ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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久しぶりの投稿

やっぱりゲームはおもしろい


成長しようと試みます!

 全生徒から憧れの眼差しで見られる駒王学園の二大お姉さまの一角であるリアス先輩に会いに行こうとする今日この頃。

 

 一時の気の迷いか俺はその事実を知ると同時に、場所も分からぬリアス先輩が待っている所まで猛ダッシュで駆け抜けた。

 

 しかし案の定場所が分からぬため、どうすればいいか分からずしょぼくれている俺を、木場と摩耶さんが回収してくれた。

 

 だって仕方ないじゃん!あのリアス先輩に会えるなんてめったに無いことなのに、それが叶うとなったらどれだけテンションがあがるか、同じ男の摩耶さんならわかるでしょ!?

 

 そう言うと摩耶さんは『同じ学年で悪魔だし、結構顔会わせてるぞ』なんて、この学園全男子を敵にまわすであろう恐ろしい呪文を唱えた。

 

 クソッ!あんな絶世な美女と同学年で知り合いだなんて羨ましい!しかも摩耶さんもなんだかんだいって結構なイケメンだし、絶対影でモテてるよ……。

 

 少し気が重くなってきたため、少しでも軽くしようとしたのか無意識にため息が出た。 

 

 そしてそれに連動するかのように摩耶さんもため息を吐く。

 

 「あ~、ここまで来てなんだけど……やっぱりめんどくさいな~」

 

 いつものように(昨日と今日の関係だが)愚痴をもらしながら、少しおぼつかない足取りで摩耶さんが俺の前を歩く。あのリアス先輩に会えるのにめんどくさいだなんて、いったい何を考えてるんだこの人は!こんな機会二度と無いかもしれないというのに!あ、同学年だから結構な確率で会ってるのか。……チクショーーーー!!

 

 摩耶さんの隣にいる木場が『僕もほぼ毎日会ってるよ』と呟いていた。お前は仕方ない、リアス先輩と同じ部活だからな。毎日放課後、嫌でもリアス先輩に会えるんだからな。恐らく向こうは嫌とは思ってないだろうな~。……チクショー!!

 

 「何かさっきから後ろからかなり邪気がこもった目線送られてる気がする」

 

 「あはは……」

 

 相変わらずめんどくさそうにしている摩耶さんと、苦笑いをしている木場とのイケメン二人組が俺の思考を察知したのか、コッチを振り向いて語りかけてくる。

 

 クソッ、これが強者の余裕という奴か!二人は普段通りの事だからと、何も変わらないといったような感じだ……。

 

 俺みたいな小物はまだ心臓がバクバクいってやがる。呼吸も少し荒い。俺はこれからあの有名なリアス先輩にーーーー。

 

 

 

 「いつまで縮こまってるんだよテメエは!」 

 

 

 

 突如、前から聞こえてきた大音声に一瞬体が硬直する。その隣にいる木場は、顔を歪めながら予想してなかっな事態に対応するため、耳を手で塞いでいた。

 

 摩耶さんが、また例のごとく怒鳴っていた。

 

 そして恐らくその理由は……。

 

 

 

 「俺は普段通りならこの後、ベッドに潜って何度目か分からない幸せな一時に身を投げようと思ってたのに、リアスがお前の事が知りたいからとかいう理由でこんな所まで来てるんだぞ!しかも当の本人がビビりまくってるってどうゆうことだ!見てるこっちが腹立つわ!!」

 

 

 

 ーーーーやっぱり自分の時間が盗られたことに怒ってる!

 

 摩耶さんのそのイケメン顔には、似合わない血管模様が浮かび上がっていた。そこまでこの人は俺に対して怒りの感情を抱いているのか……。

 

 「で、でも……やっぱりリアス先輩に会えるとなるとちょっと……」

 

 「つべこべぬかすんじゃねぇ!何がちょっとだ、ただ一つ上の先輩に会うだけだろうが!」

 

 「あ、悪魔としての位は俺より上だし……」

 

 「俺と同じ『王』ってだけだろうが!俺と会う感じで接すればいいんだよ!」

 

 む、無茶苦茶だ……俺の斜め上をいく返答をしてくる。ここは普通とりあえず落ち着けとか、深呼吸しろとか、俺を安心させてくれる言葉をかけるべきなのでは……。

 

 「あの、天童先輩。部長はただの『王』ではなく、現魔王を輩出したあのグレモリー家のーーーー」

 

 「知ってるわそんなもん!いちいち横やりを入れてくるな!」

 

 隣で何か言いたげだった木場にまで火の粉がふりかかってしまった。……何か申し訳ない。

 

 「……いいか、お前が今何をどう思ってるかなんて俺にはどうでもいいことだ。……ただこれだけは言っておくぞ」

 

 怒りが少し収まったのか、声がさっきより穏やかになり、顔には目立っていた血管模様も無くなっていた。そしてーーーー。

 

 

 

 「自分が窮地に陥ったからといって、簡単に他人からの手にすがろうとするな」

 

 

 

 摩耶さんが静かに、俺の目を見据えてそう言った。

 

 いったい何を……?

