ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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 次回、リアス様ついに登場!




 なんてことはないよ(達成感


他にも悪魔はたくさんいました!

ーーーー駒王学園旧校舎。普段使われていないと思わされる、名前通りに見た目が古い校舎にリアス先輩がいるとの事。

 

 当然俺ーーーー兵藤一誠はこの場所に足を踏み入れた事は無く、中の構造などに関しては全くの無知であった。

 

 その事を俺は顧みず、ただがむしゃらに未知の領域である旧校舎を走り回った。

 

 

 

 

 理由はただ一つ……リアス先輩に会うため。

 

 

 

 

 さっきまでうじうじしてた俺を怒鳴り散らし、改めて俺の励みになる言葉を掛けてくれた摩耶さんのために。摩耶さんに向けた決意の形が虚構にならないように。

 

 そんな想いを胸に秘め、たった一人の先輩に会うために俺は思い切って行動した。……そこまではよかった。

 

 

 

 

 そう、そこまではーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ゼェ、ゼェ……ここ、どこ……?」

 

 全く分からない場所を全速力で疾走したら当然こうなるわけで……。

 

 『旧』だとしても、流石は校舎。外見はお世辞にも綺麗とは言えないが、中の広さには舌を巻く。おまけに見た目とは裏腹に中は清潔感があふれている。ここが本当に旧校舎なのか疑問を抱くほどだ。

 

 クソッたれ、こんな所で道草食ってる場合じゃないのに……!

 

 だいたい同じような失敗をさっきしたばっかりじゃねえか。なのに高ぶったテンションに身を任せて、後先考えずに出しゃばったからこんな事に!

 

 「ハァ、ハァ……これからどうしよう」

 

 未だ安定しない荒い呼吸を繰り返しながら、とりあえず後ろにあったドアに背をあずけ、そのまま尻餅をついた。

 

 呼吸を安定させるために左胸を鷲掴みにする。しかしその行為はただの気休めにしかならず、実際に呼吸が回復したりはしない。俺はだんだん沸き上がってくる自分に対する怒りを発散させようとするように、左胸肉を掴んでいる手により一層力を込める。

 

 ……摩耶さん、今頃何してるだろうな。あ、トイレ行ってたんだっけ……もうそろそろ終わってる頃かな。

 

 軽く現実逃避に陥っている思考回路をショートさせるために、頭を左右に揺する。ウェ、気持ち悪。なんか前にも同じ事したよな……摩耶さんから悪魔の話を聞いたときだ。あの時も嫌な記憶が脳裏によぎったから、無我夢中に頭を振ったんだ。摩耶さんはそんな俺に全てを包み隠さず教えてくれた。それまでの経緯が無駄に長かった気がするけど……。

 

 「ーーーーって!何で摩耶さんの事ばっかり考えてんだよ俺は!?いくら俺でもソッチの趣味はねぇぞ!!」

 

 もはやデンジャラス(?)の域に達してしまっている思考を今度こそ遮断しようと、ありったけの力を込めて頭部を地面に叩きつける。ハッハッハァ、もう二度とあんな忌々しい事は閃かないぞ。なんか鈍い痛みが頭に走ってるけど気にしない。ドロリ、とした生暖かく赤い液体が滴っているけど問題ない。……いや、あるかな?

 

 などとそんなバカな事を考えていたのも束の間、目の前からさっきまで一緒にいた男子から声を掛けられた。

 

 「ここにいたのかい。探したよ兵藤君。」

 

 「……木場」

 

 「結構走り回ってただろうからね、大丈夫かい?」

 

 「……木場ぁ~~」

 

 俺は少し情けない声で眼前にいるイケメン王子、木場裕斗に寄り添った。当の本人は『ひ、兵藤君!?何故だか分からないけど、頭から血が出てるよ!』なんて言っているが俺にとっては既にどうでもいい事だ。元からあまり気にしてなかったんだからな。

 

 「会いたかったよ~。てっきりこのままリアス先輩に会えないかも、て思ったら元気無くなってきてさ~。せっかく摩耶さんにあんな啖呵切ったのに会えませんでした、じゃカッコつかないからさ~。心配しててさ~」 

 

 「は、ははは……。その必要はないと思うよ」

 

