ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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祝日は早く書ける。文字数多くなったけど
アーシアさんヒロイン力高すぎ。後悔はしてない


悪魔契約しに行きます!

 「ったく、何が悲しくて悪魔契約なんざやらなきゃならないんだよ。それもこれも全てリアスとソーナのせいだ」

 

 「ははは……」

 

 時刻は既に深夜。現在俺と摩耶さんは悪魔契約という物を行う為に、薄暗くなった道路沿いの道を歩いていた。

 

 悪魔契約というのは、悪魔の事を知っている一般人に頼まれた依頼を実行し、成果がよく満足してもらったらそのまま契約を取るといったものだ。

 

 「契約取れたらいいことあるんですか?」

 

 「知名度上がるだけじゃねえの?全然したこと無いから俺も知らん」

 

 何とも適当な受け答えだったが摩耶さんは本当に知らないらしく、ポケットから出したケータイを操作しながら、

 

 「くそったれ、もうこんな時間かよ。リアス達がはぐれ悪魔討伐に行くから、代わりに今日の依頼人とコンタクト取れなんざ面倒くさい事言いやがって。リアスもリアスでベッド人質にとるなんざ反則だろ。俺アイツいなかったら生きていけないんだからな」

 

 明らかに苛つきながら愚痴を漏らし、目的地に向かって重い足どりで進んでいく。

 

 さっき摩耶さんが言った通り、俺達はあくまで代理人として依頼人の所へ向かっていた。

 

 リアス先輩達は『はぐれ悪魔』と呼ばれる主のもとを離れた悪魔を討伐する用事が出来たため、摩耶さんに今日の依頼を押しつけたのだ。

 

 その時のこの人の第一声はーーーー

 

 

 

 『イヤだよ面倒くさい。俺今まで契約とかしたこと無いんだから。理由?訊かなくても分かるだろ?』

 

 

 

 だった。

 

 隣で一部始終を聞いていた俺はため息を吐き、呆れていた。

 

 所がリアス先輩が生徒会長の名前を出し、応じなければ相談部にあるベッドを即刻撤去する、という脅しを掛けた瞬間、摩耶さんは二つ返事でリアス先輩からの頼み事に応じた。

 

 この人ベッドを人だと思ってるよ。だって人質って言ってたんだぜ……物を人扱いするなんて、この人はどれだげベッドが大切なんだよ。多分この世を探しまくっても、ベッド一つのために頑張る人なんて摩耶さんぐらいしかいないんだろうな~。

 

 「……お前今俺の事心の中でディスってるだろ」

 

 「そ、そんなわけないじゃないですか!」

 

 怖ええええええええェ!またこの人心読んできた!これからは摩耶さんの前であまり行き過ぎた考えをするのは止めとこう。

 

 どうにかして話題を変えようとネタを探すため

、脳の回転を全力で上げる。そして一つの疑問が見つかった。

 

 「摩耶さん……訊きたいことが」

 

 「今度は何?」

 

 「さっきも部室でいったとおりシスター……アーシアに会ったとき変な頭痛がしたんですけど……何でか分かりませんか?」

 

 「変な頭痛だぁ?」

 

 摩耶さんはしかめっ面で俺を見下ろし、唸りながら原因を頭の中から探し出してくれた。

 

 「そうだな……お前の事だからどうせその金髪シスターちゃんと出会わせてくれてありがとう神よ!みたいな事思ったんじゃねえのか?」

 

 「うわ……ビンゴです」

 

 相変わらず摩耶さんの洞察力は恐ろしい物で、おれの疑問に対して適切な答えを返してくる

 

 しかも珍しく分かりやすい!

 

 「俺達は一応悪魔だからな。まったく正反対の性質を持っている神の事を慕う素振りを見せると頭痛が襲ってくる訳だ」

 

 なん、だと……あの摩耶さんが一度ならず二度までも理解しやすい回答を!?天変地異でも起きるんじゃないか?

 

 「お前やっぱり俺のことーーーー」

 

 「全然馬鹿にしてないですよハイ!」

 

 「……まだ何も言ってないんだか?」

 

 しまったァァァァアアアアア!!この人さりげなく俺を誘導しやがった。策士……策士だ!もう一度言おう。策士だ!

