ハイスクールD×D ~自堕落主と相談屋~   作:タロー☆マギカ

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ここから少しずつ戦闘校舎に入っていきます
荒北さんマジカッケェ


戦闘校舎始まります!

 「こんなん終わるわけねぇだろがバカヤローーーー!!」

 

 放課後の相談部部室に絶叫と、テーブルを強打する音が響き渡る。

 

 それと同時に、山積みにされていた書類が宙を舞う。

 

 俺ーーーー兵藤一誠は今日これで何度目か分からない光景に頭を悩ませながら、目の前にいる相談部部長兼天童眷属の『王』である天童摩耶さんに愚痴を言う。

 

 「いい加減にしてくださいよ摩耶さん。これじゃあいつまでたっても終わらないじゃないですか」

 

 「仕方ねぇだろ!普段は絶対やらねぇ仕事を今日に限って大量にこなしてるんだからよ!くそったれ、こんなん出来るわけねぇだろソーナの奴~~!」

 

 そう言った摩耶さんは頭を掻きながら左手に握っているペンを再び紙の上で走らせる。

 

 それに連動するかのように、俺も再び作業を開始する。

 

 俺達は現在、相談部という立場上滅多にやらないであろうデスクワークをやっている。

 

 どうしてこうなったのかと言うと、話は一時間前ぐらいに遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………………何これ?」

 

 「簡潔に言ってしまえば始末書です。アナタにはこれを明日までに提出してもらいます」

 

 女子生徒ーーーー摩耶さんから名前聞いたけど、たしか京香ちゃんだっけ?ーーーーの家庭事情が解決してから数日、相談部の扉が開く音を耳にする。

 

 この部活のコトが広まって客が増えたのか、と思いきや来たのはまさかの会長ーーーー支取蒼那先輩だった。

 

 冷静沈着、才色兼備。 

 

 そんな言葉がよく似合う、可憐で聡明な先輩が現在、我らが部長の前で恐ろしいコトを口にした。

 

 「はぁ!?ふざけんな出来るわけないだろんなコト!これほどの量を一体どうやって明日までに片付けろって言うんだよ!?」 

 

 摩耶さんの言うとおり、テーブルの上にはこれでもか、という程の量の紙が鎮座していた。

 

 紙の山は全部で三つに分けられており、全ての紙を積むと天井にまで到達するんじゃないか?と思えるレベルだ。正直言ってシャレにならない。

 

 その化け物を、俺達三人で明日までに終わらせろ、と言うのだから会長が今この時だけ悪魔に見えても可笑しくはないだろう。

 

 「ていうか何の始末書だよ!俺が一体何したって言うんだよお前は!」

 

 「先日の件にも出てきたボルドランと呼ばれるはぐれ悪魔を意図として逃がしたコト。……町の破損調査証並びにアナタが暴れたコトによってボロボロになった……町の改修に掛かった費用報告書。その他諸々、全てアナタが関わっている物だけ抽出しました」

 

 淡々と内容を語る会長が、どこかしら疲弊しきっているように見えた。

 

 これだけの書類を選別したコトによるものか、摩耶さんの対応によるものなのか。多分、両方が原因で疲弊しているのだろう。

 

 流石に優秀な会長であっても、問題児である摩耶さんの世話を見るのは骨が折れるらしい。事実、摩耶さんは授業中でも寝てるらしいしな。酷い時は、授業にも出てこないとか……。

 

 その度に会長が摩耶さんの世話をやいているとなったら、どんなに優秀であっても疲弊してしまうのは仕方ないコトだろう。

 

 何たってそれ(優秀)すら遥かに凌駕するのが、摩耶さんの自堕落なのだから。

 

 その摩耶さんは未だ会長の言い分に納得していないのか、尚も反論をぶつける。

 

 「だからって何で俺がこんなコトしなきゃならないんだよ!リアスがはぐれ悪魔退治した時の事後処理はやるっていうのに、何で俺のだけはしないんだよ!」

 

 「そうですか、分かりました。それでは、ここにあるベッドは撤去という措置を取らせてーーーー」

 

 「しょうがないな、やってやるよ。お前も度々の職務が大変だろうしな。自分でやれるコトは自分でやるよ」

 

 遂に会長が摩耶さんを論破するコトに成功した。常日頃摩耶さんの世話を見てるだけあって、何が決定打になるのかを熟知しているようだ。

 

 以上のコトから、俺達は一度もやったことのないデスクワークに明け暮れることになる。

 

 そして作業が効率よく進んでいるのかというと、冒頭の出来事を参考にしてほしい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、あの……少し休憩にしませんか?私、お茶淹れてきますから」

 

 そんな殺伐とした空間に響く、鈴をならしたような声。

 

 俺の彼女ーーーーアーシア・アルジェントが休憩を提案した。

 

 アーシアも今の今まで黙々とペンを走らせており、摩耶さんが暴走する度に散らばった紙を集めていたりしていた。

 

