ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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ケジメつけます!

 「それはあれだ、『天野夕摩』っていう存在はこの世から消えたって事だ」

 

 放課後、入部して間もない相談部部室で俺は今朝から抱えていたわだかまりを取り除くため、この相談部部長であり、俺の主でもある摩耶さんに例の事を打ち明けた。

 

 「それで?」

 

 「……それでって、いったいなにが?」

 

 俺の問いに摩耶さんが問いで返してくる。違う、俺の求めている答えはそんなものじゃない!

 

 「だから、なんで夕摩ちゃんの存在が消えてることになってるんですか!」

 

 俺はここに来てからもう何度目かも分からない質問を繰り返し、摩耶さんに問い詰める。

 

 「さっき言ったじゃん。『天野夕摩』っていう存在がこの世から消えてることになってるって」

 

 それに対して摩耶さんもさっきの答えと同じ言葉を口にした。だ・か・ら!!

 

 「なんで夕摩ちゃんがーーーー」

 

 「うるせー!!さっきから同じ事何回も言ってんじゃねぇ!ちったあ自分で考えろ!」

 

 そういうと摩耶さんは読んでたマンガから目を離し、寝そべっていた体を起こして俺と向き合った。……やべぇ、本当にキレてるこの人。そんなに自分の時間がとられるのがイヤなのか……でも、

 

 「……考えましたよ。授業中でも、休み時間の間にも、考える暇がある時は全部その事を考えてました。でも、分からないからこうして摩耶さんに訊いてるんじゃないですか!」

 

 「じゃあもっと考えろ、思考を張り巡らせろ。そうすりゃきっと分かるから」

 

 「ーーーーッ!摩耶さん!!」

 

 俺は我慢の限界が来たかといわんばかりの大声をこの部室でこだまさせた。いや、違う。限界なんてとうに来てた。達していた。それが摩耶さんの一言で超えただけ、臨界点を突破したんだ。この人は俺の知りたい答えを持っているはず、そして俺の気持ちに気づいているはずだ……なのに何で素直に教えてくれないんだ!

 

 段々と沸き上がってくる摩耶さんに対する怒りで思わず狂いそうになる。

 

 「ーーーーあのさ」

 

 不意に摩耶さんが口を開く。

 

 「何でそんな事知りたいわけ?」

 

 「……え?」

 

 俺は摩耶さんの予期せぬ質問になんて答えていいのか分からず、無意識にそんな言葉が出ていた

 

 「だってさ、夕摩ちゃんだっけ?その子はもうお前の彼女じゃないんだぜ。何の関係も無い存在、あかの他人じゃねえか。それなのに何でそんなに知りたがる」

 

 「……ッ、それは」

 

 摩耶さんに言われた事で俺の頭は少しクリアになった。

 

 そうだ、あの子はもう俺にとって関係のない女の子。例え摩耶さんにあの子の存在が消えた理由を訊いた所で、俺はどうする気だったんだ?

 

 もしかして……あの子に殺されたにも拘わらず俺はーーーー

 

 

 

 「……まだあの子に未練があるのか?」

 

 

 

 俺の考えていることが、いや考えようとした事が先読みされ、摩耶さんの口から直接認識させられた。

 

 あまりにも的確で直球な発言に、しばしの間呼吸をするのも忘れてしまう。

 

 直後、脳裏に浮かんだのは夕摩ちゃんの表情。あの時、初めてのデートで見せてくれた屈託のない笑顔。いや……既に孕んでいた邪気を俺がただ見過ごしていただけかもしれないが……。

 

 次に浮かんできたのは夕摩ちゃんの背中からカラスをような黒い羽がはえ、その手に生み出した光の槍で俺を……。

 

 咄嗟に思い出してしまったあの惨劇を忘れようとするために、頭を激しく左右に振る。

 

 脳がかなりの勢いでシェイクされるのを感じた

。ウェ……気持ち悪い、吐き気する。

 