 

 「くそったれ……後輩にはバカにされるわ面倒くさい歩行運動しなくちゃならないわ……もっとすぐに行ける方法は無いのか?ったく」

 

 「あ……その事何ですけど摩耶さん」

 

 「あ?」

 

 俺はポケットに手を突っ込み、リアス先輩から受け取った紙を出す。

 

 何故俺がリアス先輩からこんな紙を貰っているかというと、本来は摩耶さんに渡すはずがこの人は依頼を引き受けた後、ふてくされて寝てしまったのだ。それで仕方なく俺がもらった。

 

 今の今までその存在を忘れており、摩耶さんの発言で思い出した。

 

 「リアス先輩が言ってたんですけど、その紙に魔力を込めると魔法陣?みたいのが発動して一気に依頼人の所まで行けるらしいです」

 

 「お前それ先に言えやーーーー!!」

 

 そう言うと摩耶さんは俺の体に目掛けて容赦ない打撃をぶち込んできた。

 

 ……この人絶対ベルト取れるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……………何でこんな面倒くさい事に巻き込まれなきゃならないんだよ、ったく」

 

 もう何度目か分からない摩耶さんの愚痴が部屋の中で木霊する。それほど部屋の中は静まり返っているということだ。

 

 というか何でこの人こんな非現実的な光景目の当たりにして平常心保てるんだよ。こっちは吐き気催して油断すれば胃の中身全部ぶちまけてしまいそうだ。

 

 あの後摩耶さんは直ぐに魔法陣を展開し、依頼人のマンションにワープした。そのままエレベーターで依頼人の部屋まで行き、ドアが半開きになっているという見慣れない光景が目に入った。

 

 嫌な予感がしたが依頼をすっぽかす訳にも行かず、一応声を掛けてから部屋に入った。

 

 ところが返事は帰ってこず、予感は更に強味を増し、早足でリビングに向かった。

 

 そしてそこに広がっていた光景はーーーー

 

 

 

 男の人が見るも無惨な姿で頭が下の方に向けられて吊されていた。

 

 

 

 駄目だ……これ以上この場にいたら気がおかしくなりそうだ。

 

 「頼むから吐くなよ。血みどろで汚い部屋が、お前のゲロで更に汚くなるなんて考えたくもねぇ」

 

 摩耶さんはそう言うと男の人……恐らく依頼人だった人の所まで歩を進める。途中パシャパシャ、と水たまりを踏んだときと同じような音が響き渡る。だがこの場に広がっているのは真っ赤な鮮血。出ている量は、俺が自ら頭をかち割った時とは比べ物にならないほどだ。

 

 「まだ血は渇いていない……このオッサン、死んでからそんな時間経ってないな」

 

 冷静に状況整理をする摩耶さんが少し異常に感じ、同時に頼もしくなってくる。多分この人がいなかったら狂ってただろうな俺……。

 

 「それにしてもあまりよろしくない趣味だな。逆十字架……教会へのささやかな反乱か?」 

 

 そう言って摩耶さんは隣にあるソファーに目線を配る。声のトーンも下がっており、たちまち小猫ちゃんと闘う前の摩耶さんを思い出す。

 

 一体誰に言って……?

 

 

 

 「イヤ~~~~、オレっちとしては観てるだけで絶頂マックスになる最高傑作なんだけどね~。お気に召さなかった?」

 

 

 

 摩耶さんの視線の先にはおちゃらけた返事を張本人ーーーー神父服を着た青年が座っていた。

 

 髪色は小猫ちゃんを思わせる白髪。歳は恐らく俺とあまり変わらないであろう外国人的な顔立ち。

 

 しかしその男の雰囲気は明らかに異常だった。

 

 同じ聖職者であるアーシアから感じ取れた優しい雰囲気が、コイツからは感じ取れない。寧ろこれ以上コイツと対峙したくないと思わされる程禍々しいオーラ。

 

 コイツがしたのか……これ?なんでだよ、神父だろ?なんでこんな非人道的な事やってんだよ。しかも自ら進んで……愉しんで。

 

 「はぐれ神父か……道理で腐った性根してる訳だ」

 

 「あり、そんな事言っちゃう?君達悪魔だって同じような奴らでしょ。そんな奴らに頼るこのオッサンも同罪さ~。だから断罪してやった。何も可笑しいとこなくね?」

 