 そんな気遣いが出来る彼女が、更なる気遣いをしようと言うのだから涙が出てくる。

 

 ああ、アーシア。お前がいなかったら俺はもう色々な意味でやられてたよ。

 

 「それじゃあお言葉に甘えて貰おうかな。頼めるかアーシア?」

 

 アーシアからの気遣いを無駄にしないために、その提案を受ける。

 

 「はい、分かりました」

 

 アーシアは笑いながらそう言うと、ソファーから立ち上がって棚に置いてある急須と湯のみを取り出した。

 

 茶葉は一人あたり二グラム程度が丁度いいらしく、小匙で掬ったものを急須に入れる。そしてそれを三回ほど繰り返す。

 

 それから急須と湯のみをお盆に乗せたアーシアは、ゆったりとした動作でテーブルに戻ってきた。

 

 「もう少しで出来るので待ってて下さいね」

 

 アーシアの言うとおり、茶葉が開くのにお湯を入れてから一分ほど時間を費やすため、こうして待っていなければならない。その僅かな時間を俺は、デスクワークに向ける。

 

 しばらくの間カリカリ、という乾いた音しか聞こえなかったがそれも束の間、アーシアが急須に手を伸ばし、それぞれの湯のみに茶を注いでいく。

 

 注ぎ始めは味が薄く、次第に濃くなっていくので均等に注ぎ回さないといけない。

 

 俺でも知らなかった複雑な過程を、外国人であるアーシアは慣れた手つきでこなしていく。和洋折衷とは正にこのコトだな。

 

 時たま髪の毛を掻き分ける仕草がアーシアの魅力と合わさって、より一層雅な淹れ方に見えてしまう。

 

 やべぇ、デスクワークなんかやってる場合じゃねえ。俺は今全力でこの子を愛でたい気分でいっぱいーーーー

 

 「手止めるな!仕事しやがれ!」

 

 突然襲いかかってくるシャーペンの芯。それら全てが俺の額に突き刺さる。

 

 「ギャーーーーーーーー!い、いきなり何すんすか摩耶さん!」

 

 「うるせぇ!口動かす前に手を動かせ!アーシアちゃんに見とれてないでよ!」

 

 「何言ってんですかアンタは!こんな可愛い彼女に見とれない男なんていますか?いるわけないでしょう。だから俺のやってるコトは正しいんです!」

 

 「か、可愛いだなんてそんな……。私より魅力的な女性なんて山ほどーーーー」

 

 「アーシアちゃんお茶こぼしてる!それ以上湯のみに茶入らないから!うわ、ちょっ、書類濡れるーーーーーーーー!」

 

 今日もいつも通り騒がしい部活動になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやくデスクワークから解放された俺とアーシアは帰路についていた。

 

 あれから濡れた書類はドライヤーでかわかしたり、上から雑巾を被せたりと色々やってみたが回復させることは出来なかった。

 

 加えて生きていた始末書も片づけないといけないから作業が遅々として進まなかった。最終的には、

 

 『もうやってらんねぇ!ベッド撤去されるからなんだってんだ!そんなんだったらずっとベットに寄生してやらぁ!』

 

 と摩耶さんが溜まりに溜まっていた不満を遂に爆散させた。

 

 テーブルを派手にひっくり返し、部室内をかなり荒らす始末。もうこれ以上の勤務続行は不可能だと判断した俺は、アーシアを連れて逃避するコトにした。

 

 一瞬だけ摩耶さんに鬼を見たような気がする。渡る世間はーーーー

 

 「何を考えているですか、イッセーさん?」

 

 「いや、ちょっとさっきまでの出来事を思い出してただけさ」

 

 愛する彼女から話し掛けられたため、バカみたいな思考を頭の片隅に追いやる。あれ以上先は考えちゃダメだな。

 

 「それにしてもよかったんですか?マヤさんをほったらかしにしてしまって」

 

 「それは……うん、なるとかなるでしょう」

 

 明日の出来事が安易に想像出来るため、冷や汗をかきながらアーシアからの問いに答える。

 

 きっと俺は明日、見るも無惨な姿で発見されるんだろうなぁ。

 

 でもあそこは逃げるしかなかったんだ。そうしなければアーシアを救うコトが出来なかったから……アーシアに被害が及ばないようにするためにはああするしかなかったんだ。

 

 せめて最後は、華々しく散ろう。

 

 「アーシア……俺、お前に出会えて本当によかったよ」

 

 「ふぇ!?い、いきなり何言い出すんですかイッセーさん!?」

 

 純情無垢な彼女は、俺からの不意打ちに顔を赤らめていた。

 

 そのさい俯きがちに目を逸らす所なんて、最高のチャームポイントだった。

 

 前言撤回!ヤッパリ俺はまだ死なん!死ぬわけにはいかん!俺にはアーシアを愛でるという重要な任務があるのだから!

