ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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今日は少し早めの更新


シスターと出会いました!

 「いや~、それにしても昨日の勝負は結構危なかったな~。特に最後にしてやられた水面蹴り。小猫ちゃんがバテてなかったらやられてたかもな~。」

 

 『ハハハ』と高々に笑い、せんべいを頬張りながらマンガを読んでいる摩耶さんが急にそんな事を口にした。

 

 「でも摩耶さん、一発も反撃しませんでしたよね。手を出してたら即効で決まってたんじゃないですか?」

 

 小猫ちゃんには悪いが、今俺が思っていることをありのまま摩耶さんに告げる。それほど実力がかけ離れていたのだ。一度も命がけの戦いを繰り広げた事のない俺ですら分かるほど……。命がけで女子の着替え覗いた事はあるけど。

 

 「馬鹿かおのれは。女の子相手に本気で拳を振るう男がどこにいる。あそこにいたのはマスコット系ロリ少女と爽やかイケメン男子だけだったろうが。イケメン男子は簡単に女の子殴らないの。

Do you understand?」

 

 「爽やかイケメン?木場の事ですか……?」 

 

 「ギルティ!!」

 

 訳の分からない事を叫ぶと、摩耶さんは俺に向かって『せんべい』という名の必殺武器を投擲してきた。そしてそれは見事俺の額に深々と突き刺さりーーーー

 

 「ギャャャャャャヤヤヤヤヤヤヤ!!いきなり何すんすか!?」

 

 「因果応報」

 

 摩耶さんはそれ以上は語らないと言わんばかりにソファーから立ち上がり、読み終わったであろうマンガを棚に戻し、続きの巻を手に取った。

 

 何が因果応報だ!俺が一体何をした!?せんべい突き刺される程の悪態を俺はついたというのか!?

 

 「女子更衣室を覗くというハレンチ極まりない行為」

 

 「あれは男のロマンです!」

 

 「否定はしない」

 

 否定しないのかよ!じゃあ何でいちいち言った!?ていうかこの人また俺の心を読んだ。そんなに単純な奴なのかな俺って……?

 

 胸に溜まった虚しさを消すように溜め息を吐き、摩耶さんの向かい側のソファーに座る。

 

 「どうした?溜め息なんかついて……幸せが逃げていくぞ」

 

 「摩耶さんのせいですよ」

 

 「まあそう言うなよ。お詫びに何か相談に乗ってやるから。相談部だけに」

 

 「それなんにもうまくないですよ。元より俺達ってそういう活動する部活でしょ?」

 

 「一言多い奴め……分かりましたよ~。貧乏神は何もせずに大人しくしときますよ~」

 

 ふてくされたように摩耶さんがそう言うとソファーに寝転がり、さっきまで読んでいたマンガに再び没頭し始める。

 

 あ、拗ねた。この人少し子供っぽい所もあるな……扱いが難しい。おまけに欠伸までかます始末だ。このままではまた『眠い』なんて言いかねない。

 

 どうにかして機嫌をよくできないかと話題を探していたら、ふと朝にあった出来事を思い出した。

 

 「摩耶さん……少し相談がーーーー」 

 

 「嘘つけ~。大方俺の機嫌取りにこようとしてんだろ~。あ~やだやだ。」

 

 「いや真面目なことなんですから聞いて下さいよ!」

 

 俺はとっさに大声をあげて摩耶さんに口論した。その雰囲気から察したのか摩耶さんはこっちを向くと、

 

 「…………何?」

 

 とてつもなく面倒くさそうに語りかけてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り、今朝の登校時間まで巻き戻る。

 

 

 

 

 摩耶さんに課せられたトレーニングメニューをやり遂げ、千鳥足で学校までの道のりを歩いていく。

 

 相変わらず摩耶さんの設定したメニューはハードであり、学校が終わった後に出てくるはずの疲れが今ここで噴き出してきた感覚に陥る。そのためトレーニングが終わった後すぐ家をでて、一番乗りで教室に入った後泥のように眠るのだ。家で寝てしまったらそのまま起きずに遅刻してしまうからな。