 「否定はしない……。実質権力に酔っている悪魔はゴロゴロいるからな。だがお前のように、凶気を剥き出しにしてるバカはいないがな」

 

 神父は摩耶さんの発言がカンにさわったのか、ソファーからゆっくり立ち上がると摩耶さんにガンを飛ばした。

 

 「バカって誰の事言ってるの?もしかしてオレっち?言葉選ばないと怪我するぜぇ」

  

 「どっちにしろやりあう気満々だったろテメェ。やるならやるでさっさとしようや。こちとら無駄足だった挙げ句、こんなふざけた面倒事に巻き込まれてよ~。帰ってさっさと寝たいんだわ」

 

 互いに殺気と凶気を撒き散らしながら、戦闘が始まるまでボルテージを徐々に上げていく。そんな気すらするほど場の空気が目の前の男二人によって支配されていく。

 

 そのまま十秒近く戦闘は開始されず、先に痺れを切らしたのはーーーー

 

 「はい死刑ケッテェェェェェエエエ!ぶっ潰れろコラァ!!」

 

 神父がどこから取り出したのか、筒のような物を右手に、拳銃を左手にもって摩耶さんに飛びかかっていった。

 

 そのまま右手を振り上げると、筒の先から光の刀身が現れ、摩耶さんの命を狩りに行こうと垂直に振り下ろされた。

 

 な、なんだよあれ……。アニメの世界じゃないんだから!

 

 「摩耶さん!!」

 

 俺は思わず摩耶さんに警戒してほしいように叫び声を上げる。

 

 あんなの当たったら多分摩耶さんでも……!!

 

 しかし俺の気遣いは取り越し苦労となった。

 

 昨日摩耶さんが小猫ちゃんとの戦闘で魅せてくれた鮮やかな体裁きで刀剣を避ける。直後摩耶さんは左上段蹴りを神父に向けて叩き込む。

 

 「当たらねえよ、んなモン!」

 

 神父も同様に、摩耶さんの蹴りを冷静にスウェーバックで避ける。

 

 そんな……摩耶さんの蹴りがあんな簡単に……!

 

 「心配すんなよイッセー。元から当てる気なんざねぇからよ」

 

 摩耶さんが俺の方に視線を向けまたもや俺の心を読んだのか、安心させようと俺に声を掛けてくる。

 

 ていうかまた余裕見せてますけど大丈夫なんすか!?斬り刻まれますよ!

 

 「テメェ……調子こいてんじゃーーーーグッ!?」

 

 突如神父が呻き声を上げ、銃を持ってる左手の甲で目を擦る。その隙を逃さず摩耶さんは左足を地に着けた後、小猫ちゃんのお株を奪う右後ろ回し蹴りを神父に浴びせる。

 

 「ガッ、ハッ…!」 

 

 見事としか言いようがない蹴りは鮮やかに神父の胴体を捉え、自らが磔にしていた男の人の所まで吹っ飛んでいく。

 

 「摩耶さん……何かしたんですか?」

 

 「回し蹴り」

 

 「その前です!」

 

 俺が訊きたいのは神父が目を擦るハメになるまでのプロセス、過程が知りたかった。なんでアイツは急に目なんか気にし出したんだ……ゴミでも入ったのか?それとも摩耶さんが何かして……。

 

 「ほら、俺今もだけどずっとオッサンの血の上に立ってんじゃん。それで靴に付着した血、アイツの目ん玉めがけて振りかけてやったんだよ。不謹慎だけど」

 

 そう言って摩耶さんは男の人の方を向くと申し訳なさそうに頭を垂れ、目を瞑った。

 

 黙祷か……摩耶さんもこの人が理不尽な理由で死んだことに何も思ってなかった訳じゃなかったんだな。せめて安らかに……。

 

 「立てよクソ神父。お前の事はそんなに嫌いじゃないが、こんなふざけた真似した落とし前つけてもらわなくちゃならないからな」

 

 顔を上げ、閉じていた目を開けた摩耶さんはいつにもましてキレていた。ここに来るまで俺にあたっていたレベルとは段違いで、今にも神父をボコボコにしそうな勢いだ。だが敢えてしない。ボコらない。なぶり殺しにするつもりだろうか……?