 

 「そ、それにしても……マヤさんにもそう思える人がいたりしないんでしょうか?」 

 

 アーシアが恥ずかしさのあまりに、無理矢理摩耶さんに関する話題へと持って行った。顔にはまだ熱があるのか、頬が赤く染まったままだ。

 

 ……いい人、かぁ。

 

 「摩耶さんに惚れてる女の子って言ったら小猫ちゃんに、京香ちゃん。それに……会長かな?」

 

 「会長さんもですか?」

 

 「俺は……何となくそう思うんだけど」

 

 ぶっちゃけあの時、摩耶さんに呆れながら始末書の内容を説明していたが、どこかしら嫌そうには見えなかった。

 

 寧ろ自分から進んで世話をやいているような……ほっとけないって感じで。

 

 まああの人は見た目的に人が良さそうだから、同じ学年であり友達でもある摩耶さんを気遣ってるだけっていう可能性もあるかもしれない。

 

 つか、思いつくだけでも三人いるとか、摩耶さんやっぱりモテるよなぁ。あの人見た目はいいからな……性格に難がありすぎるけど。

 

 でもキメる時はカッコ良くキメてくれるし、事実京香ちゃんはそれが原因で摩耶さんに惚れたんだからな。あれで惚れなきゃおかしいだろ、逆に。

 

 あれ?ていうコトはそういうラブコメみたいな展開が小猫ちゃんや会長にもあったってコトなのかな……うわ、めっちゃ知りてぇ!

 

 「マヤさんに恋人が出来たら少しはマシになりますかね?」

 

 「難しい所だな……あの人彼女が出来ても『眠たいからデートしたくない』とか言ってたりして」

 

 「そ、それはさすがにないんじゃないですか?」

 

 苦笑いを浮かべながら摩耶さんを擁護するアーシア。

 

 そして『マシになる』というキーワードだけで話が成立してるコトに内心びっくりしている俺。

 

 「まあでも、アーシアの言うとおりそれはないな。大切な人を足蹴にするなんて摩耶さんがするわけないし」

 

 さっきも言ったとおり摩耶さんはキメる時にはキメる。物事の区別がキッチリとつく人なのだ。

 

 そんな人が女性と正式に付き合うコトになった

のなら、その女性を死ぬまで大切にするだろう。あの人はそういう人だ。

 

 そんなコトを考えていた矢先、今度はアーシアから思いがけない一撃を入れられた。

 

 「大切な人と言ったら、イッセーさんでいう私みたいな人ですか?」

 

 若干照れながらも笑顔でそう告げる恋人に、俺は気が狂いそうになる程愛おしくなった。

 

 今まで摩耶さんのコトを考えていたというのに、いきなり自分達の話題に再び変えるなんて思ってなかった。しかもその発火材がアーシアなんて尚更だ。

 

 俺は少しでもアーシアとの繋がりを持ちたいと感じ、アーシアの手に自分の手を重ねる。

 

 「あ…………」 

 

 アーシアは俺がした行為を理解したのか、赤くなっていた頬の色を更に濃くする。

 

 白くてすべすべな肌、それでいて柔らかくてモチモチとした女の子としての触感がダイレクトに伝わってくる。

 

 時たま握る力を強弱したりすると、向こうも同じコトを繰り返してくる。  

 

 そんな何気ない行動が俺の感情の高ぶりを助長させる。

 

 アーシアの指に自分の指を絡めるように、それでいて何かを包むようにするーーーー恋人繋ぎというやつに繋ぎ方を昇華する。

 

 「あ、あわあわあわ」

 

 まさかここまでするとは思ってなかったのか、アーシアが一目で分かるほど狼狽していた。

 

 それ自体が俺をここまで高ぶらせているというのに。

 

 それにしても、俺にとってのアーシアが、摩耶さんにもいつか出来るのかな。

 

 俺とアーシアが彼氏彼女になった経緯は結構いきなりだ。摩耶さんも同じようにいきなり彼女とか出来たりしてしまうんじゃないだろうか。

 

 そう、例えばーーーー

 

 

 

 絶世の美女に寝込みを襲われたりして。

 

 

 

 「……いやいやいや、それはないだろさすがに」

 

 非現実的な妄想を振り払うために、そう呟く。

 

 いくら摩耶さんでもそこまでの事態に発展するようなコトは起こらないだろう。もしそうなれば、駒王学園男子全員の怨念を買うコトになる。

 

 そんな大それた事態にはならないよう願いながら、隣で尚も狼狽えている彼女と一緒に帰宅した。




リ「私の処女を貰って頂戴……摩耶」

摩「殺すぞクソ野郎!さっきまで雑務に追われてやっと寝れたと思ったら起こしに来やがって!そういうのはイッセーにやれ!」

リ「あの子にはもうアーシアがいるでしょう!」

摩「つべこべ言わずさっさとどけぇ!」

リ「ちょ、乱暴にしないでーーーーキャ!」

 そんな事態が起きてしまいました

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