 

 それにしてもあの人は毎日これ以上の運動をしているのか……信じられん!もしメニュー内容が今より濃密になったら俺死ぬんじゃない?本当にありそうで笑えない。

 

 しかしいずれこのメニューをそつなくこなすようになり、時間がたっていくにつれて摩耶さんのようになれるかもしれない、なんて事を思うと胸が躍る。

 

 昨日あれほど凄まじい強さを魅せられたのだ。自然とああなりたいと男なら思う事であろう。威風堂々としたあの姿、どんな状況に陥ったとしてもあらゆる手段を用いて脱出することが出来るほどの純粋な力。男相手なのに一瞬トキメいてしまったりしてしまうほどのかっこよさーーーー

 

 「って違う!俺は決してそんなことを考えていない!俺は間違ってもそっち方面じゃないぞー!!」 

 

 朝っぱらから特異な事を考えてしまい、近くにあった塀に頭部をこれでもかというほど叩きつける。周りから(朝早いせいかカラスなどの鳥類しかいない)冷めた目で眺められるが気にしない。こっちはそれどころではないのだから……。

 

 「やべ、さすがにやりすぎた。出血で意識が朦朧と……」

 

 冷静になったのと引き換えに大きな代償を払ってしまい、学校までたどり着けるのか怪しくなるほどの事態に陥ってしまった。

 

 くそっ、ここまでか……。こんな所で俺は死んでしまうのか?俺にはハーレム王になるという夢があるのに。せめて最期に可愛い女の子のパンツをこの目で見据えながら、

 

 

 

 「キャ!!あうう……どうしてこんな所で転けてしまうのでしょうか?」

 

 

 

 ーーーーえ?今何が起こった?一体どういった現象が目の前で発生したというのだ……?

 

 状況を整理しよう。

 

 現在俺の体力は絶望的状況、追い打ちを掛けるように大量出血の影響で意識が暗転寸前、最悪の事態になってしまう前にせめて女の子のパンツを見たいと所望した所存。そして神が贈って下さった俺へのご慈悲はーーーー

 

 

 

 目の前の美少女シスターの汚れなき純白下着を見せてくれたこと。

 

 

 

 うおおおおおおおおおおおおお!!本当に見れた。本当に見れたぞ!可愛い女の子のパンツを……男にとっての桃源郷を!!

 

 思わず自分の体調が優れていないにも関わらず、男を本能のみで無理矢理テンションを上げる。

 

 てかこんなハッピーな事態で通常時でいられる男なんてこの世にはいないはずだ。いたらそいつは男じゃない。

 

 そんな事より!このような出来事に出くわせてくれた神様!今俺はアナタに忠誠を誓ってもおかしくない程感謝しております!ああ、我らの主よ!どうかこの先も俺に聖なるお慈悲を……

 

 「ーーーーっテェェェェェェエエエエ!!なんだよこれ!?」

 

 突然頭に不可解な頭痛が走り、思わず地面に膝をつける。

 

 いてェいてェくそいてぇ!何なんだよこの痛みは!頭怪我したからか?それにしても怪我してから結構時間たってるだろ……悪魔になった副作用かなんかか!?

 

 大量の血液で湿っている頭を抱えながら悶えていると、さっきまで転げていたはずのシスターが詰め寄ってきた。

 

 「はわわ……!大丈夫ですか!?凄い痛そう……じっとしてて下さいね。」

 

 優しい声でシスターが俺に語りかけてくると同時に、掌から綺麗な光が発生する。

 

 正確に言うならば、彼女の着けている指輪からだ。

 

 その光はたちまち俺の頭の怪我を治し、少しではあるが頭痛も和らげてくれた。

 

 すげぇ……よく分からないけど今有り得ない出来事が起こってるのは確かだ。一体どういう事なのだろう……?