 

 「ハァ、ハァ……ふざけやがって!よりによってこんなキタねぇオッサンの血ぶちまけやがって!テメェだけは絶対に殺す!」

 

 「やってみろよコラ」

 

 摩耶さんが手招きで神父を挑発する。その行為で完全に血が上ったのか怒りの形相を露わにし、とても聖職者とは思えない言葉を吐きながら剣を振るう。しかしーーーー

 

 「クソっ!なんで一発も当たらねえんだよ!素直に俺に斬り刻まれろよこのクソ悪魔!!」

 

 全ての斬撃は摩耶さんの体を捉えることは無く、空気を切り裂く音しか聞こえない。どんな状況下であっても、いつもと同じ技術を披露している摩耶さんを観て、ここが殺伐とした空間である事を一瞬ながら忘れてしまっていた。

 

 「えいっ」

 

 どこかで聞いたことのあるセリフを言いながら摩耶さんは横になぎ払われた剣をしゃがみ込んで避け、体制を変えずに回転しながら神父の足に目掛けて蹴りを放つ。

 

 あれは、小猫ちゃんが摩耶さんに一矢報いた水面蹴り!

 

 「なっ!?」

 

 神父は左足をはじかれ、驚愕の声を上げると同時に体制が左斜め下に傾く。摩耶さんはそのまま勢いを殺さずに回転動作の途中で立ち上がって行くと、その勢いを利用した悶絶モンの右上段蹴りを神父の顔にめり込ませる。

 

 「フボッ!?」

 

 情けない声を出した神父は先程回転蹴りをくらった時と同じ様に宙を舞う。そのままリビングの出入り口付近に不時着し、重いものを落とした時と同じような音が響く。

 

 「もう一度言ってやる……立て」

 

 未だ怒りは収まらないのかまだ神父を殴りたい

、といったような発言をかます。それに影響されたのか神父は剣を杖代わりにして、震える足を支えながら立ち上がる。神父も相変わらず形相を変えず、その怒りの色は更に濃くなっていくように感じた。

 

 「殺す……殺す……テメェだけは絶対に俺が殺す!」

 

 恐ろしい言葉を発しながら神父は摩耶さんを睨みつけ、そのまま拳銃を摩耶さんにつきつけた。

 

 しかしその銃の引き金が引かれることはなかった。なぜならーーーー

 

 

 

 「な、何をしているんですか!?フリード神父!」

 

 

 

 この部屋に本来来るはずの無い人物が乱入してきたからだ。

 

 修道服に身を包み、金髪を靡かせて部屋に入り込んだ少女はあの時出会った、

 

 「アー……シア?」 

 

 俺の心を射止めたアーシア・アルジェント本人だった。

 

 「イッセーさん?どうしてここに…………キャャャャャャャ!!」

 

 アーシアは甲高い悲鳴をあげ、その場に尻餅をついた。無理もない……こんなグロテスクな光景は女の子が見るものじゃない。

 

 「アーシアちゃぁぁぁん。何?君もしかしてこのクソ悪魔の知り合いな訳?悪魔と聖女の禁断の恋ってやつですかぁぁぁぁぁ!?」

 

 今まで摩耶さんに視線を向けていた神父ーーーーアーシアにフリードと呼ばれていた男は俺の方を向き、凶気を孕んだ目つきで俺を睨む。

 

 一瞬その眼差しに怖じ気づいてしまった俺は体

を震わす。

 

 コイツ……目つきが既に人間の持ってるソレじゃねえ!もっと違う何かだ!

 

 そんな事を考えさせられる程、目の前の神父は狂っていた。そして摩耶さんに向けていた銃口を今度は俺に向け、

 

 「なんかムカつくから最初にお前から殺してやる……その後俺をこんなに殴ってくれた超絶クソ悪魔をーーーー」

 

 「も、もう止めて下さい!フリード神父!」

 

 今まで腰を抜かしていたはずのアーシアが俺の前に立ち、庇うように両手を広げてフリードを見据えていた。

 

 「……何してんのアーシアちゃん?もしかしてその悪魔庇う気?」

 

 「イ、イッセーさんは悪い人じゃありません。この人はいい人です……」

 

 「ハアァァァァァ!?何言ってんのお前!?悪魔にいいもクソもあるかよダボォ!」

 

 フリードはそう言うとアーシアの華奢な体に蹴りを入れ、おもいっきり壁に叩きつけた。

 