 「え……?あ、そうか。お前はリアス先輩の居場所知ってるからな。さっさと行こうぜ!」

 

 「えと……もう着いてるよ」

 

 「……へ?」

 

 一瞬木場の発言の意味が理解できず、間の抜けた返事をしてしまった。そして木場はさっきまで俺がもたれかかっていたドアを指差し、

 

 

 

 「ここが僕達の、『オカルト研究部』の部室だよ」

 

 

 

 ーーーー俺の所属している相談部と同じように、全然聞いたことのない部活動の部室に、リアス先輩は居るとの事だった。

 

 「…………一つ訊いていいか?」

 

 「どうぞ」

 

 「オカルト研究部って何だよ!!」

 

 俺は今現在、もっとも感じている素朴な疑問を隣にいる木場にぶつける。

 

 「その名の通り、非科学的でありえないオカルト現象を研究する……ていう事に一応なってるんだけどね」

 

 「一応?」

 

 「そうした方が行動しやすいんだよ。あまりこういった部活には入る人はいないだろうから、部員を皆グレモリー眷属で固めるためにね」

 

 「へぇ~。そんな事まで考えてるのか」

 

 懇切丁寧に教えてくれた木場の発言に感心し、目の前の木製の扉を眺める。

 

 確かにオカルト研究部なんて怪しい部活に入りたいなんていう奴はいないだろう。そもそもこの部活があったことすら俺は知らなかった。リアス先輩が居ると知ったらすかさず入部するけどな。

 

 だが生憎、今の俺は相談部の部員兼天童眷属だ。あの人以外の人についていく気はない。なんだかんだ言ってあの人は俺の目標だからな。

 

 いつの間にか隣にいたはずの木場は俺の一歩前に出て、木製の扉を叩いていた。

 

 「木場です。兵藤君を連れてきました」

 

 そう言うと木場は扉に手をかけ、オカルト研究部の部室に入ろうと、

 

 

 

 「チェックメイトよ、摩耶」

 

 

 

 「えっ!ウソ?もう終わり!?ちょ、ちょっと待ってタイム!もう一回やり直そ!!」

 

 「うふふ、そう言ってもう十回目ですわよ。摩耶君はポーカーとかは強いのに、どうしてこういう戦略ゲームはよわいんですかね。」

 

 「……摩耶先輩、弱すぎです」

 

 部室には既にチェスをしている摩耶さんと紅の髪を持つ絶世の美女。その周りには紅の髪を持つ美女に引けを取らない黒髪を持つ美女。更には矮躯な体系で白髪を持ち、ほかの二人とは違う魅力をもった美少女がーーーー

 

 「って摩耶さん!?いつの間に来てたんですか!」

 

 「おう、遅かったなお前ら。……なんでイッセー血出してんの?」

 

 トイレに行ったはずの摩耶さんが既に部室内におり、先程まで戦いが繰り広げられていたであろう駒の位置が初期位置と違うチェス板に頭をつけていた。

 

 「やっと来たのね、裕斗」

 

 「お待たせしました、部長」

 

 「ほんとだよまったく」 

 

 紅の髪を持った美女がそう言うと、俺達の方に身体を向けてきた。というか摩耶さん、場所がどこだろうと構わずだらけきっている。さっきの会話を聞く限りだとチェスで負けたらしいから尚更だ。

 

 「自己紹介がまだだったわね」

 

 知っている。紹介してもらわなくても充分に。

だってその人は、学園の二大お姉さまの一人であり、さっきまで俺が必死で会おうとしていた、

 

 

 

 「オカルト研究部部長、リアス・グレモリーよ。よろしくね」

 

 

 

 リアス先輩本人なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「は、初めまして!自分は兵藤一誠といいます。よろしくお願いします!」

 

 「ええ、よろしく。イッセーって呼んでいいかしら?私の事もリアスでいいわ」

 

 「は、はい!光栄です!!」

 

 目の前の紅の髪を持つ美女ーーーーリアス先輩に下の名前で呼ばれるなんてメチャクチャ嬉しい。ここにくるまで抱いていた緊張なんて吹っ飛んでしまうぐらいにだ。

 