 

 「お前、さっきまで俺に自分の緊張ほぐして欲しい、とか思ってただろ」

 

 「ーーーーッ!?」

 

 「その反応じゃ図星か」

 

 そして摩耶さんは最後の言葉を言い終えると共に、俺の方へ一歩ずつ距離を詰めてきた。

 

 確かに俺は摩耶さんに、この抑えきれない衝動をどうにかして止めてほしいと思った。そしてその考えを読まれた……。いったいなんで?

 

 「お前程度の奴が考えてる事なんて、カード全部表向きにしてプレイする神経衰弱のように簡単なんだよ」

 

 俺の考えが……簡単にわかる……?

 

 思えば初めてこの人と会ったときも、手に握っていた湯のみの事をコップだと考えていたら違う、と怒鳴られた。あの時も俺の考えは読まれていたんだ。この人には、人の心の中が視えたりするのか?

 

 いつまでも俺が俯いていると、視界に誰かの足が入ってきた。俺は恐る恐る顔をあげる。誰が目の前に立っているかなんて明白だ。そこにいるのは、さっきまで俺のことを怒鳴り散らしていた主ーーーー。

 

 「今度は何うじうじしてんだ、アホ」

 

 摩耶さんが俺の頭に、自分の頭を思いっきりぶつけてきた。簡単に言えば頭突き、パチキだ。

 

 俺は思わず頭に走る鈍い痛みに耐えきれず、頭を抱えたまましゃがみこんだ。

 

 い、イテェ……この人の頭は鉄か何かで出来てんのか?てか、そもそも何でこの人は俺に頭突きなんてかましてきたんだよ。いや……大体理由は分かってるけども。

 

 確かに俺は摩耶さんの言うとおり落ち着きがなかった。リアス先輩に会えると分かった時は狂ってるのかと思うほどテンションがあがってたのに、いざ会うとなると動転しまくっていつも通りでいられなかった。

 

 そんな俺のために大切(?)な自分の時間を割いて、普段来るはずもないこの場所……旧校舎に足を踏み入れて、更には当の本人がビクビクしながら後ろを歩いているもんなんだから当然頭にくる。

 

 しかもその怒りの対象が自分に助けを求めているのだから尚更だ。

 

 その事に摩耶さんは一番腹をたてたんだ。

 

 「……で、どうすんの?」

 

 「どうって……?」

 

 「リアスに会うの?会わないの?」

 

 いろんな意味で痛い頭を押さえたまま、摩耶さんからの疑問を聞き取った。

 

 会えるのなら……会いたい。何度も言うがこの学園全生徒の憧れでもあるわけだし、悪魔的に俺より位もキャリアも断然上だ。そんな人に会えるなんて、この機会を逃したらもう二度と無いかもしれない。

 

 けどやっぱり、いざ会うとなると足がすくんでしまう。俺なんかが会っていいのだろうか、何か問題を起こしたりしないだろうか、そんなことばかりが脳裏をよぎる。

 

 「俺なんかが……会っていいんですかね?」

 

 不意に考えていたことが口に出てしまった。

 

 「あ?向こうから会いたいって言ってんだからいいんだよ。それくらいでビビるな」

 

 「そうだよ、兵藤君。部長はそんなに怖い人じゃないし、安心していいよ」

 

 摩耶さんと木場からの簡単な言葉が、今の俺にはすごく頼りに思えた。同時に体を覆っていた重圧が消え、体が軽く感じた。

 

 「お前は自分が悪魔になりたてで、自信がないのは分からなくもない。……でもな」

 

 そこで摩耶さんは区切りをつけて、

 

 

 

 「自分の事を信じれず、自信がつかない奴には『高み』を目指すことも、ケジメをつけることも出来ない」

 

 

 

 「ーーーー!!」

 

 その一言で俺は目が覚めた。あの時、摩耶さんにケジメをつけるなんて啖呵を切ったときは、そう考えていただけだった。でも、摩耶さんの一言に背中を押されて俺は覚悟を決めた。

