーラが湧出ている。ずっと正体を掴めずにいるが、あれは一体何なのだろうか。どうして、あんなものが……。

 

 考えていたその時、霊夢は獣の様子を見て、もう一度ハッとして考えを取り下げた。

 闇の剣が、数えきれないほど獣の前に出現してこちらに刃先を向けている。それは早苗の目にも映ったようで、早苗は凍り付いたように闇の剣の群を見ていた。

 霊夢は咄嗟に考えた。あれは恐らく『弾幕』だ。獣はあれを弾幕として放ち、こちらを串刺しまたは剣山にでもするつもりなのだろう。

 普通の弾幕だったならば、被弾すれば怪我で済むが、あんな大きな剣が飛んで来ようものならば、怪我では済まない。当たれば確実に死ぬ。

 避けなければ、殺される!

 

「早苗! 逃げるわよ!!」

 

 霊夢が叫び、早苗と共に上空へ飛び上がった瞬間、獣は吼えた。

 その次の瞬間、獣の前に浮かんでいた剣の群は一斉に霊夢と早苗目掛けて飛び出した。

 放たれた剣が迫ってくるなり、二人は驚いた。獣の変わっていた部分とは、毛並みや色だけではなかった。獣より放たれた剣が、先程よりも早く飛んで来ているのだ。

 それだけじゃない。あの獣、次々剣の群を作り出しては飛ばし、作り出しては飛ばしを計測できないほどの頻度で繰り返して、本当に弾幕を作り上げている。明らかに、先程よりも強くなっている。

 霊夢は獣が突然強くなった様を見て、「まるで早苗のようだ」と心の中で呟いたが、すぐに心の中から消した。

 

「何よ……怒ったとでも言うの!?」

 

 びゅんびゅんと風を裂きながら猛スピードで飛んでくる剣の群を、霊夢は苛立ちを感じながら避け続けた。いつも弾幕ごっこと同じ要領なのかもしれないが、飛んできているのは当たれば死ぬ剣の群。いつもの弾幕ごっこのような感覚で動いたり、避けたりする事などできやしない。当然、避ける事に精一杯で他の二人を気にしている暇すらもない。

 

「避けてなさいよ……二人共……」

 

 霊夢や呟くと、速度を上げて飛行、飛んでくる剣の群を避け続けた。

 

 

  *

 

 

 一方その頃、早苗は次々飛んでくる剣の群をなるべく速度を上げて隙間を縫うように飛んで、避け続けていた。

 その時に、早苗はふと外の世界であった事を思い出した。かつてあったとされる、戦闘機と戦艦の戦いだ。

 戦艦は、こちらを沈めるべく敵地より飛んで来た戦闘機に接近された時、弾幕を展開して戦闘機を圧倒し、やがて撃ち落とす。その時、戦闘機は落とされまいと弾幕の間を縫うように飛ぶとされている。

 その話を聞いた当時、戦闘機の操縦者はどんな気持ちでいるのだろうかと考えた事があったが、どんなに考えてもその答えを見つけ出す事はできなかった。だが今、その答えが出た。操縦者は、自分の命を奪おうと迫り来る弾に恐怖しながら、飛んでいたのだ。今の自分のように。

 

「これが戦闘気乗りの気持ちなのかしらッ……」

 

 呟き、思わず苦笑いしてしまったその時。早苗は重い石や鉄で背中を思い切り叩かれたような衝撃を感じて、空中でつんのめった。「被弾してしまった、背中に剣が刺さった」とわかるより先に息が詰まり、思い切り姿勢が崩れた。

 その次の瞬間、右腕、左腿に同じような衝撃と激痛が走り、そこの感覚が消えた。

 また、刺さった。

 被弾、してしまった。

 

「うああッ!!」

 

 思わず悲鳴を上げた直後、姿勢制御が効かなくなり、動かない身体はそのまま落下し、やがて地面に激突した。その際、剣が刺さった時とは比べ物にならないほどの強い痛みが全身を駆け巡り、早苗は声にならない叫び声を上げた。

 直後、上から声が聞こえてきた。

 

「早苗ッ!!」

 

 いまいちよく聞こえず、早苗は痛みを堪えながら首を必死に動かして上を見た。

 そこでは、霊夢と文が回転する黒くて長い何かに追い回されながら飛んでいる姿があった。多分あれは、獣が放った剣と同じものだろう。しかも誘導性能付で、一度狙われたらそう簡単に離す事が出来ないものらしい。

 息をする度に走る全身の激痛に、早苗は耐えられなくなって、首を元の位置に戻して地面にもう一度倒れた。その時にも激痛が走って、早苗は顔を思い切り顰めた。

 右腕と左足の感覚がないし、動かそうとしても動かない。どうやら、その部位を切り取られたのと同じような状態になっているようだ。

 度重なる激痛のせいか、頭がぼんやりして何も考えられない。例えるなら、頭の中が高温で熱せられて溶けたチーズみたいになっている。

 

 私は今、どんな状況下に置かれているの?