 「あらあら、うふふ。なかなか面白い子ですわね」

 

 そう言って俺の頭に包帯を巻いてくれているのがこれまた二大お姉さまの一角、姫島朱乃さん。リアス先輩と同等の美貌を持ち、黒壇のような黒髪。大和撫子を思わせるその風格は如何にこの人が出来た人かということをしみじみと感じさせる。

 

 「はい。これで大丈夫ですわ。後、私の事も朱乃と呼んでくれて構いませんわよ」

 

 「あ、ありがとうございます……朱乃さん」

 

 そう言うと姫島……朱乃さんは『うふふ』、と笑いながらリアス先輩の側へ歩いていった。まさかあの二大お姉さま両方から名前で呼ぶ事を許されるなんて思ってもみなかった。今の俺なら何でも出来る気がするぜ!

 

 「…………塔城小猫です」

 

 そう呟く少女は俺の目の前で黙々とお菓子を口に運んでいた。その一つ一つの行動に思わず愛嬌を感じてしまう。因みにこの子は男女構わず可愛いと誉められており、学園のマスコット的存在だ。

 

 「おう。こちらこそよろしくな」

 

 小猫ちゃんは相も変わらずお菓子をパクつきながらペコリと頭を下げてきた。無口な所もまたいい!

 

 「それにしても珍しいわね。いつも面倒くさいと言っていたあなたが眷属を持つなんて」

 

 「ああ、まあコイツ助ける為に仕方なくな」

 

 そう言うと摩耶さんはテーブルの上にあるお菓子の山に手を伸ばし、

 

 「これは私のです」

 

 小猫ちゃんの目にも留まらぬ速さで繰り出された手刀によってはじかれた。

 

 え、何いまの?普通に見えなかったんだけど。

 

 「ぎゃああああああああああ!!小猫ちゃん遠慮なくね!?」

 

 「……そんなことありません」

 

 この事態を起こした張本人は何食わぬ顔をして、お菓子を口に運ぶ動作を延々に続けている。摩耶さんは叩かれた手を抑えて床の上をゴロゴロ転がっていた。そ、そんなに痛いの?女の子の手刀が……?

 

 「そ、それでこの子には何の駒を使ったの?」

 

 リアス先輩が俺の方を見ながら興味深そうに尋ねた。確か俺の駒って……。

 

 「『兵士』の駒。八個全部消費しちまったから恐らく神器持ち」

 

 そうだ、『兵士』だ。確かチェスで一番前にいるいっぱいいるやつ……て、八個全部消費?神器持ち?

 

 「…………それは本当なの摩耶?」

 

 思わぬ答えが返って来たせいか、リアス先輩が少しシリアスな声で摩耶さんに問う。気のせいかリアス先輩だけでなくこの場にいる全員が息をのんでいるような気がする。

 

 「嘘ついてどうするんだよ。マジだよマジ」

 

 その言葉にオカルト研究部のメンバー全員が驚愕した。

 

 「あらあら、それは……」

 

 「普通なら考えられないね」

 

 「……びっくりです」

 

 一人一人が俺に対して素直な感想を吐露していく……ていうか、

 

 「神器って何ですか?摩耶さん」

 

 「神の恩恵」

 

 出た!摩耶さんお得意の適当受け答え!何がなんだかサッパリ分からん。

 

 「簡単に言うとね、あなたの中には秘められた力が眠っているのよ」

 

 リアス先輩が分かりやすく代弁してくれた。本当にありがたい。しかし、秘められた力と言われてもいまいち実感が湧かない。

 

 「ーーーーイメージしろ。体の奥底にある塊を具現化するように。神器はお前の想いに応える」

 

 珍しく摩耶さんが的確なアドバイスを寄越してくれた。常時こんな風に簡単に説明してくれたらいいのに……。

 

 「イメージか……よし……。」

 

 摩耶さんに言われたとおり俺は出来る限りイメージした。体の奥底に眠る、力の塊……。

 

 突如、俺の左手に今まで感じた事の無い凄まじい熱を感じた。しかし心なしか熱くなく、左手全体が何かに覆われるようなーーーー。

 

 

 

 

 「って、なんじゃこりゃーーーーーーーー!!」

 

 

 