 

 今度また夕摩ちゃんに会ったときは敵同士、そして元カノだろうと容赦なく殴る。そう決意した。

 

 だけど、それをするには摩耶さんがさっき言ったとおり自信をつけることが大事なんだ。自分を信じきれない奴なんかに、ケジメなんてつけれるものか。俺はまだ悪魔としてはヒヨッ子で、端から見ればゴミくずみたいな存在かもしれない。……でも いつか俺なしではいられない程周りから尊敬される存在に俺はなる。

 

 「……それで、リアスに会うの?会わないの?」

 

 摩耶さんが俺に先程とまったく同じ質問をしてきた。違うのは言葉の節々に柔らかみがあること。温厚だということだ。

 

 さっきまでは臆してて自信がなかったけど、今の俺にその言葉は愚問というやつだ。

 

 「……会うにきまってるじゃないですか!リアス先輩の美貌を脳内フォルダに保存してやる為にもね!」

 

 「……あそ、ならとっとと行こうぜ」

 

 そういうと摩耶さんはくるりと踵を返し、再び俺の前を歩き始めた。

 

 今日ほど摩耶さんの背中が大きく見えた日は無い。……まだニ日間だけの付き合いだけど。

 

 ヨッシャー!これを機に、転生悪魔兵藤一誠様の伝説が幕を上げるーーーー。

 

 「あ、俺トイレ行きたいから先行っといて」

 

 不意に摩耶さんの口にした言葉に、俺は足を滑らせた。

 

 「ええ!?ついてきてくれないんですか!」

 

 「トイレ行きたいんだから行かせろよ。それとも、俺がいないと不安か?」

 

 「そ、……そんな訳ないじゃないですか!摩耶さんがいなくても余裕ですよ、ヨユー!」

 

 最後の最後で声がうらがえってしまった。本当はついてきてほしい、一緒にいてほしいと思っているが、そんなことを吐露してしまったら俺は自分がイヤになる。

 

 さっき自信を固めたばかりなのに、それを自分で打ち砕くような真似はしたくない。なによりこの人の前であれだけ威勢張ったんだ。それに似合うように、強気でいないといけない、そう思ったからだ。

 

 「終わるまで待ちますよ」 

 

 トイレに向かおうとして、階段を降りようとした摩耶さんを木場が呼び止めた。

 

 「いーよ別に、後でちゃんと行くから。それより一誠はここ来るの初めてなんだから、しっかり誘導してやってくれや」

 

 「……分かりました。騎士の誇りに懸けて、その命を全うします」

 

 木場が片膝をつき、なんとも凛々しい姿勢で摩耶さんに頭を垂れた。その目の前にいる人物は頭をかきながら『そんなにだいそれた事じゃないだろう』と言いながらどこか呆れたような仕草を見せた。

 

 「いいか、お前の主はリアスなんだ。その主以外の人間に簡単に頭を下げるな。騎士のお前がそんなことをすると、リアスが軽く見られるんだからな」

 

 木場は全然そんなことを考えていなかった、といわんばかりに面をくらった顔をしていた。

 

 「……確かにそうかもしれません。肝に銘じておきます」

 

 木場の感慨深い呟きに、摩耶さんは『ん』と短く返事をすると、今度こそ階段を降りていった。

 

 

 

 

 ーーーー途中、何故か中段らへんで摩耶さんが足を止めた。

 

 

 

 そして首を少しねじり、俺の方に顔を向けた。

 

 その目は全てを見透かそうとするように、俺の双眸の奥深くまで覗き込んでいた。

 

 俺はおもわず、摩耶さんの気迫にたじろいでしまった。そしてすぐ理解した。

 

 確かめようとしているんだ。本当に俺が不安を抱いていないかどうかを。少しは男らしい顔をするようになったかを。

 

 声に出して会話していないのに、摩耶さんがそう語りかけて来るように思えた。

 

 ここまで来てこの人にこれ以上余計な気は使わせられない。それに俺自身も、摩耶さんに少しでも認められたい。

 

 

 

 

 だから、今俺がこの人に出来ることはーーーー!!