 でも、こんな時なのに夕摩ちゃんの事を思い出している。自分のことを殺した人物、因縁の相手の事をだ……しかもより鮮明に。

 

 俺の事を殺した邪気が露わになっている極悪非道な彼女ではなく、ただ普通な女の子にしか見えなかったあの子を……。

 

 確かに未練があるのかもしれない。なんだって初めて出来た彼女だ。ずっと一緒にいたいと思いたい、大切にするに決まっている、しなきゃ男じゃない。でも、未練なんてほんの少しだけ、微塵も無いなんて言ったら嘘になる。そうだ、俺が彼女の事をそこまで詳しく訊きたい理由はーーーー。

 

 

 

 

 「ーーーーケジメをつけたいんです」

 

 

 

 俺がようやく出したその答えに、摩耶さんはほんの少し眉を寄せる。

 

 「……なんのために?」

 

 「自分のため」

 

 これはすぐに口にすることが出来た。そう、自分のため……さっき言ったようにーーーー。

 

 「ケジメをつけます。もうこれ以上夕摩ちゃんが俺の心に居座らないようにするために……決別するために!」

 

 俺は心の底から思った事を正直に、摩耶さんに向かって吐き出した。あの子が俺のことをどう想ってるかなんてどうでもいい。理由はどうであれ、彼女は俺の事を殺した……笑いながらだ。

 

 なら俺は彼女にとって何でもない存在だったのだろう……道端に落ちてる石ころ程度だったのだろう……。

 

 そんな女の子の事を想い続けてもろくな事がない。下手をすればその心の隙間をつつかれるかもしれない。だから……。

 

 「教えて下さい、摩耶さん!!」 

 

 「…………」

 

 摩耶さんはしばらくの間黙ったかのように思えたが、俺にも聞こえるかなりデカいため息を吐いた後、ようやく俺の知りたかったことを教えてくれた。

 

 「……『天野夕摩』の存在はお前を殺すためだけに設定した物、簡単に言えば器だ」

 

 「……器」

 

 俺は摩耶さんの言った言葉を忘れないようにするために、自分でもその言葉を口にする。

 

 「そうだ。そうやってお前に親近感を抱かせて接近し、お前の信頼している友人からも認めてもらう事で……」

 

 「……自分は危険な存在では無いという事を意識させようとした?」

 

 「そのとおり」

 

 最悪の答えに俺は身を震わせるしかなかった。

手にはこれでもか、というほど大量の脂汗がにじみ出ており、首筋にツウッと冷ややかな汗が流れるのを感じる。

 

 そんな俺の事を気にもせず、摩耶さんはしゃべり続けた。

 

 「んで、後は予定通りお前を殺しやすい状況にするためにデートして、結界で二人きりになった後にグサリ。そのまま全てを闇に葬ろうとするために自らの存在を消した、ということだ」

 

 ーーーーそうか、そうだったんだ。

 

 摩耶さんの話を聞いて俺は一つの結論に至った。

 

 夕摩ちゃん、君にとって俺の存在は……。

 

 

 

 何でもない、ただの人間だったって事だったんだな。

 

 

 

 改めて俺は自分の不甲斐なさに呆れた。

 

 結局俺は彼女の良いところしか見ていなくて、悪いところを見ようとしなかった。だからこんな事になった。自業自得という奴だ。

 

 でも、もし次会うときは俺は君の全てを見る。

 

 堕天使の君も、夕摩ちゃんとしての君も全部見て、それを踏まえた上でーーーー。

 

 

 

 俺は君と対立する。恐らく未来永劫、君とは分かりあえない気がするから。

 

 

 

 「……ん?でも何でわざわざ松田と元浜の記憶まで消したんですか?」

 

 「…………説明いる?」  

 

 「いりますよ!」

 

 摩耶さんはもうこれ以上説明する事は無いと思ったのだろうか、一度手放したマンガに再び手をのばそうとしていた。……いや、そんな読みたそうな目で俺のことみないで下さいよ。なんなら読みながら答えてくれても構わないですから。

