μ'sのメンバーが全員ヤンデレだったなら   作:コルセット

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第六話

凛ちゃんを退ける事に成功して、リビングへと向かう。

どうしようもない気持ちが、僕を蝕んで行く。

自然と足並みが速くなってしまう。

リビングに置いてある麦茶の容器からグラスへと注ぎ込み、一気飲みする。味なんて到底分かるはずもない。

ただ、乾き切った口を潤すために飲み込む。何かに逃れるように。

予想はしていた。少々ながらもこんな感じなんだろうと思い込んでいた。もっと軽いぐらいに捉えていた。そんなに昔からなんてどうやって予想出来る?

僕の中をグルグルとその事実だけが回る。どうすれば元のように戻れるのか分からなかった。

元のように、笑って過ごしたい。みんなの事を好きでいたい。

ただそれだけだった。きっと、そう。

 

「なに悩んでんのよ?」

「っわ!」

 

すぐ後ろから喋りかけられる。びっくりして振り向く。

不思議そうに僕を見る真姫ちゃんの姿があった。

持ち場を終えたのだろうか。

 

「ああ、びっくりした。布団干し終わったの?」

 

なるべく、普段通りに装う。あの時を分析するなら、全員がそうである可能性があるため普段を崩してはいけない。

表情もいつものように明るく振る舞う。

 

「……そうね。終わったわよ」

「速かったね。かよちんの方はどうだった?」

「もう少しかしら」

 

そう言って僕の対面にあるソファに座った。僕もゆっくりとイスに腰掛ける。ふぅと溜め息を吐く。

 

「あ、真姫ちゃん何か飲む?麦茶と紅茶ならピッチャーに入れてあるけど」

「そうねぇ。紅茶を貰おうかしら」

「了解っと」

 

立ち上がって、冷蔵庫からピッチャーを取り出す。グラスに氷を入れて注ぐ。ガムシロップとフレッシュミルクを持って運ぶ。

 

「どうぞ。ガムシロとミルクは好みで入れてね」

「ありがと」

 

自分の席に戻る。ついであった麦茶を飲む。

あれ。こんな味しただろうか。それとも落ち着いたから?

まあ、いいかと思い飲み干す。

それと同時に真姫ちゃんが立ち上がってこちらに来る。

 

「どうしたの?真姫ちゃん。麦茶の方を飲む?」

「いらないわ。ねえ、湊」

 

僕に全体重をかけるかのようにしなだれる。きめ細やかな髪が舞う。

顔が僕の肩に置かれる。何とも言えない、女の子特有の甘い匂いが鼻をくすぐる。それと同時に程よい柔らかさが僕の感覚を襲う。

 

「湊。その麦茶、変な味がしなかったかしら?」

「え、そう言えばそんな気がしたような」

 

聞かれて答える。今の状況をはぐらかされた気がする。

慌てて聞こうとするが、できなかった。

 

「それ媚薬入れたのよね」

「は?媚薬?」

 

何言ってるのか分からない。でも冗談だとは思えないほど真剣だ。

もし、いや本当に入ってるのか?分からないままだ。

 

「どうやら信用してないみたいね。ほら、これよ」

 

瓶の中に入っている液体を見せてくる 。中は蛍光色の黄色のような色をした液体が入っていた。

どうやら本物らしい。それに真姫ちゃんは手に入れる事が出来る。

何だか体が熱い気がする。まずい、効いてきたかも。

 

「じゃあ、どいて?真姫ちゃん」

「いやよ。チャンスじゃない」

「ダメだって。真姫ちゃんが許しても、僕は僕自身を許せないよ」

 

こんな事で僕は彼女を傷付けたくない。僕の意思じゃないんだ。

彼女にそんな事させたくない。いや、彼女達にだ。

熱さがまして行く気がする。感覚が敏感になってるのか。

 

「関係な……」

 

刹那、電話のベルが鳴り響いた。真姫ちゃんは少し顔をしかめると僕から離れる。何が起きてるんだ。それと同時に電話は鳴り止んだ。

 

「はあ。もう少し緩くてもいいじゃない」

「え?何が?」

「何でもないわ。それと、媚薬は嘘よ」

 

何だそれ。嘘って、体が熱くーーってまさか。何処かで聞いた気がするなんだったかな。聞いた覚えがある。

 

「プラシーボ効果よ。前に教えたでしょ?」

 

確か、思い込み効果のような物だったろうか。詳しくは覚えていないけど。前にそんな会話をした気もする。

 

「それよりも。湊の言葉は裏を返せば、同意の上なら良いのね」

「そんな事言ったかな。忘れたよ」

 

惚ける。勢いもあったが、あの場の雰囲気ではそう言うしかなかった。その事が事実で有ったとしても。

真姫ちゃんはそう、と言って僕に近づく。

 

「何を悩んでいるのか知らないけど、私には関係ないわ」

「え、悩んでなんて……」

 

普段通りを装う。知って欲しくないし、知らないままでいい。

きっと、それが一番良いに決まってる。

すると、真姫ちゃんは僕の耳に口付けをする。そして、そっと耳打ちした。

 

「だって、そんな事考えなくても良いぐらい一緒にいればいいのよ」

 

僕のポーカーフェースは脆くも崩れ去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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