 「アーシア!テメェ……何しやがる!」

 

 「ザコはそこで黙ってろ!」

 

 直後、俺の足に今まで感じたことのない凄まじい痛みが走った。

 

 「グッ、ガァァァァァア!?」

 

 「イッセー!この野郎……!」

 

 「おっといいのかい?それ以上動くとこのいけ好かないザコ悪魔君の首斬り落としちゃうよ?」

 

 摩耶さんは俺に向かってこようとしてた足を止め舌打ちをし、歯が砕ける程の勢いで歯をくいしばる。

 

 くそっ……よりによってこんな時に足引っ張っちまった。てゆうか俺何されたんだよ?

 

 血が噴き出している足を見てみると、両太股にさっきまで無かった穴が一つずつ空いていた。

 

 もしかして……撃たれたのか?でも、発砲音がしなかったぞ!?なんでこんな怪我してんだよ!

 

 「あのさ~アーシアちゃぁぁぁん。俺達はぐれの仕事は手を汚してなんぼなの。それなのにまだ信仰とか信じちゃってるわけ?ふざけるのも大概にしろよコラァ!」

 

 アーシアが……はぐれ?そんな事、あるはずが無い!きっと騙されてるだけなんだ!

  

 アーシアを蹴り、殴り、髪を乱暴に扱うフリードを見て、沸々と怒りが湧いてきた。足に力を入れようとしても、痛みと出血で立ち上がれない。

 

 くそっ、くそ!何でこんな時に限って役立たずなんだよ俺は!

 

 「それにしてもムカつくわ~。どうやって発散しよ……そうだ!ーシアちゃんスタイルそんなに良くないけど、顔だけは一級品だからな~。ここらでいっちょパクリと食べちゃうってのもありかな~!初めてが俺みたいなはぐれとだなんて凄く興奮するでしょ!?きっと世間の皆様もそう思うだろうぜ!!」

 

 「い……イヤ!そんなの……イヤ!!

  

 涙を浮かべて必死の叫び声を上げているアーシアと、そんな風にしたフリードを見てて俺の心境はーーーー

 

 

 

 「…………せよ」

 

 

 

 完全にプツンときた。

 

 「あ?」

 

 「………なせよ」

 

 さっきまで使い物にならなかったはずの足に無理矢理力を込めて、フリードと同じ目線の高さに合わせようとする。

 

 「何ぃ?聞こえねぇんだけど~。クソ悪魔の最期の足掻きって奴?さっさとくたばっちまえば楽になってたのによ~。」

 

 フリードが最初と同じおちゃらけた口調に戻っていたが、耳に入ってこない。聞こえるのは皮肉にも、アーシアの泣き声だけ。

 

 動け……!動けよ俺の足!今だけでいいんだ。アイツに一発ぶち込むだけの働きをしてくれるだけでいいんだ!

 

 震える足を無理矢理伸ばし、片手を壁につけながらも不様に立ち上がった。

 

 気を抜くとまた膝着いちまいそうだ……!

 

 「イッセー……さん」

 

 アーシアが涙を溜めた目でこちらを見てくる。その眼差しは明らかに助けを求めていた。

 

 待ってろ……今助けてやる。

 

 「カッコイいィィィィイイ!!まさか本当に立つなんざ思わなかったわ!まさかお前本気でこのクソビッチに惚れてんの!?」

  

 そうだよ惚れてるよ悪いか……あとアーシアはビッチなんかじゃねえ。ますます腹が立ってきやがった。

 

 血で滴る足を一歩前に踏み出し、フリードへの距離を詰める。あのムカつく顔面に絶対一発入れてやる。だから今だけの辛抱だ……!

 

 痛みでどうにかなってしまいそうな意識を必死につなぎ止め、惚れてしまった女の子を助ける為に俺はーーーー

 

 「離せっていってんだよクソ野郎ォ!!」

 

 これでもかというほどの強さで床を蹴り、クソ神父に向かって突貫する。

 

 「ハ!?何で動く事が出来るんだよお前!!」

 

 うるせぇ!こっちだってなぁ、いっぱいいっぱいなんだよ!今でも二度と立ち上がれなくなりそうなぐらい足が限界なんだよ!