 

 「はい、これで大丈夫ですよ。まだどこか痛みますか?」

 

 「あ、ああ……もう大丈夫だ。ありがーーーー」

 

 「キャ!!」

 

 俺が最後までお礼を言う前に、シスターのベールが風に流されて行く。俺は小走りでベールを拾いにいくと、落とし主であるシスターの所まで届けてあげようと踵を返した所で、

 

 「ーーーーーーーー」

 

 言葉を失った。理由は明白ーーーー目の前にいるシスターが予想以上の美貌を持っていたからだ。

 

 日光を跳ね返すほど端麗で腰まで届くほど長い金髪。吸い込まれそうになるエメラルドグリーンの瞳。顔立ちは外国人のそれで、いかにもシスターを勤めている事が分かるほどの神聖なオーラ。

 

 それら全てが圧倒的な魅力を放っており、息をすることすら忘れてしまう。

 

 「あ……あの……?」 

 

 「え……?あ、ああ……ごめん」

 

 シスターの掛け声で我に返り、手にとっていたベールを返す。

 

 「いえ、わざわざ拾ってくださりありがとうございます。優しいんですね……」

 

 「そ、そんな事ねぇよ。これくらい普通だ普通……」

 

 何とか冷静さを保とうとするが、このシスターの前では全て徒労に変わる。

 

 反則だろそれは!思った以上にスペックが高い。容姿だけならリアス先輩達に引けを取らない。胸部には若干残念さが感じ取れるが……。

 

 などと頭の中で思考を張り巡らせていると、シスターがおどおどした態度で尋ねてきた。

 

 「あ、あの……お願いがあるんですけど……」

 

 「ーーーーお願い?何?」

 

 一瞬夕摩ちゃんの事を考えてしまった……あの時夕摩ちゃんも同じ事を言っていたからな。

 

 でもこのシスターはそんな恐ろしい事を言わないだろう。何故だか分からないがそう確信できる。

 

 「その……教会に連れて行ってくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そういえば俺は兵藤一誠っていうんだ。イッセーでいいぜ。お前は?」

 

 「は、はい。アーシア・アルジェントといいます」

 

 アーシアか……いい名前だ。この子にピッタリだ。性格も今のご世代には絶滅したかと思われる清純系だ。この子が嫁になってくれたらどれだけいいことか。

 

 「あ、ちょっと待って下さい」

 

 そう言うとシスター……アーシアは公園で泣いている男の子に駆け寄る。

 

 怪我したのか、あの子。見たところ擦り傷程度の軽い怪我だが、まだ幼いのだから仕方ない。俺も実際泣いてたしな……。

 

 アーシアは男の子の怪我をした部分に手をかざすと、俺の時と同じように薄緑色の光を発光させる。なかったはずの指輪を発現させてーーーー

 

 あれは……ひょっとして神器?でも神器を知ったのだって昨日だし……あんまり自信がないな。

 

 「お待たせしました。行きましょう」

 

 「お、おお……」

 

 それからたわいもない話をしながら教会までの道のりを歩いていった。彼女と話すのは楽しかったし、ずっと話していたいと思う程彼女は魅力的だった。

 

 しかしそんな幸せの時間は長く続かず、教会の形が目に見える程歩いていた。

 

 「あれがこの街にある教会だ。でもあんな古い教会になんの用なんだ?」

 

 「それは……知り合いと会う約束をしてまして」

 

 あんな所で待ち合わせだなんて……もっとマシな場所を思いつかなかったものかーーーー

 

 不意におかしな感覚が俺を襲い、これから先に歩を進ませる事を躊躇わせる。

 

 何故だか、これ以上先には行ってはいけない気がする。本能って奴か……?