 

 そう言うと摩耶さんは先程まで読んでいたページまでマンガを一気にめくり、意識をマンガに集中させた。そして俺の質問に答えてくれ、

 

 「いや~、実はこれ俺の気に入ってるマンガの最新刊でさ。昨日買ったばっかりだからまだあんまり読んでないんだよね」

 

 ーーーーなかった。

 

 「……って、イヤイヤイヤイヤイヤ!俺に対する措置は!?摩耶さんの感想なんて訊いてませんよ!なんで松田と元浜のーーーー」

 

 「うるせー!!そんなのも分かんねえのかお前は!お前が死んでそのお前と付き合ってる彼女が、いきなり行方くらましたら思いっきり怪しまれんだろうが!そうならないために記憶ごと抹消したんだよ!」

 

 な、なる程そういうことか。

 

 摩耶さんの言うとおり、ちょっと考えたらすぐ分かることだったかもしれない。なのに俺は焦って、冷静な判断すらもままならなかった。

 

 俺は何のために摩耶さんから話を聞いた!ケジメをつけるためだ。……なのに今の俺ときたらさっきから言ってた事と真逆な状態になっていて、このままだと摩耶さんに啖呵きったにも拘わらずーーーー。

 

 「別にそこまでむずかしく考える必要なんてないだろ」

 

 「……え?」

 

 俺はその言葉が聞こえてくる方向、摩耶さんの方を見て呟いた。

 

 「お前は言ったじゃねえか、ケジメをつけるんだってよ。でも今すぐとは言ってない。だったらお前の気持ちが整理するまで待って、それからつければいい。その子を殴るなりなんなりしてな」

 

 「……摩耶さん」

 

 目の前でソファーに寝転がりながらマンガを読み、時たま近くのテーブルに置いてあるかりんとうをつまんでいる人から発せられた言葉とは到底思えなかったが、何故か心の芯に響いた。

 

 ……何度も思うけど、この人が俺の主様でよかったな。いつも自堕落で自分の事しか考えてなくて、必要最低限の事しかしないのに誰かのためとなったら構わず動く。これほどカッコイい人はいない。

 

 この人の側にいるとそこはかとなく安心する。

 

 確かに俺は焦っていたのかもしれない。ケジメをつけるだのなんだのほざいておいてウジウジしてたらカッコ悪い気がしてたから。……いや、それ以上にーーーー。

 

 

 

 男があそこまで言った事を実現させなければ少なくとも、この人には追いつけないと思ったから。

 

 

 

 俺の悪魔になってからの目標はやはりこの人に追いつくこと。能力的にも、人間的にもこの人と肩を並べるまで成長するのが俺の夢。

 

 元々はただの人間だった俺がどこまでやれるか分からないけど、やれるとこまではやってやる!絶対あきらめたりしねぇ!

 

 「まあ、お前は元々普通の人間じゃなかったからな」

 

 …………ん?

 

 今摩耶さん何て言った?普通の人間じゃなかったって言ったのか?俺が?

 

 「ーーーーええぇぇぇぇえええ!?普通の人間じゃなかったんすか俺!」

 

 「うん」

 

 摩耶さんの爆弾発言に思考が追いつかず、ただ叫んでいる俺に対して摩耶さんはいつも通りの返事をした。

 

 「ど、どうゆう事ですか?俺が普通の人間じゃなかったって」

 

 「それはーーーー」

 

 すると突然、俺の後ろの方でコンコンッと何かが叩かれた音がした。

 

 「どうぞ~」

 

 摩耶さんがそう言うと、教室に入るときによく聞く音がこの部室に響いた。

 

 誰かが訪ねてきたのだ。この相談部の部室に…。バカな!?影が薄すぎて誰からも認識されないようなこの部室に!?

 

 「失礼します。……天童先輩、お迎えにあがりました」

 

 入ってきたのは少女マンガに出てきそうな顔が凛々しく、かなりなイケメンだった。

 

 いったいどうしてここにこんなイケメンが来たのだろう……お迎え?