 私はこれからどうなるの?

 これから、どうなってしまうの?

 

 ぼんやりと考えていると、どすんと重い何かが地を踏むような音が前から聞こえてきた。

 何だろうと思って首を動かしてみれば、少し遠く離れたところに赤く目を光らせ、口から涎を垂らし、白いオーラを纏った、白い毛並みの獅子のような形をした獣がその身体の近くに剣をいくつも浮かばせながら、こっちをじっと見ている。

 

(妖怪……)

 

 そう思った時、正気が戻ってきた。自分がこれからどうなるのか、わかった。

 自分は殺されるのだ。あと少しで、あの獣の餌食になって、死ぬのだという容赦のない思いが胸と脳裏を貫いた瞬間、腹と胸の底から震えが来て、涙があふれ出てきた。

 

「や……やだ……」

 

 まだ死にたくない。ここで死んだら、何のために幻想郷に来たのかわからない。

 何のために外の世界を捨ててここまで来たのか、わからない。

 まだ、死にたくなんかない。

 こんなところで、こんなふうに、みじめに終わりたくない。

 

 早苗は身体を動かそうと、力を込めた。しかし、左足と右手が動かず、立ち上がる事も、ろくに動く事も出来ない。無理に動かそうとすれば、激痛が来て、気が狂いそうになる。

 

「あ……あぁ……あぁぁ……」

 

 もう、この場から逃げる事は出来ないのか。

 大人しくあの妖怪の餌になるしかないのか。

 どうすることもできないのか。

 そう思った時、ふと自分が六歳の頃、雨でスリップした車に撥ねられそうになった時の事を思い出した。本来ならば、あの時で自分は死んでいたんだろう。どうする事も出来ず、車に撥ねられて、死んだだろう。……だが、自分は死ななかった。

 それは何故か。あの時、あるものが、自分の事を守ってくれたからだ。自分の事を、助けてくれたからだ。

 それは、自分がうんと幼い頃に読み始めてはまった絵本に登場し、それを読んで以来その存在を信じてやまなくなったもの。本当に存在していた事に心底驚かされたもの。

 その後自分と友達になってくれ、本当の子のように育ててくれ、親のように接させてくれ、いつだって自分の味方でいてくれたもの。

 

 近頃、会いたくて仕方がないもの。

 

「……す……け……て……」

 

 その姿が頭の中に鮮明に映るや否、早苗は力を振り絞り、目を思い切り瞑って叫んだ。

 

 

「助けて神獣様――――――――――――――――――ッ!!」

 

 

 叫び声は草原全体に木霊し、早苗は目を開いた。

 直後、叫びに驚いたのか、前にいる獣が再び無数の剣を飛ばしてきた。まるで暴風雨のような剣の群に、早苗は唯一動く左手で頭を抱えるしかなかった。

 

 飛んできた剣が当たると思ったその時、ふっと目の前が暗くなった。鉄が鉄に弾かれるような音と、何かが爆発したような音が聞こえてきたが、それは小さく、聞こえてきてすぐに消えた。

 まるで無風の中にでも入ったかのような静けさに、体を包まれているような気がした。そして、暖かかった。

 何が起きたのだと思って目を開けると、そこには上から垂れ下がる、白銀に輝く毛のカーテンがあった。首を動かしてあちこちを見回したが、どこを見ても白銀に輝く毛のカーテンしかなかった。

 

「あれ……これって……」

 

 戸惑っていると、突然毛のカーテンが音を立てて動き出し、カーテンの外の景色が映り込んできた。まず見えてきたのは地面に横たわる獣だった。

 いつの間にか、獣が倒されている。しかも、その身体はまるで強い電気に当てられたかのように焼け焦げている。

 

(どう……なってるの……?)

 

 その時、早苗は強い視線を上から感じた。―――何かが、じっと上から自分を見ている。

 早苗は痛む身体を動かし、視線を感じる上を見て、早苗は唖然とした。

 

 そこにあったのは、人の髪の毛のような性質で蒼色が少し混ざった白色の鬣を生やした、白金色の毛に身を包んだ巨大な狼の顔だった。

 その狼の顔を見た途端、早苗は思わず呟いた。

 

「……神……獣……様…………?」

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。