 気づけば俺の左手には真紅の篭手が装着されていた。なんだこれ!?いつの間にこんなモンが俺の左手にはまってるんだよ!しかもちゃっかりサイズ合ってるし。

 

 「龍の手《トゥワイス・クリティカル》ね……確かに神器持ちは驚いたけど、至って普通ね」

 

 リアス先輩は俺の左手のある篭手を眺めながら口を開いた。そんなに特別な物じゃないのか……ちょっとショック。

 

 「……………………」

 

 「……どうしたんすか摩耶さん?そんなに真剣な表情で……」

 

 「……いや、何でもない」

 

 素っ気なく摩耶さんはそう言うと俺の左手から目線を外した。なんか少しおっかなかったな。声のトーンもやけに低かったし。

 

 「つまりコレが……俺の秘められた力、てやつですか」

 

 「まあ、そういうことだな」

 

 摩耶さんは相も変わらず俺の方を見ようとせず、ただ単に呟いた。な、なんか気まずい。

 

 「それにしても……あんなアドバイスでよく神器を出せたもんだな」

 

 「え?まあ……摩耶さんの言葉でしたから」

  

 

 自分でも一体何を言っているか分からない回答に摩耶さんは『ふ~ん』と呟くと、やっと俺に面を向けた。それにしても……こうして見てるとやっぱ摩耶さんってカッコイいよな。黄土色の手入れしてないボサボサ気味の髪。身長だってこの部屋に居るメンバー全員の中で一番高い。極めつけは一流俳優顔負けの容姿。どこをとってもパーフェクトだ……性格以外は。

 

 「なに顔赤らめてんだよ、俺にそんな趣味はねぇぞ」

 

 摩耶さんに指摘され、気恥ずかしくなった俺は気を紛らわせようとお菓子の山に手を伸ばし、

 

 「あげませんよ」

 

 摩耶さんの時とまったく同じ展開が披露された。

 

 「ぎゃああああああ!!小猫ちゃん何でそんな力強いの!?」

 

 「『戦車《ルーク》』ですから」

 

 素っ気なく答えると、小猫ちゃんは普段通りにお菓子をパクつく。『戦車』だからだと?それだけでこんなヤバい力が出るのか……俺もそっちがよかったな。

 

 「それでイッセー、あなたには目標はあるかしら?」

 

 

 「目標?」

 

 唐突に振られた質問に、俺は一瞬戸惑う。しかし答えは決まっている。

  

 

 「摩耶さんです」

 

 「なんで俺なんだよ。夢とか言っとけ、夢とか」

 

 その目標に俺の発言が一撃で落とされた。別にいいじゃないですか、あなたを目標にしてたって……でも夢なら、

 

 「一応あります」 

 

 「どんな夢かしら?」

 

 リアス先輩が早く知りたいといわんばかりに、俺をせかす。

 

 「その前に摩耶さん」 

 

 「なんだよ」

 

 「俺も上級悪魔になったら眷属って持てますか?」

 

 

 「は?まあ……お前が望むなら持てるだろうな」

 

 そうか、持てるか。そうか……なら!

 

 

 

 「俺の夢はいつか上級悪魔になって、眷属全員を女の子で固めます!そして俺だけのハーレムを作ってやりますよ!!」

 

 

 

 俺は高らかに宣言した。そう!この夢こそ、俺が悪魔になる前から抱いていた夢。あまりに現実性が無かったから半分諦めていたが、悪魔になったのなら話は別だ。もはやこの夢は叶わない物では無くなった!やるぞ、やってやるぞ!俺は絶対ハーレム王にーーーー

 

 

 

 「初めて出来た彼女に殺された男が言えたセリフじゃねえな」

 

 

 

 「ーーッ!」

 

 摩耶さんの一言が再び俺の気持ちの高揚を一撃で落とした。同時に思い知らされた。俺の掲げている夢がどれだけバカらしい物か。

 

 「ち、ちょっと摩耶!!」

 

 リアス先輩が俺の事を哀れんでいるのか、声を荒げて摩耶さんに言葉を投げた。庇ってくれるのはありがたいけど……摩耶さんの言っていることは正論だ。

 