 

 

 

 今まで俺の事を見つめていた摩耶さんは、何かに感心したように『へぇ』と短い言葉を漏らした。

 

 俺の隣にいた木場も、何故か温かい笑みを俺に向かって浮かべていた。

 

 思い当たる節は一つしかないが、それが最有力候補だということは考えにくい……と思う。

 

 今この人とどんな言葉を交わしたところで、この人の中にある俺に対する信頼を深めることは出来ない。だから、俺は言葉を発さず摩耶さんの冷ややかな双眸に向かってーーーー。

 

 

 

 今まであった不安と焦燥を微塵も感じさせないような面構えをしている……つもりだ。

 

 はっきり言って、自分が今どんな表情をしているか分からない。吹っ切れたような顔をしていると自分では自負しているが、摩耶さんから見れば引きつった顔をしているかもしれない。

 

 それでも俺は、今の自分の形相に自信を持って、更に一層今抱いている決意を濃厚にしようと顔面に力を込めた。

 

 しばらくすると摩耶さんは俺達に背を向け、今度の今度こそ、目的地に行くために階段を一段ずつ降りていった。

 

 摩耶さんが俺の眼前から消える最中、微かに笑っていたように見えたのは俺の思い過ごしなのか、そのまま摩耶さんは俺の視界から完全に消えていった。

 

 摩耶さんから見て……今の俺はどうだったのかな……?

 

 憧れの人に自分がどう思われているかを考えると、心臓がいつもより早く鼓動を刻むのを感じる。

 

 「……いい顔をしてたよ」

 

 不意に隣から声がかけられ、その声がする方向に顔を向けた。言うまでもなく、そこにいたのは木場だ。

 

 「そうか?」

 

 「うん。何かこう……男らしい顔つきだったよ」

 

 俺が今一番言ってほしい言葉を木場に言われ、自分でも分かるくらい顔がにやつくのを感じた。

 

 「そ、そうかな~?」

 

 「そうさ。今の君は誰がどう見ても立派な悪魔だよ。胸を張っていい。……それにしても、流石は天童先輩だ」

 

 「え?……何が?」 

 

 「……この際だから言うけど、ここにくるまでの間、ずっと君のことを心配してたんだよ。君に気づかれないように、君の表情をずっとうかがってたのさ」

 

 「ーーーー!!そうなのか!?」

 

 驚愕の事実を知らされた俺は、木場に向かって大声でその詳細を尋ねた。

 

 「うん、まあね。あの人はああ見えて人が良いからね。オマケに、その人が何をどう考えているかが分かるほどの洞察力と読心術を持っている。それで常に、君の事を心身ともに見守っていたのさ」

 

 高い洞察力と読心術……それであの人は俺の考えていることがわかったのか。

 

 「そこまで気を配れる人が、君に対して怒鳴った本当の理由はーーーー」

 

 「……俺を自分自身で立ち直らせるため?」

  

 「そうことになるね」

  

 そう言って木場は、俺に向かって何度目か分からないイケメンスマイルを向けてきた。

 

 ……俺は、最後まであの人に無駄な心配をさせてしまったのか。

 

 つくづく自分が情けないと思う。結局の所、あの人と出会ってから何一つ成長していない。本来ならあの人は、今頃ベッドでうつつをぬかしている所だろう。自分の時間を好きなように有効活用できたはずだ。俺が成長していれば、ここに来るのも一人で出来たはずだ。それが出来ないということは、俺は未だ足踏みをしている最中なのだろう。

 

 

 

 ーーーーいや、成長しなくちゃならないんだ!少なくとも今に限っては!!

 

 

 

 「……どうしたんだい、兵藤君?」

 

 木場が俺に向かって心配そうな声色で尋ねてくる。コイツにも心配されるなんて……どうかしてたな、俺は。

 

 あの人は俺に期待してくれていたのかもしれない。これから先、自分自身で道が切り開けるようになれることを。そうするために、絶対的な自身を俺が持つことを。だから俺に怒鳴ってくれたのかもしれない。心配してくれていた、ということもあっただろうけども、それ以上に……。

 

 ならその期待に応えることこそが、この俺兵藤一誠の今最大限やれること!!そのためにはまずーーーー。

 

 「リアス先輩に会いに行くか、木場!とっとと行かないと待たせちまうしな!」

 

 「……うん、そうだね!」

 

 散々待機させてしまった木場に、これまでの遅れを取り戻そうとするような感じで声をかける。

 

 「ヨッシャーー!そうと決まれば急ぐぞ。麗しのリアス先輩が待ってるんだからなー!」

 

 「え!?ひ、兵藤君!?ちょっとまっーーーー」

 

 後ろから聞こえてくる木場の静止を気にもとめず、初めて来たはずの旧校舎を我が物顔で爆走する悪魔がここにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、俺がいったいどうなったのかは出来る限り察してほしい。




次回、リアス様ついに登場!!

いやホントマジで(焦)

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