 

 それでも……それが理由で惚れた女の子助けられませんでした、じゃ話にならねぇんだよ!決めたんだよ!もう二度と大切なモン護れない男にはならないってな!それほどアーシアは今の俺にとって……

 

 

 

 大切な存在なんだよ!

 

 

 

 「ぶびぁ!」

 

 フリードの顔面に念願の左ストレートを打ち込み、アーシアから離れさせる。アーシアはそのまま力無く床に倒れ込んだ。生憎支えてやる程の力は今の俺にはなく、片膝を地面に着かせた。離れた所で摩耶さんが口笛を吹く音が聞こえる。

 

 どうでしょ……今の俺、かっこよかったっすか?

 

 「イッセー……お前やる時はやるんだな。正直俺も立てないと思ってた」

 

 「ひどい!!」

 

 「悪かった悪かったって。お前の想いがどれだけすごかったかはその左手が証明してるよ」

 

 「…………え?」

 

 摩耶さんに言われて左手に目をやると、オカルト研究部で見た赤い篭手がいつの間にか装着されていた。

 

 そっか……俺の想いに応えてくれたのか。ありがとう……。

 

 そんな事を思っていると、一つの魔法陣がこの部屋に展開された。色はリアス先輩の髪と同じ紅の色……まさか!

 

 「助けに来たわよ摩耶!……ってもしかしてもう終わった?」

 

 「んにゃ、一応まだ終わってない」

 

 はぐれ悪魔を討伐していたはずのリアス先輩逹が駆けつけ、現在の戦況を摩耶さんが一言で説明する。

 

 まだ……終わってない?

  

 俺はフリードをぶっ飛ばした方向へ視線を移すと、ボロボロになりながらも立っているフリードの姿があった。両頬は俺と摩耶さんにボコられたせいか、真っ赤に腫れ上がっていた。

 

 「逃がすと思ってんのかタコ……!言っただろ、テメェラだけは絶対に俺が殺すってなぁぁぁ!」 

 

 雄叫びを上げながらフリードが今までと比べものにならない速さで俺に接近してくる。

 

 まずい……!もう体がまったくもって動かねえ!やられる……!

 

 フリードが剣を掲げ、俺の脳天目掛けて真っ直ぐに振り下ろしてくる。『もう駄目だ……!』と自分の死期を予期し、目をつむったその刹那、

 

 「あ!?何なんだよこれは!?」

 

 フリードの口から予期せぬ言葉が発せられた。

 

 一体何が起こったのかと目を開けてみると、

 

 

 

 剣を天空に向けてる状態で、ピクピクと痙攣しているフリードの姿があった。

 

 

 

 「う……動かねぇ。何だよこれ、何なんだよこれはぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 何が起こったのか理解できないフリードはただただ大声を上げ、唯一動く首だけを動かしていた。その素振りから、必死に体全体を動かそうとしているのが分かる。

 

 この現象は……確か小猫ちゃんと闘ってる時にもあった……。

 

 思わず摩耶さんの方を見てみると、いつの間に

か両手には小猫ちゃんとの戦闘の時に使っていた黄土色のグローブが着けられていた。そのグローブは心なしか、少し光っているようにも見えた。

 

 あれって…もしかして神器?

 

 「部長!もうすぐここに堕天使の者逹が来ますわ!これ以上の長居は……」

 

 「そうね……。皆!一時退却するわよ!」

 

 一時退却?それって逃げるって事か?確かに今はそれが最善の手かもしれない。何か堕天使が来るって言ってるしな。…………って!

 

 「アーシア……アーシアはどうなるんですか!?」

 

 俺は最も気にしている疑問をリアス先輩に問いただす。リアス先輩は少し顔をしかめ、

 

 「残念だけど、この魔法陣は私の眷属しか転移出来ないのよ。あなたは摩耶に送ってもらえばいいけど……」

 

 「そんな!アーシアを置いていくんすか!?こんな所にアーシアを置いていったらーーーー」

 

 「イッセーさん」

 

 すぐそばにいるアーシアから声を掛けられ、振り向くと俺の手に自分の手を重ねているアーシアの姿があった。

 

 「私は大丈夫ですから……行ってください、イッセーさん」

 

 「でも……!」

 

 「いつかまた……きっと会えますから」

 

 「……ッ!」

 

 アーシアの作った精一杯の笑顔に、俺は胸を痛めた。

 

 俺はこの子のこの笑顔が見たかったんだ。見たかったからこそ、このクソ神父に一発入れてやったんだ。なのに最後の最後で護りきれなかったなんて……!