 

 「ありがとうございますイッセーさん。ここまででいいですので後は……」

 

 「お、おう。そうか……気をつけてな」

 

 アーシアは『それでは』と言うと、俺が踏みいる事が出来ない領域へと進んでいく。

 

 彼女の小さな背中が遠くへ行くのを俺は後ろから見守りながら、

 

 「アーシア!」 

 

 「はい……?」

 

 「また会おうぜ!」

 

 「!…………ハイ!」

 

 アーシアは俺に向かってその言葉と一緒にとてつもなく魅力的な笑みを向けてきた。

 

 俺はアーシアの姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くし、その直後学校まで猛ダッシュで駆け抜けた。

 

 「フフフ……ハハハ」

 

 笑いが止まらない。頬が緩みまくる。笑みがこぼれる。

 

 「フフフフフフフ」

 

 ペースを上げる。スピードが増す。向かい風が強くなっていく。

 

 「フハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 悪の秘密組織のお偉いさんのような笑い声をあげながら通学路の疾走する。

 

 大声を出さずにはいられない。テンションが高くなるのも無理はない。何故ならあの時アーシアが俺に向けてくれた純粋無垢な笑顔が頭から離れずーーーー

 

 

 

  俺の心を射抜いてしまったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なるほどなるほど。つまりお前が悩んでいるのは思ったより朝早くに学校に来てしまい、まだ入ることが出来ない校舎に年がら年中鍵が開いている我が相談部の部室から潜入し、その事がソーナにバレないか危惧しているということだな」

 

 「全然違いますよ!森羅万象まるまる違いますよ!!」

 

 俺の話を一部始終聞き終わった摩耶さんは何を思ってか、まったく意味の分からない結論に至っていた。

 

 何をどう考えたらそんな考えになるんだ。おかしいだろ!?あの流れからして俺の悩みなんて、

 

 「で、何?お前結局その子に惚れたの?」

 

 「え!?いや……あの……その……」

 

 俺の考えようとしたことを摩耶さんが口に出し、ピンポイントで当てられた俺は動揺するしかなかった。

 

 なんでこの人はこういう時だけ的確な言葉を掛けてくるんだ!相変わらず恐ろしい!

 

 「いや、あの……惚れたっていうかその、アーシアの笑顔が未だ頭の片隅に残ってて多分消えないんだろうな~って思いまして」

 

 「それが惚れてるっていうんだよ!」

 

 そう言うと摩耶さんは再び『せんべい』を俺に向かって投擲してくる。そのままそれは俺の額に吸い込まれてーーーー

 

 「あぶねぇ!」

 

 寸前でよけた。そのまま『せんべい』は空中を走っていき、部室のドアに深々と突き刺さった。

 

 二発目は絶対にくらわん!あんな恐ろしいものを既に体で経験してるんだ。是が非でも避けてやる!

 

 「それで?何に対してお前は悩んでんの?」

 

 「えと……あの子を好きになっていいのかな~って」

 

 「あ?」

 

 「だ、だって彼女一人大切に出来なかった俺が今更ーーーー」

 

 「まだ言ってんのかテメェはーーーー!!」

 

 「スンマセン!!」

 

 摩耶さんに怒鳴られて俺はいま卑屈な考えをした自分を許せないでいた。

 

 また俺はうじうじ悩んで、摩耶さんに怒られるのか……まったく、ダメダメだな俺も。

 

 いつまでそうやって悲観的でいるんだ。そんな事考えてたって夕摩ちゃんは戻ってきたりしない。仮に戻ってきたとしても、彼女とよりを戻す事はないだろう。なら俺に出来ることはただ一つーーーー

 

 前向きになること。それだけで十分だろう。

 

 

 

 因みに俺が必死に謝っていた理由は二つあり一つはおれの失言がだらしなかった事についての純粋の謝罪と、二つ目は怒り狂って『せんべい』を投げまくっている摩耶さんを宥めるためだ。

 

 

 

 

 




イ「摩耶さん必殺技とか持ってます?」

摩「あるよ」

イ「どんなのですか?」

摩「○つ裂き光○」

イ「それ別の意味で危ないですよ!」

 必殺技の恐ろしさを知ったイッセーだった。

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