 たった一人の女の子ーーーーしかも彼女なんてとても大切な存在を大切に出来なかった俺が、複数の女の子を大切にすることなんて出来るのか……。

 

 例え夕摩ちゃんが俺を殺す為に近づいてきたとはいえ、俺は本気であの子に惚れていた。でも今みたいに浮かれてあの子の本性を見透かせず、俺は殺された。あの時俺が彼女とちゃんと向き合っていればあの子を変えられたかもしれない。そんなことすら出来なかった俺にハーレムなんてーーーー

 

 

 

 「人に余計なこと言われたからって自分の夢諦めようとするなよバカ」

 

 

 

 そう言って摩耶さんは俺のがら空きの額に人差し指をしならせて、その勢いで叩いてきた。

 

 「イッテーーーー!!デコピン!?デコピンすか!?」

 

 もう何度目か分からない摩耶さんからの激励を体に受けた俺は額を抱えていた。イテェ……もしかしたら子猫ちゃんの手刀以上かもしれねぇ。

 

 「夢を……諦めるなって……」

 

 「そのまんまの意味だ、そのまま。ハーレム王?結構じゃねえか。自分の夢が周りからどんな風に思われていようが、どんな事言われようが、結局それを貫けるかどうかがお前の強さなんだ」

 

 

 「……俺の……強さ」

 

 

 俺は感慨深く呟くと、今は篭手が装備されていない左手を見る。何故だか分からないけど、無意識にその方向に視線が行ってしまった。

 

 「お前の左手に出てきたソレはお前の想いの強さが招いた結果だ。それと同じように、自分の夢をバカみたいにただひたすら追いかけたらいい」 

 

 

 「でも……一人の女の子を幸せに出来なかった俺がーーーー」

 

 「うるさいなぁ!そう言っていちいちしょぼくれる時はしょぼくれやがって!お前は過去にたった一度辛いことがあったからってそれをずるずると引き延ばすのか!?」

 

 

 「それは……」

 

 摩耶さんの剣幕に思わずたじろぐ。でもその通りだ。一度つまづいたからといって立ち上がらない理由にはならない。それに俺はもうーーーー

 

 「ケジメつけるんだろ?」

 

 「はい!!」

 

 俺が考えていた事を摩耶さんが代弁してくれた。そうだ、俺はケジメをつける。あの子と決別するために。自分のために、あの子と敵対する覚悟を……。

 

 「さて、用件はすんだし帰ろかな……さっさと部室返って寝たいし」

 

 そう言って摩耶さんはソファーから立ち上がり扉に手をかけ部屋から出ようとした。

 

 この人は頼りになるときは本当に頼りになる。この人の偉大な背中に追いつけるのはまだまだ先の話だということを痛感させられる。でも情けない事に、俺は今の現状が気に入っている。摩耶さんに怒られて、立ち直らせてくれて、自分が変わっていくような感覚を味わう。今はまだそれを感じていたい。でもいつかは、俺もいつかその立場になれるように頑張りたい。この人から認められるぐらい……。

 

 「……摩耶先輩」

 

 今までお菓子を食べていた小猫ちゃんが突如、摩耶さんに言葉をかけた。

 

 「何……小猫ちゃん?」

 

 摩耶さんは眠たいのか、かなり細目になっており早く寝かせてくれと顔が語っていた。何故そんな顔が出来るんだ……あの小猫ちゃんに話しかけられているというのに!

 

 「一手……ご教授してほしいんですけど」

 

 その瞬間、摩耶さんの弛んでいた顔が一気に引き締まった。

 

 「へぇ……いいよ。やろうか」

 

 扉に向かっていた体をこちらに向けてきた摩耶さんから出ている殺気に似た何かを感じ取った俺は体をこわばらせる。あれが……摩耶さん……?

 

 「小猫ちゃんは偶に天童先輩と戦闘訓練をしてるんだ。……見物してるだけで参考になるよ」

 

 壁に背を預けていた木場がいつの間にか隣まで来ていて、木場自身も闘いたいというように笑みを浮かべていた。なら俺は……今ここで見ることが出来るのか。

 

 

 

     憧れている人が闘う姿をーーーー

 

 

 

 




 テスト辛い。本当に辛い。

 

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