 

 「別にいいって言ったのにな~。後、俺のことは出来れば摩耶って呼んで欲しいんだけど」

 

 「いえ、そういう訳には……。あなたに一歩近づけたその時に、名前で呼ぼうと騎士としての誇りに誓いましたので」

 

 「……あっそ」

 

 常時ニコニコしているイケメンに対し、摩耶さんの顔は段々沈んでいった。……呼び方ぐらい別にどうでもいいじゃないですか。俺も何も言われなかったら先輩って呼ぶつもりでしたし…。

 

 しばし状況の飲み込めなかった俺を見越してか、イケメンが少し申し訳無さそうなトーンで語りかけてきた。

 

 「ごめん、いきなりすぎたね。自己紹介が遅れたよ」

 

 一つ一つの言葉がやけに紳士的で、その雰囲気すらも似合ってしまうイケメンが俺に名前を告げた。

 

 「僕の名前は木場裕斗。リアス・グレモリー様の騎士《ナイト》を勤めてるんだ。君は?」

 

 そういってイケメン……木場は俺にはにかみスマイルを向けてきた。こうゆう要素が女子にモテる秘訣なんだろうな~。……べ、別に悔しくないし!

 

 「……兵藤一誠。よろしく」

 

 「兵藤君か……こちらこそよろしく」

 

 そして木場は俺に手を出してきた。握手か……こうゆうのあんまりしたことないな。友情を確かめる為の握手なんて……。

 

 「おう、よろし……ん?」

 

 木場が差し出してきた手に自分の手を重ねようとしたところで、俺は木場のセリフを思い出す。

 

 確か……リアス・グレモリー様の騎士だって……え!?

 

 「ええぇぇぇぇえええ!?リアス・グレモリーって、あの『駒王学園の二大お姉さま』って称されているあのリアス先輩!?」

 

 「う、うん……そうだよ」

 

 「ついでに言えばリアスも悪魔だ。裕斗もな」

 

 「ええぇぇぇぇえええ!?」  

 

 木場の肯定と摩耶さんの補足に俺はただ驚愕するしかなかった。まさかあのリアス先輩が悪魔だったなんて……知らなかった。

 

 「っていうことは、リアス先輩もその……眷属もってたりするの?」

 

 「ああ、さっき言ったとおり僕は部長……リアス・グレモリー様の騎士でね。他にも色んな人がいるよ」

 

 「そ、そうなんだ……」

 

 あのリアス先輩の眷属で下僕だなんて……チクショーうらやましい!

 

 「それじゃそろそろ行くか……あまり気乗りしねぇけど」

 

 言葉通りダルそうに摩耶さんが腰をあげる。

 

 「行くってどこへ?」

 

 「リアスの所、アイツがお前に会いたいなんて言い出してよ。大方眷属を持ったことのない俺が初めて持つことになった下僕であるお前に興味が沸いたんだろ」

 

 摩耶さんが俺の背中を押して部室から出そうとする。……そうか、だから木場はお迎えに来たなんて言ってたのか……てことは!!?

 

 「も、もしかしてリアス先輩に謁見出来たりするんですか!?」

 

 「ああそうだ。ていうか何だ謁見って、そんなに縮こまんなよ」

 

 摩耶さんが少し呆れたといった表情で俺のことを見下してくる。縮こまるななんて無理っすよ!何たってあのリアス先輩に会えるんですから!

 

 「よっしゃーーーーーー!!そうと決まればさっさと行きましょう!麗しのリアス先輩の下に!!

 

 そして俺は苦笑いをしている木場と、もはやどうでもいいやというような無表情である摩耶さんを置いてけぼりにし、高校生にもなってがむしゃらに校舎の中を爆走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後道が分からずにしょぼくれていた俺を木場が情けをかけるように案内してくれた事は言うまでもない……。




次回、遂にリアス登場

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