 

 自虐的な気持ちになっていると、俺の足下に魔法陣が展開される。リアス先輩のとは違い、摩耶さんの髪色と同じ黄土色……まさか!

 

 「逃げるだぁ?冗談じゃねえ。こちとら不完全燃焼なんだよ。キッチリ決着つけるまで引き下がれるかってんだ」

 

 声の主はその言葉から分かるように、未だ闘気が萎えておらず、寧ろ段々と濃くなっていくように感じた。言うまでもなく俺の主だ。その人が今俺の目の前まで歩いて立ちふさがる。俺を護るように……。

 

 「摩耶さん!!」

 

 「お前らは先に帰ってろ。コイツは俺が片す」

 

 「摩耶!直ぐに堕天使の軍勢がここに到着するのよ!ここは一回態勢を立て直して……」

 

 「一人が多数になるだけだろ。寧ろそっちの方が暴れやすくていい」

 

 リアス先輩の提案を速攻で拒否し、まるで戦闘狂のような笑みを浮かべる摩耶さんがそこにいた。

 

 「摩耶さん!!」

 

 「ぐだぐだうるせえなぁ。俺がそんな簡単にやられるタマだと思ってんのか?安心しろって。明日には帰って来てやるからさ」

 

 「でも……!」

 

 「うるせえってんだよ!俺だってなぁ、一人で気遣いなく心行くまで暴れたい時があるんだ!特に今みたいなくそムカつく状況であればあるほどだ。分かったらとっとと行け!このボケが!」

 

 こ、怖ぇぇぇぇぇえええええ!この人やっぱり自分の快楽邪魔されたら怒り狂う人だ。最初会ったときから分かってたけど。それにしても暴虐の限りを尽くす事が快楽だなんて、この人は時々理解できない感性をもってらっしゃる。

 

 俺は心の中で自分の力不足を歯がゆく思い、拳を握りしめる。俺がもっと強かったら摩耶さんに加勢出来たのに……。だけど今更そんな事を考えても現実は変わらない。だから今の俺に出来ることはたった一つ……!

 

 「絶対……帰ってきてくださいよ!」

 

 この人の帰りをひたすら待つこと。ただそれだけだ。

 

 摩耶さんは何も言わず俺に背を向け、親指を立てて見せてきた。

 

 ハハ、やっぱこの人超カッコイい……。

 

 「何カッコつけてんだコラァ!テメェら全員俺が殺す!逃がすわけねぇだろがぁぁぁ!」

 

 「そう焦るなよ。俺が相手してやっからさぁ」

 

 今にも暴れ出しそうなフリードを宥めるように摩耶さんが口を開く。しかしそれでこのクソ神父が落ち着くわけもなく、より一層凶気が強くなっていく。

 

 大丈夫だ…。摩耶さんは、こんな奴に負けるわけない!

 

 俺はそう確信すると、すぐ側で寝転がっているアーシアの手を少し強く握った。

 

 初めて出来た彼女に殺されてから、心のどこかで女を好きになるのが怖かったけど、そんな不安すら吹き飛ばしてくれた少女。その少女の双眸を見据えながら、

 

 「また……会おうな」

 

 「……はい!またいずれ……」

 

 再び会う約束を交わす。いつになるか分からないけど、また絶対に会える。この子の笑顔を見ると、何故かそう思わされる。

 

 摩耶さんがこちらを見て優しく微笑んでいるような感じがしたが、俺は最後までアーシアの笑顔から目を離さなかった。

 

 そして俺の足下にある魔法陣は段々と光の強さを増していき、

 

 

 

 俺の視界全体を黄土色の光で覆った。




摩「さて、邪魔者も居なくなったし、とっととやろうや」

フ「ああ、お前のその体全部斬り刻んでその顔を絶望の色で染めてやる!」

摩「いいねぇ。実は俺、お前の事そんなに嫌いじゃないぜ」

フ「悪魔に好かれてもうれしかねぇよ!殺す!!」

摩「面白ぇ……やってみろ!」

 天童摩耶が駒王学園から姿を消した。

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